Twitterの方で#ふぁぼされた数だけ自分の好きなCDアルバムを紹介するのタグを誤用してやってきた標記内容のツイートのまとめ+若干の追補です。順位はなく、アルファベット順に並べていきます。ほぼ聴いた新譜全部という感じですが…。
25枚+シングル1枚ほどあります。各タイトルのリンクはAmazonに、下の曲名のリンクはYouTubeに繋がります。
『Mental Illness』Aimee Mann
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
この人は自分の中で「毎回似たような良い曲が沢山入った似たようなアルバムを出す人」程度の印象しかなかったので、ドラムレスの弾き語り主体となった今作は強制的に“いつもと違う”状態になっていて、この人の曲や声の良さがやっと分かった pic.twitter.com/R4eJFISzQE
上のツイートはそこそこに失礼ですが、実際正統派なアコースティック作品で、その割にしっかりと自然さだけでない重みを感じさせるのは、この人の素晴らしい低音の響きを持った達者な声の凄み。また今作は、バンドのときの荒涼とした感じよりもある種の潤いと怪しい奥行きが感じられる(ジャケットに引き摺られてる感もなきにしもあらず)。アコギ以外のダビングも効果的な、とても丁寧に作られたアコースティック作品。こういうつくりの作品だと、たまに出てくるドラムの格好良さや安心感も高まる。
2.『ABS+STUTS 』Alfred Beach Sandal + STUTS
『ABS+STUTS 』Alfred Beach Sandal + STUTS
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年7月1日
STUTSの昨年作でも共演してたコンビで作成されたミニアルバム。作曲はABSの方でそれを両者でトラック作り込んでる。普段のABSより無国籍感が薄まりその分大人っぽいセンチメントが割増。乾いたビート感 pic.twitter.com/tfAaYalJJI
声が細いR&B作品というのが他にどういうものがあるか寡聞にして知らないけれど、この作品は典型的なそういうのでいて、とても素晴らしい。もしかしたら「単にトラックがR&Bっぽいだけの歌もの集」なのかもしれない。けれど、北里氏作詞作曲の各曲は普段のバンド時よりもずっとアーバン気味な雰囲気を孕んでいて、繊細緻密な16ビートと心地よく絡まって、クールなメロウさを伴って流れていく。トラックメイカーとしてのSTUTSの郷愁感も曲にあわせて増し増しで、若干のラテン風味とともに寂れていてちょっと変なリゾート感覚みたいな雰囲気が心地いい。
Alfred Beach Sandal + STUTS - Horizon
3.『Cuidado Madame』Arto Lindsay
『Cuidado Madame』Arto Lindsay
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
「『No New York』に参加してた人」的なイメージでこの人を捉えてたので、もっとアバンギャルドな感じだとずっと思ってたけど、今作とか聴くと、曲自体は上品なAORみたいなのの上にとことんリズムの挑戦とかしてる感じなのか pic.twitter.com/UCFeTEKwJd
順番はアルファベット順なのでたまたまだけど、Alfred Beach Sandalの後にArto Lindsayが来ると、なんか繋がりを感じてしまう。独特の無国籍感というか。ブラジルとかそっちの音楽に自分は詳しくないけれど、これを流してるだけでそのフワフワと異国な雰囲気に浸ってる気がして、曲のボサチックな哀愁感と、そこに時々挿入される妙なパーカッション類のダイナミズムでぼんやりと黄昏のダンディズムに浸る。
ARTO LINDSAY - ILHA DOS PRAZERES
『Too many people』ASKA
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年7月2日
事件後の作品なので意識してしまうけど、とても正統派で丁寧な作りの古き良きJ-POPが沢山詰まっていて、ツルッと爽やかで重いトラックにこうして聴くと結構癖のあるASKAの声と妙なウィットがとてもキャッチー。チャゲアスもソロもちゃんと聴こう pic.twitter.com/9b8PxUdlHp
特に快活な『東京』辺りから連発されるJ-POP的なキラキラさを纏った楽曲群の強力さが眩しい。全然この人関連の作品を聴いてない身としては、流麗なメロディやウェルメイドなポップさ繋がりで、ミスチルみたいだなと思った。当然順序が逆で、ミスチルが創ったと思ってた純J-POP的なサウンドやメロディの質感というのは、実はチャゲアスに源流があるのかもと、敬意を込めてここから色々ちゃんと聴いていきたい、聴いていかないとなと。あとAmazonのレビュー数は草しか生えない。ブログはもはやそういう芸の領域。
5.『Love in the 4th Dimension』The Big Moon
『Love in the 4th Dimension』The Big Moon
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年7月2日
UKインディの核弾頭。往年のUSインディ的清純清楚ドリーミー感は全然省みられず、ひたすらに大味で性悪で強烈なロック。ひたすら破壊的でいい曲書く女達。いいようにオルタナ式に葬られるオールディーズ感も最高 pic.twitter.com/bF9tNMAkkj
かなりR&Bとかヒップホップとかジャスティン・ビーバーとかに傾倒しバンドへの言及が減ってた田中宗一郎(昨年のRadioheadアルバムのライナー書いてくれなかったのは寂しい限りでした)が(というかThe Sign Magazineが)、今年に入ってプッシュしはじめたこのバンド。記事に貼られていた動画を観てその、何かのスタイルに恭順するでもなく、ただ思うままにポーンとやったらこうなりました的な豪快なバンドサウンドの気持ちよさ。『Cupid』をはじめ所々で感じられるオールディーズ風メロディの消化の仕方はDeerhunterとタメを張るものがあり、とても小気味よく陶酔。オルタナサウンドに乗る豊穣でアホな女性コーラスの楽しさが最大の武器かもしれない。世界一最低で最高なロネッツ。ロンドンのシーン、ちゃんとチェックしていくべきかも。
The Big Moon - Silent Movie Susie
6.『Life Without Sound』Cloud Nothings
『Life Without Sound』Cloud Nothings
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
2017年の大正義オルタナアルバム(と思ったが今年はインディーバンド当たり年っぽい)。緩急をつけた楽曲をより丁寧なディストーションサウンドで塗りつぶしたサウンドとそして曲の良さは彼ら史上最も強い。最高傑作では? pic.twitter.com/glhygUbaeq
何も言わずに「とりあえず『Modern Act』のPVを大きな音で聴いてくれ」と。昨年散々色んなメディアで「今はメインストリームの方が終わり。バンドはオワコン」的に言われ続けたバンドサイドの矜持を示すかのように先行公開されたこの曲の、最早神々しささえ感じる鮮やかなドライブ感。そして、この曲に最高を感じる人であれば、まず間違いないのではと思える今作は、曲調も色々ありで、ギターやドラムといった楽器のプリミティブな良さに溢れまくった大傑作。そしてドラマチックに破滅的で勇敢なソングライティング。アルバム出は『Modern Act』の後にしょぼそうなイントロで始まる『Sight Unseen』の、気付いたらすごいところまで行ってしまう感じ。尊い。あまりに尊い。
Cloud Nothings - "Enter Entirely"
ちなみに大阪で来日公演も観ました。音源よりギターの音が10倍汚くてクソみたいで最高でした。
『Mellow Wave』Cornelius
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年7月2日
前作まででアンビエンスの探求を極めきってたところからかなり歌に返ってきてくれれた作品。ギターとエレピの駆け引き・空間的な感じ。なぜかこれの声をやくしまるえつこにしたら間違いなく彼女関連作で最高傑作になる、という確信が初聴時から強くある pic.twitter.com/Fj9SCiiivX
曲名の並びを見て「おっこれは…?」と思ったけど、日本語タイトルの曲と英語タイトルの曲でかなり雰囲気が違う。今回先行してPVが作られた日本語タイトルの曲達はまさに「今コーネリアスがあえて歌ものをやったら」って感じのサウンドで、乱れ飛ぶエレピとギターの対比が未来的で格好いい。『いつか / どこか』『夢の中で』辺りは曲単体でもポップソングとして成立しそうな快い言葉のリズム感があってとても楽しい(言葉の扱いがどこかやくしまるえつこっぽい)。対して、英語タイトルの曲は割と先行PVより前のコーネリアスのイメージっぽい音像で、特にアルバム終盤はアコギを主体としたオーガニックな曲が続く。全曲日本語タイトルでそっちのスタイルだったら…ということを考えなくもないけれど、それでも11年ぶりに相応しい極めて高水準なアルバム。
Cornelius - 『いつか / どこか』" Sometime / Someplace "
Cornelius - 『夢の中で』 " In a Dream "
8.『(Same Title)』Dirty Projectors
『(Same Title)』Dirty Projectors
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
実質ソロになり、インディー老害発言もあったしブラックミュージック接近が取沙汰されたから絶対に苦手だと思ったのに蓋を開けたら超良かった。前作から続くメロディセンスが可憐で素晴らしい。『Up In Hudson』は名曲すぎ pic.twitter.com/JK7yZWI1XT
先行公開された『Little Bubble』『Keep Your Name』を聴いたときは「え…誰ですか?」って思った。かつてのトレードマークだった女性コーラスは消え失せ、さらに声が違うから違う人が歌ってるのかと思ったら声を弄ってたのか。そしてアルバム発売の周辺でやっと事情を理解し聴くと、思った以上にブラックミュージック“とはそんなに関係ない”方にぶっ飛んだサウンドに「えっ…?」と思い、そして大名曲『Up In Hudson』の前作を発展させたようなひたすら麗しいメロディとトラックに度肝を抜かれた。この曲には彼が描く最も崇高なイメージのニューヨークが詰まってるのかもしれない。そしてアルバムに行き渡る荒廃と救済の“ひとりあそび”。前作で急に確立された“デイブ節”とも言えそうなリリカルなメロディセンスが維持されたこともあり、結果的に今作は21世紀のシンガーソングライター的でありかつ冒険に満ちた傑作になった。それこそライブで再現するところをすごく観たいアルバム。
Dirty Projectors - Up In Hudson
Dirty Projectors - Cool Your Heart feat. D∆WN
『LEGACY』Elmer
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
昆虫キッズの高橋翔さんの新バンド。ロックンロールな前バンドから一変しているが、前バンド最終アルバム『BLUE GHOST』での宵闇寄りのコード感やロマンチシズムが80年代的ファンク感のバンド演奏に染み込んでいく。所々の歌い方のフリークさがやっぱ好き pic.twitter.com/S9qenuinlF
一昨年の下北沢インディーファンクラブでElmerの最初ライブを観た。当然昆虫キッズの曲は演奏されなくて寂しかったけれど、新しいバンドの方向性がはっきりと出ていたライブで、こういうことをしていくのか、と思った。アルバムとしてリリースされた本作はその姿勢がもっとはっきり強調された。下手すれば「卑劣!Suchmos人気に便乗!」とも取れないこのファンクネス路線も、Suchmosよりも遥かに垢抜けず、その分何かがどろりとしているこの質感は、やはり高橋翔その人の部分だと思った。インナーに張り裂けたボーカルは冒険めいて酔どれ調のナイトクルージング、もしくはサーチンソウルなのかも。
『Pleasure』Feist
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
正直この人とAimee Mannとやや区別付かないとこさえあったけれど、前作から結構間隔開いてた今作はソングライティングや音響感覚がかなりロウで、アコギ主体なのに刺々しい質感があり、時々突拍子のない仕掛けもあったりして面白い。なんか退廃的な気がする pic.twitter.com/CETYVeDCuj
上のツイートはやや嘘で、エイミー・マン以上に地味なフォークをやってる人、という印象さえあったこの人。ややカントリーだったり、よりインディーロック的な飛び道具だったりをアルバムに数曲やって、でも全体としては質素なイメージだった。前作から6年ぶりという今作は、冒頭のタイトル曲から…壊れてますこの人!PVからしてすでに狂気じみたものが感じられるが、果たして本編もなんかそんな感じの曲が多く、全体的にロウな音作りの中、アコギはより神経質に響き、声は時々執拗に重ねられ加工され、そして突如暴発するサウンド。安心できるようなすっきりした曲もなく、怪しい隅っこでひたすら理解不能な享楽に耽っているような退廃・サイケ感。強烈で妖艶なスロウコア、一面に咲く毒々しい花々だ。その緊張と弛緩の混乱に惹かれる。
『Hang』Foxygen
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
60年代サイケの時代っぽいことなら何でも出来るぜ!って感じでごった煮でしかも所々狙って徹底的にダサくしてんじゃないか…という楽曲の数々が圧倒的に躁病的。この人がプロデュースしたThe Lemon Twigsと比べても圧倒的なやりすぎ感。狂気の天才白人… pic.twitter.com/oCLoHHRvO7
Feistに続き、こっちも狂気と言えば狂気。ただこっちは圧倒的に躁病的な、なんらかの全能感垂れ流しのような、ドーパミンドッバドバ具合があって聴く分にはとても楽しい。何しろコロコロと展開が変わる上に、所々狙い澄ましたようにダサい。先行公開された曲のPVの衝撃、またはアルバム3曲目の衝撃的なイントロ(笑。どこの日本歌謡だ)など。歌い方も相まって、『Between The Buttons』の頃のローリング・ストーンズのまま80年代を迎えたようなやりたい放題感が自由すぎ。映画音楽のようでもありながら、何らかのやり過ぎにより飽和しきった、超どギツ目のチェンバーポップ。
『No Shape』Perfume Genius
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月26日
最初神懸かり的な感じで登場した音楽家が次第にその度合いを薄めていくのはままあるパターンだと思うけど、この人のその受肉っぷりが一気に進んだ今作は気持ちいい。神秘っぽい局面は十分あるけど、それがいい意味でアホっぽく作用してるというか pic.twitter.com/pBJ3FsAdVK
割と苦手だった。繊細の極みなハイトーンボイスにピアノ、そして厚めのリバーブといった宗教チックな雰囲気がどうも。前作『Perfume Genius』でニューウェーブなバンドサウンドなど幾らかその辺が緩和されていたけれど、そこから今作では更に一気に“還俗”が進んだ。1曲目こそ最初は神妙な感じはするけど、突如バァーンって盛り上がるのが「!?」って感じでアホっぽい。そこから先は、リバーブの代わりに多重コーラス重視なボーカルとともに、徹底して奇妙だけどポップなトラックと歌が並ぶ。シンセポップと生音を適度に織り交ぜ、時に過剰にアッパーなビートを反復させる様は宗教的なヒャッハー感、もとい多幸感に満ちており、それらが目立つ分従来の素朴な繊細さが伺える楽曲も今作にあっては聞こえ方が変わってくる。この勢いに満ちたホーリーさがなんだか笑えてきて楽しいことは、きっと何かしらいいことなんだと思う。
13.『NOOK IN THE BRAIN』the pillows
『NOOK IN THE BRAIN』the pillows
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
やっぱピロウズはオルタナだね、って感じのアルバム。新機軸が見える気はしないのに完全にマンネリになるのをギリ躱すソングライティングやアレンジの能力は健在。全体的に曲がコンパクトで10曲で31分程。後輩の髭の方が2分短い pic.twitter.com/5pCaVytGrK
結局ピロウズはオルタナに返ってきたなと。アニメ『フリクリ』の続編が決まりそっちの音楽担当もするとかいう話で勘繰ってしまう部分もあるけど、言うほど前作とかも脱オルタナした感じが強い訳でもなく、単純にピロウズ流のロックを、今回はギターをまた強めに歪ませた形でやっている、という話。ブーミーな歪み方をしたギターが一部目立つのは新機軸っぽいが、中盤の「いつもの普通に楽曲を立てたピロウズ」な何曲かが一番いいのは前作と似てる。『トライアル』級の名作とは流石にいかないけれど、そういう力みがはじめからなしに作品を作れるのがこの人たちの強みで、それは特に終盤の特別感動的にする訳でもない曲順によく表れている。
the pillows "王様になれ" MV (full ver.)
the pillows "Envy" MV (short ver.)
『Weather Diaries』RIDE
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
去年の自分に「ライドの新譜が素晴らしい」と言っても信じないだろうなあ。自分たちの後進のインディバンドからの逆輸入的な側面も大いにあるだろうけれど、それでもどのライドフォローワーよりも理想的なライドの曲・サウンド。特に中盤以降は興奮&恍惚 pic.twitter.com/v5lPgZGo3X
『Charm Assult』が先行で公開されたときには割と「こんなもんか…」と思ったのに、蓋を開けたらアルバムは素晴らしく、この曲も効果的に機能していてびっくりした。全体的に、近年のインディーロック的なエフェクトも横目に捉えて“更新”されたRIDEっぽさ十分のサイケでアタック感もあるギターサウンドの落としどころは秀逸で、ニューウェーブ風単音リフや『Charm Assult』のダサめなワウまで含めてこれは確かにRIDEのギターサウンドだな、と思わせる作り込みが為されている。UK式な煮え切らないサイケデリアがキュアーっぽくもあるタイトル曲辺りからは特に圧巻で、絶妙な音響処理で強弱つける『Rocket Silver Sympony』、後期RIDEっぽい雑さがクールに昇華された『Lateral Alice』、そして今作随一のフォーキーなポップさと陶酔的なリフレインを持つ『Cali』に至って、この再結成作の幸福さで胸が一杯になりました。行こうホステス。
15.『The Last Rider』Ron Sexsmith
『The Last Rider』Ron Sexsmith
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月26日
幾らでも地味にグッドメロディ書ける人の新譜。冒頭からずっとスロウテンポ気味の曲が続くが、テンポのいいリード曲からのラスト5曲で急に曲調がカラフルに。そして、あちこちで聴けるホーンアレンジのアメリカーナな郷愁(カナダだけど) pic.twitter.com/gibXx8S8i0
前作『Carousel One』に引き続き、アルバムごとの作風的なアクセントづけがなくなっている感じはある。元々そういうのがあった訳でもない人ではあるけれど、今作も「ただただいい曲が沢山入ってる」としか言いがたい部分ではある(笑)。ポールマッカートニー的に「幾らでも良い曲が書けてしまう」ことは逆に言えば「どれを聴いても同じ」という状況に陥りかねないところで、その点で行くと今作では、間奏等で聴かせる各楽器のソロ的なフレーズがより哀愁がかったものに感じられる気もする。ライナーを読むとたまたま本人の人生的にそういう流れがあったとのことで、それを巧く音に活かす手際は素晴らしい。『Breakfast Ethereal』での意外なオルタナ的アウトロ処理も楽しい。
『(Same Title)』Slowdive
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
去年の自分に「スロウダイヴの新譜が(以下省略)。というかこんなにバンド感のあるバンドでしたっけ、っていうのが意外かつ素晴らしい。神々しく音響的でありながらどこかフォーキーで力強いビート感がある辺り、とても気持ちのいい勢いの良さで快い pic.twitter.com/7FwaOFImNA
冒頭の『Slomo』からしてとても神々しい陶酔感のあるイントロで、復活作の1曲目としてとても素晴らしい。そして、どれだけドリームポップ的な曖昧な音に満ちていても、その中心があくまでギターの音であることに今作の魅力が表れている。先行公開の『Star Roving』、または『Everyone Knows』辺りのリズムギターのアタック感が曲を引っ張っていく、ジャングリーとさえ言えそうな感触はまさにシューゲイザー化したギターポップといった風で、現役当時には持ってなかった類の爽やかささえ身につけたような(スロウダイブ解散後にMojave 3でカントリー的なことをやっていたのが響いたか)。何気に最終曲『Falling Ashes』でポストクラシカルにも片足突っ込んでいる辺りは非常にスロウダイブ的。今年前半はこれにライドに、あと新進のCigarettes After Sexなど、突然シューゲイザーバンド、それもかつてのポストシューゲ的なエレクトロ的傾向とは非なるバンドサウンドなシューゲサウンドの復権があって、不思議な状態。
『Hot Thoughts』Spoon
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年7月1日
今年やっとスプーンの良さを理解したのに、リード曲の作風のせいで、今作をエフェクティブで電化なファンク作品かと思い込み敬遠してたけど全然そんなことなかった。バンドサウンドのハンドメイド感とシンセ・エフェクトの組合せの妙が更に前進+意外とポップ pic.twitter.com/HqPyJvfSV0
上記ツイートの補足をすると、2曲目の途中までまさに予想してた「エレクトリカルでダンサブルで、普段のソリッドなバンド感の薄い」スプーンだけど、途中から生ドラムが入って急にバンドサウンドになっていく辺りは非常に巧妙で、清々しいほどに軽く「騙された!」感さえある。そこから先は安心と熟練のオルタナロックンロールぶりで、アコギは一切使われておらず、代わりにシンセの入り方がよりがっつりと、攻撃的な仕様になっているのが今作の特徴か。こうなってくるとダンサブルでファンクな曲も俄然楽しくなってくる。彼ら流のディスコポップな『First Caress』は絶妙だし、タイトに徹した『Shotgun』はバンドとソングライティング・アレンジ能力の強靭さが如実に出ている。勝手に騙されてしまったこと以外は最高だったアルバム。
Spoon - WhisperI'lllistentohearit
18.『Common As Light and Love Are Red Valleys of Blood』Sun Kil Moon
『Common As Light and Love Are Red Valleys of Blood』Sun Kil Moon
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
最近漸くMark Kozelek信者になったおれに対するあまりに情け容赦ない新譜。2枚組、ベースとドラムと呟きばかりのトラック。マゾ気持ちいい。文字数が pic.twitter.com/xI1DTN1pjW
問題作。というかこの人は『Benji』がウケてしまった後はSun Kil Moon名義ではひたすらひねくれたことしかしてないのでは。遂には今作では10数年連れ添ってたはずのクラシックギターさえたまにしか出てこず、ひたすらドラム(スティーブ・シェリー!)とベース(マーク本人)によるストイックでダークな演奏の上にひたすらマークの大量の歌詞詠唱(歌唱ではなく。えっ、これってヒップホップなのか…?)が載り、そして尺が長い。この三つのパート以外の楽器が出てくる曲はカラフルにさえ思えてしまうし、本当にこの三点のみで12分半やり通してしまう2枚目冒頭『Stranger Than Paradise』辺りは本当に恐ろしい。しかしその緊張感たるや、好みにハマるとゾクゾクするもので、1枚目冒頭『God Bless Ohio』はその筆頭。マジで7,8曲の1枚組に絞ったら彼の全く新しい方向性での名盤になっていただろうと思うけれど、それこそ彼の眼中になかったものだろう。そしてこのタイトルのクソ長いこのアルバム、YouTubeに動画が一個もありません。。。
公式の全曲試聴サイト いつまであることか。
本当に全曲試聴すると130分かかるのでお勧めしません。
『Drunk』Thundercat
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月26日
ジャケの眼圧からは全く想像できない可愛いメロディの沢山詰まった、それこそおもちゃ箱ひっくり返し系のアルバム。ジャズ…?総てのバカテクがコンパクトな曲たちの引き立て役に回る。ブラックミュージックって可愛いんですねっていう、不思議なプラスティックさ pic.twitter.com/KuiLufojEo
自分はこの辺りのジャズ界隈が盛り上がっているのを多少知りながらちゃんと楽しめてない人間なので、この人の過去作品とか知らないのですが(今思い出したように慌ててツタヤディスカスで追加)、界隈の作品がいかにもなイメージのジャズからかなりブッ飛んでるという印象は持ってて、それでこれを試聴したら「なんじゃこりゃ」と納得をした訳で。特に3曲目『Uh Uh』でそういえばこの人バカテクベーシストなんだったな、と思った次の曲『Bus In These Streets』のキラキラポップスっぷりに爆笑してしまったこととか。ブラックミュージックの指向性が金・暴力・セックス的な方ではなくもっと無邪気でフューチャーちっくな方に行ってる感じがして、楽しくて面白いなと思った。
Thundercat - A Fan's Mail (Tron Song II) (Live on The Current)
20.『Rock N Roll Consciousness』Thurston Moore
『Rock N Roll Consciousness』Thurston Moore
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
サーストンの今作はドラムにスティーブシェリー参加。最早ただのソニックユースでは…?ギタートーンもまさにSY的ソリッドさで、今作は長尺5曲という構成で、反復を繰り返しながら怜悧な情感を浸透させていく pic.twitter.com/MhUdN8SBoR
実にソニックユース。長尺中のインプロでも決して破綻しきった演奏にならずしっかりと展開を踏まえて熱量を調整する様まで含めてかっちりと、調子がいいときのソニックユースのような楽曲・サウンド。『Sonic Nurse』辺りと今作とだと音の感じも曲の雰囲気もあまり変わらない気がする。それでインプロをよりじっくりやっているので、そっちの楽しみが大いにある。ギターカッティングを重ねて、どこまで高まっていけるかという試み。何故かどんなに長くインプロやっても歌に戻ってくるのも不思議だけど、それ自体が最早かっこいいポイントと化してて良い。
Thurston Moore - Smoke Of Dreams
Thurston Moore - Exalted (Live)
『FANTASY CLUB』tofubeats
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
ジャンル的に自分が弱いのもあり、下手したらインタビューの方がよっぽど面白いと思ってたこの人のそういう良さが遂に楽曲に濃厚に反映されたなと。その言葉の強さで冒頭何曲かを聴いていくと段々サウンドも良さみを感じられてきた。好循環な理論だと pic.twitter.com/7aaumewsIm
神戸在住のまま、“都心の熱心なシーン”との距離を常に計りつつ活動を続ける彼の、一昔前流行った「ファスト風土」チックな郊外論を地でいくスタンス、それが楽曲として明快に提示された『SHOPPINGMALL』はやはり衝撃的で、その郊外論の数々よりもずっとはっきりと質感的に迫るものがあった。現在確実に飽和に達し下降線ってる感じのするシティポップのブームに結果的に寄与した彼の、この元々の醒めた感覚を前面に押し出す今回の方法論は非常に深刻で面白い。そしてそうなってしまった目線で聴く彼のサウンドもまた、煌びやかであっても不思議とそんな気持ちに聞こえてしまうものだから、音楽を音だけで評価なんて自分はできやしないなと思ってしまう。
tofubeats - SHOPPINGMALL (LYRIC VIDEO)
tofubeats - WHAT YOU GOT (視聴動画)
22.『METEO』浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS
『METEO』浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
「またベンジーの新3ピースバンドか…」というこっちの構えから予想外に相当良かった今作。中尾憲太郎氏とドラムの女の人とのサウンドは勢いを活かした楽曲を並べ、オルタナ感が割増で、そして枯れた風情と謎センスが冴える pic.twitter.com/4OPD6PWRjp
そういえばこの作品はAmazonにレビューを書いていたんだった。詳しくはそっちを読んでいただければ。SHERBETSの去年と一昨年の2枚は個人的にはそこまでぐっと来なかったけど、このアルバムは好きでした。歌詞はよりよく分からん方向に行ってるけれども。ブランキーの頃のようなヒステリックさがなくても格好いいロックンロールは幾らでもできることをベンジーは示し続けている。
浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS "細い杖"
浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS "Messenger Boy"
23.『雪と砂』泉まくら
『雪と砂』泉まくら
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
この人もネタ切れしそうでそうならずにコンスタントに作品を出し続けてる。生活をするようにリリックを書き、生活を彩るようにトラックに乗せる。単一作曲者で統一感先行の前作から今作ではまた複数作曲者による多様さへ。今作は福岡の風景も登場。やっぱ本当に福岡在住なのか…? pic.twitter.com/myITg9KgYG
念のため確認したら前作『アイデンティティー』が昨年9月リリースで、そこから僅か4ヶ月後の今作となる(しかもカバー曲集『TOKYO GIRLS LIFE』と同時発売)。ちょっと異様なリリースペースだけど、前作が1人の作曲者のみの楽曲だけを収録しトータル性を出していたことの反動か、今作は多彩な作曲陣による、割とバラエティに富んだつくり。冒頭の『BLUE』からして、これまでやってなかった大胆なサンプリングを導入し(ついでに「博多口」なる具体的なワードさえ!博多在住の証明か)、またひたすらダークなポエトリー『フィクション』等も含め、より現実的な重さを増していく女ラップみち。
『流動体について』小沢健二
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
シングルがアルバムじゃないことくらい知ってます…この人がよりにもよってこの曲を出したことも90年代リバイバルの一環として言えてしまいそう。とてもオザケンな風味の楽曲に結構面倒くさい歌詞、そしてクソダサPV。ともかく他の魔法的の楽曲含めてアルバム出して… pic.twitter.com/4dnLtXESr2
ミニアルバム等も多いこのリストの中で、これだけ純然たるシングルですが…。しかしこれは本当に素晴らしい。本当に短いイントロを経てすぐにひたすらするすると溢れ出していく言葉の数々の連なり、その面倒臭くも何らかの狂おしい祈りが透けて見える様はどこまでもひたすらに小沢健二。激烈にヘチョい裏声のメロディもなんのその楽曲は実にスムーズに進行し、意外とキモい動き方をするギターソロと流麗なストリングスが併置されるアウトロに至り、その輝き具合は唐突に極限。フジロックでのライブは「魔法的」ツアーの続きとの話もあるし、とっととアルバムを出してほしいものです。他の曲の歌詞読んだら難解極まりなかったけども…。
25.『(same tiltle)』集団行動
『(same tiltle)』集団行動
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年7月2日
真部脩一氏の新バンド(?)。一生付いて回る話で言えば、相対性理論の『シフォン主義』並にソリッドにバンドサウンドだけな構成(若干のキーボードはご愛嬌)が興味深い。タルトタタンやハナエよりずっとバンド。最終曲最後の数十秒がいつになく正統派で素敵 pic.twitter.com/VcstrVDvnF
「真部、またバンドやるってさ」くらいの感じ。演奏陣は相対性理論を一緒に脱退した盟友ドラマーに講談社のアイドルオーディション出身だという声が低くてやる気の感じられない謎い女性ボーカル、あとは全部真部氏。冒頭2曲のもうそのまんまという感じの真部節。中盤から理論末期以降、タルトタタンとかの真部的なカラフルな曲調やサウンドも。やや意外なのが、所々結構サウンドが重たいこと。『バイ・バイ・ブラックボード』のサビ、そして『バックシート・フェアウェル』の唐突に感動的なエンディングには、氏のバンドという概念に対して持つ、小手先でない幻想が佇んでいる気がする。それが今後どのようになるのか、意外と相対性理論云々を抜きにして楽しくなっていくかもしれないです。
26.『すげーすげー』髭
『すげーすげー』髭
— おかざきよしとも (@YstmOkzk) 2017年6月24日
サウンド・楽曲的に一気に洗練した前作からのあからさますぎる反動。というか今作の本格的な制作より前と思われるシングル2曲は迷走感あったけどそこから一気にバンドの清々しさに落とし込む手際は鮮やか。10曲30分弱という尺まで含めてのアピール感&短い尺の使い方の巧さ pic.twitter.com/g25hNDHIaZ
なんとも脱力なタイトルからのなんとも潔いアルバム。HiGEは結局頭がいいから、前作『ねむれない』で極限まで溜まった「行ってしまった感」の反動そのものをここぞとばかりに作品化したようなサウンド、そして尺。先行公開された『もっとすげーすげー』の何重にも開き直ったかのようなパワーポップぶりに感嘆し(「貸そうか最近買ったアラバマシェイクス」のラインの強力さ!)、初期のシュールさを持った楽曲を何曲か放り込みながらもメロウなラインもきっちり維持する自在っぷりが頼もしい。A面・B面で考えるとそれぞれの後ろ2曲がメロウという律儀さと、それにしてもメロウにしろ違うにしろ曲短いな!というのが面白くて、『あうん』が3分半、『U4』が3分未満なのはとてもすごい。ライブを観に行きたかった…。
色々聴き逃しております。年末にするであろう年間ベスト的なのにここに入っていない作品が入り込んでいてもそれはご愛嬌。
未だにspotifyもApple Musicもやっていないので、元々情報に疎かった傾向がどんどん加速しています。上のリストは色々かき集めてやっとな感じ。
最後に、上記の中から特にこれは!という9枚選ぶとしたら、こんな感じです。9枚に特に順位は考えておりませんが、まあ真ん中はね・・・。
今年はオルタナ・インディー当たり年では・・・?下半期も楽しみです。