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ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

『DIVA』ART-SCHOOL

 アートスクールの東芝EMIからのメジャーデビュー、第一作目のシングル。彼らの1stフルアルバム『Requiem For Innocence』の先行シングルでもある。

DIVADIVA
(2002/10/30)
ART-SCHOOL

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 メジャー一発目ということで雰囲気を変えてきたのか、イラストではなく実写のジャケに。構図はRadioheadトム・ヨークの弟アンディ・ヨークが率いていたバンドThe Unbelievable Truthのアルバム『Almost Here』を模したもの。東芝EMIが木下のルックスを押し出して行くことに決めたのか木下本人が言いだしたのかその辺は気になる。アートワーク中のイラストは大山純

 4曲入りで1000円と、なかなかコスパの良いマキシシングルとなっている。が、その4曲中2曲がこの後のアルバム『Requiem For Innocence』に収録される。そしてこのシングル(というか東芝EMI在籍時のシングル全て)は現在廃盤であり、アルバム未収録の2曲(及びブックレット等)を入手する手段は中古やネットオークションを探す等しか無い。

 かなりどうでもいいことだが、このシングルからアルバム『Requiem〜』まではバンド名について、Art-School表記(小文字混じり)とART-SCHOOL表記(全て大文字)が混在している。この期間より前も後もほぼ大文字表記オンリーなのを考えるとやや不思議だが、小文字の方が洒落た雰囲気が出ると判断されたのかもしれない。
確かにいちいち大文字で全部打ってしかも間に-(ハイフン)入れるのなんか恥ずかしいからカタカナで「アートスクール」って書いちゃうことが個人的にもあるが…。



1. DIVA
 メジャーデビュー一曲目としての気合いと勢いが十分に感じられる、これまでのアートスクールの要素の多くを一曲にコンパクトかつキャッチーに凝縮したような曲。第1期アートの代表曲のひとつでベスト盤にも収録。だがライブでの出動率はアルバム『Requiem〜』の曲の方が多いかも…。
 キラキラしたシンプルなアルペジオギターと重く機動するドラム、それよりさらに重く這うベースが一度に鳴るイントロだけでも、その繊細さと重さのギャップ自体がバンドの自己紹介的ですらある。この曲はそんな繊細さと重さが乖離したAメロ等と、演奏がひとつに纏まって一点突破的に疾走するサビ等の繰り返しにより構成される。後述のブレイク以降の展開も含めて、アートの全楽曲中でもとりわけジェットコースター的な勢いを感じさせる3分余りとなっている。
 Aメロ部、まさに曲を強力に引っ張るベースと、扇情的な張り上げ声とこれまでになく過剰にミックスされたブレス、そして時折ファルセットも織り交ぜた線の細い木下ボーカルの対比が印象的。
 そのAメロ最後のブレイクで、バンドの演奏スイッチが切り替わったかのように、サビの激烈な疾走モードに突入する。上昇方向に一気にドライブするギター、録音の悪さからか塊のようになって突き進むリズム隊、そしてその疾走する演奏の中にむしろ同化するかのように、Aメロよりも低いメロディを歌うボーカル。この曲の疾走感はどこかアートの他の張り裂けるような疾走曲と違っていて、バンドが塊となって一点突破するような趣がある。張り裂け要素はサビの最後部分、リズムのキメと一気にメロディが上昇しファルセットor絶叫するボーカルによってもたらされる。
 この曲で最もドラマチックなのが二度目のサビ直後のブレイクからの展開。太いベースと細く水っぽいアルペジオが残った後、タメの利いたドラムと、そして息も絶え絶え感と挑発的なエロさとを醸し出したファルセットでの「Hold me, Touch me, Kiss me, Kill me」のフレーズが挿入される辺りの、吸い込まれるような重力感、そこから演奏がせり上がり、木下のよく張り裂けた絶叫から3たびサビに突入する流れ。この辺りの溜めて溜めて一気に放出っていうの、ありきたりの展開ではあるがその程よいギャップの強烈さがとても鮮やかで、その鮮やかさのまま最後の完全にひしゃげたシャウトとリズムのキメであっさりしたエンディングまで突っ走る。最後のキメでざっくり終わらせるところもこの曲の鮮烈な印象を薄めずにキメられている。
 歌詞について。前作にて「美しい滅亡」を夢想していたが、今作ではそこにもうひとつニュアンスが強調される。「喪失することへの感傷」が、この曲では滅亡的な要素よりも前に出ている。
Touch me, Diva/いつか気づいてたんだ/君の髪も/匂いも/この気持ちさえも
 ただ消え去っていくって/そんな気がしてさ

ここでの木下の視点は「やがて喪失することを予感する瞬間」に移行している。喪失と滅亡は異なる。滅亡が「君と僕の甘美な終末」なのに対して、喪失は「置き去りにされること」である(少なくとも第1期アートについては)。そしてそこから、救ってくれるべき/一緒に滅んでくれるべきだと夢見てた「君」に問う。
Hold me, Touch me, Kiss me, Kill me/君は何て/何て云った
悲しげな予感と情けない欲望とが入り乱れた詩情がキリキリと疾走して行く様は、生活感から離れた世界にて、キャッチーに響く。その魅力が一番間接的映像的かつ美しくも繊細に描かれた以下のフレーズがとても好き。
冬の朝/この宇宙の色/君が吐いた澄んだ息/
 手を伸ばして/触ろうとして/音も立てず崩れた

繊細な視線の中突如混入される「この宇宙の色」という部分、好き過ぎる。

2. メルトダウン
 爽やかで鮮やかだった前曲から一転、荒涼かつ鬱々とした世界観を提示するミドルテンポのグランジナンバー。アルバム『Requiem〜』には前曲とこの曲が収録された。
 とりわけ第1期アートはグランジバンドと呼称され、自称もしていたような節があるが、彼らの曲の代表的なものは疾走曲が多く、それらはグランジよりももっと爽やかな感じがあり、どっちかと言えばパワーポップ的である。むしろ代表曲以外のやや地味なミドルテンポのナンバーの方に、よりNIRVANA的なグランジの作法に則った曲がいくつか混じっている(実はそんなに多く無いように思う)。これはそのうちの特に典型的な一曲といったところ。
 冒頭の砂嵐チックなSEも、その後のギターのアルペジオフレーズも、荒涼感を全開に漂わせている。アルペジオ自体は『ガラスの墓標』に似た感じなのだが、聴いた印象はそれよりずっと重苦しげ。淡々としたリズム隊も重いが、更にそこに拍子足らずで進行するソングライティングが合わさりいよいよ切迫した雰囲気。歌も息絶え絶え気味ではあるが淡々と木下節な調性曖昧メロディで進行していく。
 その淡々さから唐突にシャウトとハードな演奏が叩き付けられるサビは、典型的なグランジ展開。ここでは特にうねるフレーズを反復し続ける大山のギターが目立っている。そして木下の「YEAH」シャウト連発。グランジマナーと感情とメロディ感覚に任せて連発されるシャウトこそこの曲一番の聴きどころか。特に終盤のシャウトは明らかに無理矢理絞り出しているような勢いがあり、前曲に引き続き、前曲以上に木下独特の危うげなシャウトを堪能できる曲となっている。
 歌詞について。こちらは「美しい破滅」要素と投げやりさ・自虐感が主軸。
君は笑って/死んで/僕は光を射った/ノースマリンの海へ/誰一人居ない子宮へ
いつの間に一人立っていた?/閉ざしたままで/誰にも触れず
 いつの間に偽り/此処へいた?/君には青を/冷たい花をあげるよ

なんともな閉塞感。サビの感情的なフレーズとそれ以外の部分の描写が混濁した感じも受け、行単位ではそこまででもないのに全体的にみるとドロドロした詩情を感じる。
 こんなに典型的なグランジ鬱曲なのに、どうも地味に感じられてしまうのは不思議。個人的には、閉塞感が強過ぎる感じがする。

3. レモン
 鬱々した前曲からまた一転、アートのポップな上澄みを抽出して作ったような、僅か2分足らずの快作。第2期以降のアートのリードギター戸高氏の、第1期アートで3本の指に入るほど好きな曲だとか。
 まず、2分弱という尺に驚く。全体的に一曲の尺が短い部類のバンドではあるが、それでも2分を切っているのは(Eelesのカバーである『IT'S a MOTHERFUCKER』を除けば)2014年2月現在でこの曲のみ(木下関連で言えばKilling Boyの『Confusion』がこの曲よりも短い)。疾走曲でもなく(軽めのミドルテンポといった具合)、それでしっかりサビ3回歌ってこの尺だから、この曲の特異性が際立つ(ちなみに第1期曲で次に短い『WISH』はサビ二回の構成かつ疾走曲)
 サウンド的には、UKギターポップみたいにさえ感じるキラキラしたアルペジオと、アームで揺らした歪んだギターとの対比が印象的。どことなく90年代前半の洋楽ギターポップな雰囲気で、歌詞からは想像もつかない瑞々しさはこの曲を『プール』というタイトルにしても良かったんじゃ、と思うほど。
 この曲が優れているのは、短い尺の中でメロディの緩急や昇降がきっちりとなされていること。特に曲が始まって30秒足らずで突入するサビの昇降はシンプルながら鮮やかであり、またややシャウト気味に歌うためこのシングル冒頭からの歌の切迫感も引き継いでいる感がある。特に二度目のサビ終わりから最後のサビまでをドラムのタム連打とファルセットで繋ぐ辺りは尺も減らせて曲の勢いも連続的で、鮮やかな手際。
 そのどポップなメロディとキラキラしたギター、そしてサビのスネア二回打ちするドラムなど、甘酸っぱいギターポップとして非常に完成度が高く、歌詞には直接関係しない『レモン』という題も完全に納得してしまう。
 そんな曲である割に、歌詞はやはりこの時期的な破滅・閉塞感を有している。
彼女は云った/私を深く沈めて/彼女は云った/水の中へ
"You're My Sunshine"そう云って/君は死んだ/頬染めて
 僕はずっと見とれてた/彼女は死んだ/とても澄んだ朝に

キラキラした「君」の死についてポップに歌う木下は、この曲でポップな倒錯感をリスナーに訴えることを目指したのだろうか。より直接的な歌詞で書かれてはいるが、どことなくThe Smiths〜初期スピッツなどを連想してしまうようなものに、総合的に仕上っている。
 このシングルのアルバム未収録曲は2曲だが、この廃盤シングルの入手理由としては、この曲を好きになるかどうかというのが大きい。個人的には、この曲の為にシングル入手しても損は無い、いわるゆ「隠れた名曲」だと思う。

4. TEENAGE LAST
 ベースの柔らかいプレイを中心とした静謐なこの曲でこの作品は終わる。ディストーションギターもひしゃげたシャウトも見当たらず、かなり音数少ない中を淡々と進行して行く曲で、バンド的と言うよりもむしろ木下ソロっぽい質感(実際曲名は木下自身のソロアルバムから流用だし)。
 この曲の演奏で耳につくのは、まずベース。散々太くてシンプルで力強い演奏をしていたベースが、ここでは一転して柔らかでメロディアスな和音を用いたプレイを見せている。他の演奏が本当にシンプルなので、何が何でも目立つようになっている、
 また、サビに出てくるシンプルなアルペジオを奏でるピアノも印象的。第1期アートはたまにシンプルなピアノのフレーズをバックに潜ませることがあるが、この曲ではピアノが演奏のもうひとつのメインといった存在感。総じて柔らかい演奏で、作品の余韻に浸らせる趣向の演奏となっている。
 メロディ自体は演奏の柔かさほど柔和ではなく、むしろ緊張感・切迫感を感じさせる。特にサビのジリジリ紅潮するメロディがファルセットで解決する辺りは典型的に木下的なメロディセンスが判りやすい。ちなみにAメロのメロディは後に『Bells』(『Love/Hate』収録)に使い回される。『ミーン ストリート』もそうだが、初期アートのこういうバンドカラーから外れた曲は何故かメロディを再利用されているが、不完全燃焼だったんだろうか、と思ってしまう。
 うっすらとひりひりするメロディに沿うように歌詞も書かれている。
灯りが奇麗/僕には似合わないな/灯りが奇麗/毎日照らさないで/
 注射器/愛/レモンティー/破滅について/美しい人よ/君には真実を云うよ

劣等感色と破滅色、そして「君」に対する切迫した思いが綴られる。そしてサビのファルセット、「一人で」のリフレインが印象的。


 以上四曲。
 メジャーデビューのシングルとして、この時点でのバンドのポテンシャルと守備範囲とをある程度しっかりと印象づけようとしている風に見える。『DIVA』と『レモン』では明るさのタイプが異なるしそれは『メルトダウン』と『TEENAGE LAST』の暗さについても言える。また、グランジバンドと銘打ってメジャーデビューしたと記憶しているが、このシングルの明るい曲と暗い曲が交互に現れる構成も、どこかそういうイメージに沿ったように受け取れる。
 そしてそんな明るい曲でも歌詞は暗いw破滅の予感を激しさと美しさの混じったギターサウンドで鳴らすという、前作で確立された作風は、今作では既に自明なことのように扱われ、荒んだ光景とたまに見せる甘く飛躍したフレーズに、幾らかの劣等感要素等も含めて次第に混沌としたものになりつつある(『メルトダウン』が特にそう)。
 しかし何にせよ、現在廃盤のこのCD。アマゾンなど見ると最近は安い中古もあるようだが、ファンとしてはやはり『レモン』を拾い上げる為にも必要なところ。

『DIVA』PV。櫻井氏の俳優的・コメディリリーフ的存在感が既に発揮されつつあるw