ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

『Pomason / tape drug』NYAI

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Pomason/tape drug - Single

Pomason/tape drug - Single

  • NYAI
  • インディ・ポップ
  • ¥458

music.apple.com

 最近仕事が忙しかったり体調が悪かったり先のことの準備を考えないといけなかったり鬼滅の刃にはまってしまったりといった具合になかなか時間が取れてないですが、今回のこれなら2曲だけといういい感じのサイズなので、サクッと書けそうな気がしました。サクッと聴いてサクッと楽しんで、そんで後からジワジワ効いてくるのにいい感じのナイスなシングルです。というか2曲ともPVがYouTubeに上がってるし。

www.youtube.com

www.youtube.comやっぱPVを、しかもこういうアニメーション的なのをバンドが自前で作ってるのは何気に相当すごい。

 

 

 「ライトにデッドな感覚をドライブさせるツールとしてのロックンロール」がいつからインディーロックに求められるようになったのか知らないが、でも今回福岡のインディーロックバンド・NYAIがサクッとリリースしたこの2曲入りシングルは、そんなインディーロックの命題に存外真っ向から勝負した、軽やかなままウンザリして、ウンザリなまま楽しげな楽曲たちだ。

死んだ目の君 きっと今も淀んでる

 非常に軽快にロールしていく『Pomason』において、その短いBメロに置かれたこのフレーズがとてもキャッチーで清々しく響くことの意味。彼らが従来から得意としていたパワーポップの系譜のように思えながらもその実いつになく軽いギターのサウンドが印象的なこの曲で、そのライトでポップな佇まいが少し崩れるBメロにこのフレーズを狙って置くことの意味を考える。リード・リズム両ギター共に歪みの少ないサウンドで鳴らされることで、小気味よくバタバタしたリズム、楽曲をリードしていくベースライン、そして平板なようで展開や符割りに凝った楽曲自体の良さが滲み出てくる。『Pomason』はそんな、さり気なくも爽快でキャッチーな楽曲だ。

 

 対して、もう1曲の『tape drug』については、彼らのオルタナティブロックへの情景をふつふつと、ねっとりと表出したミドルチューンに仕上がっており、そのやや重たげなフォルムは非常に軽やかな『Pomason』と好対照を成す。シューゲイザー的ともスマパン的とも捉えられそうなディストーションギターの重ねられ方、特に繰り返されるリフの怪しげな燻りは彼らの楽曲でも珍しく幻惑的。また、大雑把なAメロから少し展開して、そしていつの間にか力強いサビ的なメロディに到達している、という楽曲の流れ自体が、強引なようで巧みな、オルタナティブロックの妙味を体現している。特にうねり倒す部分とルートゴリ押しとを切り替えるベースの動きが楽しい。

綺麗な誓いが揺らいでいる それはひしゃげて壊れている

荒涼としたサウンドに、どこか荒涼とした風情と、吹き飛びそうな僅かばかりの希求が載せられたリリックもまた、その凛々しさの具合はまさにオルタナティブロックの本命であり宿命であるようなところを感じる。

 

 以上のように、実にさりげなくも強力に誂えられたこのNYAIのシングルを聴くに、2ndアルバム『HAO』がタワレコメンに選ばれ、そしてキイチビール&ザ・ホーリーディッツ等が所属するレーベル・LD&Kに所属するようになったりといった大きな変化の中で、彼らの理想的な“力み”を、この“力んでない”ように聞こえる2曲から感じました。ライブの回数や地域もどんどん広がっていって、「福岡の」バンドが「福岡発の」バンドに変わろうとしてるそんな貴重な時期を見てるんだなあと思ったりもしました。早速アルバム『HAO』からのリカットシングルがまたリリースされるみたいだし、この調子でどこまで行くんだろう。楽しくウォッチしていきたいと思います。

 

Pomason/tape drug

Pomason/tape drug

  • 発売日: 2020/01/22
  • メディア: MP3 ダウンロード
 
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  • アーティスト:NYAI
  • 出版社/メーカー: PTA/Living,Dining&kitchen Records
  • 発売日: 2020/04/22
  • メディア: LP Record