Common As Light and Love Are Red Valleys of Blood
- アーティスト: Sun Kil Moon
- 出版社/メーカー: Caldo Verde
- 発売日: 2017/02/24
- メディア: CD
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本日二回目の更新で、やはりSun Kil Moonの上記アルバムの歌詞精読・翻訳です。disk1の3曲目にあたるこの曲は、1曲目『God Bless Ohio』と同じく10分を超える楽曲で*1、緊張感というよりかはもっとゆったりしたリズムループの上で、これまた落ち着いたエレピのループが流れる上でMark Kozelekが喋りまくる。けれども幾分メロディっぽいのを歌う部分が多いので、意外と聴けるのではないか。まあ途中おしゃべりだけになる箇所があるんだけども…。
デヴィッド・ボウイの死や彼についての思い出などを主軸に、色んな話を展開していく歌詞。歌詞を調べるまではもっとボウイ尽くしの内容だろうと思ってた*2ので、翻訳で読んでこんな内容だったのか!というのは多い。特に冒頭のソーシャルメディア叩きからピッチフォークdisにスムーズに接続していく箇所。皮肉屋としてのMark Kozelekの厭らしい魅力満載なので、彼にまつわるゴシップ好きな人(この国にどれだけいるの…)なんかは、この曲の歌詞は幾らか楽しいのではないでしょうか。
腕一杯のバラの花束を持ってテレグラフの彼女のところに歩いていたら、
店の角を曲がるときに立ち止まった。TVにISISが撮ったフィラデルフィアの警官が映っていた。
2015年でアメリカでは30,000人が殺された。
今日これからスタジオで、マイクを通して、僕はそれについて歌おう。
Twitter上でどんな奴が最高か、又は最低か、なんてどうでもいいだろ。
他のソーシャルメディアも、お前らをゾンビにしちゃうような金儲けのスキームだ。
オナニー、そして問題の先送りにお前らを引きずり込む。
かたやシリコンバレーのガキどもはお前らの金を手に取って言うんだ。
「ウェイターさん、これ小切手にしてくれます?」
また、奴らはお前達のお気に入りの場所をブルドーザーでブッ潰して、その後にクソ素敵なフルーツジュースの店を作るんだ。
次のノーマン・メイラー*3になれる頭脳を手にした。
次のエリザベス・テイラー*4になれる長寿を手にした。
次のジェームズ「クソ」スペイダー*5になれる階級を手にした。
次のスティブ「クソ」バターズ*6になれるだけのご慢心も手にした。
だけど、完璧にあつらえたお人形みたいに、トイレに座ってスマホを弄ってんのかね?
俺は誰かの人形じゃない、人形じゃない、人形じゃない、人形じゃない。
クソ人形じゃない、クソ人形じゃない、クソ人形じゃない、違うんだ。
オーケー、僕はこの辺で家に帰るよ。
この『ビートルボーン』*7という本の他の章を読むとしよう。
これまでで一番面白かったのは「wily」という単語に複数の用途があるページ。そう俺だ!狡猾なクソ野郎。(?)
マシロン*8に来て、手にしてみなこの、スットコドッコイが。
俺に5点中1点を、偉大にして芳醇なる10点を、2点を付ければいいさ。
どちらにせよ、結局俺は関係ないもの*9。
そしてお前らに俺はこんなお話をして差し上げよう。
「えーっ!音楽ライターをされてるんですか!SXSW*10には行くんですか?」
「ああ、ほぼ毎年さ、僕が働いてる編集部が送り出してくれるんでね」
「ホントですか!それって最高じゃないですか!」
「ハハハ、そりゃ楽しいよ。そういえば、VIPたちのアフターパーティー、普通は参加できないところだけど、僕は訳が違ってね、僕についてくれば君をそこに入れてあげられるかもね」
「ええっそんな!バンドに会いに行くんですか?」
「その通りさ。僕はジム・ジェイムズ*11とか、ファーザー・ジョン・ミスティとか、そういう沢山の人たちと友達だからね。(スマホの着信)おっと、そう言ってたら今度はスフィアン・スティーブンスからの着信だよ」
「ああ!なんてこと!わたし大好きなんですよスフィアン!じゃあ、あなたもラミネートの服を着るんですか?」
「まあね、あれは思うに、ちょっとばかり自意識的なアレを感じちゃうけど、まあ分かるよね?君なら分かるだろ?さあ、素敵なショウに行こうよ」
「ワアァ!もう最高!最高にクールなの!」
聞かせてくれるかね。お前自身の”物語”っていうのはあるのかね。
アバズレに金を払うみたいにクールにつとめてヤッちゃうんだってね。
お前が担当だって言うんなら、お前が断固たるフェミニストだと表明してから、お前の仕事を女性に渡すなり、じゃなきゃ黙るなりしろよ。
『Queen Bitch』はクールなデヴィッド・ボウイの曲だね。
そして『Rebel Rebel』『Diamond Dogs』なんかもそうだよね。
トム少佐*12、僕の話を聞いてくれますか。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。
僕の彼女がノックしてくる。僕達が会うと全てが止まる。
僕の彼女がノックしてくる。僕達が会うと全てが止まるだろう。
ああ、僕がどれだけ彼女を愛しているか。どれだけ愛しているか。
僕はコカイン・カウボーイズ*13のpart3を観ている。
7時には彼女が来て、一緒に映画を観に行くことになっている。
来週はロサンゼルスでショウをしに行く。
エリートカフェ*14で素敵な夕食を摂った後、映画館まで歩いて、予定を飛ばすことにした。
戻ってきて、TVを点けて、『コードネームはファルコン』*15を観た。
彼らが刑務所で足首に鎖を付けられて並んで歩くラストシーンまでずっと。
そして、リサ・リング*16がホストを務めるモンゴルについてのテレビショー(?)を観た。
その後僕等は幾つか、悪魔もののクソみたいなやつを観ていた。
そいつらはデトロイトを乗っ取ろうとする。
デトロイトが悪魔に乗っ取られる話は、たわいもないと言わざるを得なかった。
今は午前3時3分で、雨が降ってきている。
朝起きるときにただただ気になるのは、君が側にいるかということ。
今は午前3時4分で、雨が降ってきている。
朝起きるときにただただ気になるのは、君が側にいるかということ。
ああ、僕がどれだけ君を愛しているか。ねえ、どれだけ愛しているか。
目を覚ましてスタジオに行った。帰ってきてCNNを点けた。
デヴィッド・ボウイが死んだ。エル・チャポ*17がショーン・ペン*18と握手していた写真の話。
忌々しいことに、僕がさっき言ったように、前日の夜は『コードネームはファルコン』を観ていた、ショーン・ペンとティモシー・ハットンとともに*19。
鷹が飛んで行く頃に、ボウイの曲がかかっていた。
「This isn't America, oh」「This isn't America, oh」*20
*21
僕は再び起きてスタジオに行き、僕自身のことから離れて、
父の名誉のために歌った。曲はロイ・ハーパーの『Another Day』。
ピアノはまるでナイロンギターのように眠たくなる感じだった。
そして、僕にしては早い11時半頃にはベッドに入っていた。
ボウイの顔が何度も、何度も何度も何度も繰り返し、映し出されていた。
最初に僕のヒーローになった男のひとりが病院のベッドに臥せっている映像。
そしてますます、ショーン・ペンはエル・チャポと握手をしてやがる。
エル・チャポのクソ野郎*22はあの最低のジム・ジョーンズ*23の10倍もの人々を死に追いやっている。あのプラス・ウェイコ(?)よりも沢山、あのノルウェーのウトヤ島やオスロであのクソキ◯ガイがやった*24よりも沢山の人を殺している。
別の章に移ろうかな。別の章に行こうね。
確か朝5時に起きて、友人と話した。
誰か1997年に戻ってボウイと会えないか。
マジソンスクエアガーデンで行われた、ボウイ50歳の誕生日のお祝いだ。
小学2年と3年の間の夏に、僕は初めてボウイを聴いた。
ロサンゼルスにいた祖母や、義理の祖父に会うため飛行機に乗った。
その飛行機の中で、僕は何度も、何度も何度も『Young Americans』を聴いた。
その歌声は電車みたいに震えていて、バックシンガー達は泣き叫んでいるようで、サクソフォンが歌っていた。
僕は今ロサンゼルスのコリアタウンにあるノルマンディーホテル、その214号室にいる。
僕達バンドは昨晩演奏して、その中でボウイの『Win』を歌った。
僕達は正しいことが出来たと思う。
そして僕はあの飛行機の中で聴いたソウルフルな歌の思い出を簡潔に、おそらく初めて人前で話した。
友達やファン達の中にあって、僕は歌うようにしたんだ。本当に良い夜だった。
『Young Americans』
『Win』
『Fascination』
『Right』
『Can You Hear Me』
『Across the Universe』
『Fame』*25
あそこの誰かが僕を好いてくれて、彼は下方に見えるクルーザーを眺めながら11階に上がって行った。
デヴィッド・ボウイはオリジナルである。それが彼が僕と主に話した内容だ。
オーライ、オーライ、オーライ、オーライ*26。
レイン・ウィルソン主演の演劇からちょうど戻ってきたところ。
トム・ペイン、彼はそれを良く引き出していた。
僕はと言えば明日には飛行機に乗っているだろう。
今は家に帰って、『ビートルボーン』を読んでいる。
午前6時29分、これはジョン・レノンをベースにしたフィクション作品。
名声から逃げ出そうとするジョン・レノン…。
しかし、僕は今は家にいて、遅くまで起きている。
デオンタイ・ワイルダー*27の試合を待っているんだ。
ショウと、遅くなってからホテルで始めた作曲のおかげですっかり眠い。
今は1月17日の午後3時8分、モハメド・アリ*28の誕生日で、『モハメド・アリのかけがえのない日々』をこれから観るんだ。
今は1月19日の遅い時間で、グレン・フライ*29が死んでしまった。レミー(・キルミスター*30 )も前に死んでしまった。
3人の偉大なロックスターの死が立て続けに。
でも今年は、そう遠くないうちにもっと死んでしまうのかも。
今に分かるさ。
そして僕はその夜遅くまで起きていて、働き蜂のように作業をしていた。
そしてその後、ああ、神様、僕はマーロン・ブランド*31のドキュメンタリーを観たんだ。
それが午前4時36分のこと。雨が降り出している。
明日も、きっといつものようにレコーディングをしているんだろう。
午前4時37分、雨が降っている。
明日は明日でまたファンタスティックな旅路になるんだろうね。
午前4時37分、雨が降っている。
そして、明日は明日でまたファンタスティックな旅路になるんだろうね。
ああ、僕がどれだけあなたを愛しているか。どんなに、どれほど、愛しているか。
lyric by Mark Kozelek 翻訳:おかざきよしとも(@YstmOkzk)with Google
*1:ちなみにこのアルバムで一番長いのはdisk2の1曲目『Stranger Than Paradise』の12分越え。この曲のスタイルとしての極まりっぷりもそのうちちゃんと書きたいが、道のりは険しい…。
*2:「Oh, How I love you」の歌詞はボウイに宛ててかと勝手に思ってたけど、違うみたいだった。
*3:作家。1948年頃から作品を出版しており、2007年死没
*4:俳優。12歳で子役デビューし、1943年から2003年までの長きに渡って映画に出演し続けてきた。2011年に79歳で死没。
*5:俳優。なんでクソなのかよく分からないけど、ソーシャルメディア関係らしい
*6:アメリカのパンクロッカー。こっちもなんでクソって言われてるのかがよく分からない
*7:後の歌詞で出てくるけど、ビートルズの電気を元にしたフィクション作品らしい
*9:ピッチフォークの採点システムのことを揶揄っているらしい。Markはたとえば『Benji』リリース後のライブでも観客に「お前らピッチフォークに洗脳されて観に来てるだけじゃねえのか」(『Benji』はピッチフォーク上で高評価だった)などと言ってたりする
*10:サウス・バイ・サウスウエスト。世界中でも有名な音楽フェスのひとつ(今調べたら音楽以外にも映画とか何とか色々あるんですね)
*11:おそらく、マイ・モーニング・ジャケットのフロントマンのこと
*12:David Bowie『Space Oddity』の登場人物
*13:ドキュメンタリー映画。80年代マイアミで隆盛を極めていたコカイン取引について、警察や売人と証言等を交えながら検証する
*14:検索して出てきたのはサンフランシスコのそれだった。
*15:1985年のアメリカのスパイ・サスペンス映画。後の歌詞で出てくるショーン・ペンが主演男優として登場する
*16:アメリカのジャーナリスト。CNNで幾つかの番組のホスト役を務めている
*17:メキシコの麻薬組織の幹部で「史上最悪の麻薬王」「麻薬界のゴッドファーザーのひとり」などと呼ばれている。本名ホアキン・グスマン
*18:アメリカの俳優。エル・チャポの2度目の逮捕直前頃にメキシコの女優を通じてエル・チャポにインタビューをしており、その内容はローリング・ストーン誌に掲載されたらしいので、ここの歌詞はそのことか
*19:この2人は『コードネームはファルコン』の主演の2人
*20:『This isn't America』は『コードネームはファルコン』の主題歌だった。鷹が飛ぶ云々は映画のシーンの話か?
*21:なお、ここはMarkがボウイの真似をして歌ってるのか、ウケる
*22:彼に関連する一連の「麻薬戦争」による死者は2、3千人にも上る。そのような人間と握手するということに対する憤り
*23:アメリカのカルト宗教指導者。最終的に900人以上の信者を集団自殺させた
*24:2011年ノルウェー連続テロ事件。死者は全部で77人にもなり、単独の者が短期間に殺した数としては世界最大の数字であるらしい
*25:以上7曲すべてアルバム『Young Americans』収録曲。地味に1曲『Somebody Up There Likes Me』が抜けてる
*26:ここおそらくボウイの何かの曲が元ネタなんだろうけれどついに特定できませんでした…
*27:アメリカのボクサー
*28:ボクシングに興味ない自分でも知ってるクラスの、伝説的ボクサー
*31:言うまでもなく大俳優。後年は「世界一ギャラの高い俳優」と呼ばれ、晩年まで大食らいの巨漢だった。自分は映画は全然詳しくないけど、でも『ゴッドファーザー』ですげえ存在感のあったデカい人、というのは憶えてる