ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

トレモロ(ギターエフェクト)について(50曲)

 「トレモロ(Tremolo)」という語はおそらく「コーラス」と並び立つくらいに、音楽用語としての存在のあり方だけの中で複数の意味を持ってしまって混乱が起きがちな概念じゃなかろうかと思います。元となるイタリア語としては「振動、ゆらぎ」の意味だとのことですが。

 演奏技法としての元々の「トレモロ」は「単一の高さの音を連続して小刻みに演奏する技法、ならびに複数の高さの音を交互に小刻みに演奏する技法」とされています。そこから派生してなのかしてないのか何なのか、ギターの音程をギターに取り付けたバーを揺らすことで可変させるものは「トレモロ・アーム」などと呼ばれるし、更には音を変化させる機構のひとつ、音量を一定の周期で変化させて、まるで音が波打つようなもの等に変化させてしまう効果のことを指すようにもなってしまった訳です。

 今回は、この3つ目の意味、俗に「トレモロ・エフェクト」と呼ばれるものについて、特にエレキギターに掛けるエフェクトとしてのこの効果について色々と見ていきたい感じの記事になります。このシンプルにして魅惑的な効果について、50曲のプレイリストを用意した上で臨んでいきます。

 また、最後の方にはおまけとして、印象的なトレモロギターが沢山聴けるアルバムのリストも載せています。

 

 

(2022.5.28追記)Wilcoの今年の新譜があまりにトレモロ的名作だったので追記しました。

 

(2022.7.4追記)10曲追加して50曲のリストになりました。アルバムの方も1枚追加して全9枚にしました。

 

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『Terror Twilight: Farewell Horizontal』Pavement(2022年4月リイシュー)

Terror Twilight: Farewell Horizontal : Pavement | HMV&BOOKS online -  OLE1799CDJP

 Pavementのなかなかデラックスエディション化されなかったラストアルバムが遂に成されて、元々大好きだったこの作品について改めて様々な背景を知り、そしてLP版やサブスクでの驚愕の曲順を前にして、様々な複雑な想いが去来したので筆を取ります。これまでリイシューのアルバムの記事を書くことはしたことないですが、元々は1999年にリリースされて、既に賛・否の両論からも色々と語り尽くされてたであろうこの作品を、改めて色々と見つめ直してみたいと思います。

 全曲レビューについては、今回示されたNigel Godrich提案の曲順のバージョン(LPやサブスクはこちら)とリアルタイムリリースの曲順(CDはこちら)の両方で書いてみます。

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 それにしても、なんて愛しい屈託にまみれたアルバムだろう。その混沌とした制作背景のエピソード群も含めて、まさにPavementにとっての『Let It Be』*1と呼ぶに相応しい作品です。ここまで『Let It Be』的な混乱を地で行ったアルバムも珍しいかもしれません。

 

*1:The Beatlesの『Let It Be』もまた、メンバーの不仲や制作の不調、プロデュースの混乱、リリースまでの混沌とした経緯など、録音エピソードに事欠かない劇的に凄惨なラストアルバムだ。

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『Dragon New Warm Mountain I Believe in You』Big Thief(2022年2月リリース)※2枚組アルバムについて:後編

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 一個前の記事は、この2枚組アルバムのレビューのための前振りでした*1。これが25組中25組目のアルバム。多くの人がそう思ってるだろうけど、本当に素晴らしいアルバム!何が素晴らしいのか、全曲レビューという形で、できる限り言葉にしておこうと思います。どうやら日本ではライブをまだ全然観れそうにないので、ライブ映像なんかも多く交えて見ていければと思います。

 一個前の記事はこちら。

ystmokzk.hatenablog.jp

 

songwhip.com

 

*1:前振りの方が遥かに準備にも書くにも時間掛かってる…。

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2枚組アルバムについて:前編(24枚/25枚)

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 今回は2枚組の音楽アルバムについて取り上げたいと思います。今回は25枚紹介する記事の前編、ということで、分かる人には何の記事の前振りか判るかと思いますが。

 世の中、様々な2枚組の音楽アルバムが存在してきました。筆者はCD文化を長らく送ってきた者なので、特にCDの2枚組というものに多く遭遇してきたんですが、通常のCDケースよりもずっと分厚いケースに収められた2枚組アルバムというのは嵩張って取り回しがやりづらい反面、その分厚さによって「普通のアルバムと違う、なんか特別な存在」みたいなものを感じたりもしていました。時代が進んで、1枚組のアルバムとさして変わらないケースに2枚を収める形式も多く出てきましたが、何となく2枚組アルバムなら分厚いケースがいいな…と思ったりもします。

 そんな思い出はともかく、2枚ある分収録時間が長く、全部聴くのも大変なら全体の感想を抱くのも普通のサイズより一苦労する2枚組アルバムについて、何となく選んだ25枚のうち、24枚を観ていこうと思います。残り1枚はまあアレです。

 

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moonriders LIVE 2022 日比谷野外音楽堂

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 「撮影禁止」となっていたので、開演前の写真しか撮ってないです。本当です。

 

 福岡からはるばる東京まで向かい*1観てきました。凄いものを観た…と思ったのでライブレポートを書きます。

 以前書いたムーンライダーズの歴史まとめみたいなやつはこちら。

ystmokzk.hatenablog.jp

 

*1:まだまん防も明けてなかったのに…と非難されることもあるかと思い迷いましたが、そこはともかく書いておきたかった。

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2003年のsyrup16g後編:『パープルムカデ』と『My Song』

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 折角頑張って『HELL-SEE』のレビューを書いたので、同じリリース年の上の画像2枚についても書いておきたいと思います。タイトルに「2003年のsyrup16g後編」とありますが、前編は勿論『HELL-SEE』の記事になります。

 

ystmokzk.hatenablog.jp

 

 『HELL-SEE』の記事でも、あと何故かART-SCHOOLの方の記事でも触れておりますが、2003年のsyrup16g1年のうちに24曲もの新曲を世に放っています。これは相当なことで、アルバム2枚分くらいの楽曲を1年でリリースしていた訳ですが、ただこのバンドの場合、2002年や2004年に実際にアルバムを2枚出しているので、2003年が特別に多作に見えない、という深刻なバグがあります(笑)

 しかしながら、その24曲のうち15曲が『HELL-SEE』で、それらの楽曲が限られた予算とスケジュールの中で奇跡的に彼らのポテンシャルが奥深く展開された楽曲集となったことは前の記事で触れました。そして、2003年の後半にシングル2枚*1という形式でリリースされた残り9曲もまた、『HELL-SEE』に勝るとも劣らない、幅広くかつ色々と深刻にかつ愉快に屈折し屈託しまくった、充実した楽曲が揃っています。今回はその、「ムカデ」と「犬」をジャケットにしたシングル2枚の9曲を両方とも見て行きます。

 ちなみに、今回取り扱う2枚については、2010年の彼らの各アルバムリマスター再発の際には合わせて1枚としてリマスター再発されています。

 

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*1:『My Song』の方は収録曲5曲で、それはミニアルバムでは?と思いはするけど公式がシングルだって言うのでまあシングルでしょう。

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『HELL-SEE』syrup16g(2003年3月リリース)

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 以下の年間ベスト記事で3位に上げたんですが、やっぱり書き足りなかったので書きます。やっぱ『coup d'Etat』は全曲レビューしといてこっちはしないのはおかしいよなあ、っていう。

ystmokzk.hatenablog.jp

ystmokzk.hatenablog.jp

 

 ということで、あのバンドの累計4枚目、メジャー3枚目のアルバムに「結果としてなった」作品の全曲レビューを書いていきます。リリース当時は15曲入り約66分のボリュームにして1,500円という狂った値段設定で、尚且つ当時から最高傑作的に扱われていた本作のどこがどうなのか。ジャケットからして暗そうだけど…syrup16gの作品はまあ大体暗いけども。

 

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“宅録”の時代的変遷、及び“宅録”アルバム30枚

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 音楽作品は作るためには録音をする必要があって、多くの世に出てきた作品は録音するためのスタジオで演奏とかをして録音をするんですが、時折、自分の家などでそういったことを完結させてしまう「宅録」というスタイルで作品を出す人がいます。むしろ現在は機材の発達・普及によってそっちの方が新譜として出る絶対数は多いのかもしれません。

 それで、今回はそういう、宅録・ホームレコーディングによって製作された感じのある作品を30枚ほど集めてみた記事になります。ついでに宅録環境の時代ごとの変遷もちょっと書き足すことになりました。

 なお、弊ブログの特徴として、ロックの延長線上にある歌もの楽曲を取り扱うことが基本としてあるので、今回のチョイスも純粋にトラックメイカーめいたものについてはあまり選んでいません。どっちかというと、宅録によって生ずる「いなたさ」に焦点を当てた選盤なのかもと思います。悪しからず。どうぞよろしくお願いします。

 

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ムーンライダーズの全アルバム(2022.1.2現在:22枚)

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 2021年12月のクリスマスに2日間行われたライブで「一生バンド宣言」なるものが飛び出して、2021年のうちに出ると思ってた新作アルバムの発売日も決定して、遂に装いも新たに動き出すムーンライダーズ!2022年3月には日比谷野音でライブということで、いつか行きたいと思ってたライブを観に行こうと、チケットの抽選に申し込んだところです。

 それで今回は、実に1976年から始まり、2011年に一度活動を休止しつつも、今年の3月に新たな一章が追加されていく彼らの長大な歴史の、その中で生み出されてきたアルバムその数22枚*1を、それぞれを見ていこう、というやや無茶な記事になります。

 なお、筆者は2019年にムーンライダーズをやっとちゃんと聴き始めた新参者なので、以下の記述には、極力正確に書こうとは思ってますが、事実誤認だとか、「こいつ何も分かってねえな…」的な記述があるかもしれません。適宜コメント等でご指摘いただければ、必要に応じて記事に反映させようかとも思う次第です。

 過去の弊ブログで書いたムーンライダーズ関係の記事は以下の2つになります。聴き始めて熱中してた頃の記事です。

 

ystmokzk.hatenablog.jp

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*1:この辺のカウントは変名アルバムやら何やらでカウントは変動するものですが、はっきりと「ムーンライダーズ」名義のもの+バンドの歴史の始まりと公式で位置付けられている『火の玉ボーイ』を加えた22枚を、ひとまずの数とさせていただきます。

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【50万PV記念】ウケの良かった記事・そうでもなかった記事

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 年が明けました。

 弊ブログのアクセス数総計がようやく50万を超えました。上記は昨日(2021年12月31日)のスクショです。読んでいただいた方々、本当にありがとうございます。

 30万を越えたのが2020年12月中旬くらいだったので、おそよ1年とちょっとで20万アクセスくらいあったみたいです。10万超えが2019年7月で、そう考えると閲覧されるペースが少しばかり上がっているみたいです。ありがたいやら恥ずかしいやら。

 

ystmokzk.hatenablog.jp

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 今回は、上記の30万超えの際の記事以降のおよそ1年とちょっとの間にウケが良かった・アクセス数が大きく伸びた記事と、そうでもなかった・頑張った割に全然だった記事とを取り上げて、2021年を一生懸命ブログ書くことに頑張ってた自分を労う感じの記事です。なお、各記事が具体的にどのくらいのアクセス数がついたのかはよく分かりません。

 

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