ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

(翻訳)『Lone Star』Sun Kil Moon

Common As Light and Love Are Red Valleys of Blood

Common As Light and Love Are Red Valleys of Blood

 

上記アルバム歌詞精読の5曲目。disk1の5曲目になります。

この曲は音楽的にも、このアルバムで大好きな曲のひとつで、ダークでドープなベースとトラッシュトーキングが、時々シュールなリフレインに切り替わったと思ったら、パッとアコギの軽やかな、カントリー調な演奏だけの中をマークの半ば酔っぱらったようなトーキングがヨレヨレ流れていく。

歌詞的には皮肉屋・暴言メーカーとしてのマーク大爆発な内容で、Fワード吐きまくり・しかもFワードでヘンテコなリフレインまで始めちゃう始末で、トドメに遂に始まったトランプ批判で、リズミカルに吐き出される悪態の数々に思わず笑ってしまう*1。内容自体はトランスジェンダー差別に対する抗議とかも入ってるが、どこか軽妙な感じがあるのが救われる*2。実際、Googleの自動翻訳を手直しする作業がこれまでで一番テンポよく進んだ。突然歌詞でこの曲の曲調自体に言及しだすのはメタ的手法で、しかもどこか自画自賛風なので爆笑しました。マークのユーモアセンスとバランス感覚、正義の感覚、そして虚無感に惚れ直しました。

あと思ったのが、この曲では3つの「田舎者」に関する単語が出てくるけれど、それらに対するマークの思い入れというか、田舎という概念そのもに対する愛憎の感じが少し歌詞に出てる。その田舎者発言の時の、軽快なアコギの演奏とそのちょっとの切なさが、そういう思いが滲んでるのかも、とか少し思っちゃった。

※アコギのみ演奏のセクションを引用扱いにしてます。コントラストを付けたかった。

 

 

ローンスターの下を、岩や黒光りする水辺に沿って歩いてる。
桟橋の先端には手を合わせて祈っている女性がひとりいて、僕は彼女を残して立ち去った。ちっともゆったりできる空気じゃなかったから。
我々皆の中にある、この痛み、自分たちを慈しむ。
はいブー、クソ#$%&のブー。
いやあ、ホント思いますけど&%$#@ですね。
お前らそんな綺麗事ばっかりで生きてないものね。

 

世界には沢山、子どもを失くした人たちがいる。深く悲しんでいる。
だからそのクソみたいな「私は哀れな被害者なんです」みたいなのを辞めろ。
その桟橋の女性は何か重たい事情で傷ついていた。涙が目から滴っていた。
僕は49歳なので、49歳の人間としてあなたに教えて差し上げよう。
僕の直感を信じたまえ、親愛なるあなたよ。
僕は彼女に干渉しなかったし、何も言わずにいた。
それで、向こうから見えない近くで1時間半ほど監視し、彼女が身を投げないのを確認したんだ。

 

カークィネス橋を駆け巡っていく自動車の群れ。
煙突が垂れ流すクソ。線路を下っていく電車。散歩道のスターバックス
カークィネス橋を駆け巡っていく自動車の群れ。
煙突が垂れ流すクソ。線路を下っていく電車。散歩道のスターバックス

 

ピクニックテーブルのそばにサボテンを据える。
テーブルで灰色の子猫が可愛く眠る。
あと、オレンジ色したカリフォルニアポピー
ユーカリの木の幸せ溢れる香りを嗅ぐ。

 

セブンイレブンを通り過ぎてタコス屋のトラックに向かった。
サンシャインカリフォルニア、幸福なことに雨もなく。
お気に入りの猫を2匹飼って、普段いる場所にいてとっても可愛い。
とっても可愛い、顔から食べちゃいたいくらい。

 

この曲のこの部分はキャメロン・クロウの映画のスコアみたいに聴こえる。
又はジミー・ペイジに影響を受けた風、もしくはナンシー・ウィルソンに。
僕が心から崇拝する3人の崇高なアーティスト達*3

 

12月のある日、クリスマスツリーの下。
ハート*4の『ドリームボート・アニー』そして『レッド・ツェペリンⅢ』、
そうあるべきだ、美しい世界はそうあるべきなんだ。

 

テキサス州のとある街で僕は教会長に演奏の禁止を言い渡された。
僕を性差別主義者だと看做したことからそうなったみたいだ。
聞いてくれよ、テキサス州サンアントニオ、僕は今でも大好きなんだよ。
ジャック・ジョンソン*5の生まれた場所だし、牧畜の歴史には敬意を表するし、最高なバーベキューがあるし。
サンアントニオから僕を締め出すかい?いや、そんなことはしないね。
戻って、ショウをして、そしてロザリオスカフェでタコスでも食べよう。

 

そしてノースカロライナ州、君に対して申し上げよう。
繰り返し言うけれど、君はずば抜けているんだよ。
ヒルビリー*6各州のなかでも最も美しい土地だ。
しかし、トランスジェンダーのバスルームの使用を制限しているんだってね。
どんなクソ了見なんだい?クソ立派なド田舎根性*7だね。
来年チャペルヒルでショウをする予定だよ。
トランスジェンダーの皆を招待して、無料で入れるようにするんだ。
そして会場では、「かつて女の子だった」人は男性用のバスルームが使えるようにする。
「かつて男の子だった」人は女性用のバスルームが使えるようにする。
本当にどういうクソご判断なのかね。
トイレを自由に使う程度の尊厳が彼らに無い訳がないだろうに。

 

頭の中にクソでもお詰まりでしょうかクソ野郎。
頭の中にクソでもお詰まりでしょうかクソ野郎。
頭の中にクソでもお詰まりでしょうかクソ野郎。
頭の中にクソでもお詰まりでしょうかクソ野郎。
頭の中にクソでもお詰まりでしょうかクソ野郎。
頭の中にクソでもお詰まりでしょうかクソ野郎。
頭の中にクソでもお詰まりでしょうかクソ野郎。
頭の中にクソでもお詰まりでしょうかクソ野郎。

 

そこには何人か友達がいる。田舎者でも気のいい奴らだ。
ビリーにチャッキー、キミー、ボビー、そしてベッキー
彼らはああいうトランスジェンダー法を支持しない。
彼らはアシュヴィルからチャペルヒルまで僕のショウに来てくれるだろう。
僕だってオハイオ出身、結局は田舎者なんだ。
気軽に電話してくれよ、そんなことで別に怒りはしないんだ。
ヒックとヒルビリー*8、どっちも田舎者だし、仲良くやっていこうな。
レッドネック達よ、トランスジェンダー達と矛を収めて、強くなろう。
レッドネック達よ、トランスジェンダー達と矛を収めて、強くなろう。
レッドネック達よ、トランスジェンダー達と矛を収めて、強くなろう。

 

レッドネック達、元気を出してトランスジェンダー法改正、しよ。
レッドネック達、元気を出してトランスジェンダー法改正、しよ。
レッドネック達、元気を出してトランスジェンダー法改正、しよ。
レッドネック達、元気を出してトランスジェンダー法改正、しよ。
レッドネック達、元気を出してトランスジェンダー法改正、しよ。
レッドネック達、元気を出してトランスジェンダー法改正、しよ。
レッドネック達、元気を出してトランスジェンダー法改正、しよ。
レッドネック達、元気を出してトランスジェンダー法改正、しよ。

 

 

ドナルド・トランプが大統領になって、Facebookで、Yelpで、TV番組で非難される。
また、ツイッター、ウーバー、Googleにテレビゲーム他色々が、この国をテクノロジーの奴隷になったバカ頭の群れに変えてしまった。
我々はクソみたいなヘッドラインを求めていた、なあ、そのとおり!
インスタントな満足を求めていた、なあ、ああそのとおり!
思考停止のエンターテイメントを欲しがっていたんだ、ああ、求めてた!

 

この実にクソでアホでド低能野郎は毎日クソみたいにニュースに出るようになるし、我々はそれを望んだ訳だ。
彼は100%、寸分の漏れもなく我々が創り上げたものです。
我々が知性を乗り越えてアプリを選んだという証明です。
我々が倦怠の極みのようにインターネットに取り憑かれていることの証明。
クソ悪辣でスターリニスティックなこのスマートフォンで判断能力をグチャグチャにされた結果なんです。

 

トランプを非難する連中が座り込んでいる。
面会は出来ないけれど、そのゴミには用がある(?)。
直接的ではないにしろ、僕達はそれを見ていられない。
どれだけ我々の愚かしさが彼が候補者になるのを望んでいたか。

 

急いでスマートフォンを取り出し、ツイートを世界へ、ポン、ポン、ポン。
我々は種を蒔き、そしてそれは遂に結実した。
間違いなく、ドナルド・トランプは我々が創り上げたのです。
さあ急いで「ああ、何てことだ!」ってリアクションをすればいい。
彼が選ばれるなら、カナダのバンクーバーか、ギリシャアテネに移住しなきゃね。
ジョージ・カーリン*9がいつかの夜に言っていたね。
「アメリカン・ドリームを信じるためには、あなたたちには眠っていてもらわないとね」
だから我々はてきぱきと、ポップコーンをつかみ取り、トランプを監視しつつ、Facebookと『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』のチェックを欠かさないようにしましょうね。

 

『Lone Star』

 lyric by Mark Kozelek 翻訳:おかざきよしとも(@YstmOkzk)with Google

Lone Star

Lone Star

  • provided courtesy of iTunes

*1:ある意味笑えないが

*2:何気に自身の「老い」とか過去の思い出とかについてこの曲では全然言及していないことも、軽やかな内容に繋がってるのかも

*3:キャメロン・クロウは『あの頃ペニーレインと』の監督で、この映画に出てくるバンドのベーシストとしてマークが出演している。また劇中歌としてレッド・ツェペリンやハートの曲が使われていて、それらが纏めてここで歌詞になっているのは、どこまでマーク本人が狙って書いたのか分からないけど興味深い

*4:アンとナンシーのウィルソン姉妹が率いるアメリカのロックバンド。2013年にロックの殿堂入りを果たしている

*5:これはシンガーの方ではなく、ボクサーでこういう名前の選手がいてその人がテキサス生まれらしい。参照してる歌詞サイトの注釈にそう書いてあった

*6:「hillbilly」という単語には歴史的にいくらか侮蔑的な意味があるらしく、マークはかつてライブでこの単語を使って騒がしい観客に怒鳴り散らして炎上したことがある。こちらのブログ記事がそのことについて詳しいです。ここの段階ではまだ侮蔑的には使ってないっぽい

*7:こっちは所謂「fucking hillbilly」な用法

*8:この二つは田舎者という意味では同じだけど、対象となる地方とかの関係で微妙にニュアンスが違うようだ。すぐ後に出るレッドネックもある意味では田舎者的な意味なので、この3つの単語の比較が分かる記事が無いかと検索したけど、日本語ではいいのが見つからなかった…

*9:アメリカのコメディアン。『機関車トーマス』の米国版ナレーションから、放送禁止用語連発の社会派コントまで、という人らしい