ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

2008年の曲たち(20選・2/2)

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後半です。10年前と思えない感じのやつや、もういないバンド・いない人等々。A to Z→あいうえお順なのでこの後編の方が日本人多めですってかそれ以外が2曲しか無い。

ところでiPhoneって日本上陸して今年で10年になるそうです。すごい。まさか音楽の聴き方まであんなにスマホベースなものになっていくなんて10年前でそこまで思えたものだったんでしょうか。

 

11. Mrs. Shelly Crown / SHEBETS

Mrs. Shelly Crown

Mrs. Shelly Crown

  • provided courtesy of iTunes

アルバム『MIRCLE』〜『MAD DISCO』の頃のSHERBETSは、その前やその後と較べるとやや辛い時期。特にこの編の年代は、浅井健一ソロがあった際”ソロの曲もSHERBETSメンバーで録音する”とかいう頭おかしいことをしていて、よくバンド解散しなかったな、他メンバーどんな気持ちだよ*1…と思う。けれども特に『MAD DISCO』の方は、玉石混ざり過ぎだけど玉の方の出来はかなり上々で、特にこの曲はソロでも演奏されていたり、曲中で「ワールド!」って叫ぶのを気に入ったのか後に色んな曲で使い倒してる始末。実際この曲の緊張感とダークな華やかさはこのアルバムならではでとても好き。

 

12. The Light / Sun Kil Moon

Sun Kil Moon - The Light (original version, 2008) - YouTube

何気にSun Kil MoonでこういうRed House Paintersからの面影が残るNeil Youngっぽさ全開のハードナンバーが十全に聴ける最後のアルバムがこの年の『April』で、特に豊かに歪んだギターでとても朴訥なカントリーソングをしてるこの曲は、RHPからの何らかについての最終系のように感じれて、余計に曲の哀愁感が増して聴こえる気がする。アルバムとしてはこれともう1曲の冒頭2曲が良すぎてしかもそこだけで平気で15分以上あるから、なんか満足して他のアルバムとかに換えてしまいがちなのが難点といえば難点。

 

13. 来週のヒーロー / syrup16g

syrup16g - 来週のヒーロー.wmv - YouTube

そういえば2008年はシロップが1度解散した年だった。3月1日をもって解散10周年となるみたい、解散10周年てなんだ。現役でやってくれてる今の有り難みを思うと不思議な。当時の“ラストアルバム”は五十嵐の弾き語り感マシマシな楽曲+オーバープロデュース気味で評判がややややな上に未収録で下手したら未録音な未発表曲を大量に残すことになったけれども、この曲辺りはバンドらしさがどことなくあってホッとするし曲の出来も力強い。それにしてもこの曲もギターのダビングが多いな。

 

14. He's A Rocker / The Vines

www.youtube.com

The Vinesのこの年のアルバム『Melodia』は彼らの作品でも抜きん出て良かった。たまたま同時期だったからというだけでガレージロックリバイバル勢の一員として扱われたバンドだけど、今作の2分前後の曲がずらりと並ぶ様は曲目表示見てるだけで圧巻で、確かに下手なガレージバンドよりも精神性がガレージかもしれん。この曲もアルバム冒頭『Get Out』も2分ちょっとの尺でCメロまで入れ込んでしまう余裕ぶり。カラフルでポップな曲はホントにそんな感じだし、非常にキッパリとしてて清々しいアルバム。

 

15. Sabaku / Zazen Boys

Sabaku ZAZEN BOYS - YouTube

2008年はZAZEN BOYSがコンスタントに作品を出していた最後の時期でもあったんだなあ。いやあでも『4』は今聴いても最高ですね。それまでの鉄壁のバンドサウンドを更に練り上げた楽曲と、シンセ導入の新機軸の楽曲と、そして久方ぶりのちょっとのセンチメンタルをデイヴ・フリッドマンで煮込んだアルバムはザゼンで最もカラフルで寂しげで、そんな状況の詩情が吹き出すこの最終曲の哀愁は向井の歴史でも格別なもの。この時期以降のザゼンを支えた吉田一郎も2017年には脱退してしまった。それでもひなっちより参加期間が長いのには微妙に納得いかなさはある。けど何にせよさみしい。

 

16. フロンティアのパイオニア / 奥田民生

フロンティアのパイオニア

フロンティアのパイオニア

  • 奥田 民生
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

奥田民生も2008年に素晴らしいアルバムを出した。『Fantastic OT9』はポップな曲も多くアレンジのアイディアにも富み、演奏もマニアックすぎない広がり具合があって、彼の最高傑作候補の一角(最有力候補)だと思う*2。この曲はPUFFYが同年のシングルでカバーしてる。ともかく延々と展開していくメロディが特徴で、歌のサイクルが非常に長い。その上で奥田民生ロードムービー感がバッチリ出ている。ロードムービー奥田民生の曲で良くない曲なんか無いもの。

 

17. スマトラ警備隊 / 相対性理論

相対性理論 - スマトラ警備隊 (High Quality) - YouTube

見返してみても、2008年邦楽での最大のトピックは結局このバンドの登場なんだろうなと、改めて考える。サウンドだけ取れば別に異次元から出てきた訳でもなく出自はある程度明確で、やくしまるえつこのボーカルだってこの時点では超ぶっきらぼうで後年の独自のキャラクター感はないのに、なのになんでこうも絶妙なんだろうなって不思議でならない。この“なんかディストピアな世界観だけど登場人物はどうも無気力でちょっとかわいい”感じというのが、当時どうしてあれだけフューチャー感があったのか。後発は結局、ここまで絶妙さを産み出せていないと思う。ああ、思い出語りをいちばんしてしまうのがこれなのが何とも悔しいし仕方がない。

 

18. 予感 / 渚にて

渚にて - よすが - YouTube

ややこしいですが上のPVで流れる曲名は『予感』です。渚にての女性の方が作る曲的な、なんとも浮世離れした感じのとろけるようなサイケデリア感を、男性の方が作る曲的なカッチリしたスタイルで録音してあるこの曲はこのユニットの楽曲の中でも特殊な簿¥柄傘があるような感じがしてとても好きです。この平然と果てしない感じ、多少暖かい昼間とかに寝ながら聴いてると気持ちがいいです。

 

19. 記念写真 / フジファブリック

www.youtube.com調べてみたら、志村正彦の死からまだ10年は経ってなかった。『TEENAGER』が2008年のアルバムで、このアルバムはポスト志村時代のフジファブリックと割と直接繋がる感じがあるなーと思ってたらこの曲とか志村曲じゃないものなあ、と気付いた。けどこのアルバムの頃の一番フラットな「ちょっとセンチな若者」感の軽妙さ・スムーズさはとても貴重な感じがして、聴き返すとこの絶妙に鈍く拙げな声質が愛おしくなる。

 

20. ソフトに死んでいる (12" instrumental remix) / ゆらゆら帝国

ゆら帝の解散前最後の音源リリースも2008年だった。奇怪なリミックスが跋扈するこの2枚組において、このトラック…歌も、ドラムも最早無い(ベースはギリある…?)、この音色がギターによるものなのか何らかのシンセなのかさえよく分からない、ひたすら意味無さげに鈍く揺らめくだけのこのトラックが、ゆら帝全音減の中で一番トラウマになっている*3。原曲の要素もギリギリまで希釈されたこの感じは、たとえばマザー2におけるギークのように底なしに不安で、不穏で、退廃的で虚無的で、これが行き着く先なんて嫌だ、と思いながらも、これでしか味わえない情感を求めて時折聴いて、果てしない気持ちになったりする。

 

2008年の20曲でした。これを書いてて、2008年頃やってた自分のブログとか見返してみようかなとか、思っても無いようなことを思いました。

*1:正直ソロ1st『Johnny Hell』は明らかにSHERBETSメンバー録音の曲のクオリティが他メンバー録音より上だし、また同時期のSHERBETSアルバムより平均点高くて、なんかもう…タイトル曲までSHERBETSメンバー録音だったのは流石に笑った

*2:そこいくと2017年の『サボテンミュージアム』は割と真逆気味のベクトルからの最高傑作候補って感じがする

*3:フランキー・ティアドロップのカバーよりも怖いっす