ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

『ひみつ』スカート(“東京インディー”って知ってる? Volum.3 フェイバリット・アルバム 2位)

ひみつ [KCZK-005]

ひみつ [KCZK-005]

 

 そうか、この作品も澤部渡のインディーレーベル、カチュカ・サウンズからの完全インディー流通だからサブスクも無いのか…次作『サイダーの庭』までサブスクには無い(2019年8月時点)。

 

 外様の人間が“東京インディー”なる概念を振り返り回顧しそして大好きなアルバムを取り上げていく企画、その第3回目は、ベスト15枚のうちの第2位。スカートの2013年作のこのフルアルバム。これは大傑作ですよ。ジャケットがそれまでのもう少し現代的に可愛い系のイラストから一気に渋い感じに変わりましたが*1、楽曲の可愛らしさはスカート史上でも最高級でしょ。

www.youtube.comこの最高に曲の雰囲気にマッチしたアニメーションPVが公式じゃなくてファン制作なのが凄い…この時期のスカートは本当に、マンガ方面に広いチャンネルを持っていたなあ。

 

*1:漫画家の森雅之によるもの。構図が少し『火の玉ボーイ』鈴木慶一ムーンライダースに似てますね偶然でしょうけど。

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“東京インディー”って知ってる? Volum.2 フェイバリット・アルバム15選(ベスト15→3)

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 前回からの続きです。

ystmokzk.hatenablog.jp

 前説を若干書いた上で、今回の一連の記事の本編となる、東京インディーの「あの感じ」がする頃のアルバム15枚を選んで、簡単に感想していきます。1アーティストにつき1枚ずつ選んでいます。一応順位を付けていて、今回は15位から3位までを追っていきます。1位は正直15枚の中でズバ抜けて好きすぎるけれども、であるがゆえに、果たして近日中に書き上がるんだろうか…単独記事にする予定です。折角なので2位も単独記事にします。時間や自分の気力が許すなら他にも全曲に触れたいアルバムあるけども…。

 

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“東京インディー”って知ってる? Volum.1 概念考察

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 “東京インディー”なる概念がそのものすごく一般的っぽい「東京でやってるインディーバンドたち」みたいな意味を離れて、ある特定のバンド・アーティストたちを指して使われるようになって他のは一体いつからだったんだろう。恥ずかしながら、九州から外に居住地を移したことのない、東京周辺に住んだことのない筆者にとって、そんなムーブメントがあると知ったのは、メディアが「東京インディーは離散した」と言われ始める時期の直前くらいでした。

 ムーブメント。そうだ、“東京インディー”は音楽のムーブメントのひとつだった。そしてそれはかつてのロキノン文化が取り上げた「1997年の世代」だとか「下北系ギターロック」とかみたいな“結果的に周囲からそう言われた”と似た雰囲気がありながらも、もうちょっと当事者たちの自覚が感じられ、緩やかな連帯感と相乗効果が確実にあり、そして本当にインディペンデントで、音楽的な実り豊かな季節でした。なんかノスタルジックを糧に説教するおじさんみたいになりそうだ。

 今回は、そんな“東京インディー”なる、確実に日本の音楽史に残るべき概念として存在しながら、少々分かりにくくもなっているこの概念について、まずは色々と考えてみようと思います。考えて、ある程度区分けして、そして次回更新時とかで、筆者が大好きなベスト15枚のアルバムを粗雑に紹介することで、せめて何かしら像を結ばないか、と願って更新していきたいと思います。

 

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「伝えること」についてのうた(10選)

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「伝える」でググって一番はじめに出てきた画像です。

 このブログが「本当に書かないといけないと思ってることじゃないけど、なんかとりあえず更新したい」と思う時によくやる「楽曲10選」系の企画です。

 今回のテーマは「伝える」ということ。つまり正直、歌詞の中身ばかりの話になってくると思いますので、各曲のサウンドについて語る感じにはそんなにならないと思います悪しからず。

 歌詞の中で「伝える」となると、まあ「眼に映る全てのことがメッセージ」的な、全ての楽曲はメッセージソングだ、みたいなところがあるかもしれませんが、ここではもうちょっと「伝える」ことを重視して「歌詞の中で誰かが誰かに自分以外のことを伝えようとする」とか「伝えること・通信自体を歌にしている」とか、そんな具合で選曲をしています。

 今から取り上げる曲よりも全然もっと今回のテーマに相応しい楽曲が世の中にはものすごく沢山あるんだろうなと思いながらも、ひとまず行ってみましょう。

 

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『裸足の兵隊』『ASTRA/クレイマー、クレイマー』昆虫キッズ

裸足の兵隊

裸足の兵隊

 
ASTRA/クレイマー、クレイマー

ASTRA/クレイマー、クレイマー

 

 東京インディーきってのロマンチック・ロックンロールバンド昆虫キッズの音源を順番に取り上げてきていますが、今回は2011年にリリースされた2枚のシングルを取り上げます。各2曲ずつで合計4曲。ジャケットはイラストレーターの100%ORANGEによるもの。これはこの2枚に続くアルバム『こおったゆめをとかすように』及びその後の『みなしごep』まで続きます。『みなしごep』は『こおったゆめを〜』のアウトテイク集的なものになるので、アルバム『こおったゆめを〜』周辺の昆虫キッズは関連シングルも多い、なんか一昔前の邦楽バンドみたいなリリース状況です。

 なお、この2枚のうち『ASTRA/クレイマー、クレイマー』については実際の音源を所有していませんが、ややミックス等変更した程度でアルバム『こおったゆめをとかすように』に2曲とも収録されていますので、そちらをもとに書きます。逆に言えば、こっちのシングルは今やファンアイテムかなあと思います。

 一方で『裸足の兵隊』の方については2曲目『王国のテーマ』はアルバム未収録であり、また表題曲『裸足の兵隊』もアルバムでは録音し直されており完全な別バージョンとなっています。まあ表題曲の方はPVがあるので、そこでシングル版の音源を聴けますけども。

 また、この4曲を全て収録したレコード盤もあるようです。これ専用のジャケット書き下ろしもあって力入ってる。

裸足の兵隊/ASTRA [12 inch Analog]

裸足の兵隊/ASTRA [12 inch Analog]

 

 個人的に昆虫キッズ最高傑作にして東京インディーを代表する、いや、日本のロックを代表する一枚だと信じている『こおったゆめをとかすように』へ向かっていくその足取りとなる4曲。その充実の程を見ていきたいと思います。

 

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『text』昆虫キッズ

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 東京インディーきってのパワフル・ファンシー・ストレンジ・ロックバンドな昆虫キッズのセカンドフルアルバム。全国流通盤2枚目。正確には豊田道倫 with 昆虫キッズ『ABCD』を挟むけれども。ジャケットのイラストがどことなくナンバーガールっぽさが出てる感じののっぺらぼうっぷり。

 昆虫キッズの作品としては今作から、前作までと異なり全てきっちりとレコーディングスタジオで録音されたものになっている。エンジニアに近藤祥昭(GOK SOUND)、マスタリングに中村宗一郎といった布陣で、収録曲13曲を5日間で一気にレコーディング&3日でミックスダウン。いよいよロックンロールバンドとして纏まりのあるサウンドを鮮烈に響かせる作品になってます。作詞作曲は全て高橋翔。今作が彼らの作品で一番ロックンロールバンドしてるかもしれないな…。

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『My Final Fantasy』昆虫キッズ

MY FINAL FANTASY

MY FINAL FANTASY

 

 一見して「おしゃれポップブーム」みたいに後年の人たちから思われそうな「東京インディー」と言うムーブメントのド真ん中にあって、2010年代でも最強に“ぶっ壊れた”ロックンロール等を連発していたバンド・昆虫キッズについて、これから取り上げていきます。フルアルバム4枚、プラス若干のシングル等でやっていく予定です。

 まずはこの、ちゃんとしたバンド編成ではデビュー作となりそうなこのファーストフルレングスから*1。実際の今作の制作風景はかなりの部分宅録だったっぽいですけども。ナチュラルなストレンジさでシティポップもスピッツペイヴメントスーパーカーナンバーガールもアートスクールもディアハンターも飲み込んで訳わからんけどロマンチックな楽曲に仕上げる最高な集団の、少々拙くも華々しく若々しいファーストアルバムです。リリース10周年には間に合いませんでした…。

 なお、なぜかSpotifyには今作がなかったので貼ってません。

 あと、今作についてはリリース当時より昆虫キッズをリアルタイムでバックアップされてた方の以下のレビューが、とても愛に溢れていて素晴らしいです。何回もこれを読んでは、「なんていい人たちなんだ…」と勝手に思いを巡らせていました。

kamekitix.exblog.jp

 

*1:正確にはシングル『アンネ/恋人たち』が4人体制の彼らの最初の作品かも。まあいいや。

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サマーソングス(??)10選

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写真は足摺岬の方にある海底館というやつです。四国の端っこにありますので皆で行こう!

 

 突然ですが夏の曲10曲を発表します。なぜ夏なのか説明していきますので、適当に読み飛ばしてください。この文章に沿って何かしても責任はとりませんしきっと取れません。よろしくお願いします。

 

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『Anesthesia』ART-SCHOOL

Anesthesia

Anesthesia

 

 ART-SCHOOLのミニアルバム10枚目にして、バンドキャリア10周年の年にリリースされた作品にして、前作から始まった第3期アートの、結果的に最終作。短すぎるだろ第3期アート…

  「Anesthesia(アネスシージャ)」は「麻酔」「無感覚」といった意味。ドラッギーだった前作『14SOULS』までの流れを引き継ぎながら、中世〜近世の西洋画風なゴシックめいた雰囲気のイラストのジャケットは仄暗く、そして作品もまた、アートスクールの諸作でもとりわけ暗いもののひとつとなっています。「バンド10周年になったらものすごく暗い作品を作りたい」と過去に木下理樹本人が語っていたり、『14SOULS』リリース後に「次の作品はスマパンの『Adore』みたいな作品を作りたい」と語っていたりするけれども果たして。普段のミニアルバムよりも1曲多い全7曲を見ていきます。

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アーティスト写真も暗い。

 

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『14SOULS』ART-SCHOOL

14SOULS

14SOULS

 

 今改めて見るとジャケがゴスじゃんこれ!な彼らの5枚目のフルレングスのアルバム。今までのジャケットにあった背景感とかが無くて赤に女性がドーン!と載ってるので妙なインパクトある。

 前作『ILLMATIC BABY』とそれに伴うツアーでドラムの櫻井雄一氏が脱退して、バンドから木下理樹以外のオリジナルメンバーが消滅、その後新しいドラマーとして鈴木浩之氏が加入。その体制をそれまでの“第2期アート”と比較して“第3期アート”と呼称したりします。このブログもここから次作『Anesthesia』までを“第3期”と呼んだりするかもしれません。それにしても第3期、短すぎる。そして作風的にはむしろ『ILLMATIC BABY』も第3期的なんだよな…という微妙な難しさ。

 そんな新体制で臨んだフルアルバム、かなり混沌とした雰囲気で、おそらくそれは半ば狙ってそのようにされたものと思われます。果たして。

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画像の一番右が当時の新メンバー・鈴木浩之氏。この時期のメンバー、全体的に線が細い。

 

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