
Common As Light and Love Are Red Valleys of Blood
- アーティスト: Sun Kil Moon
- 出版社/メーカー: Caldo Verde
- 発売日: 2017/02/24
- メディア: CD
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Sun Kil Moonの上記作品の歌詞精読。これで4曲目。
disk1の4曲目に収録されている曲で、曲としては重々しいドラムのリズムで淡々とトラッシュトーキングが続くので、やはり面白さを感じづらい曲。アコギもブレイクの箇所以外は入らず、途中で僅かに入るエレキギターもあまり特別な効果を上げている気がしない。
なお今作は、引用等の箇所でリズムがブレイクしてアコギ(と語り)だけになる、という展開が頻出します。この曲も、次の曲『Lone Star』もそういう展開で、正直曲ごとのメリハリとかはあまり考慮されていないっぽい。
歌詞については、途中から高速道路沿いの色んな施設を、そこにまつわるエピソード付きでマークが紹介していくような形式を取る。高速道路を移動しながらの歌詞とは思えない重々しいリズムで、なかなか重たいエピソード群を持つ各地を解説するので、内容確認するのにやたら時間がかかってしまったし、最後のニュース引用風センテンスは検索しても全く情報がなく*1、おそらくマークの創作なんだろうけど、何がなんだか分からない。
それでも、マークの歌詞を調べるべくGoogleマップでカリフォルニアの各地を辿り、刑務所とか何とかの位置を調べたりするのは、家にいながら小旅行をしているような部分があって、そこそこに楽しくはあったんですけれども。
カメレオン、カメレオン、あなたたちは何を考えているの。
僕は浴室に浸かって、赤熱したセメントの上にある腹をずっと、ずっと、ずーっと眺めてる。
(1行、文法的に意味不明すぎたので省略)
あなたたちの後ろで、長く伸びた草葉の影に隠れて、猫がかがんでるね。
あなたたちには分かんないだろうけど、どっちのが動きが速いか調べようとしてるんだよ。
僕はまだ七面鳥みたいに座ったまま。この状態を台無しにしたくないんだ。
猫が前に突っ込んで来て、その口には緑色のカメレオンが。
左側からしっぽが垂れ下がり、右側には頭が垂れてる。
その仔の素敵な、美味しい食事になってしまったらしい。
その仔は今夜、赤ちゃんみたいに眠るんだろうな。
カメレオンはもうフェンスには座らない、猫の腹の中だもの。
猫は乾かないよう口のところを舐め回してる。
最早リュウゼツランや茶色い土に隠れ潜むこともないし、プールの側で黒アリを見ながらひなたぼっこをすることもない。
今、ルート80をサクラメントに向かって運転している。
ロマン・ポランスキーやチャールズ・マンソン*2が収容されてたことのあるバカヴィルの町を過ぎていく。二人についてはご存知の通り。
そう、ルート80をサクラメントに向かって運転している。
カリフォルニア州の州都で、ディエゴ・コラレス*3の生まれた土地だ。
神よ、彼の魂を抱きたまえ。
そう、ルート80をサウス・レイク・タホに向かって運転している。
右側にはフォルサム刑務所がある。ついでにつむじ風も発生してる。
今僕はハングタウン*4に行こうとしている。町の人たちはゴールドラッシュの間そこで犯罪者どもを絞首刑にしていたそうだ。
僕はゴールドラッシュや西部劇的なことの全てが大好きだ。
1851年6月2日、
カリフォルニア州センターヴィルで、ジェームズ・ワン*5が賞金稼ぎのロバート・リー・ヒンメルに捕らえられた。ジャック・H・モルディを殺したことで生死問わずで指名手配されていたワンは、ロバート・リーによって駅馬車で、他3人と共にハングタウンに連行された。モルディ氏はワンや他3人の逃亡者によって、鉱業用ツルハシで殴り殺されたとのことで、ワンの証言によると、彼らはオクラホマ州に逃亡していた。モルディ氏は、モンタナ州ビュートの銅鉱業長者であるジョン・B・ホワイトの娘であるジュリア・ホワイトと一緒に寝ていた。ジェームズ・ワンはジュリア・ホワイトに妄執的な恋愛感情を持っていたようだ。1851年6月10日午前10時にに、ワンはハングタウンにて絞首刑を受けた。彼の最後の言葉は「このロープを切れ、このクソ野郎ども!」だった。同日午前10時17分に彼は死んだと発表された。
今僕はルート80に戻った。あっちにはベリエッサ湖がある。
ゾディアック事件*6では殺人現場になってしまい、それが頭から離れない。
ああ、そしてヒルサイド・ストラングラー*7はそこのフォルサム刑務所で結婚したんだ。
彼らのビデオをいくつも見たことがあって、ああ、僕は2人にすっかり魅了された。
僕はルート80を下っていて、サン・パブロ・ダムを通り過ぎる。
夏になると僕はそこでナマズを釣ったりしていたんだ。
家に持って帰って、フライパンで揚げるんだ。
ジェントルマンジャック*8の工場(?)を通り過ぎる。カルキネス橋を渡り、C&Hの砂糖工場を通り過ぎる。
また、ルート80を下っていく。黄色いフルーツスタンドが見える。
オレンジ一袋と、リンゴを幾つか、あとペカンを一袋買おうかな。
州動50を行く。ポロックパインズを通り過ぎる。
雪線の右側にはログハウスがあって、そこの僕の土地にはアヒルのいる池がある。ガキどもはその僕の土地で釣りをするんだよ。
ああ、頑張りたまえくそガキども。
池に落ちるものだから、レンガで入れないようにされてしまってる。
ギターを頭にぶつけて死ぬような奴がいるか?アイスピックが刺さって死ぬような奴がいるか?
2016年6月10日
バート・クロッシンは自首し、「おっさんロック・スローハンド馬鹿*9」の罪で警察に身柄を拘束された。彼はエリック・クラプトンの物まねをして、45年の生涯で2枚アルバムを作っている。彼はいわゆる「ヨット・ロック」*10とか、もしくは別の場所では「ダッド・ロック」とか呼ばれる音楽スタイルを擁していたことで知られていた。その後彼の居所に捜索隊が入り、そこの壁には「ルーザー」と描かれていた。ちょっとばかりのCDコレクションが見つかり、そこにはピート・ヨーンやジェット、ホット・ホット・ヒート、ヴェルカ・ソルトにテンプル・オブ・ザ・ドッグ、ザ・ドナス、サーティー・セコンド・トゥー・マーズなどが含まれていた。CDは全てラップに包まれた、未開封の状態だった、ホット・ホット・ヒートを除いて。バートの携帯電話には666の市外局番へのメール文が山ほどあった。ひとつはルイジアナあて。全てのメール文書が「出て行け」と書いてあった。また、猫と公衆電話の写真も沢山入っていた。彼の凶器はエピフォン製のレスポール・59年リイシューモデルとアラバマ州のフリーマーケットで買った骨董品のアイスピックだった。居所からはそれ以外の武器は見つからなかった。他に押収されたのは24インチ薄型テレビ、ボクシングのNG集ビデオテープ、ビデオテープレコーダーにアンダーアーマーの運動着。バート・クロッシンは現在、カリフォルニア州立コーコラン刑務所にて「おっさんロック・スローハンド馬鹿」殺人の罪により、3種と5年の終身刑(?)で服役中。彼は、殺人の動機はその歌声だったらしく、彼が言うにそれはあまりに『Wonderful Tonight』に似すぎていた、と主張した。この曲はエリック・クラプトンのアルバム『スローハンド』からの曲で、彼が7年生*11の時の恋人の好きな曲だった。「あの女が俺を捨てたんだ!」彼は捜査員にそう言った。「立派なクルーザーを持った金持ちのガキに乗り換えやがって!」*12
『The Highway Song』
lyric by Mark Kozelek 翻訳:おかざきよしとも(@YstmOkzk)with Google
*1:この曲の歌詞しか出てこない…
*2:この二人が並ぶと説明が非常に面倒くさいので、このサイトに説明を丸投げする。マークも、このアルバムを出した後にマンソンが死んでしまうなんて思っていなかったでしょう
*3:アメリカのボクシング選手。2007年に29歳で交通事故死している
*4:プラサーヴィルという町の別称。ゴールドラッシュの時に栄えた町。この呼び名の語源はこの後の歌詞の通り
*5:綴りが「Wang」なので中国人移民の子孫か何かか
*6:サンフランシスコ市で1970年代に起きた殺人事件。少なくとも5人が殺されていて、しかも犯人は見つかっていない
*7:カリフォルニアの殺人鬼2人組。この結婚とは片割れのケネス・ビアンキに関する話か。こちらの記事が詳しい。それにしてもこういうシリアルキラーの記事って次から次に読んでしまって怖い
*8:ジャック・ダニエルのバリエーションのひとつ
*9:この「Dad Rock Slowhand Simpleton」が何なのか、結局分からなかった…「Dad Rock」=「父親が聴くような古くさいロック」の意味なので、それにスローハンドと付くので、なんかそういう揶揄だと思うけども
*10:「Dad Rock」と並列されていることからも分かる通り、こちらも「金持ちがヨットの上で優雅に聴くような音楽」という揶揄が入っているようだ。まさかの紹介記事(こっちは楽しそうに紹介してるので注意)があった
*11:日本で言う中学1年生
*12:固有名詞っぽい部分で検索しても上手く出てこないので(この曲の歌詞がヒットする始末)、この一連の話はマークの創作だろうか。意図はよく分からないが、中盤に挙がったアーティストはどれも「伊達男の・キッズに流行の」ラインナップ(ピート・ヨーンも?)になっているので、その辺のなんかの揶揄だろうか。猫と公衆電話の写真が好きな辺り、その辺はマークの好きなものっぽくもあるので、この一連の創作はもしかしたら何らかの高度な自虐かもしれないけれども…