ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

2015年個人的フェイバリットアルバム30選(後編)

後編です。
15位→1位まで。
順位とかあんまり意味ないしアレですけど。


15. Dealer / Foxing
Dealer
1.Weave 2.The Magdalene 3.Night Channels 4.Laundered 5.Indica 6.Winding Cloth 7.Redwoods 8.Glass Coughs 9.Eiffel 10.Coda 11.Three On A Match
 今年twitterで知り合いになった方から教えてもらった、アメリカ、ミズーリ州セントルイス出身のインディー・ロックバンドFoxingの2nd。出身地からは想像つかないくらいの寒冷地系エモの様相を呈している。ギターからピアノからオーケストラまで冷たくも奥行き重視の音作りになっていて、そこを叙情的で時にキュアー的にナルシスティックに沈痛で、時にぐうっとエモくなるボーカルの雰囲気はやはりどっちかと言えば北欧で、とりあえずセントルイスじゃない、セントルイスはこんな凍死しそうなほど寒くなるのかしら。

14. SHINE ALL AROUND / 豊田道倫
SHINE ALL AROUND
1. 雨の夜のバスから見える 2. SHINE ALL AROUND 3. ありふれたジャンパー 4. そこに座ろうか 5. 愛したから 6. 24 時間営業のとんかつ屋 7. どうして男は 8. ともしび商店街 9. サイボーグの渋谷、冬 10. 帰省 11. I Like You 12. 小さな公園 13. Girl Like You 14. 倒れかけた夜に 15. Tokyo-Osaka-San Francisco 16. また朝が来るなんて
 今日が発売日だが関係ない(勿論昨日フラゲしている)。数回聴いただけでもこのアルバムの素晴らしさがおれには判ってしまうのだ。だってこんな、こんな日常の渋み・人生の苦みをそのままポッップソングに抽出してる人なんて他にいない。何がブラックミュージックだ何がシティポップだ、こっちは人生送ってて普通に辛いんだからそんなのに気配りする余裕なんてどこにもありゃあしないんだよと、人は疲れるしやがて/唐突に死ぬんだよと。音楽活動20周年というアニバーサリーの気負いも程々に、より馴染んだと思われるmtvBANDの演奏が哀愁をラフにグルーヴさせる。ここでも冷牟田さん!

13. Unknown Moments / Alfred Beach Sandal
Unknown Moments
1. 名場面 2. Supper Club 3. Cool Rununings 4. Dynamo Cycle 5. 祭りの季節 6. おもかげ 7. Fugue State (feat. 5lack) 8. Town Meeting (prod. by STUTS) 9. Honeymoon 10. Swallow
 前作『Dead Montano』から継続するメンバー構成(3ピース)を軸に、歌もの色の強かった前作からやや方向転換して、外部のビートメーカーやゲストにラッパー(5lack)等を迎え、より多面的な作りを志向した感じか。相変わらず国籍感の混濁した乾いた世界観は健在。レビューをこちらで書いてました。

12. V / Wavves
V
1. Heavy Metal Detox 2. Way Too Much 3. Pony 4. All the Same 5. My Head Hurts 6. Redlead 7. Heart Attack 8. Flamezesz 9. Wait 10. Tarantula 11. Cry Baby
 今年はCloud Nothings(というかディラン・バルディ)との共作もあったWavves。その後リリースされた今作は、前作で見せた音響感は引き続き発展させ、重みやらシリアスみやらはどっかに放り投げてしまったかのような、いい形の開き直りが感じられるパワーポップアルバム。音の整理はさらに進みギターの音は少しシンセっぽい変な音色になったりもしてユニーク。そしてほぼ全曲テンポが速く曲も長くない!やってることはクソ単調なのにそれを上手く誤摩化せてしまうスキルが身に付いたパワーポップって、聴きやすくて楽しい。

11. 愛ならば知っている / 泉まくら
愛ならば知っている
1. baby 2. pinky  3. Love 4. Lullaby 5. YOU 6. Circus  7. 愛ならば知っている 8.  9. 明日を待っている
 福岡在住の、身も蓋もない言い方だと“やくしまる以降”系ラッパーの新作。ホントにこの街にいるの…?子供っぽくフワフワした意匠は第一作目のみで前作はそうでもない感じだったが、今作のリリックの世界観はより「社会の中での二人の関係性」みたいなのに進んでいる気がする(ジャケットが象徴的か)けど、トラックはよりクラクラとするようなシニカルなカラフルさが光っている。4から6までのクレイジー遊園地みたいなある種の賑やかな流れから必殺のポエトリーリーディーングを挟んでからの最後二曲のメロウさへの帰結が、微妙に変わって行く声の表情ともども素晴らしい。

10. Many Shapes / Taiko Super Kicks
Many Shapes
1.メニイシェイプス 2.シート 3.流れる 4.低い午後 5.別れ 6.釘が抜けたなら 7.水 8.ラフ 9.夏を枯らして
 確かに最近の東京インディー系の新人の中でもとりわけミツメスカート昆虫キッズ辺りの頃の東京インディー感に馴染むという意味で“東京インディー最後の至宝”などとタワレコに呼ばれてるのかもしれないところのTaiko Super Kicksの初フルレングス。レビューはつい最近こちらに書かせてもらいました。

9. エピタフ / トリプルファイヤー
エピタフ
1. SEXはダサい 2. トラックに轢かれた 3. 変なおっさん 4. Bの芝生 5. 戦争の話 6. 面白いこと言わない人 7. 今日は寝るのが一番よかった 8. ゲームしかやってないから 9. 質問チャンス 10. なんかしゃべんないと友達になれない 11. こだわる男 12. 全国大会
 その旧来の“東京インディー”側のバンドであろうトリプルファイヤーの3枚目はついに10曲を超える長さの作品に(それでも全体で32分程度だけど)。まさに昨日レビュー書きましたのでそちらを。尺的にも楽曲的にも相当完成された感じがして、この次はどうなるんだろうという興味と勝手な心配があります。

8. Sound & Color / Alabama Shakes
Sound & Color
1. Sound & Color 2. Don’t Wanna Fight 3. Dunes 4. Future People 5. Gimme All Your Love 6. This Feeling 7. Guess Who 8. The Greatest 9. Shoegaze 10. Miss You 11. Gemini 12. Over My Head
 あちこちで大評判の、アラバマ州のバンドAlabama Shakesのこの2nd。聴いたときに思ったのはやはり、曲自体はオーセンティックな感じなのに、音の響き方が全く現代的だということ。ギターの空間的な存在感(ディレイエフェクトとかそういうことではなく。そういう意味ではミツメの近作とやや共通する感じがある)は、アメリカン・ビンテージなギターサウンドのフォルムを更新してしまった感じがある。野心的なプロダクションと確かな楽曲・歌唱力・演奏力による傑作か。ただのロックンロールでさえオルタナティブロック的に聴こえてしまう。

7. Happy Valley Rice Shower / Happy Valley Rice Shower
<img src="http://blog-imgs-86.fc2.com/y/s/t/ystmokzk/20151230105657814.jpg" alt="cover のコピー" border="0" width="300" height="300" /></a>">cover のコピー
1.Just Like Lucy 2.I See Your Face And Feel Ecstasy 3.Skybird 4.Nothing In My Sound 5.Airport 6.Sundown 7.November Rain And All Free Angels 8.Happy Valley Rice Shower 9.Stay Gold
 ある程度昔より大変お世話になっているたびけん氏(未だに会ったことないけど。会いたいです)のソロユニットの、初のアルバム的に纏まった形でのリリース。フリーダウンロード。氏は「バンドキャンプ漁ればゴロゴロいるようなシューゲイザー・リバイバル以降のギターポップ、のようなバンドになりたい」と言うけれど、それがどうして、この宅録シューゲ・ギターポップという形式がそうさせるのか、意外とこういうの他に無くて替えが効かず繰り返し聴いていました。コーヒーカップ一杯の陶酔感とシンプルにして明快な蒼いギターサウンドが今年一番鮮やかでした。

6. ねむらない / HiGE
ねむらない
1. ジョゼ 2. ネヴァーランド・クルージング 3. なんて素敵でいびつ 4. S.S. 5. テーマ・フロム・ダリア 6. 檸檬 7. ing 8. 彼 9. *イノセント (What's going on?)* 10. 闇をひとつまみ
 昨年遂にオリジナルメンバーの脱退があり、それまでのバンドの均衡が崩れそうだった(ファンブック読む限りはもっと前から不安定だったようだった)HiGEが、もういっそ自分から均衡崩して変わっちまえ、と思い切ったように思えた、ドラスティックな変化を見せた新曲群の詰まったアルバム。レビューはこちらで書いております。

5. Fading Frontier / Deerhunter
Fading Frontier
1. All the Same 2. Living My Life 3. Breaker 4. Duplex Planet 5. Take Care 6. Leather and Wood 7. Snakeskin 8. Ad Astra 9. Carrion
 7が先行公開された時の「はぁ…?」な感じは何だったのか。Deerhunter史上最もクリアーなサウンド・視点を披露する、前作のもやが晴れて行くかのような快作。エレクトロ的なサウンド処理がとても澄み渡っていて、特に2のどこまでも視野がクリアーになっていくような雰囲気はどうだ。アルバム前半はDeerhunter史上最もポップでキラキラした流れでもあり、きれいなブラッドフォード・コックスみたいななんか矛盾めいた感じが可笑しくも祝福的でもある。そして今思うと、比較的地味な後半に7はやはり必要。

4. SONGS / 踊ってばかりの国
SONGS
1. ocean(intro) 2. 君を思う 3. ガールフレンド 4. OK 5. 口づけを交わそう 6. 時を越えて 7. Hero 8. 太陽 9. あなたはサイコパス 10. 赤い目 11. 唄の命 12. ほんとごめんね
 これを3月出たのに気付かずに最近気付く自分の鈍感さが情けない。踊ってばかりの国が元々持っていた泥臭い歌心の情緒ある部分はそのままに、一気にサウンドも歌詞も洗練され、純度の極めて高い「土っぽいポップソング」が連なっていてびっくりした。まさにこれを望んでました。アコギエレキ1本ずつの編成でも音に不足感を抱かせないギターの多彩なフレージングが光る。そしてアルバム最後にはまさかの彼等流のシューゲ・ギターロック12が。ともかくこのバンドの持てる限りのポップネスがこうして一枚の作品に結集したことが最高だと思う。

3. わたくしの二十世紀 / PIZZICATO ONE
わたくしの二十世紀
1. 聴こえる? 2. 私が死んでも 3. 東京の街に雪が降る日、ふたりの恋は終わった。 4. 恋のテレビジョン・エイジ 5. 戦争は終わった 6. あなたのいない世界で 7. ゴンドラの歌 8. かなしいうわさ 9. フラワー・ドラム・ソング 10. 日曜日 11. きみになりたい 12. 昨日のつづき 13. 12月24日 14. 私の人生、人生の夏 15. 美しい星 16. マジック・カーペット・ライド
 いろんな歌手が小西康陽の曲を歌う、という意味ではトリビュートアルバム的なようにも思えるけれど、明確に違うのは小西本人の徹底したコントロールのもと、彼の楽曲の本質だけをグロテスクなほどに露出させる作りで一貫していること。ともかくその音数の少なさは、彼の最もリリカルな楽曲群に辛うじての輪郭だけを与え(それがとても上品に聴こえるのは氏のアレンジ力の賜物だ)、そしてぽつんと明確なうたの存在感が、彼の歌詞のどうしようもないどうしようもなさ、つまりは彼の「死」を見据えた悲しみを直視させる。凍えるほどにジェントルで、哀しくて美しい。

2. The Magic Whip / Blur
ザ・マジック・ウィップ
1. Lonesome Street 2. New World Towers 3. Go Out 4. Ice Cream Man 5. Thought I Was a Spaceman 6. I Broadcast 7. My Terracotta Heart 8. There Are Too Many of Us 9. Ghost Ship 10.Pyongyang 11. Ong Ong 12. Mirrorball
 最初に公開された3のMVで「ああ、これはひどい」と思ったのを全面謝罪しないといけなくなるなんて思ってもなかった。再結成アルバムで史上最高傑作だ。ブラー以外の活動だと陰気さと器用貧乏さが強調されがちなデーモンの作曲が、バンドというフォーマットと、再結成盤ということでの幾らかのファンサービス的なポップさにより絶妙のバランスで噛み合い、バンド外のエフェクト処理等も含めて極めてファニーで豊かな英国音楽を作り上げている。1や6、11辺りのポップな曲の配置と、その間の楽曲における音響的な冒険のバランスの良さ。こんな作品ができる端緒となってくれてありがとうTOKYO ROCKS。

1. ぼんやりベイビーEP / 土井玄臣
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1.あれから僕は 2.ジ・イルミネイテッド・ナイチンゲール 3.あの時のビッチ 4.鏡の前で 5.あの娘の残したもの 6.静かな場所 7.ぼんくらベイビー
 4日前にはじめて聴いた作品だ。そもそもこの人知らなかった。そんなものを年間一位にするなんてどうかしてる。でも仕方がない色々とどうかしてまいってるこの年末のぼくの波長にこの音源は本当に合ってしまった。聴いたとき本当にびっくりすると同時に、音楽の尊さ、音楽だからこそ描けるファンタジー(妄想とも言う。でもなんでこんな悲しい妄想ばかりしてしまうのか)、その極北を見てしまったような気になった。エレクトロミュージック門外漢のぼくにこの作品の音楽的なところについて語れるところは少ないし、そんなことしたくない。ただ、気になった人はBandcampのリンクから試聴して、思うところを思ってほしい。そしてちょっとお金を出してダウンロードして、歌詞を読んだりしてほしい。ここ数日のぼくの夜は常に彼の音楽があった。


 以上です。これを投稿する30分前に3位が1位に繰り上がりました。12月に買ったもの・リリースされたものも多く、極めて不安定で水ものな30選になりましたが、もし万が一読む人がいて、さらに万が一何かのきっかけにでもなるようなことがあれば、幸せな限りです。
 ブラックミュージックは正直よく分からない、シティポップを楽しむには共感の余地がなさ過ぎる、お気に入りだった東京インディーは昆虫キッズの解散・「最早東京インディーという狭いカテゴリーで語るべきではない」などというコピーの頻出など黄昏れじみてきた(遂にTaiko新譜でタワレコのお墨付きだ)、、、2015年は、個人的にも色々としんどい感じで、いまでもまいってしまっているところで、シーンの総覧などとてもじゃないができませんが、それでもやっぱり、いい作品はいいんだなあと、あと悲しみに、正確には音楽というフィルターを通じて半ばファンタジー化した悲しみにばかり、心を動かされているもんだなあと、これを書きながら思いました。

 多分もうひとつくらい2015年まとめ書きますが、ひとまず30選はこれでおしまいです。