ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

2013年の個人的年間ベストアルバム(20枚)2/5

つづき。16位→13位。
やっぱ重い。ツイート上のYoutubeのリンクまで拾うから重い…。
動画表示できないようにできるっぽいが…。

『三日月ロック』以降という括りがあるが、その作品群の中でもとりわけ地味な作品となった今作だけど、むしろニュートラルになった感じもして好き。近年まれに見るストイックな一曲目『未来コオロギ』、作風がどことなく『ハヤブサ』〜『三日月ロック』のカップリング曲っぽい雰囲気で懐かしくなった『りありてぃ』、近作の「スピッツっぽくない枠」曲の中でもとりわけ爽快な『野生のポルカ』、どことなく『渚』〜『不思議』辺りの系統と感じる『エンドロールには早すぎる』、今作でも一番メロディやギターの感じが往年のスピッツ感あって好きな『スワン』などなど、粒揃いだった。アルバム全体で50分切ってるのもいい。多分今年発売のCDで最初に買ったのがこれだったはず。上述の通り最高の並びな前半後曲が試聴時とてもハートキャッチだったのを覚えてる。This is Yo La Tengoなイントロから最高な『Ohm』、ソフトな演奏でうっとりしてストリングス付きのコーラスで引っ張られる『Is That Enough』、スモールでポップなのがキュートな『Well You Better』(この曲のエレピすごくいい)、コンパクトに「いつものノイジー・ドライブ・ロック(適当な造語)」をしてみせる『Paddle Forward』は短い中にも美味しい展開が詰まってて勉強になるし、とろけるようなギターといつものテンポ早めの8ビートとささやきボーカルの組み合わせな『Stupid Things』は構成・演出とも言うこと無し。彼らのアルバムをどれも全体の流れでしっかり聴けるだけの集中力がないおれにホントとても優しいアルバム前半だった。ぼくが彼の音楽を好きになったのはやはりブライアン・ウィルソンと『Smile』の絡みあたりからなのだけれど、彼の音楽を好きになったのも『Smile』を聴いて以降だった。こういうのの研究をアメリカ史でやることもできたかもと思うとやめたくなりますよ〜人生…。そんな『Smile』とかなり密接に関係する68年の『Song Cycle』から実に45年後(!?)のこの作品はもう、そんな「アメリカーナ」な音楽を一身に背負った作品になるだろうことは明らかで、そして実際にそんな風(に聴こえる!)。どの曲が、とかじゃなく、次々に飛び出してくる「アメリカの歴史と風土にまみれた音楽のおもちゃ箱」な感じにどっぷり浸かれる12曲。68年との違いは年月のこととリバーブ感が薄くなったことによる、どっしりとした現実感覚かなあ。ぼくももっとアメリカーナ系の音楽聴かなきゃ(使命感)『TWANGS』『真昼のストレンジランド』を「中堅から大御所に移行しちゃいそう二部作」(結果的に二部作)と勝手に決めつけて淋しくなってたおれを試聴期の前で思い直させるのに十分すぎる、ついでに『アナザーワールド』の再来感もある素晴らしいバイン節『無心の歌』が聴こえてきた時の嬉しさを覚えている。その雰囲気を継承する『1979』、そして歌詞にロクな意味なさそうな『コヨーテ』の腰砕けな演奏に至って、あ、このアルバムは絶対いい!と思った。老成を遥かに越えて達観しちゃった風な地点から、華麗な「後退」、いい意味で「中堅臭」のするアルバムだと思った。ブルース感と爽やかなメロディのサビと「もはや冗談にならなそうな」茶化し(あれっそれってブルースじゃね)がないまぜになった『うわばみ』には『女たち』で見せてたバイン流ブルースポップ新機軸のその先が見えて拍手したくなるし、というからここから最後までの四曲はバイン史上でも特にぐっとくる曲の並びだった。
行かないか/かつてのようには若くないのがおっかないが/
 失った夢の続きを見るのだろう/ろくでなしの夢を

なんてフレーズを近年でも最高にポップなフレーズで歌う今のバイン本当にいいバランスだなって思った。
3/5につづく。