ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

2015年個人的フェイバリットアルバム30選(前編)

2015年ももう終わろうとしていますので、今年もいわゆる年間ベスト的なものをやります。今年も30枚選びました。

画像をクリックするとAmazonもしくはBandcampとかに飛びます。あと曲目のうちリンクが貼ってあるのは何かしら試聴できるサイトに飛びます。太字はその作品内で一番好きな曲。

それでは、いきましょう。長いので2分割して、30位から16位まで。


30. Star Wars / Wilco
Star Wars
1. EKG 2. More... 3. Random Name Generator 4. The Joke Explained 5. You Satellite 6. Taste The Ceiling 7. Pickled Ginger 8. Where Do I Begin 9. Cold Slope 10. King Of You 11. Magnetized
 前作『The Whole Love』でソングライティングとバンドの力量の何度目かの充実を迎えた後、思いっきりエクスペリメンタルな方向にぶっ壊れてみせたアルバム。当初のフリーダウンロードは嬉しかったです。エクスペリメンタルといっても、長尺のジャムではなく各曲3分前後に纏めてしまう辺りは元々のパンク志向が現れた形か。ぶっ壊れたコンピューターのような演奏が楽しいが、いつものウィルコ節な6や11辺りが普通に好きだったり。

29. ニンジャスレイヤー フロムコンピレイシヨン「忍」/ V.A
ニンジャスレイヤー フロムコンピレイシヨン「忍」
1. キルミスター/BORIS 2. HALO OF SORROW/Melt-Banana 3. 劇場支配人のテーマ/THE PINBALLS 4. SRKEEN/8otto 5. RADIO/6EYES 6. NINJA SLAYER/Electric Eel Shock 7. NINJA PRAYER/Shinichi Osawa 8. SUICIDAL BUNNY/Taffy 9. HIDE/80kidz 10. JAG JAG/Sawagi 11. AURASHI NO KEN/BORIS 12. NEO CYBER MADNESS/skillkills(ボートラは省略)
 twitter小説『ニンジャスレイヤー』が今年アニメ化し、その主題歌集。一応“アニソンのOPED集”であるはずなのに、上記リストから感じられる小〜中規模のライブハウス的なアトモスフィアはなんなのか。ニンジャスレイヤーはジョジョ以来の「洋楽とかからガンガン名前を引用してくる作品」なのでそういう楽しみもあって大変しあわせです。第一話EDのBORISもよっぽどですが、その後の第二話でMelt-Bananaのぶっ飛んだトラックが流れ出したのには笑った。後期ED 集の『殺』の方も素晴らしい(特にギターウルフが)。自由な作品だなあ。

28. b'lieve i'm goin down… / Kurt Vile
b\'lieve i\'m goin down…
1. Pretty Pimpin 2. I'm an Outlaw 3. Dust Bunnies 4. That's Life, tho (almost hate to say) 5. Wheelhouse 6. Life Like This 7. All In A Daze Work 8. Lost My Head there 9. Stand Inside 10. Bad Omens 11. Kidding Around 12. Wild Imagination
 この人が米国オルタナ界の重鎮がたから評価高いのは、オルタナを通過したブルース・フォーク・カントリーみたいなのを大いに体現しているからなのか。なんだかんだでルーツミュージック好きが多いんだろうか。今作はマイナー調の曲が多く、またアコギの響きが活かされた曲が多数を占めており大変地味で落ち着く。音響感は隠し味的に背後に回り、あくまで滋養っぽさを前面に押し出した仕上がり。

27. 13 / その他の短編ズ
13
1. 赤いカーテン 2. ルール 3. ファンクと文章 4. 工場 5. あの人 6. さいごの曲 7. B.B.B(ビーボーイバラード) 8. ワルツ 9. プランクエクステンド 10. フー 11. 島の神様 12. したらいいじゃない、もうそんなの 13. 血が止まらない
 音楽のジャンルがどうこうというよりも、自分たちの内なる歪なファンタジーさを表現すべく活動しているような女性デュオの初全国流通盤。レビューをこちらで書かせていただきました。聴いてると景色がファンタジックに乾いていく感じがします。そういうのっていいですよね。大人の絵本的な?

26. めまい / ミツメ
めまい
1. めまい 2. 取り憑かれて 3. Sicence 4. Alaska
 実験的だったアルバム『ささやき』を経ての、緩やかなポップ回帰が行われたミツメのシングル。音数を相当減らし、極端なディレイやエコーなども減っているにも関わらず、むしろ豊かな空間性が担保された楽曲の数々は魔法じみてる。これも「居合いのようなグルーヴ感」みたいなのの一形態か。ソフトロックという形容さえされているが、2のまろやかカントリー風味なサウンドや歌を聴いてるとそれも納得。

25. Another One / Mac Demarco
Another One
1. The Way You'd Love Her 2. Another One 3. No Other Heart 4. Just to Put Me Down 5. A Heart Like Hers 6. I've Been Waiting for Her 7. Without Me 8. My House by the Water
 ユルくてキュートなUSインディーの代表格デマルコさんの、ミニアルバム。ギター主体の曲は恒例のデマルコ印のポップソングという感じだけど、新機軸のシンセが導入された曲が、これまでよりも曖昧で哀愁めいた風情を醸し出している。そのシンセの音色がとてもフワフワと曖昧で、なんとなくMOTHER2とかそういうのの系統めいた不思議さがある。白昼夢のような感覚は、彼のいつもの歯抜けの笑顔のままでぱっと彼岸したかのような感じ。

24. アンナ*ソンナ*バカナ / 真空メロウ
<img src="http://blog-imgs-86.fc2.com/y/s/t/ystmokzk/1006654435.jpg" alt="1006654435.jpg" border="0" width="300" height="303" /></a>">1006654435.jpg
1. まるい星 2. NOBODY CAN PLAY MY GUITAR 3. 天国注射の夜 4. 毛布とマシンガン 5. Too late
 ゼロ年代前半下北ギターロック組でもとりわけナチュラル基地外めいていた真空メロウ(ホロウの方ではない)の、再結成してしばらく経ちようやく出た音源が完全自主制作でディスクユニオン限定でそしてもはや廃盤状態とは…。画像のリンク先でも買えません。ギターロック業界の損失だ!誰かなんとかして。現役時代ころの切迫感やキリキリしたテンポチェンジは後退しているものの、それでもやはり替えの効かない個性が、声や節回しなどから。割とべたっとしたギターロックをしている彼等もいいものですね。

23. The Monsanto Years / Neil Young & Promise Of The Real
The Monsanto Years
1. A New Day for Love 2. Wolf Moon 3. People Want to Hear About Love 4. Big Box 5. A Rock Star Bucks a Coffee Shop 6. Workin' Man 7. Rules of Change 8. Monsanto Years 9. If I Don't Know
 前作『Storytone』からのブランク半年で新バンドで新作という、駆け出しバンドでさえ真っ青なリリースペースを余裕でこなす超大御所。頭おかしい。今作は農薬等に関する大企業を告発する社会派作品だが、そういうことをしても潰されず普通に活動を続けてられるのも凄い…。そして曲のクオリティーが今回も高い。全編バンドによるハードで荒涼とした作品かと思えば、2のようなアコースティック作品やお気楽気なテンポの5なんかもあってバラエティ的にも何気に充実。というか新バンドのはずなのに安定性が半端ない。

22. Double dream is breaking up the door. / Paradise
Double dream is breaking up the door.
1. “ブレイズ ネイル” 『Brais Nail』 2. Paradise 3. complexion 4. 「初恋の狂気」 5. The Sick Rose 6. Dawn 7. THE FOUNTAIN 8. The thousands of the Sun 9. All nerves 10. Double dream is breaking up the door.
 昆虫キッズ解散という大事を年の初めに経験した後の今年の冷牟田敬氏の多作多忙そうな感じは凄い。まさかこっちのバンドも解散するというのは凄いことだけど…解散ライブ観に行ったけど、まさかのアンコール含め8曲くらいで終了、しかも二曲カバーという内容でビックリした。良かったけど。1と10がちゃんとライブで聴けたのが嬉しかった。レビューは同時発売だった冷牟田敬ソロと合わせてこちらで行っております。

21. over sleeper / ヤマジカズヒデ
over sleeper
1. over sleeper 2. amphicar 3. know you want 4. small stone 5. 屋根裏の地下室 6. some velvet morning 7. pray for the sun 8. night rider 9. 宙を撃て 10. 遅い痛み 11. からみあうワイヤー 12. hypnopedia 13. intro
 日本のオルタナ界隈でも最上級にベテラン格なdipのヤマジ氏の、なんと21年ぶりというソロ(実際はバンド外の活動やCDR作品などあるのでそうでもないそうだけど)。dipがバンドのグルーヴを研鑽していく場で、特に昨年の『neue welt』がまさにそんな作品だったところ、このソロ作はより自由に、彼の歌ものの側面を豊かにフューチャーした作品となっている。彼独特の繊細さ・神経質さや、『TIME ACID NO CRY AIR』の頃のようなローファイポップが入り乱れた、愉快で充実したオルタナポップアルバムだ。

20. 柴田聡子 / 柴田聡子
柴田聡子
1. ニューポニーテール 2. 好きってなんて言ったらいいの 3. ポイズンレークパーク 4. ぼくめつ 5. ばか・あほ・まぬけ 6. 悪魔のパーティー 7. マンドリン・ピアノ・デュエット 8. わかっているのに 9. サン・キュー 10. ファイトクラブ 11. アワーホープ 12. あさはか! 13. 狼少年パグ
 特に前作『いじわる全集』がほぼ全編弾き語りだったためにそういうイメージが強かったけど、今作は山本精一監修によるバンドサウンドものとなっている。監修のせいかどことなく羅針盤っぽさを感じさせるソフトサイケさがあるかと思えば、70年代のニールヤングのアコースティック作のような質感も覗かせる(彼女は今年出たニールヤングのムック本に寄稿してたりもする)。それでも相変わらずの歌詞や歌メロの自由さ・摩訶不思議さ。この人には世界がどんな風に見えているのかと、そのナチュラルなストレンジさに相変わらず静かに戦慄する。

19. No No No / Beirut
ノー・ノー・ノー
1. Gibraltar 2. No No No 3. At Once  4. August Holland 5. As Needed 6. Perth 7. Pacheco 8. Fener 9. So Allowed
 ザック・コンドンによるソロ・プロジェクト(なんですね。よく知らない…)Beirutの今作は、演奏も尺もコンパクト。前作までのようなオーケストレーションやエレクトロな仕込みは影を潜め、バンドセッションにより形作られたというシンプルなサウンドになっている。それはあたかも、これまで広大な世界に向けていた視線を少し落として、街の片隅で音楽を鳴らすスタンスに切り替えたかのような。その分、気軽にはねるような楽曲が多くてそれはそれで楽しい感じ。

18. 魔法がとけたあと / Lantern Parade
魔法がとけたあと
1. 君の頬 2. 救いようがない 3. もしかしたら今も 4. 霧雨のサンバ 5. 時のかおり 6. たったひとつの朝 7. 水たまりは空の色 8. たのしいしらせ 9. 魔法がとけたあと 10. 詩や歌のような日々を
 ランタンパレードが打ち込みからバンド形式に変わったのは4年前からだそうで、その4年前の作品の歌詞を見返すとなんとも「日常のささやかな悔恨や絶望・悲しみ」に満ちた言葉たち・音楽だろうと。その情念が今年今作でもう一度。引き続きのバンドメンバー、そしてやはり高度にいろんな音楽性を吸水して生み出されたであろう、豊かな日本のニューミュージック、その響きが豊かであればあるほど、綴られる哀しさやるせなさは深く香るような、そんな感じ。安易なロマンとかに見向きもせず日常と対峙する視線の穏やかな力強さ。

17. Currents / Tame Impala
Currents
1. Let It Happen 2. Nangs 3. The Moment 4. Yes I'm Changing 5. Eventually 6. Gossip 7. The Less I Know the Better 8. Past Life 9. Disciples 10. Cause I'm a Man 11. Reality in Motion 12. Love/Paranoia 13. New Person, Same Old Mistakes
 ハードなサイケ感を醸し出していた前作から一転、今作はギターの轟音がシンセに置き換わり、またブラックミュージック的なタイトなR&B感とポップさを得て、街に溶け込んでいくようなジェントルさなんかを漂わせてる。それでも、分厚く重ねられたシンセやコーラスの壁は頭を様々に揺らすけれども、同時にたとえば3のような軽快な足取りや7のようなカッチリなビートが新鮮に響く。折衷により生まれたヘンテコポップ作品。

16. さよなら20世紀 / THE PINBALLS
さよなら20世紀
1. ヤードセールの元老 2. ママに捧ぐ 3. 20世紀のメロディ 4. 法王のワルツ 5. スノウミュート 6. 劇場支配人のテーマ 7. 沈んだ塔
 先述のニンジャスレイヤーのEDで話題となった彼等ロックンロールバンドの今年の新作ミニアルバム。全編軽快なアップテンポor攻撃的なアップテンポでグイグイくる。レビューはこちらにて。

後編に続きます。