ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

素敵な歌詞botで翻訳した気に入ってる15曲part2

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アカウントのアイコンやヘッダーにしてる2枚のレビューまだかかりそうっすかね…?

 私が運営してる「素敵な歌詞bot」において翻訳した楽曲の歌詞の、個人的に気に入ってるもの15個を取り上げる記事の、第2弾です。この曲の歌詞の、こういう感じがいいよねー、っていう記事です。翻訳がどうこうより、単純に元の歌詞がいいんです。あとこのブログの他の記事でも取り上げたことのある楽曲が比較的多いかも。

 

 第1弾は以下のとおり。

ystmokzk.hatenablog.jp

 件のbotで呟くこととしてる楽曲一覧は以下の記事のとおりです。ここ数日で15曲ぐらい追加しましたので今回記事を書いてます。これ、一字一句そのまま載せないといけないから1ツイート140字の制限が厳しい邦楽よりも、自分の超訳などで強引に140字以内に収められる英語詞の方がなんかやりがいを感じます。

ystmokzk.hatenablog.jp

 bot自体はこちら。

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 並んだ順番に順位とかはありません。単なる「botに登録したのが古い順」です。

 

1. Pictures of You / The Cure(1989年)

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 このブログでも度々出てくる曲。この曲が長大な名盤『Disintegration』の2曲目にあることはあの深淵なアルバムを格段にキャッチーで聴きやすくしてるし、そしてあの作品集の2曲目を務めるに相応しい幻想的なサウンドと、そしてThe Cureらしい狂おしい悲恋を描き切ってる。ある意味で一番典型的なThe Cureの楽曲はこれなのかもしれないと思う。

 

2. Teenage Riot / Sonic Youth(1988年)

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 USオルタナティブロック勃興期の3大名曲*1のひとつ、としてしまってもいいだろう名曲。Sonic Youthなのにシックでポップにギターを掻き毟りながら歌い飛ばしていく爽快感だけがあって、彼らの楽曲でもとりわけロックアンセム感のある曲。なお、収録アルバム『Daydream Nation』はこの曲の後はどうも聴きにくい曲が多いなって今だに思ってしまってる。そういう意味で、冒頭に置かれたこの曲は最高に詐欺的な1曲目。

 

3. Dear God / XTC(1986年)

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 アルバム『Skylarking』の「ソフトなサイケたるべし」みたいなテーマからは確かに外れてしまう楽曲かもしれないけど、『Skylarking』のどの曲よりも優雅さ・シニカルさ・ヒステリックさに満ち溢れた素晴らしくキャッチーな楽曲と、そして西洋圏でこんな歌詞書いて大丈夫なの?アメリカ在住だったらマジで殺されてたかも、なキリスト教に対する辛辣が過ぎる歌詞とが強烈過ぎる楽曲。映像も非常に比喩と示唆に富んでてかつ1980年代のクリップにしては古びた感じもせず素晴らしい。

 今回取り上げる中で一番1ツイートに収めるのに無理な量を詰め込んだので、相当翻訳を端折りまくってる。でもそれがいい意味で硬い文体になってていいと思う。

 

4. Let Down / Radiohead(1997年)

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 「歌詞が世界の困難ではなくて単に自分のツアー疲れによる感情が出てしまってて恥ずかしい」みたいな理由で長年ライブで演奏されて来なかった(by 田中総一郎)とかいう曲。「移動」というテーマによって書かれた歌詞も、広い範囲のことを歌ってるようで読む人が読んだら実に個人的な話に見えたりするもんかな、と今回歌詞を読み直して思った。それにしても、彼ら史上でも最上級に「ロック的に」美しい曲の一つだなあと惚れ惚れする。サマソニで生で聴けて良かった。

 

5. North Marine Drive / Ben Watt(1982年)

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 この、簡素な演奏と寒々しいリバーブ感と、後アルバムジャケからのイメージとそしてこの歌詞によって作られる風景の、実にもの寂しい感じが、初めてこの曲を聴いたときからずっと染み付いて離れない。「悲しい」とかそういう単語を一言でも入れてしまうと壊れてしまうくらい、透徹した涼しげな寂しさだけで彩られた美しさ。あらかじめこういう世界観で人生が塗られてたかのような。

 なお、今住んでる福岡市は北側が海に面してて、今住んでるところはその北の陸地の端まで1kmもないとこに住んでる。車で走って数分の、実に味気ないノースマリンドライブができる。

 

6. Season Of The Shark / Yo La Tengo(2003年)

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 Yo La Tengoのソフトサイドの楽曲でもとりわけ大好きな1曲。よく考えれば「サメの季節」って何だ…?って結構前から考えてたけど、歌詞を読んでみても訳してみても、その言葉の意味するところは今ひとつよく分からなかった。「サメみたいに気が立ってしまってる状況」みたいな意味なのかな。ここ最近の日本におけるサメがゆるキャラ的に扱われてる現状もあって、その辺の意味がより可愛らしく思えてくる。本当にこの曲は可愛い。

 

7. Crazy For You / Best Coast(2010年)

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 この曲も何回このブログで動画を貼ったことやら。インディーロック須らくかくあるべし、と言いたくなるような、極上にシンプルでジャンクでサーフでポップな2分弱。これ以上何が必要なんだ?ってこれを聴いてる2分弱の間は本当に思ってしまう。猫がPV撮影班としてやたら出てくるのも可愛いけど、撮影大変だったんだろうな。歌詞も「何も考えてない状態」を考え尽くされて書かれてるような別にそうでもないような適当に韻を踏んだだけのような。翻訳してて一番楽しかったかも。

 

8. Black / The Jesus & Marry Chain(1998年)

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 弊ブログのジザメリ特集記事で今までちゃんと聴いてなかったのを非常に反省したアルバム『Munki』の中でもとりわけ苦汁が滲み出してて重苦しくも勇敢なギターロックで、まるでNeil Young的に感じれた曲。ダークな曲のタイトルをそのまま「黒」ってしちゃって歌詞も韻踏み重視なシンプルさなのが実にジザメリらしく、それでいてしっかり虚無感が書けているのが実に面白い。言葉を繰り返しで用いて文章として無感情的な虚無感が出てくることがあると思うけど、これがそれだなあ、と思った。

 

9. Fight This Generation / Pavement(1995年)

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 飄々とロック概念をバカにしていられた時期が終わってしまう頃のPavementの、実は裏でキリキリしまくってた感じが実は実によく分かる1曲。解散後相当後に出たベスト盤で、明らかにベスト盤向きじゃなさそうなこの曲を最後に収録した意味を考える。重く揺れて軋む3/4拍子のリズムから演奏を崩壊させながら不穏さ・不機嫌さに満ちた8ビートに転換するところの重々しさ。上記の訳出はそのリズムチェンジの前と後両方の内容を含ませたもの。「この世代と戦う」って、彼らの中ではどんな意味だったんだろう。

 

10. Ocean Breathes Salty / Modest Mouse(2004年)

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 アルバム『Good News For People Who Love Bad News』の頃のModest Mouseの、音源にしろPVにしろお金かかってそうな、その分それまでより格段にビビッドになった感じは何なんだろう。躁的な祝祭のパレード感がある『Float On』もそうだけど、まだ幾らかいつものModest Mouseなこの曲も、幻想的にトレモロするギターやポップなフック、PVの一面のひまわり畑で描かれる映像は実に鮮烈で、そして歌われた「死別した二人の感傷的な海辺の逢瀬」は更に鮮烈。Eeleの『Last Stop:This Town』と似た構図だったことを今更知った。

 なお、以下のブログにこの曲の歌詞全訳が載ってます。参考にしました。悲痛さが駆け巡る、素晴らしい歌そして翻訳だ。。

ranaldou.hatenablog.com

 

11. Do Re Mi / Kurt Cobain(1994年?)

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 この曲は結局Nirvanaメンバーでは演奏されてなくて、発表されたデモも別メンバーでの録音ということなので、Kurt Cobain名義にしといた。もし彼がこの曲みたいなメロディアスな楽曲をアコースティックなバンド編成で量産してたら、彼はグランジとは別の方向に偉大なSSWになってたのかもしれないと、この曲を聴くといつも思う。投げやりそうな単語の配置の中に滲む繊細さ、そして不吉な「黄金の銃で流血」のくだりが何とも言えない。

 

12. Country Girl / Primal Scream(2006年)

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 「うっせーロックンロールすんだよーッ!」っていう具合のBobby Gillespieのがむしゃらなロックンロール魂が、最も抜け良くポップに構成された場合、こんな曲になるんだなあとリアルタイムで聴いて思った。ケルト的にもブルーグラス的にも解釈できる野暮ったくもけたたましい弦の鳴りが楽しい中、ひたすらダーティーにぶっ壊れた風景を勢いよく歌い上げるBobbyは本当にロックンロールスター。PVも限界までアホっぽい暮らしっぷりを考えて映像化してみました、って感じで、アホだなあ、最高な感じ。

 

13. Save Me / Aimee Mann(1999年)

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 Aimme Mannで一番有名な曲はこれってことでいいのか。まあ日本ではメジャーじゃない人だけど、向こうだともっと他に代表曲があるのか。この人の場合、渋そうな歌声や演奏の割に意外とこってり展開してOasisばりに歌い上げる楽曲も多かったりで、派手な歌歌いたいのシックにいたいの?と戸惑うことが時々あるけど、その点この曲のことば数の少なさやメロディ配置の絶妙に病んだ風な雰囲気は完璧。歌詞の方でも、救いを乞うてる割にはめっちゃ上から目線な挑発的な感じが雰囲気出てて素晴らしい。

 

14. Up In Hudson / Dirty Projectors(2017年)

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 ここ10年でも類を見ないほど徹底的に作り込まれた「失恋アルバム」だったことが分かった彼ら(から“彼”になった後)のセルフタイトルアルバムの、最も赤裸々なことが歌われていたのがこの曲。Dave Longstrethが途中からバンドメンバーなりそして恋人になったAmber Coffmanとの出会いから別れまでのエピソードは内容があまりに具体的で、どこからが脚色か解りづらい。本人も解ってないかもしれなかったらエモい。訳出した箇所とは別の箇所に「そして君に”Stillness is the move”を書く」と書かれてるくらい具体的。

 これも、以下のサイトのこの曲の全文翻訳を参考にしました。

kumaa-wayaku.blogspot.com

 

15. Do You Know The Way To San Jose』Dionne Warwick(1968年)

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 日本でも多くの人が耳にしたことがあるであろうこのBurt Bacharachの大名曲のひとつに、上記のような歌詞があることは今まで全然知らなかった。この曲はロサンゼルスでスターになった代わりに色々なものを失った人が地元のサンノゼに帰りたがってる、というストーリーのようだ。こんな軽やかに鮮やかに華やかに歌われてる光景がそういうものだったのに軽く驚いた。

 それにしても、歌われた1968年当時のサンノゼと、今やアメリカでも有数の産業都市なサンノゼとの隔たりはどれくらいのものなんだろう。今の目線でこの曲の歌詞を読んだら、ロスで失敗してもサンノゼのIT関係の友達に再開できればどうにかなりそうな感じもする。

 

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 以上、15曲でした。前回のThe Bandの記事の文字数の1/4も書いてないけど、たまにはこういう軽い記事とか書いときたいです。また翻訳が溜まったら第3弾を書きます。

*1:他の二つはPixies『Debaser』にDinosaur Jr. 『Freak Scene』。いや、Pixiesはどの曲にするかで割れてしまうだろうな。