ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

2018年の年間ベスト的なアルバム(前編)

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 2018年は仕事がとにかく忙しかったです。4月から、鹿児島市内でもかなり南の、電車やバスでは通えないところに転勤になってしまって、車を買わないといけなくなって、そんな車じゃないと行けない海沿いの殺風景なところで、夜12時前後まで仕事をして家に帰って寝てつぎの朝にまた車に乗って殺風景なところに行く生活は、ひたすら日常生活に使う分の精神を削られまくっていく思いがしました。というかまだしばらく、下手するともう数年はこのような生活かもなのでもう大概しんどいのです。

 

 車を買ってしまったことで、電車やバス、場合によっては飛行機さえ乗る機会が減りました。そうなってくると、車買う以前と較べて音楽の聴き方もかなり大きく変わりました。音楽聴く時間の大半が車に乗ってる時間になりました。イヤホンを使うことが相当減って、また上記のとおりの勤務状況のため必然的に家で音楽鑑賞する時間も減りました。

 

 車で福岡や他の遠いところに行く際の音楽鑑賞における問題が「新譜を車で流しても数十分で終わってしまい、高速道路走行中では次の音楽への切り替えもサービスエリアに入らないことにはままならない」ことでした。これはおそらく解決方法はあるんだと思いますが、しかしそれを調べずに、高速利用時用の旧譜の長尺プレイリストを組んでばかりいたので、それによって新譜を聴く時間が相当減ってしまいました。

 

 リスニング環境にかかる今年のもうひとつの問題ごとについては、後半で述べます。

 

 そんな状況ですが、どうにか例年どおり30枚選んで、順番を付けてみました。例年どおり、「ロック」と括られてしまうタイプの音楽にばかり偏った、イマ感のないつまらないかもしれないラインナップですが、公開していきます。

 

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『REBROADCAST』the pillows

REBROADCAST 通常盤

REBROADCAST 通常盤

 

www.youtube.comthe pillowsの今回の新譜がとても素晴らしい。

自分はthe pillowsの傑作として『Please Mr.Lostman*1『HAPPY BIVOUAC』*2『Thank you, my twilight』*3『トライアル』*4といったアルバムを挙げるけど、今作はそれらと同等の非常に高いレベルの何かを感じれてグッと来るので、何がいいのか見ていきましょう。

 

*1:収録シングルのクオリティが高すぎるし、結果的にこのアルバムっぽい作風ってこのアルバムにしかないし、意外とそういう点で貴重なアルバムと思う

*2:「(元の言葉の意味どおりでなく、スタイルとしての90年代オルタナを想定した上での)オルタナティブロックとはどういうものですか?」という問いにスパッと答えられるアルバムのひとつだと思います

*3:このアルバムの結構思い切った録音方針(ギターを真鍋さんが全部録音する、シンセを多用する、とか)がかなり好きだったので、近年のフリクリ再録の際にさわお氏本人から「特に『Thank you〜』の頃の作品はスケジュール等の都合もあって満足な録音じゃなかったから、今回再録できて嬉しい」みたいなことを言ってたのはなんか、本人的にはそうかもだけど、ちょっと寂しかった

*4:これが出たときも今回と同じくらい衝撃が大きかった。最近では「the pillowsの歴史上でもとりわけダークで、そして山中ソロ的なエモーショナル度合いの高いアルバム」という位置づけになっている模様

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ヘヴィ・メタリックな音たち、ヘヴィ・メタリックなアルバムたち

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 確かに音楽ジャンルとしての「ヘヴィメタル」はあります。けれども同時に「メタリックな音」と呼ばれるタイプのサウンドというものもありますね。「メタル」つまり「金属質」ということで、どっちの意味でもおそらくは「メタリックである」ということではあるのだと思うのですが、ある種の様式美としてのジャンルの「ヘヴィメタル」とは異なる方の、いわゆる「エレキギターの鉄の弦の響きがそのまま硬質な音として現前している」的なサウンドというものはどういう感じなのか。

 今回はそういうのの整理をします。アコギとかピアノとか、そんな軟弱なものは必要ない*1という強い意志でもって最後まで駆け抜けていきたいですね。

 なお今回は筆者の独断と偏見に満ちた「メタリックな」アルバム*2についての言及をもって「メタリックな音」の解説に代えさせていただきますので、どういうのがメタリックな音か、どうすれば出せるか、といった話はありません。

 

*1:「トップ画像のメロトロンはなんなんだ」というツッコミ待ち

*2:例によってメジャーどころばかりだと思います。浅い…

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“ローファイ”とは結局なんなんだ

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Lo-FiLow-FidelityLo-Fi music)とは、音楽レコーディングの際の録音状態、録音技巧の一つで、極端に高音質なものではない録音環境を志向する価値観。転じて、そうした要素を持った音楽自体を表す言葉。対義語はHi-Fi

             —Wikipedia『Lo-Fi』より

 

 なのだそうだ。

 なのだそうだけれども、どうしてだろう、ある程度インディロックに浸かってしまった私や貴方のような人間が、この定義をそのままそのものとして受け止めて首肯することが、果たしてできますでしょうか…。

 今回は、「ローファイ」なる、本来は音響学的な概念でしかなかったはずのこの単語が、なんだか成り行き等によってどんな意味を持ち合わせるようになってしまったかを整理して、そしてその結果どんな作品が「ローファイ」に含まれるようになってしまったか、まで書いてみようと思います。

 

 

2022年10月30日追記:

 色々とレイアウト変更や作品のサンプルになる動画の追加、そして特に、この記事を投稿した当時では存在すら認識してなかったけどもひょっとしたら今日においてはこっちの方が”ローファイ”として有名かもしれない”ローファイ・ヒップホップ”について大幅に追記しました。

 

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ギターロック10選(後編)

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(前編・後編ともにトップ画像のギターがジャズマスターなのは仕様です)

 後編です。10選のうち6〜10番目。正直ギターロックとオルタナティブロックと何が違うのか分からなくなってくるラインナップだと書いてて思いました…。せめてシンセとかが入って無い曲だけでリスト組もうとも思ってたけどキュアー入れちゃったし。

 考えていけばいくほど、ここで言ってるギターロックという枠組みは、現代においてとても不自由な形態のように思えます。幾分か分厚い歪みのギターを鳴らせることを条件に、シンセ・シーケンサー、キーボードなしの演奏をしないといけない。かといってハードロック・ヘヴィメタルの方に行ってもいけない。マッチョさを感じさせず、どことなくナード的な風味を残し、かつ使用できる楽器がベース・ドラムと、そしてもう何十年もサウンドが研究・開発されすぎて、新しい奏法や音が出せる気がしない、ギターとかいう楽器。評論家にバカにされ、音楽家にバカにされ。そもそもが、トラックメーカーがPC1台でできることを、4人前後集まってやっとでしか演奏することができない、音の自由度でもトラックメーカーに全く及ぶことのできない、バンドとかいう不自由・不合理の塊。

 でもですね、現代の自由で刺激的なR&Bやヒップホップの世界観でしか描けない風景があるのと同じくらいには、ギターロックでないと現せないような風景だってあるんだということは言いたい。たとえ「インディロックがブルジョアな青年男女の慰みものに堕してしまった」という言説がある程度事実であるとしても、この形式でしか、この制約でしか出せない音はあるんだと思います。すっかり言葉どおりのオルタナティブさが失われてしまったかもしれない“オルタナティブロック”も、そういう音や、そういう演奏をしているところが好きであれば、それはもう、トラックメーカーがどれだけ合理的で現代的で先進的であっても、それは仕方がないこと。

 年老いたロマンだとか、視野狭窄だとか、感性が貧しいとか、貶す言葉は自分の被害妄想体質からか幾らでも絞り出せるけれども、それでも好きならば仕方がない。ヒロトマーシー的な「最初にギターをジャーンと鳴らしたときが人生の絶頂」という感覚をそのままファズ・ディストーションに浸して、どこまでも阿呆のように、何か新鮮さを求めながらもやや退屈げに、ブルースにドライブしていけばいいんだと思います。

 

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ギターロック10選(前編)

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 そもそもギターロックとは何ぞや。検索してもWikipediaの記事すら出てこない。大体ロックという音楽はギターを使うのが普通なんだからロックは概ねギターロックなんじゃないのか。それにギターロックが創造的だった時代なんてとうに終わってしまって今やR&Bやヒップホップの方が刺激的で云々・・・。

 上記のあれこれ全てどうでもいいので、ひとまず自分がこれはギターロックだなあ、いいギターロックだなあと思うものを10曲、選んでみましょう。選んでいるうちに、とりわけ“ギターロック”というタグを付けたくなる音楽が、そうではない音楽と具体的にどう違うのか、なんとなく見えてくるかもしれない。その差異の向こうの何らかの情緒が、規律が、衝動性が、きっとギターロックという概念のフォルムなのでしょう。

 正直なところ、隠れた名曲なんて1曲たりとも出てこない、実にありきたりな、逆に言えば王道を突っ走らんとする選曲を前半と後半で合計10曲、年代順に列挙していきます。

 

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SONIC MANIAで観たMy Bloody Valentineがすごかったこと

 今年はサマソニ本編には行かず前夜祭のはずのSONIC MANIAだけ行きました。メンツがずりーよ。

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 鹿児島から幕張メッセまで車で行ったのですが、それはまた別の機会に話すとして、ともかくこのときに観たマイブラが、ちょっと想定してたのとは全然違う感じに、とてもとてもかっこ良かったので、それについて書いておこうと思ったものです。

 

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2018年前半で聴いた音楽(後編)

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後編です。「前半で聴いた音楽・後編」って前後どっちだよっていう。

ハンターハンターは今年中にもう1回くらい再開しますかね…?王子達の描写が増えてきた話進む!と思ったら突如大量に新勢力出てきたときはアホかと思ったけど果たして…。

 

あと、ジャケの写真代わりにAmazonのリンクを貼ってる訳だけど、SpotifyかAppleMUSICのリンク貼った方がいいのかな。自分Amazonにはややアンチ寄りだし。はてなブログの編集画面に選べるやつが出てくるようカスタマイズとか出来るんかな。私Spotifyの方はやってないけども。

 

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2018年前半で聴いた音楽(前編)

 

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2018年も結構経ってました。どうにも4月からの仕事場が変わってからというもの忙しいしどこか消耗が激しいのかすぐ寝るし元気が出ない。今は関東にて研修中という形で仕事や鹿児島から離れているからかなんとか多少元気な時間が出来たのでブログを久々に更新しておきます。

2018年上半期ということで、何かいい時事ネタの画像がないかと思って検索したけどいまひとつピンと来ませんでした…なので今年上半期唯一単行本の形で買ってた道満晴明メランコリア』の画像でも貼っておきます。いつもどおり面白かったです。各話タイトルがA to Z方式だからもうすぐ終わりそうだけど…。

というか、CDを全然買わなくなってしまった。いよいよAppleMUSICで大体のものを間に合わせてしまってる。ちゃんとちゃんとした作品だなあと思ったものは購入したいけど、引っ越して鹿児島のささやかなタワレコも遠くなってしまったからCDショップの敷居がなんとなく高い…。

聴いたもの全部という訳でもなく、ただ聴いたものの母数も少なく…だらだら書きます。順番はただのA to Zとあいうえお順。たった10枚。ディープなやつは他の人たちのブログ等を当たってほしい。これは所詮自分の半年分の日記を、一夜漬けで処理したものに過ぎないのだと思う。寂しい限りです。

 

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『In Colors』ART-SCHOOL

ART-SCHOOLのニューアルバムがリリースされました。

In Colors

In Colors

 

発売されて1週間以上が経ちましたが、今回かなり聴きやすい感じがして、ならばきっと書きやすいだろう、という見立てで、順番すっ飛ばしですが全曲レビューになります。フルアルバムとしては通算で9枚目。今のメンバーになってからでも通算4枚目。いつの間にかキャリア中のフルアルバムの半数近くが今のメンバーじゃないっすか。


ART-SCHOOL「OK & GO」MUSIC VIDEO

 

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