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ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

2014年の個人的フェイバリットアルバム30選(2/2)

後編。15位→1位です。

なお、こちらで一度ベスト10を書かせてもらっていますが、今回はまた文章書き直し、順番も見直しております。今の気分(少なくとも12月29日には全アルバム30枚選び終わってた)はこれだ、ということで。



15. ART OFFICIAL AGE/Prince
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1. ART OFFICIAL CAGE 2. CLOUDS 3. BREAKDOWN 4. THE GOLD STANDARD
5. U KNOW 6. BREAKFAST CAN WAIT 7. THIS COULD BE US 8. WHAT IT FEELS LIKE
9. affirmation I & II 10. WAY BACK HOME 11. FUNKNROLL 12. TIME 13. affirmation III

 説明不要のファンク界の巨匠であられる殿下の、古巣ワーナーに電撃復帰しての2作同時リリースのうちの一作。その辺の経緯は日本盤ライナーにおいてNona Reeves西寺郷太氏による饒舌かつ愛と拘りに満ちた文章である程度しっかりと語られている(氏の文章に接するのは今作がはじめてだったけど、この人もまたすごく流麗かつ情熱的に文章を綴ることが出来る人だと分かって憧れる)。
 今作の殿下は80年代プリンスが帰ってきたかのよう、往年の得意技の大盤振る舞いだ、という評判をよく耳にする。それによって傑作だと言う人、挑戦しない殿下はちょっと寂しいと言う人様々ではある。プリンスの熱心なリスナーでないぼくは90年代以降の作品で聴いていないものが多く、作品ごとの差異について語る能は無いのだけれど、でもEDMながらに小刻みなギターカッティングが反復し怪しいヴォイスが響く1曲目から、「あ、やっぱり殿下の作品だ」と思い、そこからは「わあ、殿下はおバカな方向にキレッキレだなあ」とか「殿下はメランコリーな感じのトラックも染みる」とか「ああこの後ろでチロチロ鳴ってる変なシンセみたいなのムチャクチャいいしこれぞプリンスって感じするー」とか、そんな感じに一人で騒ぎながらゆるゆる身体(主に頭)を揺らして楽しんでいた。全然レビューになってないけれども、少なくともアートスクールもミツメもこういう感じのファンクをパクってる訳だし、そりゃ楽しいからパクるわな、とか思ったりした。それにしてもやっぱこの人歳取らないな。

14. In Fear Of LoveBorn To Be Breathtaken/For Tracy Hyde
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1. First Regrets 2. 笑い話 3. さらばアトランティス鉄道 4. SnoWish; Lemonade
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1. Her Sarah Records Collection 2. Outcider 3. ビー玉は星の味 4. After
 渋谷系ギターポップシューゲイザーを扱うバンドFor Tracy Hyde、今年ラブリーサマーちゃんが加入してからリリースされたep2枚。出した時期がそれほど遠くないので個人的には姉妹盤だと思っていて、だからここでも2枚同時に挙げてみる。
 こちらこちらで全曲レビュー書いてます。これらに10月頃出た『Shady Lane Sherbet』のシングルを合わせると10曲、ラブリーサマーちゃん加入後の音源として世の中に存在している。アルバム一枚分にはなる。が、彼らにはできれば、さらに多くの曲を録音して残してほしい、というのがリスナーとしての身勝手な願いではある。今の彼らにはギターポップシューゲイザーのあまりに理想的過ぎるフォルムとポテンシャルがある。

13. Storytone/Neil Young
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1. Plastic Flowers 2. Who’s Gonna Stand Up? 3. I Want To Drive My Car
4. Glimmer 5. Say Hello To Chicago 6. Tumbleweed 7. Like You Used To Do
8. I’m Glad I Found You 9. When I Watch You Sleeping10. All Those Dreams

 ニール御大のアルバムが今何枚目かなんて数えるのは意味が無い。彼が今何歳か考えるのと同じくらい意味無い。若手アーティスト並かそれ以上のリリースペースで普通に作品出すジジイ。環境問題の話(にかこつけた自分のエコカーの自慢)とmp3叩き(ついでに謎の音楽プレーヤーPonoの開発)ばっかやってるクソジジイ。最近長年連れ添った妻と離婚されたそうでそんな心境が作風に反映されていて古くからのファンとしては平静な気持ちで聴けない、とかお気の毒の様子ですが、基本そんなのどうでもいい。ココ日本だからね。
 2010年にエレキギター弾き語りノイズ付きのアルバム出してからというもの、御大の創作意欲とクオリティーの上昇傾向は素晴らしい。オリジナル曲のアルバムとしては前作のバンドサウンド2枚組9曲入り(!)『Psychedelic Pill』で聴かせるクレイジーホースサウンドは最高だった。そこから一転、今作はなんと、オーケストラをバックに従えての作品。なんじゃそりゃ、またジジイのヘンな思いつきか。買って聴く。これが素晴らしい。ニールヤングの寂しい系の曲をオーケストラでやるとなんかファンタジーもののサントラみたいになるんだな。『Tumbleweed』とかなんか荘厳で可愛らしいぞ、ジブリかよ。オケの厚みに負けそうで意外と負けないニールヤングの細い声。決して上手くないと称される歌でよろよろとたどるメロディの優雅さ、胸に来るような具合を思うとどう考えてもうたムチャクチャ上手いだろこのジジイ。
 しかし、この豊かな作品には致命的な欠点がある(最後に持って回ったようにこう言いだす時って、大概更に褒める内容しか来ませんよね)。それはオーケストラ録音前に準備された、同じ曲をソロで録音した同封のCDの方がより曲が持つメロウさが際立っていて素晴らしいことだ。彼の完全ソロ・アコースティック作品は意外にも珍しいし、曲がすべて翳りのある方向性というのも珍しい。購入はぜひデラックスエディションか日本盤を。年の最後に、ホント素晴らしい贈り物だった。

12. フェイクワールドワンダーランド/きのこ帝国
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1. 東京 2. クロノスタシス 3. ヴァージン・スーサイド 4. You outside my window
5. Unknown Planet 6. あるゆえ 7. 24 8. フェイクワールドワンダーランド
9. ラストデイ 10. 疾走 11. Telepathy/Overdrive

 東京のシューゲイザーバンドきのこ帝国、という紹介が出来なくなった感じがあるくらい方向転換をがっつりやった今作。端的にかつ誤解覚悟で言えば「可愛い女の子がギターを弾いて歌うギターロックバンド」に大きくシフトチェンジした。曲調においても、歌詞においても。
 『eureka』までの情念渦巻き路線が昨年のミニアルバム『ロンググッドバイ』でかなりすっきりした詩情・サウンドになり、次がどうなるのだろう、というところで先行シングルとして登場した『東京』の、これまでになく地に足着いてポップな歌を歌おうとしている感じ。さながら厚い雲を突っ切って見晴らしのいいところまで上がったので、そこから地表に降り立って歩き始めているような。その後アルバム直前に先行公開された『クロノスタシス』ではっきりしたことは、佐藤氏は自分の生活にまつわる幸せごとみたいなのを歌にすることが出来るようになったということ。そういうのを歌にするのに、シューゲイザー的な沈み込む音は不要で、もっと単純に“良い曲”を書く必要性が出てきて、それをしている(シューゲ系統の曲が全滅した訳ではないけれど)。本人的にはその挑戦は手探り的・過渡的なところのようだが、完成度は高く、サウンドも歌もノリに乗っている。
 左右から佐藤の声が反響する、幾らかダークさを残した4と、佐藤ソロのライブも見てみたくなる素朴な良さが光る8、今作の突き抜け具合を曲も歌詞も全力で表現しきったART-SCHOOLばりのロマンチック逃避行疾走チューン11が特にどツボだった。かっこ良くて可愛い女の子いい。

11. neue welt/dip
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1. Iciclemen 2. Neue 3. Neurotic Mole 4. Fire Walks With Me 5. HAL 6. Purge
7. Melmo8. Blinking Sun 9. Final Song 10. Morph 11. It's Late 12. Hasty 13. You Are

 20年以上、前身の時代も含めれば25年以上活動するバンドであるdipは、そのキャリアの殆どをギターミュージックの研鑽に費やしてきたと言って過言ではないはずだ。多くのバンドが、ある種の全盛期を過ぎてくると、自分のバンドのキャラとは違ったジャンルの音楽性を求めて冒険したり、又はつまみ食い的に色んなジャンルの曲が入った幕の内弁当的なアルバムを作るようになるところだが、dipの場合ひたすらギターサウンドとバンドのグルーヴの“ロック”的なバリエーションだけで作品を作ってきた。その様子はさながらSonic Youthのようであった。
 そんなバンドが去年の2作同時リリースから1年もかからないうちに新作をリリースして、しかもそれが素晴らしい内容というのは、バンドの状態もインスピレーションもすこぶる良かったのだと思われる。今作冒頭4曲がどれも6分越えとなっているが、まさにこの4曲に今年の彼らの絶好調ぶりが現れている。「弾き語りでも素晴らしいと思える曲こそ名曲」という一般論から外れに外れまくった、バンドのグルーヴそのものを曲にしたような4曲。ライブのMCを聞いた限りでは4曲とも変則チューニングという。そういうところも含めて、積み上げてきたキャリアと磨き上げてきたセンス、そして何故か舞い込んだ閃きがぐっと噛み合った、バンド史上最も奇形でクールなオルタナティブサウンドだと思う。

10. 路上/小島麻由美
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1. モビー・ディック 2. テキサスの黄色い花 3. 白い猫 4. 水曜日の朝
5. 素敵なロックンロール 6. あなたはミー ・私はユー 7. メリーさんの羊
8. 泡になった恋 9. あなたの船 10. モダン・ラヴァーズ

 小島麻由美の、前作から5年近くぶりとなるという今作。公式アナウンスの紹介文にはすっかり母親となった彼女の日々のことが書かれていて、ああ、そんな人に漆黒のスウィング歌謡時代の尖りまくった姿なんか求めるべくもないな、などと、大してジャズ聴かないくせに思ったりもした。『ブルーロンド』の時点で相当ポップだったしね。
 その『ブルーロンド』に『大きな地図』という曲があって、これがゆったりとポップなコード進行にゆるいビートと開けた歌が乗って、どこか大人のロードムービーみたいな感じで凄くいいんだよな。で、今作は嬉しいことに、その延長の作風!となった。「砂っぽい」というテーマで作成され、アルバムタイトルからしてロードムービー!って感じの今作においては、リズム隊に前作以上にロック文脈の人間(ベース:カジヒデキ!)を入れたことで、非スウィング、普通の8ビートの楽しさを発見しました、とは本人の言。そんな“普通のビート”にこれも最近良さがより分かってきたという“普通にいいコード進行”の曲が被さり、そして彼女のポップサイドに開けた歌。今作はピアノも出てくる場面が相当限られ、すごくいい具合にいなたいギターミュージックとなっている。そこに彼女が元々持つ小イジワルで可愛らしいポップセンスが合わさる。つまり、すごい雰囲気のいいポップミュージックだ。
 母親になり牙を失った彼女(失わざるをえんだろ)、子供に読み聞かせるようなファンタジーに向かうことを利用して、素晴らしいターンを見せてくれたのではないか。また何年か楽しみに待ちます(もっと早くても全然いいんですよ〜)。

9. いじわる全集/柴田聡子
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1. 部屋を買おう 2. おまつりの夜 3. ベンツの歌 4. しんけんなひとり 5. はやいスピード
6. 緊張のあいだ 7. (わたしが)ほんとうになったら 8. いきすぎた友達 9. ふしぎね
10. とさだより 11. 三つの屋根 12. 責めるな! 13. 会いに行きたい 14. お別れの夜
15. いじわる全集 16. ストレートな糸

 柴田聡子は正直近年のギター1本でする系女性SSWの中ではずば抜けているように思う。大体のギター弾き語りSSWというのは“自然体な感じ”をそのスタイルの基本としていると言えるだろうが、彼女はその“自然体な感じ”の位置が何か完全におかしい気がする。「日常のふとした瞬間を切り取る」という言葉にすれば月並みそうな形式で、彼女はファンタジー世界のような不思議さと不安定さをさらりと表現する。それは歌詞内での話の飛躍っぷりだったり、クラシックギター的な技巧と質感を持つギターの鳴りの静けさ・トーンの強弱の感じだったりによるものだろうか。
 今作はそんな彼女の世界感をより研ぎすませようとしたのか、かつてなくダビングの少ない、本当にギター1本とコーラス等のない歌だけで仕上げられた曲の多い作品となっている。その静けさの音楽の中では、息遣いも弦を指がこする音も楽器となる訳だけど、今作での彼女の緊張感は格別のものがあり、これはドラムとかベースとかが入ってはいけない、弾き語り“じゃないと成立しない”曲たちなのかも、と思った。機会があって岡山のとあるカフェの地下で見た彼女の単独ライブはとても素晴らしいもので、この作品の替えの効かない感じの心細さと美しさを見事に体感することが出来た。また観たいです。

8. まぶしい/曽我部恵一
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1. 東京はひとりで歩く 2. 汚染水 3. ちりぬるを 4. 純情 5. ママの住む町 6. 碧落 -へきらく-
7. とんかつ定食たべたい 8. だいじょうぶ、じゅんくん 9. それはぼくぢゃないよ
10. 工場街のシュウちゃん 11. ホームバウンド、ホームバウンド 12. あぁ!マリア 13. ボサノバ
14. 悲しい歌 15. ハッピー 16. 心の穴 17. 夕暮れダンスミュージック 18. 一年間
19. 夢の列車(第二部) 20. 高まってる 21. パレード 22. 坂道 23. まぶしい

 去年のフルアルバム『超越的漫画』を皮切りに、この人のリリースペースは完全におかしいことになっている。ランデブーバンドとソカバン、そして再結成サニーデイサービスを立て続けにしていたときと同等かそれ以上のワーカホリックぶり。今作に『四月EP』『氷穴EP』『bluest blue』『My Friend Keiichi』そしてサニーデイ新譜『Sunny』。正直弾き語り系の作品が多過ぎる感じもするが、そんな中今作は最も弾き語り濃度の薄い作品になっている、というかカオスである。
 今作は『超越的漫画』から僅か4ヶ月後のリリースで、全23曲67分。アホである。1曲目からプレーヤーの故障を疑ってしまうようなノイズが響き、先行シングル2以降、曽我部の内にあるあらゆる歌のアイディアが、時にはコンセプトも尺もそこそこ纏まった状態で、時には断片のような形で、そしてあらゆるスタイルで乱れ打ちされる。その支離滅裂さ、纏まりの無さ(これは元々纏める気が無かったというよりむしろ纏まらないことを目的としてるようにさえ思える)から「曽我部がひとりでホワイトアルバムをでっちあげた」ような作品と言える(今作での作業の大部分が曽我部ひとりによるもののようで、短期間で制作できた理由も多少は分かる)。その一晩でゴミ屋敷を作り上げるかのようなパワーにビビってしまうが、しかしよく聴くと、歌モノには歌ものの、思いつきのようなトラックにはそのトラックなりの、それぞれのコンセプトは明確で、そして適当に乱れ打ちしてる割にはクオリティは高い。
 今作、そして今年の乱発モードな彼自身のスタンスそのものをズバリ語りと歌にした23で語られるのは、彼の改めての“闘争宣言”に他ならない。そこには、呑気に「これからに期待」と言えないようなヒリヒリした決意が伺われる。「素晴らしいけど、この人自身は大丈夫なんだろうか」と心配してしまうような彼の壮絶さ。田中宗一郎がジュリアンカサブランカスの例のレビューにて今作と『超越的漫画』を「どうしようもない無関心にさらされた」と嘆いていることには本当に同感するが、それでも曽我部は歌を作るのを止めない。

7. Black Messiah/D'Angelo & The Vanguard
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1. Ain't That Easy 2. 1000 Deaths 3. The Charade 4. Sugah Daddy 5. Really Love
6. Back to the Future (Part I) 7. Till It's Done (Tutu) 8. Prayer 9. Betray My Heart
10. The Door 11. Back to the Future (Part II) 12. Another Life

 言わずと知れた、ブラックミュージック界最大の天才とも称される、ディアンジェロの『Voodoo』以来実に14年ぶりの、遂に、という新作。12月の電撃的なリリースの発表からリスナーが戸惑ってるうちにすぐにあっさりと配信でリリースされる辺りも、実感が後からじわじわやってくる感じ。去年のマイブラの新作といい、超長いインターバル置いたらさりげなくリリースするのが流行ってるのか、と思ってしまう。
 さあ、ここからはこの、現代の音楽の最先端とも称されるこのアルバムがこんな順位であることの言い訳に終始するぞ。
 単純に、守備範囲外のジャンルである。それでもここにこうやって挙げてるのは、有名だからだろ。この傑作をそんな理由でとりあえずこの辺の順位で入れとこう、みたいな思惑が見え見えだし、そんな浅いことするくらいなら元から入れない方が失礼じゃないだろ。この、知ったか野郎(お前去年もカニエで同じことしたよな)。
 そんな内なる声の攻撃により屈託たっぷりではあるけれども、それでもここに入れたのは、単純に好きな感じの音だったからだ。一部の評論野郎が「ディアンジェロの新作に、本来のブラックミュージックファン以上にロックファンが騒いでる。何も知らんくせに見苦しいからやめろ死ね」みたいなことを仰っていたが、いやしかし、今作の音、bmrのサイトに翻訳が掲載された本人かく語りきな記事によると、各種ブラックミュージックを繋ぐのはブルースだ、という発想からギターを大いにフューチャーしたサウンドは、前作に充満したスモーキーな雰囲気が分かんないよねなクソ童貞ロック野郎に対しても、なんか優しい気がする。ロック人間的な浅いことを言えば、これはスライの『暴動』『フレッシュ』とかを聴くときと同じくらい、馴染むところがある。ほら、渋谷系の触手がいくらか伸びる程度にはロックファンもその方面聴いたりしますし…駄目かしら。
 いいブルース感、唐突なラテンフィーリングの心地よさ、シックなジャズみたいな感じ、ヘンなインドっぽい楽器の音、その程度の言葉で堂々と語るなんて恐れ多くてできないけれど、その程度の脳みそでも全然楽しめる、アホみたいに懐の深いアルバムだと思って聴いています。正座なんかしねえよ、鉄面皮で言ってやれ「へえこの、ディアンジェロ、っていうの?いいじゃん」
6. YOU/ART-SCHOOL
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1. 革命家は夢を観る 2. Promised Land 3. Water 4. Perfect Days 5. YOU 6. HeaVen
7. Driftwood 8. Go / On 9. Miss Violence 10. RocknRoll Radio 11. Intro〜Hate Songs

 この記事を書いているまさに最中に活動休止の発表をした彼ら。事前に木下理樹twitterで「大事なお知らせがあります」とか書いてあるから、一番最悪なケースは何か、を冗談まじりながらも真剣に考えていたスクーラー(アートスクールファンの局地的な呼び方。ネタ扱いと大喜利を得意とする)諸兄にとっては、まあ本人も「必ず戻ってきます」って言ってるし、とりあえずは最悪じゃないな、と安堵しているところかと思われます(おれもそうさ)。
 という訳で、活動休止前最後の作品となった本作。2010年くらいから荒れていた声の調子が戻ったということもあり、多くの人が「ここ数年のアートで最高の作品」だと述べていて、個人的には前アルバム『BABY ACID BABY』の方が好きだなあとは思うものの、そんな声が多いのも頷ける、充実の作品だと言える。レーベルに“売れる”曲を書くよう言われて葛藤したと木下本人は話しているが、それ(と、最終的にそれを投げ出したこと)を経た故のニュートラルな“木下節”が、ソングライティングやサウンドに反映されている。少なくないファンが、「1stの頃みたいな感覚が戻ってきた」と言うのにはそういったところが関係するのでは。また“売れる曲”作りに試行錯誤した結果なのか、『YOU』や『Driftwood』におけるポップさは、これまでとまたひと味違ったものを感じもする。
 一番嬉しかった誤算は、発売前に曲名を見て「は…何言ってんの?」とか思い不安になった『RocknRoll Radio』が、アート史上でも最高のパワーポップナンバーだったこと。当初これを最後の最後でアルバムから外そうかという声があったらしいのが信じられない、ホント収録されて良かった。木下理樹は、アートスクールはまだ全然、どこまでも行けないままどこまでも行ける!戻ってきたらまた、いい曲をお願いします。休止前最後のライブのチケット抽選当たるといいな。

5. Hendra/Ben Watt
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1. Hendra 2. Forget 3. Spring 4. Golden Ratio 5. Matthew Arnold’s Field 6. The Gun
7. Nathaniel 8. The Levels 9. Young Man’s Game 10. The Heart Is A Mirror

 Ben Wattが今年アルバムを出します、という話を聞いた時は、ああ、最近はそういう名前のシンガーソングライターがいるんだっけ、どっかで聞いたことが、と思ったとこで2度見。ブラウザに表示されたリンクを踏むと、「実に31年ぶりにソロアルバム」の文字を見て「マジかよ…!」と思いました。ネオアコ界伝説のアルバムにして、あの木下理樹がやたら執着して自分の世界観の拠り所のひとつにしてる『North Marine Drive』の作者にしてEverything But the Girlの片割れ(もう一方のTracey Thornとは結婚してたってこれ書いてる今知った!)。あのアルバム以外にソロ出してなかったんだ…。
 そんな最早歴史上の人物くらいに思ってた人から届けられた今作は、31年前の繊細で幻想的な雰囲気がそれごと年月を重ねたような、透明感・冷えきり感がゆったりと渦巻く曲も数々収録され、アコギの響きに加えて、溶けるようなエレピの音と、色っぽいエレキギターの響きが加えられ、大人っぽいけどAORとはまた違うような寂しさが感じられる。
 しかし、それ以上にビックリしたのが、少なくない曲でドラムの音が響き、バンド形式で収録されていること。やっちまったかー!多くのネオアコバンドが「Ben Wattのソロをバンド化するとよさそうよね」と思ってすることを本人がやっちまったかー!はっきり言ってこれがムチャクチャいい。翳りがあって熱を抑えたマイナー調で優雅だが力強く進行するバンドサウンドは、あんたこれ20年くらい前にやってたら完全にネオアコの歴史変わってたよクラスの逸品。今回全面的にエレキギターを弾いているバーナード・バトラー(exスウェード)も時に荒々しくも優美なギターを響かせて絶好調のプレイ。Ben Wattに対する認識が全然変わってしまうかもしれないし、世に溢れる程はいないだろうインディーネオアコバンドの新しい指針のひとつにさえなるかもしれない、素晴らしい“大御所”インディーロック。ひとまず上のリンクから『Nathaniel』をぜひ。

4. Everything Will Be Alright In The End/Weezer
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1. Ain't Got Nobody 2. Back to the Shack 3. Eulogy for a Rock Band 4. Lonely Girl
5. I've Had It Up to Here 6. The British Are Coming 7. Da Vinci 8. Go Away 9. Cleopatra
10. Foolish Father 11. I. The Waste Land 12. II. Anonymous 13. III. Return to Ithaka

 Mr.パワーポップバンド、ウィーザーが帰ってきた。一時期アルバム乱発してたよね、あれから4年も経ったの?まだあの頃のアルバムちゃんと聴いてないんだけど(笑)まあ試聴してみるかなんだこりゃあああ!?となった、恐るべき今作。ジャケットとタイトルの方向性のあさって感が「?」って感じだけど一通り聴くとなんとなく「…なるほど!」って思うくらい、説得力がある。
 何の説得力があるのか。曲である。リリースの度にポップに書き込まれる「原点回帰」「初期に戻ったようなサウンド」という類の文字、その形容はオアシスかウィーザーか、くらいのものがあったが、今作に関しては少し間違っている。「下手すると初期ウィーザーよりもいい」と書いてもいいくらい、個人的に好きだ。青、ピンカートン辺りの初期ウィーザーのメロディセンスを、自ら相当研究したのだろう。そして自分たちの後進の数多のパワーポップバンド、その中には日本のバンドも含まれているようだが、その良さの技巧(たとえばCメロとか)も考慮して、作られた楽曲のメロディの良さ・各曲でのバリエーションはキャリアでも最上位クラスだ。ある意味それは初期と比べれば“養殖のウィーザー”とも言えるかもしれないが、それだけに味付けのセンスも自在という感じで、適度にバカっぽさだけ残したメタルライクなギターが快く響く。
 クイーン的なサビの盛り上がりがドラマチックな3からざっくりと凛々しい4への流れの最高さを含め、アルバムとしての緩急も気持ちがいい。殿様は殿様だからすごいのではない、すごいからすごいのだ、とガキみたいなことを言いふらしたくなる、そんなアルバム。青より好きだ。

3. Sketch For 8000 Days of Moratorium/Boyish
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1. ライラック 2. 秘密の岬よ永遠に 3. 窓際の少女 4. ハートウォームギター 5. スケッチブック
6. 降り止まない夕立 7. 青い風船 8. 8000日のモラトリアム 9. 陽気な女の子の歌 10. 1990

 東京のインディーギターポップシーン(≠東京インディーなところがミソ)の前景化が、今年の個人的なトピックのひとつだった。それは、前述のFor Tracy Hydeと、それと少なくないメンバーを共有するこのバンドのリリースによるところが大きい(事情に詳しい方からお話を聞いたのもあるけれど)。
 このインディーギターポップシーンの特色としては、チルウェイブ以降の欧米インディーロックバンドからの影響に加え、アニメ的なカルチャーを進んで取り入れる姿勢である。フォトハイにもボーイッシュにも、歌詞の舞台に学校がナチュラルに出てくる。それは『PORTAL』で日本のインディーギターポップに大きな影響を与えることになったGalileo Galileiが用いていたことと、アニメ的、アニメだからこそな、純粋さを突き詰めたような世界観が自然に馴染んでいることによるものと思われる。フォトハイはそれを渋谷系ギターポップを援用しながら爽やかに追求し、そしてボーイッシュは今作においてそれまでの英語詞を日本語にした歌詞と、分厚いのにどこまでも澄み切っている轟音とで見事に表現した。
 こちらでレビューを書かせてもらっています。お気に入りの上位にいくに従って、文章が理性的じゃなくなっていくのは、メンタリティを共有(って書くとなんか甘ったるくて違うんだけどなあ、他が浮かばない…)できるからこそ、ということで。

2. Candy for the Clowns/Nine Black Alps
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1. Novokaine 2. Blackout 3. Supermarket Clothes 4. Patti 5. Something Else
6. Morning After 7. Come Back Around 8. Not In My Name 9. Destroy Me
10. Take Me Underground 11. Clown

 Julian CasablancasやCloud Nothingsのとこでゴミゴミと連呼したけど、一番ゴミなのはこいつらだ。イギリスのバンドなのにオルタナ・グランジ。ピッチフォークのpの字すら見当たらないような、どこまで行ってもNirvana、Dinasour Jr、Sonic YouthSmashing Pumpkinsとかその辺の感じしか無い、イギリスがもっと誇らないといけないクズックズのゴミカスオルタナバンドことNine Black Alpsの今年の作品は、そのゴミさがより極まった作品。
 彼らのアルバムはこれで5作目。ソリッドでハードな1st、ポップな2nd、ハードさを極めた3rd、ニュートラルな4thときて今作は、不思議なグズグズさが際立つ作りとなった。ディストーションギターはよく鳴ってるしシャウトもそこそこあるけれど、キレッキレバッキバキのグランジ!感は皆無。ハードな曲もそのハードさを研鑽するとかは全然なく、ただただロックな曲に伴奏付けたらハードなリフがついた、くらいの質感が、今作は徹底されている。つまり、何も考えてないのだ、バカなんだ。ダラダラグランジ風味の曲を垂れ流してる感じ、しかしGrungeという単語の元の意味を考えると、そのだらしのなさこそが本来のグランジではないのか?静動くっきりしたグランジなんてジャップにやらせとけ!評論家受けするハードコアなんてIceageにさせとけ!(未聴だけど凄い良さげで聴いてないの恥ずかし…)唯一無二のグダグダグランジサウンドとあえて言いたい。
 Neil Young『Hey Hey, My My』みたいなリフに乗って連呼される2曲目のサビの歌詞は「Here come, the blackout baby」だ。バカ丸出しだ。そこから今作最も爽やかなDinosaur Jr直系のポップナンバー3曲目に繋がるところの、ノリだけでやってる感じ。意外とCメロを丁寧に作ってたりとかもあるけれど、そのノリこそ、ロックンロールそのものじゃないか。名曲風の穏やかなイントロを持つ10曲目でさえサビをグランジっぽく処理してしまう癖。Elliott Smith?誰だそんなアル中ヤク中でヤバい死に方しそうな奴なんか知らねえぞ。とりあえずみんな死んじまえばいい。
 ただただ、今作が今年最高のロックンロールアルバムだったと言いたいだけだ。

1. BLUE GHOST/昆虫キッズ
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1. GOOD LUCK 2. Metropolis 3. 変だ、変だ、変だ 4. そして踊る 5. COMA
6. 冥王星 7. Night Blow 8. THE METAL 9. ともだちが泣いている 10. Alain Delon
11. BLUE ME 12. 鳩の色

 東京インディーなる当人達が嫌がるジャンルの歴史はすなわちceroと、そして昆虫キッズの歴史が軸だと考える人は少なくないと思う。特に、今作で4枚目のアルバムリリースとなる昆虫キッズの歴史は、他の名だたる東京インディー系のバンド(今のところアルバムは2〜3枚程度のとこが多いみたい)よりも単純に経歴が長いことを意味する側面もある。今年8月に活動終了が発表された後、多くの人が「昆虫キッズから東京インディー系の色んな音楽を知ることが出来た」と発言し、感慨に耽っている(たとえばこの方とか)。
 ぼくが今作のレビューを某所で書いたのは、上記のようなことを言いたかったからではない。まだ活動終了が発表される前、ぼくは本当に、なんでこのバンドをよく知るようになったのが今年からだったんだろう、と深く後悔した。彼らにはぼくがロック音楽に求めるもの、今も積極的に活動を追いかけているバンドとかそういうのに求めているものと同種のそれがあった、しかもフレッシュでかつ野ざらしのような、この上なく素敵な状態で。そういった話は活動終了のアナウンス時の記事で書いた。ついでにラスト音源となるミニアルバム『TOPIA』のレビューも書いた。
 しかし、書き足らない。全然書き足りていない。今のぼくは彼らの作品についていくらでも書ける。それがシンパシーのためと言ってしまえば、なんだか生温くなってしまうだろ。しかし理性的に分析・解剖するという気にもまるでならない。昆虫キッズの素晴らしさは、その音楽の中に宿る、適当さ、あっけなさ、勢いだけ具合、ゴミっぽさ、ヤケクソさ、白痴っぽさ、投げやりな狂気、男の子のロマンティシズムの向こう側にパンパンに詰まって埋まっている。それは勿論バンドメンバー4人によるものではあるのだけれど、プロデュースを他人に任せることでかえって曲に自身を反映させることが出来たであろう今作を聴くと、その奥に見えるのは、高橋翔という男の子、自由で適当で傲慢で屈託まみれでシャイで背の高い、彼の姿だ。
 全然レビューにならない。頭が冷えた頃に、もっとちゃんと書くつもり。あくまで個人的なお気に入りランキングの中で、今年は、これが1位しかあり得ない。



以上、アルバム30選でした。
あと、この30枚から漏れたモア・ソングス10曲くらいのレビューを書く予定で、2014年総評はそちらで書こうと思います。

2014年最後ギリギリの更新ですが、このような拙いサイトを見ていただいた皆様には本当に頭が上がりません。何卒、よいお年を。来年もよろしくお願いします。