ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

『Flora』ART-SCHOOL

Flora(初回限定盤)(DVD付)

Flora(初回限定盤)(DVD付)

 

 日本のオルタナティブロックバンド、ART-SCHOOLの通算4枚目のフルアルバム。アルバムタイトルは、ローマ神話に登場する花と春と豊穣の神・フローラから取られている。また、前作シングル『テュペロ・ハニー』から続けて、プロデューサーとしてROVO益子樹氏を迎えて制作された。ジャケットはそこはかとなくイギリスのロックバンドThe House Of Love*1の1stアルバムを想起させるもの。昔は単に「またお得意のパ…オマージュだよw」とか思ってたけど、今このアルバムのサウンドを聴くと、この寄せ方は意思表明だったのかな…なんて考えてしまう。

House of Love

House of Love

 

 ART-SCHOOLの全曲レビューについては、一番最後が2017年12月の『テュペロ・ハニー』となっており、 相当間が空いてしまいましたが、このアルバムは本当に素晴らしい、大好きな作品なので、もっとサッと書けたはずで、こんなに間を空けてしまった自分が恥ずかしくなりますが、ひとまず書いていきます。木下理樹さんも体調不良から復帰したっぽかったし。。

 ポップで、音がキラキラしていて、これまで以上に晴れと暗がりをしっとりとした中で行き来するアルバムです。ややボリューミーすぎるけど、彼らの最高傑作候補のひとつと思っています。

 

*1:代表曲のリンクを貼っておきます。アートがかつて『アパシーズ・ラスト・ナイト』で引用したリフの曲。

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『Crispy!』スピッツ(リリース:1993年9月)

CRISPY!

CRISPY!

 

 初期スピッツの4枚を一気にレビューしていった訳ですが、ここまではまだ「初期スピッツ」という分かるようで分からないような概念がバックにあったから、自分の中でも作品や楽曲の見取り図が立てやすい感じでした。またブレイク後のアルバムも、それぞれ色々な趣向がありながらも、どれもバンドのナチュラルな魅力が十分に備わっていると思います*1

 ただ、そのブレイクまでの時期のスピッツというのはやや宙ぶらりんな状態だと思います。まだ『空も飛べるはず』の後追いヒットがあった『空の飛び方』は、ブレイク以降のスピッツの基本的な武器が揃ったようなアルバムになっていますが、その前のアルバム━━今回取り上げる『Crispy!』については非常に微妙な状態で作られたアルバム、と言える部分がある。売れるべく、人気プロデューサー・笹路正徳氏を迎えての制作だったけれども、果たして…。

 しかしながら、ではなぜ「微妙な状態」だったのか、その状態で作った曲はどうなのか、っていうか初期スピッツ引きずってる曲もまだあるじゃん、っていうかこのアルバムまでが「初期スピッツ」じゃね?等々も含めて、色々聴き返して発見があったりするのが、こういう微妙な時期のアルバムだったりもしますので、その辺を念頭に置きながら、1曲ずつ見ていきます。

 そういえばいきなり余談ですが、タワレコ40周年のポスターにも、なぜかこのアルバムジャケットが選出されています(下画像の真ん中らへんにあります)*2。なぜこれなのか謎だけど、このアルバムのファンがいたのか、それともタワレコ挙げての今作の復権運動なのか…。ちなみにこのジャケット写真のモデルは草野マサムネさん本人だそうです。

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*1:『スーベニア』だけちょっとオーバープロデュース気味かなあ。

*2:全体的にライト気味な選盤かなあと思った。オシャレさを重視した感じがざっと見て感じられた。ザラザラしたロックっぽさが避けてあるのかなと。

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『惑星のかけら』スピッツ(リリース:1992年9月)

惑星のかけら

惑星のかけら

 

 現在のスピッツの新作が発表されました。

natalie.mu全曲レビュー始めたところにタイムリーだなあと思いました。スピッツは新譜を出そうとしてるのにおれは20年数年も前の作品をグチグチ言ってて何なんだおれ…とも思ったり。

 

 今回は彼らの3枚目のフルアルバム。『惑星のかけら』と書いて「ほしのかけら」と読みます。前作ミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』とのリリース間隔は僅か5ヶ月…どういうスケジュールなの…。室内楽的要素の強かった前作からの反動で、アグレッシブなバンドサウンドの構築を目指した作品です。ただ他にも色々なトライアルをしている感じも。部族感ある男の子のジャケットが妙にフェティッシュ

 普通は今作までを「初期スピッツ」と呼びます。なので初期スピッツ最終章。

 

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『オーロラになれなかった人のために』スピッツ(リリース:1992年4月)

オーロラになれなかった人のために

オーロラになれなかった人のために

 

 スピッツの、メジャー以降のキャリアでは唯一のミニアルバム(5曲入り)。99ep』?シングルでしょ曲数的に。

 そんな、キャリアを通じても異色なリリース形態で登場したこれは、作品としてもかなり特殊な存在。前作の『魔女旅に出る』でオーケストラアレンジを担当した長谷川智樹氏が全面的にアレンジに入った作品。つまり、オーケストラアレンジやストリングスアレンジが非常に重視された作品で、曲によってはバンド演奏が全然無いものもあり、つまるところ草野マサムネソロアルバムじみた作風になっている。

 よって、バンドサウンド的な楽しみはかなり限定される作品で、そういう意味では相当厳しいが、では歌とゴージャスなストリングスだけのつまらない作品かというと全然そうではない。むしろ「初期スピッツ的な狂気や幻覚剤的作用を最も先鋭化させた作品」かもしれない。どういうことか。各曲を見ていきましょう。

 

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『名前をつけてやる』スピッツ(リリース:1991年11月)

名前をつけてやる

名前をつけてやる

 

 日本のロックの名盤としてすぐに上がりがちで、また日本の猫ジャケでも真っ先に上がりがちなスピッツのメジャー2枚目のアルバム。1枚目と同じ年のうちにリリースされてて、その制作ペースの速さと、それに全く釣り合わない名盤具合とに翻弄されます。

 そんなサクッとできた制作行程をリスペクトして、この記事もサクッと書き上げたいところではあったけど、とてもそんなこと出来なかったな…意外といけました。とりあえず種々の前置きはせずに、サクッと本編に入ります。

 

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『スピッツ』スピッツ(リリース:1991年3月)

スピッツ

スピッツ

 

 何度か始めようとしては頓挫してたっぽいスピッツの全曲レビューを、ひとまずこのファーストアルバムからまた始めます。『ヒバリのこころ』はかなり前にやってたけども、その続き的な。

ystmokzk.hatenablog.jpちなみにこの記事、このブログの前身の「粗挽きサーフライド」というブログの記事実質1本目だったんですが、その前身ブログを先日消去しました。記事は完全にこの現行ブログに移行できてますのでご心配なく。

 

 それにしても、この奇怪な盤がスピッツのプロキャリアの始まりというのがやっぱり不思議でならない。初期のエレカシとかといい、色々懐に余裕がある時代だったんだなあ…どっちも初期から才能ヤバすぎるけど。

 なお、リリース当時のポリドール盤ではなく、リマスターされたユニバーサル盤を元に今回書いていきます。今後も『フェイクファー』まで基本的にユニバーサルよりリリースされたリマスター盤で話を進めていきます。だって音量バランスが揃っててプレイリストとか作りやすくなってるんだもの。原盤の方が本当の良さが〜という話もあるかもしれませんが…。

 

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2019年前半の音楽アルバム9枚part2

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 最近後付けで記事を増やしてる気がするこのブログ…。

 

 前回の記事の続編です。というよりも、前回の分以外で新たに9枚選んだという感じです。前回の方が順位が上な感じは否めませんが、中には素で忘れてた…系もあります。

 例によってアルファベット順。今回はあいうえお順の分は登場しません。そしてサムネ画像で盛大にネタバレしてるから速攻Spotifyのプレイリスト貼るのも前回と一緒。

  • 『Gallipoli』Beirut
  • 『(Same Title)』Better Oblivion Community Center
  • 『Schlagenheim』Black Midi
  • 『ALL THE LIGHT』GRAPEVINE
  • 『This(Is What I Wanted To Tell You)』Lambchop
  • 『Remind Me Tomorrow』Sharon Van Etten
  • 『Union』Son Volt
  • 『ANIMA』Thom Yorke
  • 『IGOR』Tyler, the Creator

 

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2019年前半の音楽アルバム9枚

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 今年の前半が終わりましたね。平成もついでに終わったし、令和になってめでたいことは特にないし、何が令和だよ。個人的には色々と停滞して欲しくないところがすごく停滞して惨めになった半年でした。音楽も4月以降はムーンライダーズばっかり聴いてたし、今年の新譜〜って気分にもなかなかならなかった部分があったんですが、色々と姿勢を正してみると、一応こんな感じで9枚提示することとなりました。

 今回はもう最後に総評とかしないでサクッとやりますので、逆にここに総評書くんですけど、洋楽5枚・邦楽4枚。洋楽5枚が全部白人男性。こんなのポリコレ的に許されるんですかね…という不安を抱きながらも、しかしながらロックバンド中心で洋楽を聴いているとなんか、どうしてもこの層に偏ってしまう…。R&Bとかジャズとかになれば黒人バンドも出てくるかもだし、ラテンとかそういう方向もあったんかもですが、自分の趣向がそっちに向かない限りは、こんな風になり続けるのかなと。いくらでも石を投げつけてくれればいいんだと思います。あっでもリアル投石は物的損失がデカいから勘弁。

 あと、Spotify課金デビューしました。Apple Musicも継続していて、結局スマホで新譜探すのはApple Music、PCではSpotifyという謎の使い分け。スマホで扱う分にはApple Musicの(というかiTunesの)インターフェイスに慣れ親しみすぎている。

 Spotify始めたので、今回の9枚による推し曲プレイリスト作りました。参考になるか知りませんけども良かったらぜひ。

 あとはいつものように、各アルバム毎の短評を書いていきます。順番は単にA→Z、及びあいうえお順ですので順位とかないです。あしからず。

  • 『Shepherd In a Sheepskin Vest』Bill Callahan
  • 『Let's Rock』The Black Keys
  • 『Why Hasn't Everything Already Disappeared?』Deerhunter
  • 『I Am Easy To Find』The National
  • 『I Also Want To Die In New Orleans』Sun Kil Moon
  • 『光の中に』踊ってばかりの国
  • 『がんばれ!メロディー』柴田聡子
  • 『HOCHONO HOUSE』細野晴臣
  • 『Ghosts』ミツメ

 

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【10万PV記念】ウケが良かった記事10選

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 弊ブログの総PVが10万を超えました。

 10万PVについてちょっと調べたら「一ヶ月で10万PV稼ぐブログの作り方」とかそういう記事がたくさん出てきて、なんか10万PVって別に取り立てて喜ぶようなことでもなんでもなく、アフィで稼ぐ目標でするんなら月ごとに到達して当然、みたいな数字なのか、と思うと冷静にならなければ、と思ったりもしますが、それでも、たとえ低レベルなことだと言われても嬉しいのは誤魔化せません。

 今まで弊ブログを読んでくれてた方々、ありがとうございます。感謝に堪えません。これからもどうぞよろしくお願いします。

 今回は、この10万PVまでのゆっくりした歩みの中で、割とウケが良かった記事を思い返して、これからのPV稼ぎの励みにしようという、手抜きと打算と懐古とが入り交じったとても個人的でいやな記事です。

 なお、あくまで『ブンゲイブ・ケイオンガクブ』というブログを立ち上げて以降の記事に限ります。それ以前のブログのことはあまり気にしないでください。

 

 

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もっとムーンライダーズを聴いていける10曲

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80年代のムーンライダーズの方々若い…このコンセプチュアルな佇まいが80年代の彼らっぽい。

 

 前回の記事がじわじわと広がっているのに気を良くして、もう10曲選んでみたので紹介していきたい、という記事です。選曲あっという間だった…。前回の記事はこちら。

ystmokzk.hatenablog.jp

 前回よりややマニアックか?そうでもない気がする。そもそもムーンライダーズ自体がマニアックか。しかしその音楽的な面倒くささやヘンテコさの中には、数え切れないほどのアイディアと詩情とが渦巻いています。さあ、もう10曲だ。

 

 なお、流石にもう10曲あれば、全メンバーの楽曲を取り上げられそうな模様。これについても全然悩まなかった。。

 

2022年1月8日追記:彼らの全オリジナルアルバム(22枚でカウント)を取り上げた記事も書きました。長いです。。

ystmokzk.hatenablog.jp

 

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