ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

小西康陽の作家性について:ピチカート20選+その他5選【前編】

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 小西康陽氏のソロワークとも言えるPIZZICATO ONEがライブアルバム『前夜 ピチカート・ワン・イン・パースン』をリリースしました。これは大変な傑作で、とても感動的な作品になりました。

 何がそんなに傑作で感動的なのか?彼が作ってきた数々の名曲をビブラフォン含むメンツでしっとりとリアレンジして演奏されていることもさることながら、何よりも、作詞作曲者である小西康陽氏自身が全て歌い上げていることに尽きます。大量の楽曲を手がけていながら自分自身では決して歌わなかった彼が、ここにきて自身の曲を自分の声で歌ったことが、ここでは非常に素晴らしいのです。彼自身で歌うことになった経緯等は以下のMikikiのインタビューで語られています。

mikiki.tokyo.jp

 彼が作った多くの楽曲は、まず渋谷系を代表するユニットのひとつ・Pizzicato Fiveにおいて、その多くが野宮真貴氏によって歌われ、またピチカート解散後、または活動中からもですが、女性シンガーやアイドル歌手などによって歌われ、つまり、圧倒的に女性に歌われているわけです。であれば歌詞もやはり、小西さんが書く場合であってもやはり女性目線で書くのがセオリーなところですが、しかしそこで不思議なのが、小西康陽という作家性は時々そのセオリーを無視して非常に自身に寄せた歌詞を書いてしまうことです。そういった楽曲は彼のSSW的な側面が非常に色濃く出てくるのですが、上記のとおりそれらは大概女性に歌われて、小西氏自身で歌われることは滅多にありませんでした。

 それが、今回のライブ盤では全て小西氏本人の、少し不器用で、やや年老いたような、しかし低くくぐもった真摯な声で歌われるのが今回のライブ盤で、ここにおいて彼のSSW的な楽曲は真にそのSSW的な魅力を発現できたように感じられて、そこが非常に感動的に感じたところです。

 この素晴らしい作品についてはまた別の機会にしっかり触れるとして。しかしながら、彼が歌わなかった元のバージョンも、女性の歌とSSW的要素とが不思議な緊張感をもって並走され、結果的にいびつながら非常に魅力的な楽曲群になっています。前置きが長くなりましたが、今回はそういった楽曲を取り上げることで、彼の作家性について触れていきたい、と思うものです。

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ひとつのコード進行/リフ等で曲が反復し続けて完結する曲(30選)

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 「曲構造等」というタグを前回から作っていて、曲構造っていうのは「イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏…」みたいなののことですが、これって色々な見方ができるような気がしてて、前に投稿した「曲タイトルだけをサビ等で連呼する曲」というのもある意味曲構成がそうなってる・そうなるように作曲されているという話で、この辺の話って色々考えだすと面白いと思うんです。

ystmokzk.hatenablog.jp

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 今回は表題のとおり「ひとつのコード進行またはリフの繰り返しで最後まで割と同じ調子のまま駆け抜けていく感じの楽曲」というテーマで選曲して、各楽曲のその繰り返しがどんな感じにいい感じなのかとかそういうことについて見ていきます。

 今回のテーマも「繰り返し」という要素に焦点を当てているので、前回の記事で取り上げた楽曲のうち今回のテーマにも当てはまる曲は幾つかあります。今回はそれらは除いて、前回分とアーティストの重複無しで30曲選んでみました。おそらく今回のテーマに該当する曲は世の中に物凄くたくさんあるとは思われますが…自分の思いついて確認できた範囲での30曲です。今回は普通に年代順に並べます。

 前回の記事はこれです。

ystmokzk.hatenablog.jp

 なお、初めからミニマルなループで展開されるのが通常なテクノやハウス、ヒップホップ等につきましては、正直自分が全然無知であることもあり、選んでおりません。ご了承ください。

  • 今回のこのテーマは一体どういうことですかね?
    • ①同じコード進行を繰り返し弾き語りで作曲したっぽい系
    • ②同じリフを延々反復させて1曲にしてしまう系
    • ③セッションで曲を作った系
    • ④ソウル・R&B的な反復で成立する系
    • ⑤ファンク的な反復で成立する系
    • クラウトロック的な方法論で反復してる系
    • ⑦DJ・ヒップホップ的にトラックを作った系
    • ⑧ミニマルミュージックとして作曲された系
    • 今回のリストから外されるような事例
  • 本編
    • 70年代
    • 80年代
    • 90年代
    • 00年代
    • 10年代(+20年代)
  • 終わりに

 

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ひとつのメロディで曲構造が完結する曲

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 時々、世に色々存在する楽曲の、その構造とかについて考えたりします。日本でいうなら「Aメロ→Bメロ→サビ」みたいなやつのことです。英語なら「Verse→Chorus」みたいなので「Aメロ→サビ」となります*1。最後のサビ前とかに新しく出てくるタイプのメロディをCメロとか言ったりします*2。この曲はAメロからサビの潔い繋がりが〜とか、あの曲はなんかサビの後にさらにサビみたいなんがあるわー、とか、色々考えてたことがある気がします。

 

 しかし時々思うわけです。「もうサビとかサビじゃないとかめんどくさいやん!ともかく基本となるメロディとかのノリがなんかよければ、Aメロだけでも楽曲成立するやんか!」みたいな。今回は、そういう構造になっている曲だけを集めて、それぞれそういう曲構造がどんな印象・効果を生んでるか見ていきたいなというものです。勿論、自分の乏しい知識の範囲でのリストなので、他にももっといい事例があるものと思いますが、ひとまずはやっていきます。20曲あります。

  • ひとつのメロディで完結ってどういうこと?
  • 本編
    • ●メロディが必要十分
    • ●勢いゴリ押し
    • ●豊かなループ感
    • ●間奏がサビみたいな
    • ●阿呆みたいな
    • ●無機的・断片的
    • ●エモーショナル
    • ●演奏構成の劇的な変化
  • 終わりに

*1:日本でいう「Bメロ」は「Bridge」とか言いますが、「Pre Chorus」という呼び名があるそうです最近知りました

*2:英語ではこれの呼び名がどうも複数あったりして難しく、ひとまず自分は「ミドルエイト(middle 8)」という言葉がなんか好きなのでCメロと言いたくない時によく使います

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Blue Songs :「青」がタイトルに入る曲50選

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写真はとりあえずサムネイル用に撮った今住んでる部屋のベランダからの写真です。

 

青 - Wikipedia

青(あお、靑、蒼、碧)は基本色名のひとつで、晴れた空の色や海の色、瑠璃のような色の総称である。青は英語のblue、外来語のブルーに相当する。寒色のひとつ。また、光の三原色のひとつも青と呼ばれる。

 青色って、いいですよね。。

 世の中に多数存在する「青」「ブルー」「blue」といった語が入る楽曲を50曲選んだSpotifyのプレイリストを以下のとおり作りました。今回はそのプレイリストに入れた曲をそれぞれ簡単にコメントする内容の記事です。並べ方は年代順(古い方から新しい方)になってます。

プレイリスト、全50曲で3時間33分とのことですごく長いですが、よかったら曲目覗いてみたり、聴いてみたりしてください。実に真っ青なプレイリストになっています。

 

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#30DaySongChallenge

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 緊急事態宣言下のSTAY HOMEな時勢に流行りましたこれを、自分もしようと思うけど他の人と違うんだが…?感を出したくてどうしようか考えて思いついたのが、逆の順番でやることでした。本日ようやく30日目〜1日目まで終わりましたので、備忘録的に各ツイートをここに集めておきます*1

 ちなみに例によってプレイリストも作っています。というかこれを作るために選曲が影響受けたまである(サブスクにない曲は選べない)。

 

 機械的にツイートを貼り付けてるだけの記事なので、ツリーでぶら下がる元のツイートも表示されたりで見づらいですけど備忘録だからそんなのは気にしてないので見づらいのはすいません。

 

*1:ツイッターのログすぐ流れて行っちゃうからですね…

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『いいね!』サニーデイ・サービス

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 こんなにバンドサウンドが格好いいサニーデイはセルフタイトル以来では…さらりとリリースされた割に非常に鮮やかな快作!作品の勢いを殺さないようサクッと全曲レビューしたいと思います。サクッとしてるかなこれ…。

  • 1. 心に雲を持つ少年(3:49)
  • 2. OH!ブルーベリー(3:34)
  •  3. ぼくらが光っていられない夜に(3:26)
  • 4. 春の風(3:09)
  • 5. エントロピー・ラブ(3:08)
  • 6. 日傘をさして(4:30)
  • 7. コンビニのコーヒー(4:43)
  • 8. センチメンタル(4:13)
  • 9. 時間が止まって音楽が始まる(4:46)
  • 総評(?)

 

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Wilcoの全スタジオアルバムレビュー

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 昨年の今頃(2019年4〜5月頃)くらいに『Yankee Hotel Foxtrot』というアルバムの全曲レビューを弊ブログで行っていて、あれは1曲ずつを1つの記事で色々とネチネチ書くという、今少し見返してもちょっとまともじゃないことをやっていました。

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 それから1年ほど経って、また昨年中に新作も出たことなので、一度ここまでのWilcoの各アルバムを聴き返して、これはこういうアルバムだなあ、という感想のようなレビューのようなものを書いていければなあ、と思います。1995年の『A.M.』から2019年の『Ode To Joy』まで11作のスタジオアルバム*1を、順番に手早く見ていきます。

 

(2022年8月追記)

 この年の新譜『Cruel Country』を追記し、そのついでにレイアウト等変更、ジャケット画像とそこにSongwhipのリンクを貼る形式に変更、様々な追記を施しました。追記に当たっては折角なので、2020年に出版された『ジェフ・トゥイーディー自伝』も踏まえた内容を少し書き添えています。

 

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(2024年3月追記)

 遅くなりましたが、2023年のアルバム『Cousin』について追記しました。

 

*1:あくまでスタジオアルバムなので、シングルのカップリングとかコンピレーション、他アーティストとのコラボ作品、ライブ盤等には触れませんので悪しからず。なお、シングルカップリング等も含めたレアトラック集として『Alpha Mike Foxtrot』というコンピレーションも出ており、アルバム収録外の曲を聴くには多分これが手っ取り早いと思います。中にはこれアルバムから外すか…的な曲や、もしくはアルバム収録曲の別テイクで「えっ元々こんな曲だったん…」的なのもあるので、全アルバム聴いた後に手に取ってみると色々発見があるかもしれません。

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『青い車』スピッツ

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 スピッツ史に留まらず、邦楽史上でも有数の大名曲にして後世への影響力も甚大な楽曲として、この1994年リリースのシングル曲『青い車』を見ていきます。以下の『空の飛び方』のレビューではこの曲のみ後回しにしていたので、その補完になります。こんなに書くのに間が空いてしまって申し訳ない限りですが…。

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 なお、以降はシングルバージョンを前提として取り扱います。また、あくまで『青い車』単曲でのレビューなので、シングルのカップリング曲『猫になりたい』には触れませんので悪しからず。そのうち『花鳥風月』まで行けば書きます。それにしても『青い車』と『猫になりたい』のシングルなんて凄い…スピッツの最強シングル候補*1、というかこれが最強かもしれません。

 それでは、以下の目次の通りに書き進めていきます。

  • この曲までの経緯・この曲に到るまでのスピッツ
  • 音楽的考察
  • 歌詞的考察
  • スピッツ史における立ち位置
  • おわりに

 

*1:前にも書きましたが、他は『日なたの窓に憧れて』(カップリング:『コスモス』)及び『楓/スピカ』です

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『Pomason / tape drug』NYAI

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Pomason/tape drug - Single

Pomason/tape drug - Single

  • NYAI
  • インディ・ポップ
  • ¥458

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 最近仕事が忙しかったり体調が悪かったり先のことの準備を考えないといけなかったり鬼滅の刃にはまってしまったりといった具合になかなか時間が取れてないですが、今回のこれなら2曲だけといういい感じのサイズなので、サクッと書けそうな気がしました。サクッと聴いてサクッと楽しんで、そんで後からジワジワ効いてくるのにいい感じのナイスなシングルです。というか2曲ともPVがYouTubeに上がってるし。

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www.youtube.comやっぱPVを、しかもこういうアニメーション的なのをバンドが自前で作ってるのは何気に相当すごい。

 

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雨に唄えばソング集(全50曲・前半)

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 今年の年末年始は結局全然雨降りませんでしたね。

 古くは『雨に唄えば』から始まっていく、「雨」がタイトルや歌詞に出てくる楽曲を50曲集めて列挙していく記事です。集めてて思ったのが、「雨」をテーマにした楽曲が必ずしも「雨の日に聴きたい曲」かどうかはよく分からないということです。

 あと、「雨」という同じテーマを扱うにしても、扱い方によって雨は「生活の障害」にもなるし「苦痛の表現」にも、もしくは「ちょっと可愛いもの」にも、場合によっては「救いの雨」みたいな表現にもなったりするわけで、色々あるなあと思いました。ので、これらの雨の扱い方を強引に「キュート」「クール」「パッション」のどれかに当て嵌める試みもしてみます。デレマスは二次創作でしか知りません。

 50曲あるので今回の記事は量が多いです。多すぎて書いててしんどくなったんで前半と後半に分けることにしました。あと登場順は時代が古いものから降順です。それぞれ西暦何年のリリースかを付記しておきます。また、今回は最後に掲載するSpotifyのプレイリストを前提に選曲したので、サブスク解禁されてないため泣く泣くリストから外した曲とかあります。大瀧詠一の『雨のウェンズデイ』とか。それでも、超王道から「こんなんもあったんやね」まで50曲なんとか集めました。

 あと、選曲をしてて思いましたけど、雨って生活で常に出てくるわけじゃないから、雨が歌に出てこない人は本当に全然出てこないな…と思いました。そもそも生活模様じゃなくて比喩とか象徴とかのように出てくる「雨」も色々あるんですけども。

 

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