ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

ヘヴィ・メタリックな音たち、ヘヴィ・メタリックなアルバムたち

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 確かに音楽ジャンルとしての「ヘヴィメタル」はあります。けれども同時に「メタリックな音」と呼ばれるタイプのサウンドというものもありますね。「メタル」つまり「金属質」ということで、どっちの意味でもおそらくは「メタリックである」ということではあるのだと思うのですが、ある種の様式美としてのジャンルの「ヘヴィメタル」とは異なる方の、いわゆる「エレキギターの鉄の弦の響きがそのまま硬質な音として現前している」的なサウンドというものはどういう感じなのか。

 今回はそういうのの整理をします。アコギとかピアノとか、そんな軟弱なものは必要ない*1という強い意志でもって最後まで駆け抜けていきたいですね。

 なお今回は筆者の独断と偏見に満ちた「メタリックな」アルバム*2についての言及をもって「メタリックな音」の解説に代えさせていただきますので、どういうのがメタリックな音か、どうすれば出せるか、といった話はありません。

 

*1:「トップ画像のメロトロンはなんなんだ」というツッコミ待ち

*2:例によってメジャーどころばかりだと思います。浅い…

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“ローファイ”とは結局なんなんだ

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Lo-FiLow-FidelityLo-Fi music)とは、音楽レコーディングの際の録音状態、録音技巧の一つで、極端に高音質なものではない録音環境を志向する価値観。転じて、そうした要素を持った音楽自体を表す言葉。対義語はHi-Fi

             —Wikipedia『Lo-Fi』より

 

 なのだそうだ。

 なのだそうだけれども、どうしてだろう、ある程度インディロックに浸かってしまった私や貴方のような人間が、この定義をそのままそのものとして受け止めて首肯することが、果たしてできますでしょうか…。

 今回は、「ローファイ」なる、本来は音響学的な概念でしかなかったはずのこの単語が、なんだか成り行き等によってどんな意味を持ち合わせるようになってしまったかを整理して、そしてその結果どんな作品が「ローファイ」に含まれるようになってしまったか、まで書いてみようと思います。

 

 

2022年10月30日追記:

 色々とレイアウト変更や作品のサンプルになる動画の追加、そして特に、この記事を投稿した当時では存在すら認識してなかったけどもひょっとしたら今日においてはこっちの方が”ローファイ”として有名かもしれない”ローファイ・ヒップホップ”について大幅に追記しました。

 

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ギターロック10選(後編)

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(前編・後編ともにトップ画像のギターがジャズマスターなのは仕様です)

 後編です。10選のうち6〜10番目。正直ギターロックとオルタナティブロックと何が違うのか分からなくなってくるラインナップだと書いてて思いました…。せめてシンセとかが入って無い曲だけでリスト組もうとも思ってたけどキュアー入れちゃったし。

 考えていけばいくほど、ここで言ってるギターロックという枠組みは、現代においてとても不自由な形態のように思えます。幾分か分厚い歪みのギターを鳴らせることを条件に、シンセ・シーケンサー、キーボードなしの演奏をしないといけない。かといってハードロック・ヘヴィメタルの方に行ってもいけない。マッチョさを感じさせず、どことなくナード的な風味を残し、かつ使用できる楽器がベース・ドラムと、そしてもう何十年もサウンドが研究・開発されすぎて、新しい奏法や音が出せる気がしない、ギターとかいう楽器。評論家にバカにされ、音楽家にバカにされ。そもそもが、トラックメーカーがPC1台でできることを、4人前後集まってやっとでしか演奏することができない、音の自由度でもトラックメーカーに全く及ぶことのできない、バンドとかいう不自由・不合理の塊。

 でもですね、現代の自由で刺激的なR&Bやヒップホップの世界観でしか描けない風景があるのと同じくらいには、ギターロックでないと現せないような風景だってあるんだということは言いたい。たとえ「インディロックがブルジョアな青年男女の慰みものに堕してしまった」という言説がある程度事実であるとしても、この形式でしか、この制約でしか出せない音はあるんだと思います。すっかり言葉どおりのオルタナティブさが失われてしまったかもしれない“オルタナティブロック”も、そういう音や、そういう演奏をしているところが好きであれば、それはもう、トラックメーカーがどれだけ合理的で現代的で先進的であっても、それは仕方がないこと。

 年老いたロマンだとか、視野狭窄だとか、感性が貧しいとか、貶す言葉は自分の被害妄想体質からか幾らでも絞り出せるけれども、それでも好きならば仕方がない。ヒロトマーシー的な「最初にギターをジャーンと鳴らしたときが人生の絶頂」という感覚をそのままファズ・ディストーションに浸して、どこまでも阿呆のように、何か新鮮さを求めながらもやや退屈げに、ブルースにドライブしていけばいいんだと思います。

 

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ギターロック10選(前編)

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 そもそもギターロックとは何ぞや。検索してもWikipediaの記事すら出てこない。大体ロックという音楽はギターを使うのが普通なんだからロックは概ねギターロックなんじゃないのか。それにギターロックが創造的だった時代なんてとうに終わってしまって今やR&Bやヒップホップの方が刺激的で云々・・・。

 上記のあれこれ全てどうでもいいので、ひとまず自分がこれはギターロックだなあ、いいギターロックだなあと思うものを10曲、選んでみましょう。選んでいるうちに、とりわけ“ギターロック”というタグを付けたくなる音楽が、そうではない音楽と具体的にどう違うのか、なんとなく見えてくるかもしれない。その差異の向こうの何らかの情緒が、規律が、衝動性が、きっとギターロックという概念のフォルムなのでしょう。

 正直なところ、隠れた名曲なんて1曲たりとも出てこない、実にありきたりな、逆に言えば王道を突っ走らんとする選曲を前半と後半で合計10曲、年代順に列挙していきます。

 

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SONIC MANIAで観たMy Bloody Valentineがすごかったこと

 今年はサマソニ本編には行かず前夜祭のはずのSONIC MANIAだけ行きました。メンツがずりーよ。

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 鹿児島から幕張メッセまで車で行ったのですが、それはまた別の機会に話すとして、ともかくこのときに観たマイブラが、ちょっと想定してたのとは全然違う感じに、とてもとてもかっこ良かったので、それについて書いておこうと思ったものです。

 

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2018年前半で聴いた音楽(後編)

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後編です。「前半で聴いた音楽・後編」って前後どっちだよっていう。

ハンターハンターは今年中にもう1回くらい再開しますかね…?王子達の描写が増えてきた話進む!と思ったら突如大量に新勢力出てきたときはアホかと思ったけど果たして…。

 

あと、ジャケの写真代わりにAmazonのリンクを貼ってる訳だけど、SpotifyかAppleMUSICのリンク貼った方がいいのかな。自分Amazonにはややアンチ寄りだし。はてなブログの編集画面に選べるやつが出てくるようカスタマイズとか出来るんかな。私Spotifyの方はやってないけども。

 

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2018年前半で聴いた音楽(前編)

 

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2018年も結構経ってました。どうにも4月からの仕事場が変わってからというもの忙しいしどこか消耗が激しいのかすぐ寝るし元気が出ない。今は関東にて研修中という形で仕事や鹿児島から離れているからかなんとか多少元気な時間が出来たのでブログを久々に更新しておきます。

2018年上半期ということで、何かいい時事ネタの画像がないかと思って検索したけどいまひとつピンと来ませんでした…なので今年上半期唯一単行本の形で買ってた道満晴明メランコリア』の画像でも貼っておきます。いつもどおり面白かったです。各話タイトルがA to Z方式だからもうすぐ終わりそうだけど…。

というか、CDを全然買わなくなってしまった。いよいよAppleMUSICで大体のものを間に合わせてしまってる。ちゃんとちゃんとした作品だなあと思ったものは購入したいけど、引っ越して鹿児島のささやかなタワレコも遠くなってしまったからCDショップの敷居がなんとなく高い…。

聴いたもの全部という訳でもなく、ただ聴いたものの母数も少なく…だらだら書きます。順番はただのA to Zとあいうえお順。たった10枚。ディープなやつは他の人たちのブログ等を当たってほしい。これは所詮自分の半年分の日記を、一夜漬けで処理したものに過ぎないのだと思う。寂しい限りです。

 

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『In Colors』ART-SCHOOL

ART-SCHOOLのニューアルバムがリリースされました。

In Colors

In Colors

 

発売されて1週間以上が経ちましたが、今回かなり聴きやすい感じがして、ならばきっと書きやすいだろう、という見立てで、順番すっ飛ばしですが全曲レビューになります。フルアルバムとしては通算で9枚目。今のメンバーになってからでも通算4枚目。いつの間にかキャリア中のフルアルバムの半数近くが今のメンバーじゃないっすか。


ART-SCHOOL「OK & GO」MUSIC VIDEO

 

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リズムギター(もしくはギターボーカル?サイドギター?)について(前編)(概念・歴史編)

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いつの間に木下さんフライングVからジャガーに持ち替えたんすか…。似合うけどちょっとさみしい…。

 

この前辞典に投稿した「リズムギター」の項の文章を人気フォローワーさんが引用した部分がちょっと反響があって、微妙に需要というか、そういうのについての文章が求められてるんだなあと思って、自分もバンドでボーカルギターをさせてもらってるので、色々調べたりするんですがコレ!という決定的な解説を読んだことないなーとも思って、まあ勿論ここで決定版示したる!という気合いの入ったものではないしそんなもの書けませんが、ひとまず自分の理解を整理しておくためにも筆を執ってみましょう、という記事になります。

 

件のツイート。

 

ちなみに、本編である機材編が相当長くなる予感な状態で書き出して、その前説の段階で既に長い感じがするので記事を2分割します…。

 

(2019.6.30追記)やっと後編書きました…時間かかりすぎました。

ystmokzk.hatenablog.jp

 

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浅井健一作品5選

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「何の記念でもないけど浅井健一のベスト5枚記事書きます」というつもりだったけれど、気がついたら浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLSの新作アルバム『Sugar』の発売日じゃないか!と気付いたので慌ててやります。

 

BLANKEY JET CITYをはじめ日本のロックンロールとその詩情を引っ張り続けている男・ベンジーこと浅井健一。もの凄く多作家な彼の無数にある作品のうちで、今回は筆者が特に好きな5枚を選んで紹介していくだけの記事です。さくさく行きましょう。順番は年代順ですので順位ではありません。

 

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