ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

2019年の年間ベストアルバム30枚(part1 30→16)

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 年間ベストです。こうやってジャケットをコラした画像をサムネにした方がパッと分かる感じがするのは利点ですね。逆に、一目見てネタバレしてしまうわけですけど。

 令和になってめでたいことはそれほど多くなく、悲惨なことばかりが堰を切ったように怒涛の勢いで巻き起こる、頭の痛くなりすぎるような一年でしたが、なんとか生き延びた感じなので、そんななんとなく生き延びた中で聴いて作ったリストです。2回に分けてやっていきます。今回は前半、30位から16位まで。順位はどんくらいちゃんとしてるか不明ですが。

 

 

30. 『見っけ』スピッツ

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 やっぱスピッツなんで、今回も結構な回数聴いてて、何度も聴くとこのアルバムならではの良さみたいなのが出てくる。でも思ってしまうのは、前作『醒めない』やその後のベスト盤の新曲までの流れが良すぎた、っていうこと。スピッツについてはサブスク解禁もあって例年以上に各アルバムを自由に聴ける流れができた中で、今作の出来って彼らの作品群でも少々地味な方かなと思ってしまう。

 インディロック的な試みや魅力が中心でそれにスピッツ的な曲を充てたような感じのあった『醒めない』に比べると、こっちはより大衆的な「スピッツ節」みたいなものを中心に楽曲ができてる感じがして、シングルの『優しいあの子』とかあとシングル候補だったらしい『花と虫』とかはそういう要素がコンパクトかつ鮮やかに発揮されてる。他にはひたすらファンクなカッティングを中心にトラック作ってでも歌としてはめっちゃスピッツになってる『YM71D』も良い。ねっとりと後期The beatles的なロックな『ありがとさん』や、『まがった僕のしっぽ』のずけえ無理やりな展開も面白い。反面、パワーポップ路線が単調というか、ネタ切れ感を覚えてしまったり。

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29. 『This Is Not A Safe Place』RIDE

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 イギリスのシューゲイザーバンドの大御所であるところのRIDE。「再結成した大御所」として考えると前作から結構スパン短めなリリースになった今作で感じるのが、RIDEは別に自分たちを大御所とかそんな勿体ぶったことしようとか全然考えてないんだな、ただ現代を生きるロックバンドとして、自分たちの魅力をある程度の新鮮さでもって自然に出していきたい、そんな「僕たち普通のバンドです」みたいな感じに頼もしさを覚える。

 それを可能にしている彼らの武器が「RIDEのフォローワーのインディバンドがしてそうなキラキラとして薄らシューゲなサウンドの採用」と「昔からの魅力であるところの2人のフロントマンのボーカルのミックス具合」であって、その2つでのゴリ押しで前作『Weather Diaries』からまた1枚ある程度新鮮なアルバムを作れるくらいにはソングライティングもアレンジのアイディアも枯れてない。『Clouds of Saint Marie』のキラキラと舞い上がるようなサウンドは再結成後の彼らのサウンドキャラクターが一際華麗に昇華されたものだと思った。

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28. 『Anak Ko』Jay Som

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 サンフランシスコを拠点とする女性SSWの2枚目か3枚目のフルアルバム。「めっちゃ90年代的なサウンド」ってことでtwitterで自分が見える範囲では盛り上がってたけど、しかしながら90年代サウンドを自然にやってる感じは前作とかの方がずっと強く、それに比べて今作は「90年代的オルタナサウンド」を相当ソリッドに、神経質に取捨選択してトラックを構築してる印象。つまり、朗らかなフォーキーさはかなり抑えられていて、それよりもメカニカルで淡々とした調子がシャープに光る。冒頭『If You Want It』からしてかなり冷淡にSonic Youthを解釈したようなトラックの作りが格好いい。牧歌的にのんびりした調子(個人的に好みな感じ)の『Nighttime Drive』も少し調律の歪んだピアノの響きといい終盤次第にストリングスが入って妙に壮大になる展開といい、色々仕掛けが効いてて楽しい。

 今年も何人もの女性SSWがインディロック界隈のファンの間で名前が挙がっていて、宅録DTM環境の充実と男性的なインディロックの様々な凋落とかそういうので女性SSWが目立つようになってるのかなと思ったりするけど、その中ではこの人のトラックメイカーとしてのアイディアの多彩さとアルバム通じての雰囲気の通り方が好きだったです。

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27. 『I Also Want To Die In New Orleans』Sun Kil Moon

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 スロウコアの立役者Mark KozelekのソロプロジェクトのSun Kil Moonの今年しれっとリリースされてた作品。1曲目から12分超え、2曲目は15分超え、というかそもそも7曲しかないのに収録時間が90分弱という、5曲は10分超えの曲で、うち1曲は23分超えという、もうやりたい放題。

 作風は、『Benji』より後の「ミニマルに展開するトラックの上でひたすらMark Kozelekが説法し続けるスタイル」が今回も踏襲されていて、やっぱ人には勧めにくい感じ。歌詞を聞き取れればより楽しめるだろう世界観もなかなかそんな時間取れないし、彼の作品を満足に堪能するには自分の英語力が足りない…。しかし今作の冷たいアルペジオ等が多用されたバンドサウンドの感じには、そういえばこの人スロウコア出自の人だったなあ、ということにふと思い当たったり。トラックの傾向的には『Benji』より後の作品ではかなり好きな、というかフラットに色々手の込んだトラックだと思うし、なのでこれにもっと普通の歌が乗ってそして尺が短ければ…とは思ってしまう。今作だと『Couch Potato』あたりに元来のメロディセンスの面影を感じたり。けれどもそんなファンの身勝手な願望など少しも気にせずに、彼は作品を作り続けるんだろうな。そろそろ、1トラック40分の作品とか出しそう。

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26. 『Jamie』Brittany Howard

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 Alabama ShakesのフロントマンであるBrittany Howardのソロアルバム。あの大注目された『Sound & Color』は今調べたら2015年リリースで、もうそんなに経つんだなあ。

 サウンド的には、やはり『Sound & Color』で見せた類の「オーソドックスにロックな音出してるだけなはずなのになんかミックスとかのせいで鳴りが凄い」(語彙力)的なものがより推し進められて、そして楽曲は一気にファンクとかR&Bとかの方向にグッと踏み込んだものになっている。『Sound & Color』のいい感じの大味さとかカントリーフィーリングとか痛快さは感じにくく、もっとブラックミュージック的なスウィートネスとか、ムードとかが強い。ただ、それでもトラックをあくまで生楽器の演奏で作り、そして相変わらずの異次元ミックスで強烈にぶちまけるところは、彼女の人力でブラックミュージックをバグらせたみたいな感触がして、細かく見ていけば相当面白そうだなあと思うことしきり。やっぱこの人の録音の仕方はいまだに新しいんだなあと。

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25. 『ALL THE LIGHT』GRAPEVINE

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 GRAPEVINEは本当によく働く日本のロックバンドだと思う。もう全然日本のロック界隈で大御所だよなあと思うけれど、今回は1年半ぶりの新譜。フルアルバムとしては通算16枚目になるらしい。

 今作の特徴として、プロデューサーの意向をかなり重視したアルバムとのことで、特にボーカルの田中和将の存在感が強い傾向にある。リード曲『Alright』は田中作曲でぶっきらぼうな楽曲を豪華なブラスセクションで彩る力技を見せ、またもうひとつのリード曲『すべてのありふれた光』では久々にウェットな歌ものバイン全開で、PVでも田中のくたびれたイケメン感が前面に出されている。他にもプロデューサーの要請で2曲を田中が書き下ろしてたりで、相当に田中重視な作品に仕上がっている。あくまで本人主導ではなくプロデューサーの意向なのが彼ららしいけど。

 一方で、鉄壁のサポートメンバーが参加していないことが多い作品でもあり、そういう方向でマンネリ防止を行なっており、近年の作品と傾向の違う楽曲が散見されるけれども、逆に『TWANGS』以降のオルタナカントリー的・Wilco的アプローチは後退気味で、割とウェットな作風かも。終盤の『Era』はそんな今作にあって唯一のWilco路線な楽曲で、やっぱ自分はこういうのが好きだな、と思ってしまう。

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24. 『(Same Title)』Better Oblivion Community Center

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 やたら長えユニット名だけど、新進の女性SSWのPhoebe Bridgersと、Bright Eyes で知られるConor Oberstの師弟コンビで組まれたユニットらしい。

 聴いてて思ったのは、今作にPhoebe Bridgersのアルバムにあるような繊細さ・儚さ・スロウコアさを見いだすのは難しいだろうということ。実にアメリカンロックなんだもの。というかConor Oberstのソロに全編Phoebe Bridgersがユニゾンで歌うだけの作品なんじゃないのか実は、みたいなことも思ったりした。でも、その「だけ」の作品が悪い作品になることも無いわけで、実にしみじみとしたアメリカの片田舎の土の感じがする楽曲を男女ユニゾンで歌っていく光景はなかなかに理想的に牧歌的で、特にリード曲『Dylan Thomas』のポップでキャッチーなフォークロックは純粋に楽しい。ギターソロの力強さで爆笑してしまう。でもその後ブレイクしてPhoebeのボーカルが強調されるところはとてもキャッチー。

 今作での彼女の思い切り歌い飛ばす様を聴くとPhoebeソロの雰囲気が恋しくなったりもするけれど、ソロはまたああいう感じでやるとして、こっちはこっちで風通しのいい感じがかなり好みなので、両立して続けていってほしい。

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23. 『Shephered in a Sheepskin Vest』Bill Callahan

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 Bill CallahanはかつてSmogというローファイ/スロウコアバンドで知られた人だったと思うけど、いつの間にかこんな激渋フォークシンガーになってたのか。今作はそれこそまるでNick Drakeが自殺せずに作品作り続けてたら似たようなのが出てきそうな感じのする、のんびりとしながらもスモーキーな苦みや皺の重みを感じさせるような、どこまでもアコースティックな作品。そして、Bill Callahanの低音の効いた渋ボーカルの存在感がそれだけでどの楽曲にも深い陰影を付加している。「羊の皮のベストを纏う羊飼い」という不条理が示されたアルバムタイトルと同様に歌の内容は捻くれ倒した渋みのあるものになっているようであり、それをこのひたすらに淡々と繊細である歌心で歌い、アコースティックギターの弦を振動させて作るその雰囲気でもって表現すること、その強度が非常に強い。

 昨今の40分前後の尺のアルバムが世の主流になりつつある風潮など知らんとばかりに、20曲60分越えをずっとこの淡々としたフォークで紡いでいく。この作品を満足に聴き通せるシチュエーションってなかなか無い(これだから生活ってやつは)気がするけど、でもこの作品を十全に味わうための1時間を日常のどこかで用意できれば、それはある種の尊い豊かさのように感じる。“芳醇”という質感は確かにあるんだと思う。

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22. 『HAO』NYAI

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 NYAIという福岡市のインディロックバンドは、というか普通に知り合いで、なので特設ページに掲載するレビューを書いたりもしたし、こうやってランクに入れるのは気恥ずかしい感じもするけども、でも今作もいい作品だった。しかもなんか、タワレコメンに選ばれて、レーベルの契約も結ばれて、正直バズってきてて、知り合いからこういう人が出てくるのは人生でも初のことなので、色々と不思議な感じになってきている。

 前作では男女ボーカルを活かしたひたすら切れ味のいいパワーポップの連発で魅せたところ、今作はそういう要素を残しつつも、より曲のBPMを落としたものがメインになった感じがあって、多彩。特に中盤から出てくる空気感のあるフォーキーな楽曲群が印象的で、末期の頃のスーパーカーのシングルB面曲のあのぼんやりとしたフィーリングをよりインディーロックに落とし込んだ、絶妙な空気感があってとても良い。シンセの反復がセンチな『Ghostly turn』は名曲。そして、そういう要素とは全然関係なく、王道ど真ん中を撃ち抜く必殺のエモトラック『Yumeshibai』の存在感。

 メンバーの仕事の関係とかもあってあまりたくさんライブができるバンドではないらしいけど、でもとてもいいロックバンドなんで、近くの街に来たらぜひ見にいってほしいです。自分も先日12月29日のライブを観てきて、めっちゃ良くて、それでこのランキングの順位を4つも上げた。あとPVとかも含めて全て自分で製作してるのほんとすごい。来年早々にシングルのリリースもアナウンスされていて、すごい。

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21. 『ANGELS』THE NOVEMBERS

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 THE NOVEMBERSもまたコンスタントに作品を量産し続けているバンドで、正直自分の趣味の範疇から微妙に外れたバンドだったけど、でも名作として誉れ高い今作は、さすがにその思い切りの良さと完成度にはとても魅力があった。

 シューゲイザーロックバンドだと彼らのことを認識してたけど、今作では殆どシューゲ要素は出てこず、むしろインダストリアルロックとか、ニューウェーブサウンドとかそっちの方に全力で傾倒して、なんならトラップのリズムも採用したりなんかして、ともかくそのアグレッシブな姿勢と、そしてそれが散漫にならず、ひとつの作品としてしっかりと収集つけたその手腕が非常に鮮やか。V系的なノリを上手に凶暴なトラックに転化していて、混濁と混沌と狂乱にあふれた中盤を経て、彼らの楽曲でもとりわけジェントルでポップなムードにあふれた『Close To Me』に収束していく様はその動と静の極端さの割にとても自然で可憐だし、そこからの最後アルバムタイトル曲でとっておきの激粗でかつ神々しいシューゲイズを見せる展開は見事としか言いようがない。

 どうも所属レーベルだったホステスが死に体なのか、年末からずっとサブスクが死んだ状態になっているけど、その状況にも果敢に対応しかつ新作の準備をしているという彼らの活動スタンスは、日本のロックにおける貴重な懸命さなんだと思う。意外とお茶目なtwitterのアカウントも混みで、ここにきて自分もようやく彼らのことが気になってきた。

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20. 『HOCHONO HOUSE』細野晴臣

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 活動50周年記念イヤーとのことで、本作製作当時にして実に71歳の日本音楽会最大級の大物・細野晴臣その人が作った作品が、自身の過去の名作『HOSONO HOUSE』のリメイク、それも完全宅録の一人製作と聞いてすごく驚いた。先行リリースされた『薔薇と野獣』の時点で「えっなにこれは」ってなったっけ。それにしてもインタビューとか読むと、細野さん本人の『HOSONO HOUSE』に対する思い入れのなさにまた驚かされる。というか細野さんクラスもDTMで作品作るという、その世界の潮流への乗っかり方がすごい。

 隠して出来上がった作品がまた、原作のいなたさとかなり趣を異にする、楽曲によっては下手すればアンビエントR&Bにも片足突っ込んだような作りであることに驚く。特に『恋は桃色』のポコポコしたアレンジには衝撃を受けた。確かに歌の強度は細野曲でも最強クラスだけど、でもそれを殆ど崩壊寸前まで再構築してしまうその腕力がすごい。反面、もうひとつの名曲『終わりの季節』がインスト化してたのにはずっ転けたけど。というか、楽曲自体が元々細野楽曲でもとりわけいなたい楽曲群なのに、それに正反対のアプローチを仕掛けていく様子がスリリングである。

 …などと、どうしても「原作との比較と細野さんのDTMの様子を楽しむ」という方向に今作への見方が偏ってしまうのが、今作の難しいところ。もっと単体の作品として見るべきなんだろうけれど、でもそれがとても困難になるくらいには、原作は「歴史」になりすぎてしまったし今作もまたアクロバティックすぎる。あと、前作『Vu Jà Dé』の時に「これが最後の作品かも…?」みたいなことを言ってしまって大変失礼しました。こんなもんが出てくるとか思わんよ…インタビュー見る限り、宅録機材はむしろ今作製作終了後にある程度満足いくまで充実したらしいから、また宅録細野作品が聞けそうなのか。なんとも贅沢な時代だ

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19. 『Hyperspace』Beck

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 USオルタナが生んだポップスターことBeckの、こんなちょっとふざけ感あるレトロフューチャーな感じのジャケットに反して、まさかの内省的な作品が出てきた。

 全編Pharrell Williamsとのコラボで作られたという作品は随所に実に今風なトラックの仕掛けが施されているけれど、今作がいいのは、それがあくまでBeckの曖昧でふんわりした楽曲の雰囲気を活かす方向に全て向かっていること。前半は割と軽薄なポップスター感のある『Saw Lightning』とか、なんか妙にU2っぽい壮大さが出てるかもな『Die Waiting』とか彩りある感じもするけども、特にアルバム後半はスペイシーな楽曲が多くて、しかしそのスペイシーさがポップさよりもいい意味でのナイーヴさに繋がっていく、そのスムーズな感じがとても冴えてる。

 今風なトラックの仕掛け(シンセとかトラップのリズムとか)の横で時々アコギとかのフィジカルな楽器が同じ存在感で鳴ってたりもあって、やはり今作はBeckのSSWとしての側面を重視した作品だなあと思う。言ってみれば今作は「Pharrell Williamsを招いて今のテクノロジーも使って作り上げたもうひとつの『Sea Change』」みたいな感じというか。このジャケットでそんな『Sea Change』みたいな作品が来るとか思わんかったけどさ。

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18. 『uknowhatimsaying?』Danny Brown

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 ヒップホップ音痴な自分でも聞けるヒップホップが多少あって、Danny Brownはそのひとりで非常にありがたい。ジャケからしてバグってた前作『Atrocity Exhibition』でのひたすら変なサウンドが連発されるトラックのインパクトは強くて、それで今回もまた、ジャケットが変というかなんかコンピュータウイルスかな的なバグり方をしていて、やっぱ全然正統派ラッパーじゃないなこの人、だから自分みたいなのでも好きになれるのかもな、とか思った。

 作品自体も、1曲3分前後のトラックにどれもクセばかり、下手すればクセしかないんじゃないか?みたいなサウンドとフロウが畳み掛けてくる作風は今回も健在。11曲33分という手頃なサイズ感で過激なユーモアと毒気に満ちたサウンドが転げ回っていくのは刺激的で楽しい。ポップな装いの『Best Life』の軽妙な感じはそんな中で非常に抜けのいいアクセントになってる。ラップの内容は正直よくわからないけど、でもヘンテコなライムとサウンドだけでスッキリ聴けるのは、ほんとありがたい。

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17. 『エアにに』長谷川白紙

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 日本で新世代SSWの一群が最近評判になってきていて、崎山蒼志とか君島大空とか諭吉佳作/menとかそういった人たち、彼らは今20代になったくらいの若い方々で、そういった一群の中でもとりわけ今年騒がれ倒したのが弱冠20歳の長谷川白紙の本作だろう。まずアルバムタイトルからして普通の文脈とは外れているし、それは曲名等にも潜んでいる。で、再生して、曲の作り方にしろサウンドにしろもう、高密度でぶっ飛んでいて圧倒されてしまうという。

 広範なジャズ等に関する知識と技術に裏打ちされたコードやビートの発想と、ニコニコ動画ボーカロイド等での高速・高密度なオタクカルチャーの交差点で盛大にド派手に鮮烈に事故ってる音楽、なんだろうなあ一応これは。こういう説明は何か分かるようでその実何も分からない。物凄いグリッチ感で突き進む超高速ジャズ『怖いところ』とか最初聴いた時、才能が直接音になって叩きつけられるようで、謎にドン引きしてしまった。高速ビートの叩き込み方はむしろドリルンベース的でさえあり、そうなると比較対象はAphex Twinとかにもなってくるし、ともかく捉えどころのない、物凄い才能であることは間違いない。『悪魔』とかに至っては最早「コーネリアスの先の音楽」みたいな抽象的具合さえあってすげえ…と思うとまさかの帯の推薦文がコーネリアスという仕掛け。

 これだけ高次元な音楽は正直、自分は消化不良を起こす部分も大いにあって、すげえのは分かるけどもちょっと着いていけない、置いてけぼりにされてしまうようにも感じてしまったりして。でもそれでも『蕊のパーティ』とかのゆったりとズレた感じや『ニュートラル』のスタンダードに小洒落た作りなどの素晴らしさは十分に理解できる。自分の欲を言っても仕方ないけど、こういう高速じゃない曲だけで作品作ってくれたら本当に無茶苦茶好きになりそう。でもあの超高速で置き去りにされる感覚も、それはそれで気持ちいいかもしれない。

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16. 『So kakkoii 宇宙』小沢健二

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 上の『エアにに』とまさかの同日リリースで、かつ帯にコーネリアスが出てきたことで急に小沢vs小山田の構図が2019年の日本に浮上してきたことは歴史の皮肉と言わざるを得ないし、今作と『エアにに』の比較は古い世代と新世代との対比のようにも思われてなんともな状況になったりして、さらにややこしいのが、かの渋谷系のプリンス・小沢健二さん本人のtwitterの存在で…単刀直入に、twitterはやめてほしい…。

 いくらtwitterで排外主義的なことを言ってても、作品は良かったんだと、そういうことを書くために今、勇気と、それ以上の不安とを胸に抱えてこの文章を書いている。正直、今作だってシングルとそのカップリング、及びライブ盤で発表済みの曲が半数以上を占めてて、まともな新曲が少ないということでも十分に批判されうるし、息子ラブすぎるジャケットもなんともだし、アルバムタイトルも「おおっ…」って後ずさりしたくなるやつだし、何よりもずっと音楽活動を休んでてなかなか新曲出さなかった人がこのアルバムの冒頭で「全力疾走してきたよね」と歌うあたりで「は?」みたいなのがピークに達してしまう。

 けど、でも、『フクロウの声が聞こえる』の自身のバンドメンバーでの再録は、上記のようなことを一切無視してでも本当に素晴らしいと言いたい。曲自体は長谷川白紙と比べたら遥かにべったりとした歌ものなのに、でもよく聴くと、なんでそうなるの…と思える仕掛けが沢山あって、よくこんな変な曲をセカオワは頑張ってああ仕上げたもんだよ、と思ったりしながらも、リフレインの強引さ、特にボーカルの無茶苦茶な高音の出し方や、あと感想の演奏の熱さなど、本当に見所に満ち溢れた楽曲に変貌していて、ひたすらに素晴らしくて、こうなると歌詞の聞こえ方もまた違ってくるんだなあ、この人はこの人で本気でこの歌詞のようなことを考えてるんだよなあ、と、その説得力に抗い難い魅力を感じてしまう。

 他の新曲でも『失敗がいっぱい』(これも歌詞の一部がポリコレ的にやや際どいなあ…)のソリッドなトラックに仕掛けられた変なユーモアも面白いし、そして『高い塔』は彼のSteely Dan好きが透けて見えるような、今作でももうひとつの入魂のトラックになってて、こういう曲ばっかり作ればいいのに、とか思ってしまう。

 ライブ活動の再開がもたらしたのは「現実的な肉感のある音楽」だったのかなと思ってて、同じR&B的な趣向にしても近年cero等による再評価がなされたかつての『Eclectic』のようなゴリゴリな手法は一切封印され、もっと素朴にライブで演奏できるスタイルの楽曲の作りになっている。そうなると彼のボーカルというのはいくらでも限界を抱えたものだけど、それを彼の謎の思想による意思の力が肉体的限界を超えて声を張り上げようとして無理が出るけど、彼はその酷いとも取れるボーカルを堂々と披露する。少なくない人がこれを批判してると思うけど、ぼくが思うにはこれはむしろエモいのであって、彼には意思が突き進む限りで変な歌を作って歌って、歌い続けてほしいなって思う。それは小沢健二にしかできないことだと思う。なのでtwitterなんかやめて、もっと新曲を聴かせてください…。

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 なんか小沢健二だけ妙に長くなったな…やっぱ嫌いになれねえっすよ。

 後半(15位→1位)は明日12月31日中に投稿する予定です頑張ります。。