2018年も結構経ってました。どうにも4月からの仕事場が変わってからというもの忙しいしどこか消耗が激しいのかすぐ寝るし元気が出ない。今は関東にて研修中という形で仕事や鹿児島から離れているからかなんとか多少元気な時間が出来たのでブログを久々に更新しておきます。
2018年上半期ということで、何かいい時事ネタの画像がないかと思って検索したけどいまひとつピンと来ませんでした…なので今年上半期唯一単行本の形で買ってた道満晴明『メランコリア』の画像でも貼っておきます。いつもどおり面白かったです。各話タイトルがA to Z方式だからもうすぐ終わりそうだけど…。
というか、CDを全然買わなくなってしまった。いよいよAppleMUSICで大体のものを間に合わせてしまってる。ちゃんとちゃんとした作品だなあと思ったものは購入したいけど、引っ越して鹿児島のささやかなタワレコも遠くなってしまったからCDショップの敷居がなんとなく高い…。
聴いたもの全部という訳でもなく、ただ聴いたものの母数も少なく…だらだら書きます。順番はただのA to Zとあいうえお順。たった10枚。ディープなやつは他の人たちのブログ等を当たってほしい。これは所詮自分の半年分の日記を、一夜漬けで処理したものに過ぎないのだと思う。寂しい限りです。
1. 『In Colors』ART-SCHOOL
もう前のブログ記事(もう)で十分書いたし、特に言うことはないです。強いて言うなら、これだけザックリとライブ向きに仕上げた作品を前に、自分の仕事や身体の都合でライブ観れなかったのは勿体ないっすね。短めの尺で、ざっくりバンドサウンド。歯応えのいいタイプのアートスクールというか。
2. 『POLY LIFE MULTI SOUL』cero
…いや、確かに私は最初拒絶感のあるツイートをしてたような気がします。ああ、黒人音楽掘るのは前作で終わったから次は南米感・リズムのポリリズム感とかなんかそういうので纏めたんですね、アート・リンゼイっすねこれは知性だ知性だ、みたいな冷めた反応を、条件反射的にやってたんだと思う。
最終曲に据えられたタイトル曲の、線が細いままに、インテリ感は幾らかそのままに、とてもソリッドな佇まいに驚いた。ともすればアダルティな雰囲気ものって聴き流してたエレピの反響っぷりが、この曲自体の淡々と静かに加速して先鋭化していくヴィジョンを踏まえたときに反転してそら恐ろしく聞こえたとき、私は東の方を向いて謝りました。それにしてもどうしてこの人たち急にこんなに尖りまくっててどうもダークで冷たい音楽になってるの?まるで南米を通過したポストパンクのよう…って結局アート・リンゼイなのか。
それにしても前作までまだ残っていたような「街のウィットに富んだ俺達」感が見事に消え去ってるのは驚く。『魚の骨 鳥の羽根』の変なコーラスがアルバム通してポップな一局面に聴こえるくらいに、どうにもダークなコード感を終始感じる作品だった。その奥にある、歌詞の部分からも浮かび上がってくるであろう魂のストーリーの部分までは把握できていないのが正直なところ。でもこの、“シティポップ“概念を全く振り向かずに彼らが進んでいったこの混迷なる世界観は、まだまだ聴き渡る余地が沢山ありそう。
3. 『Tell Me How You Really Feel』Courtney Barnett
Tell Me How You Really Feel [帯解説・歌詞対訳/ボーナストラック1曲収録/国内盤/先着特典ステッカー付] (TRCP230)
- アーティスト: Courtney Barnett,コートニー・バーネット
- 出版社/メーカー: Traffic / MilK! Records
- 発売日: 2018/05/18
- メディア: CD
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見事な“USオルタナティヴ・ロック”なレコード、としか言いようがない。昨年のWaxahatcheeの作品となんか頭の中で勝手にごっちゃになりかけてる(というか2人とも芸風がまあ同じ方向って大雑把に言えなくもない)けども。こっちの方がザクザク感は上かなあとか、心地よいダルさの熟知の術はこちらの方が上かもと。大昔にミック・ジャガーとかがなんか発明し、ソニック・ユースやらダイナソーやらペイヴメントやらがアレした、心地よくぶっきらぼうな歌唱のテクニックが、今作では至る所で自在に羽根を伸ばしている。
1曲目にのっぺらして静かにノイジーで超越的な楽曲を据えてる辺り、実に私好み*1。そこからダークに触れ過ぎずに適度なポップさ(適度に"ポップじゃなさ”を混在させつつ)を曲に込めつつ比較的軽快にドライブしていくのは、この人ならではのカジュアルなイメージをそのままドライブさせたかのような心地よさ*2。コード弾きのザクザク感とフォーキーさとのバランスも理想的。
しかしホント、昨年のWaxahatcheeだってそうだけど、こういうタイプの音楽にとっての“正解”って何なんだろう…。単にいい曲をいい感じに演奏してぶっきらぼうに歌い散らしてくれればそれでいいじゃないか、とかいうことも考えてしまう。たまたまやたら先鋭的な感じのするceroと並んでしまったものだから、どうもこんなどうでもいいことを思ってしまう。
4. 『KIDS SEE GHOSTS』KIDS SEE GHOSTS
- アーティスト: KIDS SEE GHOSTS &カニエ・ウェスト& Kid Cudi
- 出版社/メーカー: Getting Out Our Dreams, Inc./Def Jam Recordings
- 発売日: 2018/06/08
- メディア: MP3 ダウンロード
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これはもう、どポップすぎて笑ってしまった。ヒップホップが未だに苦手な自分が、こうも普通に聴けてしまう辺り、これヒップホップなんかな果たして…ということさえ思ってしまった、このカニエ・ウエスト選手とKid Cudi氏とのコラボ作品だとかいうこの作品。正直本家カニエ先生の『ye』の方はこれに較べれば全然ヒップホップじゃん(=おれがそのまで得意じゃない感じじゃん)って感じで全然聴き込んでなくて、こっちばっかり聴いてた。
トラックがもう、判りやすい作りなんですかね。音の出し入れが、あっこれならおれも分かりますよ〜ってな感じなのか。ラップよりも歌的な要素が目立ってる気がするし、そこが判りやすくキャッチーさを摂取できるし。1曲目の中盤からのムチャクチャさで笑っちゃうしなんか痛快だし、2曲目のシャッフルに無理矢理ラップ載っけるのもダルくて心地よいし、『Freeee』のトラックはとても「ヒップホップを通過したロック」的な分かりやすさがある(と思う)。そして徹底的に泣きメロな『Reborn』とか何なん。J-POPなの?この曲よく分かんないけど優しさ出過ぎでしょ。ホントに「俺がアメリカ大統領になる」とか言ってる変なオッサンの書いた曲かよ可愛すぎるでしょ。
間違いなくカニエ先生関連の作品で一番好きだけど、これが一番好きでどうすんの?っていう感じが激しくする。ここまでブラック要素とか何とかを希釈して、分かりやすくしてくれないとおれは楽しめないのかよ…と暗澹たる要素たっぷりなのを見て見ぬ振りをして明日も生きていこう。
Mark Kozelek "Weed Whacker". Video by Luke Gibbs.
Mark Kozelek大先生の昨年中にアナウンスがあってた新作がSun Kil Moon名義じゃないことはしてやられた感があるし、そして全編アコギのエレクトロニカ+説法方式、というのは舌を巻きました。いや、フォークトロニカとかってこういうのとはまた違うような気がするし、何だろうこの…。
アコギの多重録音、ミニマルなフレーズをひたすら重ねて反復させることで生まれる音響感、このメロウさこそが今作の不思議でかつロマンチックなところ。ロマンチックな音にこの人が『Benji』ぶりに戻ってくるなんて…まあ歌唱はやはり説法方式だけれど(歌詞翻訳…?ウッ頭が…)
以前の彼の徹頭徹尾アコギ作品だと、Sun Kil Moon名義の『Admiral Fell Promises』が真っ先に浮かぶけれど、全体的に湿った、ヨーロピアンな情緒を感じさせたあれと較べて、今作はやはり『Benji』より後のMark大先生節であることは間違いない。しかし、スカスカすぎるバンドサウンドでヒップホップ的なトラック感を追求したSun Kil Moonの昨年作と較べると、説法は同じ感じなのにずっとノスタルジックでメランコリックだ。断片的に聴いて分かる歌詞だけを取っても、そんなにナイーブなことを歌ってる訳でもないんだろうけれど*3。
それにしても、わざわざPV方式で公開された『Weed Whacker』の素晴らしさは、本当に最初聴いたときとても鮮烈だった。説法方式でもここまで不思議で、ロマンチックで、感傷的に表現できるんだと、この人の根本の体幹のメロディセンスに惚れ惚れした。シャッフルのテンポでゆらゆらするノスタルジックさはまるでRed House Paintersの『Over My Head』のような永遠性をたたえている。そう、この揺らぎと、この乾いたままに透き通ったメロディの抑揚こそ、ある種の逆説的な(?)永遠なんだと、時々ぼくは思ったりするのですが。
書いたその日のうちに記事をアップしたかったので、ここで一旦切ります。後半も、流石にこれくらいならすぐに書けるはず…。