ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

サマーソングス(??)10選

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写真は足摺岬の方にある海底館というやつです。四国の端っこにありますので皆で行こう!

 

 突然ですが夏の曲10曲を発表します。なぜ夏なのか説明していきますので、適当に読み飛ばしてください。この文章に沿って何かしても責任はとりませんしきっと取れません。よろしくお願いします。

 

1. Across The Great Divide / The Band

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 夏と言えば…そう、山登りですね!!この曲のタイトルにある「Great Divide」とは北アメリカ大陸を大きく分かつ山脈━━ロッキー山脈のことです。世界の山の中の山のひとつであろうロッキー山脈がタイトルに入ったこの歌はまさに、山登りシーズン真っ盛りな夏向きの歌です。子供ができたら川に連れてく、みたいな歌詞もありますし、なおさら夏です!

 ちなみに歌詞はこちらのブログの和訳が凄いです。

nagi1995.hatenablog.com歌詞の夏要素?そんなもん知らねえ。むしろ「収穫の名月」とかなんとか言ってるけどまあ気のせいでしょうこれは夏の曲。

 あと、こういうのんびりしたシャッフルビートの曲は夏の暇な移動時とかにのんびり聴きたい感じですね。歌詞は思いの外剣呑ですけど、The Bandの曲にはよくあること。

痛みに顔を歪ませて窓際に立つ きみの手にはピストル

モリー、きみの男がどんな気持ちでいるか分かってくれないか

 

 …今回、こういう趣旨の10選ですよろしくお願いします。

 

2. 長い休日 / カーネーション

The Very Best of CARNATION
 

 2曲目から早速youtube等の動画が無くて面食らってます。

 「長い休日」。まさにタイトルからして夏休み!楽曲も爽やかな3分ポップで非常に心地よいです。日本が誇る大御所ロックバンド・カーネンションの5人組時代最後の名曲。2000年頃の当時のコンピレーションアルバムにのみ収録されてたレア曲。上記のベスト盤に近年ようやく収録されてグッと聴きやすくなりましたがサブスクには無い模様…。

 個人的には、5人組カーネーションの特に終盤の方は日本の音楽史上でも有数の「音楽的にすごいポップソングを量産する集団」で、その限界ギリギリを超えてしまった後の爽やかさみたいなのが出たこの曲は、曲自体の良さ以上の寂しさとかさえ感じてしまって、なんともな気もしながら大好きな曲です。

ぼくの気持ちは十分に満たされないけれど

うまくきみにとどくようにボールを投げよう

 

3. Miss Misery / Elliott Smith

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 夏は暑い。正直な話エアコンのついた部屋から全然出たくないです。ずっと家に籠ってジョニーウォーカーの赤を啜るような夏休み、そんなのもアリかもしれませんね!なのでこの曲も夏の歌です。この曲のPVジャケット着てるし全然夏っぽさないな…。

 エリオット・スミス、でもアコギメインの澄んだバンドサウンドにちょっとビートルズライクなギターがへにゃっと絡むところとか夏っぽかったりしないでしょうか。もっと夏っぽい曲もあったように思います。それを踏まえても、家で呑んだくれる夏を提唱したかった。皆さん、今年の夏はジョニーウォーカーの赤で過ごしましょう!

ジョニ赤のパワーで今日1日 上手いこと誤魔化してみせるよ

毒混じりの雨を排水溝に流そう 悪いことを思いつくように

 あと「隣の部屋でテレビが壁に青い光の海を作ってる」みたいな歌詞もあるので、この曲は海の歌でもある…無理か。

 

4. 真昼の子供たち / GRAPEVINE

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 この曲はまあ夏の曲って感じが割と素でしますね。歌詞に夏っぽい語は出てこないんですけども。

 ミニマムでとっておきな構成の楽曲に、Wilcoの『Summerteeth』の時のポップさを取り出して加えて、そこにネルス・クラインっぽいギターを被せて。バインは普通に歌詞が夏の曲をたくさん持っていますが、これが一番、無限に夏な感じがするのはサウンドと歌詞の妙なのか。それこそ子供の頃の「夏休みは最強で無敵で万能になってこの世界すら変えれてしまう」みたいな無限の気持ちみたいなのを端的に示しているからなんですかね。

でかい当たりを掴んでしまった

世界を変えてしまうかもしれない

  アルバム『真昼のストレンジランド』はいつかきちんと取り上げないといけないと思ってます。バイン全曲レビュー…は始めてしまうとまたなかなか地獄そうなのでアレですが。

 

5. Prelude To 110 Or 220 Women Of The World / Jim O'Rourke

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 夏休みの旅行先のなんか田舎なところで時間があるときにゆったり聴きたいアルバムこと『Eureka』の冒頭曲。個人的な願望ですいません。でも、このアルバムのゆったりした音世界は、なんかやたら時間があってすることがなくてぼんやりただ無限に流れていく時間、みたいな感じの夏にすごく合うような気がするんですけどどうでしょうか。

 ところで、この曲の歌詞がずっと同じフレーズの繰り返しだったことに、今回こうやって取り上げようと思ってはじめて気づきました。しかしながらこの歌詞は…「淡く爽やかな少女」みたいなのを通じて夏の良さを摂取しようとする向きには若干、耳に痛い感じなのかどうなのか。

女性たちは引き受けてくれるよね

だって、お前が引き受けないと世界は終わってしまうし

それもそんな時間かけずに終わっちゃうだろうし

 今年の夏はちゃんと世界が終わらないように引き受けましょう。何を?どうやって?

 

6. Transmission / Joy Division

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 夏と言えばダンス!さあ皆、ラジオに向かってダンスしよう!

 …たとえば、砂浜で水着の男女がジョイ・ディヴィジョンで踊ってる光景を見たいかと聞かれると、非常に反応に困る気がします。むしろ、ジョイ・ディヴィジョンと夏を繋げられる想像力を持ってる人はこっそりそのアイディアを教えてほしい。

 ただ、どんなに叫んでも暴れても全然暑苦しさを感じさせない、この天然に冷淡なグルーヴ感は、案外夏に聴いたら涼が取れるかもしれません。あえてレジャーで聴くジョイ・ディヴィジョン、夏の鮮やかな光景の中のジョイ・ディヴィジョン我々が試されているのはこの飛距離を超えていくための想像力です

沈黙をよく聴いて、その沈黙を響かせよう

瞳はダークグレーで、太陽に怯えちゃってるね

夜に生きてるときなんかはいい感じで過ごせるし

五里霧中にぶっ壊されて、見通しを待ってるよ

この辺にかろうじて夏に繋げられそうな何かを感じました。

 

7. On The Beach / Neil Young

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 夏だ!ビーチに行こう!たそがれよう!な歌だと、無理に説明できないでもないのがこの曲。ニール・ヤングのある程度以上のファンがこぞって最高傑作に挙げるこの不出来な感じのアルバムは、その不出来さも含めて完璧なアルバムで、自分も死ぬほど好きなアルバムのうちの1枚です。そのタイトルトラックが、こんな重苦しくどこにも行けないような楽曲なのが本当に最高。

 この曲のいいところは、暗いばっかりでなく、ほんの一瞬、日傘仕込むかのようにやや明るいコードに移行する瞬間があること。このわずかな時間に、私たちがときに過ごす、どうしようもなく憂鬱でぼんやりして頭も身体も何も回らないような夏の日に、なんかぼんやり理由もなく一瞬救われるような感覚とか、そういうものを思い起こしたりします。もはや音楽の話をしているのか怪しくなってきましたが、でもこの曲が描き出す「暗い永遠」と「一瞬だけ現れる隙間からの光のような永遠」との対峙してる感じは、これは筆者にとっては激しく「夏」です。

この海辺で生きてきたけど、カモメにはまるで手が届かない

ラジオのインタビューに行って、マイクの前に一人でずっといた

 

8. 私の人生、人生の夏 / ピチカート・ファイヴ

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 本当に夏の曲を選んでどうする、とこの企画を作っていく途中で思いましたけど、でもこの曲の描く「やるせない夏」の感じもまた、とてもとても魅力的だったので、それにピチカート・ファイヴの最高傑作候補の一角だし、選曲しました。

 別れの後の傷心気味な女性のアンニュイな様子を描く歌詞から覗いて見えるのは、作家・小西康陽のどこまでも幸せになれない人生観、その凜とした美しさ。特にこの曲では、端正で明るくも感傷的なトラックに、最後妙にインストのセクションを長くとってしまって、最後の最後に作曲者本人のどうにもならないシャウトをどうしても入れてしまった、その謎にアンバランスな構成に、この曲を破綻させないといけないほどの謎の衝動を感じて、なんともエモくなります。「実はエモい小西康陽」とか、書けたら楽しいかしれません。小西康陽がエモいとか、もしかしたら彼の歌詞のファンの方々からしたら自明なことかもだけど。

神様が私をお試しになる 今は多分そんな時でしょう

大好きなレコードはもうしばらく聞かない

次の夏が来るまで

 

9. Over My Head / Red House Painters

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 マーク・コズレックは音楽で「永遠」を作る天才。少なくともSun Kil Moonの途中までは。最近はそういうのに興味がなかなか湧かないだけだろうか。

 この曲の永遠な感じは、すでにこのブログでこの曲の収録されたアルバムを取り上げましたので、詳細はそちらをご覧ください。

ystmokzk.hatenablog.jp しかしながら、この曲は自分、結構長い間、歌詞も夏の曲だと思ってました。出だしの歌詞が「サマードア、サン」と聴こえて、「夏の扉、太陽、かーなるほどなー永遠だなー」とか思ってたんですけど、歌詞を読んだら「Some odd door/Some blooming tree」なんですね。全然違う。英語ちゃんと聴けるようにしてこういう曲の正確な情緒を把握したいです。

時々、きみは一人になって、友達もいない

難しいね、自分が誰か理解するのも、自分のふりをするのも

マーク・コズレックの歌詞は色々とちゃんと翻訳したい感じがある。時間、時間が足りない…。

 

10. New Dawn F / WINO

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 今回の夏企画は「夏かどうか全然定かじゃない曲を適当に屁理屈こねて夏の曲ということにしよう」というものだったんですが、この曲も別に全然、歌詞を読み直しても、夏の曲ではないんだろうなあと思いました。でも、この曲のイントロ聴いてください。YouTubeの動画が消されてたり見れなかったりでアレですが。この曲の、何の音かよく分からないけど、ビリビリと薄く広がって、空に溶けていく感じ、この感じ、夏だと思いませんか

 WINOの3枚目のアルバムだけものすごく好きな筆者のような人間がバンドとしてのWINOの良さをきちんと語れる気が全然しないのですが、この曲はその3枚目の冒頭に入っています。この、一気に視界が広がっていくような感じ、何があるか分からんしむしろ何がないのか、何もないのか、その辺も分からんけど、ともかく一気に視界が開けていくあの感じ、それを強引に季節で言うならば、やはり「夏」ということになると思うんです。無限の万能感、無限の虚空、無限の忘却、それこそが夏だ!って思う人がいてもいいじゃないかと、今回そんな気持ちを胸にこの記事を書いた気がします。

すべての願いの交差する街角

留まるところなどどこにもないのさ

進むべきところもどこにもないのだろう

遠くなる空の色 傾いた太陽に

透き通った魂を 残された勇気を

信じていい 孤独を

 

 

  以上、謎な夏選曲10曲でした。良くも悪くも皆様の夏がそれぞれ皆様らしくあるよう勝手に祈っております。