ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

『text』昆虫キッズ

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 東京インディーきってのパワフル・ファンシー・ストレンジ・ロックバンドな昆虫キッズのセカンドフルアルバム。全国流通盤2枚目。正確には豊田道倫 with 昆虫キッズ『ABCD』を挟むけれども。ジャケットのイラストがどことなくナンバーガールっぽさが出てる感じののっぺらぼうっぷり。

 昆虫キッズの作品としては今作から、前作までと異なり全てきっちりとレコーディングスタジオで録音されたものになっている。エンジニアに近藤祥昭(GOK SOUND)、マスタリングに中村宗一郎といった布陣で、収録曲13曲を5日間で一気にレコーディング&3日でミックスダウン。いよいよロックンロールバンドとして纏まりのあるサウンドを鮮烈に響かせる作品になってます。作詞作曲は全て高橋翔。今作が彼らの作品で一番ロックンロールバンドしてるかもしれないな…。

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『My Final Fantasy』昆虫キッズ

MY FINAL FANTASY

MY FINAL FANTASY

 

 一見して「おしゃれポップブーム」みたいに後年の人たちから思われそうな「東京インディー」と言うムーブメントのド真ん中にあって、2010年代でも最強に“ぶっ壊れた”ロックンロール等を連発していたバンド・昆虫キッズについて、これから取り上げていきます。フルアルバム4枚、プラス若干のシングル等でやっていく予定です。

 まずはこの、ちゃんとしたバンド編成ではデビュー作となりそうなこのファーストフルレングスから*1。実際の今作の制作風景はかなりの部分宅録だったっぽいですけども。ナチュラルなストレンジさでシティポップもスピッツペイヴメントスーパーカーナンバーガールもアートスクールもディアハンターも飲み込んで訳わからんけどロマンチックな楽曲に仕上げる最高な集団の、少々拙くも華々しく若々しいファーストアルバムです。リリース10周年には間に合いませんでした…。

 なお、なぜかSpotifyには今作がなかったので貼ってません。

 あと、今作についてはリリース当時より昆虫キッズをリアルタイムでバックアップされてた方の以下のレビューが、とても愛に溢れていて素晴らしいです。何回もこれを読んでは、「なんていい人たちなんだ…」と勝手に思いを巡らせていました。

kamekitix.exblog.jp

 

*1:正確にはシングル『アンネ/恋人たち』が4人体制の彼らの最初の作品かも。まあいいや。

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サマーソングス(??)10選

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写真は足摺岬の方にある海底館というやつです。四国の端っこにありますので皆で行こう!

 

 突然ですが夏の曲10曲を発表します。なぜ夏なのか説明していきますので、適当に読み飛ばしてください。この文章に沿って何かしても責任はとりませんしきっと取れません。よろしくお願いします。

 

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『Anesthesia』ART-SCHOOL

Anesthesia

Anesthesia

 

 ART-SCHOOLのミニアルバム10枚目にして、バンドキャリア10周年の年にリリースされた作品にして、前作から始まった第3期アートの、結果的に最終作。短すぎるだろ第3期アート…

  「Anesthesia(アネスシージャ)」は「麻酔」「無感覚」といった意味。ドラッギーだった前作『14SOULS』までの流れを引き継ぎながら、中世〜近世の西洋画風なゴシックめいた雰囲気のイラストのジャケットは仄暗く、そして作品もまた、アートスクールの諸作でもとりわけ暗いもののひとつとなっています。「バンド10周年になったらものすごく暗い作品を作りたい」と過去に木下理樹本人が語っていたり、『14SOULS』リリース後に「次の作品はスマパンの『Adore』みたいな作品を作りたい」と語っていたりするけれども果たして。普段のミニアルバムよりも1曲多い全7曲を見ていきます。

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アーティスト写真も暗い。

 

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『14SOULS』ART-SCHOOL

14SOULS

14SOULS

 

 今改めて見るとジャケがゴスじゃんこれ!な彼らの5枚目のフルレングスのアルバム。今までのジャケットにあった背景感とかが無くて赤に女性がドーン!と載ってるので妙なインパクトある。

 前作『ILLMATIC BABY』とそれに伴うツアーでドラムの櫻井雄一氏が脱退して、バンドから木下理樹以外のオリジナルメンバーが消滅、その後新しいドラマーとして鈴木浩之氏が加入。その体制をそれまでの“第2期アート”と比較して“第3期アート”と呼称したりします。このブログもここから次作『Anesthesia』までを“第3期”と呼んだりするかもしれません。それにしても第3期、短すぎる。そして作風的にはむしろ『ILLMATIC BABY』も第3期的なんだよな…という微妙な難しさ。

 そんな新体制で臨んだフルアルバム、かなり混沌とした雰囲気で、おそらくそれは半ば狙ってそのようにされたものと思われます。果たして。

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画像の一番右が当時の新メンバー・鈴木浩之氏。この時期のメンバー、全体的に線が細い。

 

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『ILLMATIC BABY』ART-SCHOOL

ILLMATIC BABY

ILLMATIC BABY

 

 ミニアルバムは全曲レビューしてもフルアルバムのおよそ半分の手間で済むから楽で助かる!ART-SCHOOL全曲レビュー、今回は2008年リリースの、通算9枚目のミニアルバムとなるこの作品です。ジャケットのゴリラは一体…?欧米ではクールさの象徴という噂もあるけども果たして…。

 このミニアルバムは確か彼らのベスト盤と同時かもしくは相当近いタイミングでリリースされて、オーセンティック(?)なアートスクールをベストで聴くのと同時にこのミニアルバムで「最新形の」アートスクールが聴ける!という触れ込みだった。当時の「最新形のアートスクール」とはどんなものだったのか。

 

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『左ききのキキ』ART-SCHOOL

左ききのキキ

左ききのキキ

 

 ART-SCHOOL全曲レビュー、4枚目のフルアルバム『Flora』の次はこのミニアルバムになります。2007年は『Flora』とこれの2枚をリリース。ミニアルバムの枚数としてはメジャー・インディー合計でえっと…8枚目?*1

 前作『Flora』が「彼らにしては実にポップにThe Cureした」みたいなアルバムだったとすれば、今作はその反動で荒んだグランジロックに回帰するのことをした作品、となります。意外と単純な“原点回帰”ではないよなーとは思っています*2が…各曲を見ていきましょう。

 しかしジャケットの感じはなんか『SWAN DIVE』のPVを引きずってるかのような感じっすね。

 

*1:『SONIC DEAD KIDS』『MEAN STREET』『シャーロットep』『SWAN SONG(disk1)』『スカーレット』『LOST IN THE AIR』『あと10秒で』の次に今作、というカウントです。

*2:でもセールスの世界ではこういう風にはっきりと宣言して宣伝することが大事だとは思う。

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『Flora』ART-SCHOOL

Flora(初回限定盤)(DVD付)

Flora(初回限定盤)(DVD付)

 

 日本のオルタナティブロックバンド、ART-SCHOOLの通算4枚目のフルアルバム。アルバムタイトルは、ローマ神話に登場する花と春と豊穣の神・フローラから取られている。また、前作シングル『テュペロ・ハニー』から続けて、プロデューサーとしてROVO益子樹氏を迎えて制作された。ジャケットはそこはかとなくイギリスのロックバンドThe House Of Love*1の1stアルバムを想起させるもの。昔は単に「またお得意のパ…オマージュだよw」とか思ってたけど、今このアルバムのサウンドを聴くと、この寄せ方は意思表明だったのかな…なんて考えてしまう。

House of Love

House of Love

 

 ART-SCHOOLの全曲レビューについては、一番最後が2017年12月の『テュペロ・ハニー』となっており、 相当間が空いてしまいましたが、このアルバムは本当に素晴らしい、大好きな作品なので、もっとサッと書けたはずで、こんなに間を空けてしまった自分が恥ずかしくなりますが、ひとまず書いていきます。木下理樹さんも体調不良から復帰したっぽかったし。。

 ポップで、音がキラキラしていて、これまで以上に晴れと暗がりをしっとりとした中で行き来するアルバムです。ややボリューミーすぎるけど、彼らの最高傑作候補のひとつと思っています。

 

*1:代表曲のリンクを貼っておきます。アートがかつて『アパシーズ・ラスト・ナイト』で引用したリフの曲。

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『Crispy!』スピッツ(リリース:1993年9月)

CRISPY!

CRISPY!

 

 初期スピッツの4枚を一気にレビューしていった訳ですが、ここまではまだ「初期スピッツ」という分かるようで分からないような概念がバックにあったから、自分の中でも作品や楽曲の見取り図が立てやすい感じでした。またブレイク後のアルバムも、それぞれ色々な趣向がありながらも、どれもバンドのナチュラルな魅力が十分に備わっていると思います*1

 ただ、そのブレイクまでの時期のスピッツというのはやや宙ぶらりんな状態だと思います。まだ『空も飛べるはず』の後追いヒットがあった『空の飛び方』は、ブレイク以降のスピッツの基本的な武器が揃ったようなアルバムになっていますが、その前のアルバム━━今回取り上げる『Crispy!』については非常に微妙な状態で作られたアルバム、と言える部分がある。売れるべく、人気プロデューサー・笹路正徳氏を迎えての制作だったけれども、果たして…。

 しかしながら、ではなぜ「微妙な状態」だったのか、その状態で作った曲はどうなのか、っていうか初期スピッツ引きずってる曲もまだあるじゃん、っていうかこのアルバムまでが「初期スピッツ」じゃね?等々も含めて、色々聴き返して発見があったりするのが、こういう微妙な時期のアルバムだったりもしますので、その辺を念頭に置きながら、1曲ずつ見ていきます。

 そういえばいきなり余談ですが、タワレコ40周年のポスターにも、なぜかこのアルバムジャケットが選出されています(下画像の真ん中らへんにあります)*2。なぜこれなのか謎だけど、このアルバムのファンがいたのか、それともタワレコ挙げての今作の復権運動なのか…。ちなみにこのジャケット写真のモデルは草野マサムネさん本人だそうです。

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*1:『スーベニア』だけちょっとオーバープロデュース気味かなあ。

*2:全体的にライト気味な選盤かなあと思った。オシャレさを重視した感じがざっと見て感じられた。ザラザラしたロックっぽさが避けてあるのかなと。

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『惑星のかけら』スピッツ(リリース:1992年9月)

惑星のかけら

惑星のかけら

 

 現在のスピッツの新作が発表されました。

natalie.mu全曲レビュー始めたところにタイムリーだなあと思いました。スピッツは新譜を出そうとしてるのにおれは20年数年も前の作品をグチグチ言ってて何なんだおれ…とも思ったり。

 

 今回は彼らの3枚目のフルアルバム。『惑星のかけら』と書いて「ほしのかけら」と読みます。前作ミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』とのリリース間隔は僅か5ヶ月…どういうスケジュールなの…。室内楽的要素の強かった前作からの反動で、アグレッシブなバンドサウンドの構築を目指した作品です。ただ他にも色々なトライアルをしている感じも。部族感ある男の子のジャケットが妙にフェティッシュ

 普通は今作までを「初期スピッツ」と呼びます。なので初期スピッツ最終章。

 

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