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ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

2014年の個人的フェイバリットアルバム30選(1/2)

今年は30枚選びました。全部コメント書くと長いので2分割。
前半は30位→16位まで。

アルバムタイトルにはアマゾンのリンクを、曲目のうち試聴できるやつにはやはりリンクを貼っています。太字は個人的ベストトラック。太字とリンクの青色が重なると分かりにくい…。

タイトルにもある通り、個人的に気に入ったものを適当に並べて、適当にコメントつけました。中にはそんな適当に扱って他の人から怒られないか、と思うのもありますが、ご容赦ください。



30. INFORMED CONSENT/PANICSMILE
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1. WESTERN DEVELOPMENT 2 2. OUT OF FOCUS, EVERYBODY ELSE
3. INFORMED CONSENT 4. ANTENNA TEAM 5. THE SONG ABOUT BLACK TOWERS
6. DOUBLE FUTURE 7. DEVIL'S MONEY FLOW 8. NUCLEAR POWER DAYS
9. CRY FOR THE MOON(An Impossible thing is searched for.) 10. CIDER GIRL

 日本が誇るポストパンク?オルタナティブ?ジャンク?バンド・PANICSMILE。最近ではトリプルファイアーのサウンドプロデュースをしていたりもする吉田肇氏のバンドの、2010年に10年間も続いていたメンバーが一度解散して、新体制になってから初のアルバムが今作。
 変拍子と言うのも憚られるような、行き当たりばったり感たっぷりなリズムは今作でも健在。ソリッドなサウンドで時にとてもシュールに時にシャープに突き進むギターとビートの妙は、新メンバーになり微妙なパワーバランスの変化が見られ興味深い(特に吉田ギターの前景化とか)。ぶっきらぼうに叫んでるボーカル(今作は前作や前々作で見せた歌もの要素は意図的にオミットされてる)も、その緩急やリズム感にポップなものが滲み出ていて、このバンドはやっぱり意外と、奇妙極まるサウンドを歌が纏めあげてはじめて完成するのかもしれない、と思ったり。最後の曲のオチの付け方も含めて、キンキンに捻くれまくったベテランの新しい攻めモードな快作。

29. Songs of Innocence/U2
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1. The Miracle (of Joey Ramone) 2. Every Breaking Wave
3. California (There is no End to Love) 4. Song for Someone 5. Iris (Hold Me Close)
6. Volcano 7. Raised By Wolves 8. Cedarwood Road 9. Sleep Like a Baby Tonight
10. This is Where You Can Reach Me Now 11. The Troubles

 「あなたのiTunesにもう入ってます」と言う触れ込みでAppleとタッグを組んで賛否両論のリリース展開がなされたベテランバンドU2の最新作。っていうかおれのiTunesには入ってなかったからわざわざダウンロードしたんですけど(金出してないのにずうずうしい)。
 これでアルバムの出来がよくなけりゃざまあ見ろ叩かれやがれ金持道楽野郎!とも言えたけれども、残念ながらこれがかなり良かった。一曲目の意外なシャッフルビートからして従来の“スタジアムバンドの王者U2”なイメージを回避しようと、様々な工夫が見られる。インディーロックシーンに目配せした様々な要素の“つまみ食い”は、結果としてソングライティング方面でも派手なU2節を侘び寂びの効いたものにしているかもしれない。侘び寂びと緊張感の効いたときのU2なんてデスキャブみたいなもんで、雄大なスケールでロマンチックの鉈を振るうただの最強バンドじゃないか、という具合に良い作品。

28. Alias/The Magic Numbers
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1. Wake Up 2. You K(no)w 3. Out On The Streets 4. Shot In the Dark
5. Roy Orbison 6. Thought I Wasn't Ready 7. E.N.D. 8. Accidental song
9. Better Than Him 10. Enough 11. Black Rose

 ママス&パパスの再来とも言われた爽やかほっこり系男女混成バンドとしてデビューした彼らも、作品を出す度にどんどんシリアスな音楽性になり、4枚目にしてこのジャケット、いかにも神経質そう(ちなみに2枚目のアルバムは大傑作だと思います)。
 そんな今作、冒頭からRadiohead以降感のある退廃的な残響感のサウンドで、彼らにそれを求めている人がどれくらいいるか分からないがしかし音の感じは非常にいい。元々音作りもソングライティングも相当センスある人たちで、シリアスモードも全然かっこいい。むしろ攻撃的で不穏な音に向かったことで、かなりアダルティな方面だった前作よりもざっくりした作風になっている感じも。そして闇い中盤までを越えて出てくる『Accidental Song』、2枚目くらいのときのポップで勢いあるギターロックをより多幸感あってスケール大きくしたこの曲で一気にアルバムに日が射す感じが素晴らしい。この曲は彼らの曲でも最高クラスに素晴らしい。上記のリンクはアコースティックバージョンだけど、収録はしっかりバンドサウンド。
 個人的に、学生の頃リアルタイムだった00年代UKデビュー組のバンドでも、一番元からレイドバック感あってその気になれば長く続けられそうなこのバンドが真逆の方向に向かってるという事実に、安心以上のグッとくる感じがあって嬉しい。

27. Monuments to An Elegy/Smashing Pumpkins
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1. Tiberius 2. Being Beige 3. Anaise! 4. One and All 5. Run2me
6. Drum + Fife 7. Monuments 8. Dorian 9. Anti - Hero

 9曲32分といういつになく短い尺で展開されるスマパンの新譜。ビリーどうした!?いっつも60分越えが当たり前みたいなアルバムばっかり作ってたのに、もう飽きたの?多方面からのストレスでいやになった?
 正直ジャケットも今回地味で、装丁もやや安っぽくて最初どうかなと思ったけど、聴いてみるとこれが実にいい。ヘヴィ目なナンバーからだせえシンセ使用のダーク曲、打ち込み使用曲まで手広くやってて、個々の完成度もかなり高い。前作がネバネバしたビッグマフの音+どっしり手数多いドラム=サイアミーズ・ドリームサウンドへの回帰としたら、今作は遂にメロンコリーへの回帰か…などと思ってしまう。代表曲的なシングル山盛りのメロンコリーに比べるとスターの数では見劣りこそするが、しかし今作には再結成後きってのロマンチックさを持つ『Being Beige』がある。この曲は再結成前のスマパンで出してもシングル余裕だろう。
 ビンテージシンセの多用も時にメロウに時にシュールに響いていい感じ。欲を言えば曲順がちょっと盛り上がりに欠けるというか、山場な曲を5分くらいの尺でいいので置いてほしかったなとか(今作は5分いく曲ないんです!)。ビリーは来年発表予定の次作『Day For Night』でスマパンは終了する、と言っているらしいが、果たして…何はともあれ、次作は更にモアベターでお願いします。

26. Hurt/Syrup16g
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1. Share the light 2. イカれた HOLIDAYS 3. Stop brain 4. ゆびきりをしたのは
5. (You will) never dance tonight 6. 哀しき Shoegaze 7. メビウスゲート
8. 生きているよりマシさ 9. 理想的なスピードで 10. 宇宙遊泳 11. 旅立ちの歌

 シロップの再結成!五十嵐がシロップメンバー引き連れて「生還」ライブしたときから思ったよりも早く、しかも全曲書き下ろしの新作リリースという形で戻ってきたのは“鬱ロックバンド”シロップに似つかわしく無さすぎるくらい嬉しいニュースだった。
 そんな感じで出た今作、改めて3ピースバンドとしての自分たちのバンドとしての機構を再確認しながらも、やっぱり所々五十嵐的な天然でヘンな要素が入ってきて、今作は再結成ということもありそのヘンな部分を心置きなく楽しむことが出来る作品になっている。普通にやったら絶対そうならんだろ!って拍子が素敵な『Stop brain』のキャッチーさ、ベースの訳分からなさからやってしまってる感たっぷり。『イカれた HOLIDAYS』も曲自体真面目だけどタイトルのセンスはアウト寸前でしょ。『哀しき Shoegaze』は今作一シューゲ要素の無い変な曲だし、ラス前曲らしからぬハイテンション疾走を見せる『宇宙遊泳』といい、存在自体ギャグめいてる『旅立ちの歌』といい、そのヘンテコメンヘラ芸とさえ言えそうな素敵な曲の数々が素晴らしい。こうなってくると解散後の陰鬱な期間のポートレイトといった内容の『生きているよりマシさ』の内容すらあまりに“らしさ”たっぷり過ぎてすごく楽しく聞こえてくる。そう、ここにはひとまずトンネルを越えたときふと沸き上がる可笑しさが満ちている。それをある種の祝福と読み替えることに、抵抗は無い。

25. Wang/王舟
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1. tatebue 2. 瞬間 3. dixi 4. boat 5. uguisu 6. ill communication
7. New Song 8. My first ragtime 9. windy 10. とうもろこし畑 11. Thailand

 東京インディーシーンきっての「もう何年も経つけど、本当にアルバム出るの…?」芸人だったという彼も遂に今年アルバムをリリース。時間をかけただけあってか、非常に賑やかで豊かな楽団風カントリーミュージックが展開されているが、練りに練りまくったような複雑さがなくサラリとしているのは大きな特徴か。
 レビューをこちらで書かせていただいたので、作品にまつわる考察ごとはこちらで。色々言ってはいるけれど、結局のところこんだけいい曲といい歌があっていいプレーヤーが揃えば豊かな音楽になるわな、というのが正直なところ。まさかの福岡までバンド編成でライブ来てくれたので観ましたけどすげえ良かった…。

24. You're Dead! /Flying Lotus
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1. Theme 2. Tesla 3. Cold Dead 4. Fkn Dead 5. Never Catch Me 6. Dead Man's Tetris
7. Turkey Dog Coma 8. Stirring 9. Coronus, the Terminator 10. Siren Song 11. Turtles
12. Ready err Not 13. Eyes Above 14. Moment of Hesitation 15. Descent Into Madness
16. The Boys Who Died in Their Sleep 17. Obligatory Cadence
18. Your Potential//The Beyond 19. The Protest

 個人的に“The 不得意ジャンル”なジャズとハウス・エレクトロな方面。その両方の側面を持つ今作についてぼくが何か語るのは難しい、けれどサマソニで観たロバート・グラスパーと同様に、「今のジャズってここまでエイフェックス・ツインみたいなことになってんの…?」という驚きと不思議体験にこの身を泳がせていたのも確か。つまり単純に、なんかすげーとこに連れてかれる感じだなと(どこかの評論家のレビューでは「今作の方向性もサウンドも想定内(ではあるが完成度は高い)」みたいなことが書いてあったので、ジャズの世界ではこういうの普通、なのか…?)思った。
 スリリングなサウンドは、サイケと言えばそうだけど眠くなる要素はあまり感じず、むしろ積極的にオルタナティブな要素が取り上げられたサウンドは頻繁に唐突にビックリしたり。メタリックな質感もジャズなラッパのサウンドもエレピの幻惑的な音も、尺の短い楽曲も、次々と整然と連なってパズルのピースのごとく光景を描いていく。そのヘンな浮遊感の中タイトルを思い出して、「あ、そっか、おれ死ぬのか」的なことを思って、可笑しくなって。社用車運転中にこれ流したときの不思議で投げやりな感覚が忘れられない。

23. Tyranny/Julian Casablancas + The Voidz
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1. Take Me In Your Army 2. Crunch Punch 3. M.utally A.ssured D.estruction
4. Human Sadness 5. Where No Eagles Fly 6. Father Electricity 7. Johan Von Bronx
8. Business Dog 9. Xerox 10. Dare I Care 11. Nintendo Blood 12. Off to War…

 まさに怪作!これをストロークスのリーダーたる自分がやるんだということも含めて、本人的にすごくしてやったりなのではないかということ尽くめな今作は、ありとあらゆる人工的で暴力的なサウンドやリズムや歌唱が飛び交い、情報量がオーバーフローすることそのものを目的とした挑戦的な〜というレトリックを散々用いたくなるアルバム。それもこれも田中宗一郎こんな文章を読まされたせいではあるけれど(この文章、彼の文章の中でもトップクラスに好きだ)。
 この文章にある通り、論理化してしまえば「なるほど」と単純に思ってしまうけれど、実際に作品を聴いて「おお…そんなことまでしちゃうのか…」と愕然とする感じは、並大抵のことをやっても仕方がない、やるなら徹底的にやろう、と決意した当人の凄さが現れている。そして通して聴いていると、意外とストロークスの現状最新作『Comedown Machine』で見事に開花した彼のロボットチック・フューチャリスティック(?)なメロディセンスが随所に散りばめられている。音もメロディも非常にメタリックで即物的な質感を帯びた今作は、ナチュラルなフィーリングをより極めて超然的な作品となった森は生きている『グッド・ナイト』と好対照を成すのではないか、と個人的に考えている。

22. V For Vaselines/The Vaselines
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1. High Tide Low Tide 2. The Lonely L.P. 3. Inky Lies 4. Crazy Lady
5. Single Spies 6. One Lost Year 7. Earth Is Speeding 8. False Heaven
9. Number One Crush 10. Last Half Hour

 ジュリアンが計算の天才ならこっちは天然の天才、と言うと言いすぎなきもする、近年活動を再開したグラスゴー/アノラックポップ文化のレジェンドたる彼ら。まさかこんなに早く新作が出ると思わなかった…「えっもう出しちゃうの?」って感じだった。
 そんな早いペースで出された今作…ってモロにパワーポップじゃねえか!キラキラギターポップ感はどこいった…と思ったけど元々そんなキラキラでもないし、クランチだったギターをもっと歪ませただけかもだけど。そんな風に歪ませたギターをペターっとしたリズムと一緒にドライブさせやや投げやり気味にポップなメロディをポンポンと吐き出す様は、はっきり言って殆どthe pillowsのサウンドじゃんか!何でだよ、おい!(2曲目のイントロはそういう意味で必聴)。
 そんな大いに気になる点をうっちゃって聴くと、今作も実にいいポップソング集になっている。ユージンの低いのにやる気の見えない声とフランシスの可愛いわけでもないけど女の情念みたいなのも皆無な声の掛け合いは、やっぱ他には代えがたいものがある。よく聴くと色々やってるギター、いいところに入ってくるリフやフィルイン等々、素晴らしく理想的なギターロックっぷりは去年のBest Coastの作品とも共通するのかもと思った(ヴァセリンズの方がより単調単純かもだけど)。

21. Here And Nowhere Else/Cloud Nothings
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1. Now Hear In 2. Quieter Today 3. Psychic Trauma 4. Just See Fear
5. Giving Into Seeing 6. No Thoughts 7. Pattern Walks 8. I'm Not Part of Me

 すっかりエコー重視なドリーミーなサウンドが蔓延してああこれはピッチフォーク病もいよいよですねという感じだったUSインディにガレージ・オルタナの復権掲げた訳でもないだろうがそんな感じで現れたCloud Nothingsアルビニプロデュースで話題になった前作から、アルビニとついでにリードギターも抜けた状態で作られた今作。8曲30分、全部疾走曲という潔さが凄くて、思わず勢いで騙されてしまうだけのものがある。
 いやいや騙されないぞ、こいつら一枚目もそんなんだったじゃないか、と思い直して聴くと、しかし録音環境が全然違うこともあるだろうが、前作のサウンドの鈍重さを引き継いだ上で、上手く曲の勢いと結びつけている。特にドラムの頑張りが相当効いてる。オープンシンバルの場面とフロアタムの場面とのくっきりした使い分けはシンプルに曲の構成の妙をサポートし、緩急をがっしりコントロールしている。
 ギターの音は相変わらずゴミのような歪み方。上で取り上げたジュリアンカサブランカスの作品がゴミを集めまくって爆弾を作ったような作品なら、Cloud Nothingsはゴミのようなサウンドとシャウトなによりスピリットだけでどこまで格好よさ・ロマンチックさを作れるかという挑戦のようだ。単体だとゴミみたいに思える要素が合わさり、見事に反転して、爽快さになって駆け抜けていく、ディラン・バルディが持つのはそういう才能だと思う。それはクソみたいな男の子たちのロマンそのものだ。

20. Post Modern Team/POST MODERN TEAM
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1. Never Let You Down 2. Someday 3. Heartbreak 4. Nite Life Lounge
5. Fade Away 6. She Does Something To Me 7. In The City 8. By The Sea
9. Forget Me Not 10. Betterdays

 最近東京インディーと並べる言葉として、関西インディーなる単語をちらほら聞くようになった。挙がってくるバンドの名前を見てると、英詩で歌うギターポップバンドが多いことに気づく。なんでやろ?その程度の理解で大阪某所で手にした今作は、非常に“当たり”だった。
 「あっこれはいいイントロや!」って思う1曲目から3曲目までの連続するような流れで一気に引き込まれる。この手のバンドにしてはアルペジオや繊細な単音フレーズではなくカッティング気味で大味なギタープレイで引っ張っていくのがかっこいい。4曲目はモロスミスだ〜けど声の重ね具合とかにやはり00年代後半のUSインディーを通過したぼかした処理が効いていてこれは現代の作品だって思う。5曲目は中期TFCみたいだ〜6曲目は…といった具合に、いろんなところからエッセンスを頂戴しているんだろうけれど、それに不思議と統一感があって、透明感とクールさがあってすごくいい。まだ聴けてないけど、関西じゃないけどHotel MexicoやMoscow Clubもこんな感じに素敵なんだろうか。
 あと、一曲リフが自分のと被りそうな事案が…やっぱみんな思いつくのかあれ。

19. 遠泳/渚にて
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1. 遠泳 2. まだ夜 3. 残像 4. ことりのゆめ 5. そっくりモグラ 6. 水草 7. フジオ
8. 遠雷 9. けものみち 10. 海にゆく 11. あいのほとり 12. 暗く青い星 13. ひかる ふたつ

 前作『よすが』から実に6年ぶりとなる渚にての新作は、本人がHPで散々自画自賛していた通り(柴山さんすごい自分を褒めまくる人ではあるけど)、70年代ロック的ないなたい質感を完全に我がものとしたサウンドが展開される。ギターの響きのクリアさ、スネアのデッドな鳴りとハットの硬質な響き。相当リハーサルを積んだとのことだけど、こんなサウンドでほわーんとした曲を演奏できたら気持ちいいだろうなあ。
 そんなゴキゲンなサウンドを活かして伸び伸びやっているのは柴山(男性ボーカル)曲。こんな王道日本語ロックな感じだったっけ?というどっしりとした曲を量産している。隠し味のノイズ等も要所要所に忍び込ませてあり楽しめる。一方、渚にてもう一方の魅力である竹田氏(女性ボーカル)曲の方はいつものトロトロ溶け出してしまいそうなスロー白痴ポップスを展開。こっちサイドは『予感』『よすが』という強烈なのがあった前作の方がいいかも。いつになく軽快なサウンドに竹田ボーカルが乗る6曲目は新鮮。
 遠泳、ということで、アルバムを通して、飄々とした土っぽさとサラサラとした水っぽさのない交ぜになった不思議な浮遊感と覚醒感が続く。本人が相当曲や音に満足したためか又はリリースのスパンが開いたためか、13曲70分の大作、聴く方も遠泳。

18. Nancy/浅井健一
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1. Sky Diving Baby 2. Stinger 3. Parmesan Cheese 4. 紙飛行機 5. Johnny Love
6. Papyrus 7. 桜 8. 僕は何だろう 9. 君をさがす 10. ラビット帽 11. ハラピニオ

 近年は一年に一作ペースで作品のリリースをしている浅井健一の今年の作品は去年に引き続きソロ。ベンジー印のロックンロールとSHERBETS的メランコリーナンバーが半々くらいだった前作を経て、今作は曲もサウンドも殆どSHERBETSじゃないか(SHERBETSのキーボード福士さんが全面的に参加しているのも大きいが)…というシックでメランコリックな具合、ではあるがソロということで浅井個人のコントロール権が大きいためか、どの曲も聴きやすいサイズ・ポップな工夫が効いている。
 そんなどちらかと言えば静かめな楽曲の中で浅井の世界観はよりダークな方向に展開している。マイナー調な楽曲に乗る歌詞は破滅の予感、又はSF的な破滅そのものを匂わせる要素が増え、アルバム最後に収録された唯一メジャー調な『ハラピニオ』においては遂に滅亡後のかすかな希望と、それがすぐにでも潰えそうな絶望的な世界観が描かれる。詩人浅井健一の世界観はSHERBETSの『FREE』以降どんどん悲しみや寂しさを追求していっていると感じるが、今作はその側面が全面的に展開される、キャリアでも最も哀しい作品ではなかろうか。
 といった内容のことを某所でレビュー書いたけれども、サイト移転の際に消滅したままになっている。あとソロじゃなくてSHERBETS名義でのリリースだったら、たとえトラックが全く同一でももっと順位上にしたかもしんない…。

17. Paraiso/yogee new waves
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1. Megumi no Amen 2. Summer 3. Climax Night 4. Good Bye
5. Hello Ethiopia 6. Earth 7. Listen 8. Dreamin’ Boy 9. Camp

 今年のインディーシーンの新人王的存在として多くの注目を集めている東京の4人組な彼ら。1stアルバムとは思えない手慣れたサウンド・グルーヴの完成度の高さ、ソングライティングの水準の高さとメロウな視線の統一性など、初っぱなからすごい完成度だと思う。あと歌がビックリするくらい踊ってばかりの国に似てる(実際踊ってばかりの国からプッシュを受けていたりするが)。
 繊細さとファンクネスを有したギターサウンドのチクチクしそうでしないしなやかな音がリードするサウンドは現実の苦味を反映した最新型のシティポップとして広く宣伝されている。先行リリースの『Climax Night』で見せた哀愁と憧憬が交差する夜の光景は、フィッシュマンズ『ナイトクルージング』をより現代的・現実的なポップスに寄せたような気分がする。足取りは軽快に、サウンドはメロウに、歌はとぼけながらも哀しげに、ノスタルジーとファンタジーは現在を淡く濡らす程度に垂らす。美しい涎のような音楽。

16. シリウス/スカート
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side A 1. シリウス 2. どうしてこんなに晴れているのに
side B 1. タタノアドラ 2. 回想

 東京インディーの4番打者こと、当代随一のポップス研究家・澤部渡率いるバンドの、夏に出たミニアルバム(ミニとフルの中間くらいの分量?)の余韻覚めやらぬうちに、今年の終わるまでに間に合うようにリリースされた今作。レコード限定でのリリースという思い切った仕様にはマンガ家・町田洋によるあまりにも素晴らし過ぎるジャケットイラストを最も素晴らしい形でしか世に出したくなかったのでは、と思うところ。
 某所にてこのようにレビューを投稿した。今作がレコードのみのリリースだったためにターンテーブルを購入する羽目になり、そしていよいよレコードを買うようになって来年の出費が怖くなってきた、悪魔のささやきめいた一枚。

後編(2/2)に続きます。。。