楽曲の疾走感を損なわないよう一気に駆け抜けていきたいART-SCHOOL関連作品のレビュー書き直しもとい記事リマスター、これで6つ目の記事です。
今回はバンドのメジャーデビュー後初のシングル『DIVA』です。4曲入り。東芝EMIからのデビュー。これは同じ東芝EMIだったNumber Girlに憧れて*1、とのこと*2。
このシングルは、対応するアルバム『Requiem For Innocence』とともにサブスクに解禁されていません。レンタル等で比較的入手しやすいアルバムに対して、このシングルは入手が少し難しいかもしれません。B面集のおかげで、このシングルでしか聴けないのは今や1曲だけですけども。
前の作品『シャーロット.e.p』の記事は以下のとおり。
前書き
「アルバム用の曲を一気に録音して、その中からシングル曲を選んだ」と木下理樹がインタビューで話しているとおり、ここに納められた4曲はアルバム用のセッションで録音されたものの一部、ということになりそうです。
ただ、興味深いのが、ネタになるくらいに疾走曲だらけなアルバムに対して、このシングルではタイプの異なる楽曲4曲をチョイスして収録している点です。そもそもシングルの収録曲が4曲というのは、普通2曲、もしくは新曲2曲+そのリミックスとかカラオケバージョンとか、になりがちなシングルというフォーマット*3においては曲数が多い方だし、バンドが4曲でもひとつの作品として提示できるよう作った感じがします。これで当時1,000円だったとか。
4曲のバラエティの取り揃え方も中々のもので、メジャーデビュー曲としての煌めきと勢いを持った曲、バンドのハードでダークな側面を示す曲、短い尺で爽快に駆け抜けていくポップな曲、内向的な感覚に虚無感を滲ませた曲、と、4曲入り作品としてなんとなくいい具合の並びになっていると思います。うち、表題曲ともう1曲がそのままアルバムに収録されます。
ジャケットは写真となり、これはRadioheadのThom Yorke、の兄がかつて所属していたバンドUnbelievable Truthというバンドの1stアルバム『Almost Here』のジャケットのオマージュ。調べたら、このアルバムもサブスクに無いみたいです。少々地味だけど、ゆえに派手に誇張したところの無い、しみじみとした、どこか北国的なヒステリックさの漂うフォークロック集です。
本編
1. DIVA(3:04)
メジャーデビュー曲に選ばれるに相応しい、ポップで躍動感に満ち、躍動感の象徴としてふんわりしたミドルテンポから疾走するサビに繋がる大胆さを持ち、木下ボーカルのファルセットとシャウトという二大武器も披露し、尚且つ当時のバンドの一触即発的なテンションの高さも含有した、その上で尺が3分ちょっとに収まった欲張りな楽曲。彼らの駆け抜けていく苛烈さを多くの人に向けて表現するのに、ずっと同じテンポの疾走感よりもこの大胆な楽曲は効果的だったのかもしれない。
この曲の最大の特徴はやはりテンポチェンジで、まるで全然別の曲のセクションを強引に繋げたようにさえ思えるその切り替わり方の鮮やかさが、この1曲に様々な要素を盛り込むことに役立っている。元々の持ち味だった2つのセクションだけで曲を作る特性が、この曲ではかなり別々なセクションとして設けられた。
イントロ〜Aメロで展開されるミドルテンポのセクションにおいては、彼らの象徴とも言えるシンプルでキラキラしたアルペジオを晴れやかに展開し、ドラムもベースもゆったりした音符の中で低めの重心で躍動し、そのギャップにスケールの大きい感じが宿るアンサンブルになっている。歌が始まると、いきなり高音で半ばシャウトするかのように歌う木下のボーカルも、溌剌とした感じとファルセットとを巧みに併用し、解放感の中にほんの少しファンク的なフィールも織り交ぜる。この曲、リズムの取り方の大きさや2回目のAメロの伴奏のギターカッティングなど、ほんのりファンク的な要素が混入しているのもまた特殊で例外的。また、歌う前のブレスも積極的に録音・強調しており、そういった面でもセクシャルな雰囲気を表現している。
それに対してハイハットのチョップを合図にテンポチェンジした後のサビのセクションでは、それまでの16ビート気味なテンポから一転、疾走曲のテンポに様変わりして、上昇していくリードギターの伴奏や駆け出していくリズム隊、バックで繰り返される絶叫コーラスを従えて、それまでよりも低い音程から始まるメロディが直線的に突き抜けていく。サビで音程が上がるのが普通なところをあえて下げてくるのは、加速するテンポと逆の動きをすることで、テンションのままにはしゃぐのではなく、もっと強かにやらせてもらう、といった意志を感じる。とはいえ、サビのメロディの最後でファルセットで高音に抜けていくのは、その自然なメロディ運びといい、最後の仕掛けの伏線として働くことといい、この曲でもとりわけ上手な仕掛けだと思う。
2回目のサビが終わると彼らの楽曲で定番のブレイクのセクションに入り、力強いベースと慎ましやかなアルペジオを響かせながらも、熱が収まらないうちに、リズムの復活とともに木下のファルセットで「Hold me, Touch me, Kiss me, Kill me,」と歌われる*4。この辺をキモいと思うか、官能的な趣を感じれるかで、このバンドの評価は別れてくるのかもしれない。その後本格的にバンドサウンドがゴツゴツした躍動を再開した後もこの木下の呪文を唱えるかのようなファルセットは続き、最後のサビに向けたスネアロールの上で遂に絶叫に変わる。その、世界が張り裂けてしまうような感覚こそ、この曲の一番の醍醐味だろう。
最後のサビでは、それまでファルセットで歌っていた高音をシャウトで声を枯らさんばかりの、捨て鉢のような勢いで絶唱し、バンド全体のキメでバシッと演奏が止む。先程までの熱狂が嘘のようにあっさり止むその終わり方は、まるで手際のいい詐欺にでも遭ったかのようだ。
歌詞についても、特にポップで朗らかなAメロに、1回目は様々な病んだワードを、2回目は美しい光景を織り交ぜて、光と闇の両極を端的に示すような構成になっている。
此処*5へ来て この傷跡は 美しくて 深いから
俺の罪 その皮膚の中 誓い合って腐った
冬の朝 この宇宙の色 君が吐いた澄んだ息
手を伸ばして 触ろうとして 音も立てず崩れた
そして、ずっとずっとテーマになっていく、喪失の感覚がサビで疾走していく。この虚無感の鮮烈さをデビュー曲で叩きつけてくる辺り、表現の焦点はもういきなりしっかりと定められていた、という感じがする。
Touch me, Diva いつか気づいてたんだ
君の髪も 匂いも この気持ちさえも
ただ消え去っていくって そんな気がしてさ
ひたすら喪失と感傷を振り回していくバンドART-SCHOOLの、まるでこれは宣言のような一節のように思えてしまう。前作の「破滅のファンタジー」から「忘却と喪失の予感」への移行。そしてこの”予感”はそのまま来るアルバムの予告にもなっていく…と考えると、やたらと出来すぎた歌詞のようにも思えてくる。
以上のように、アルバム用に録音して行った中で一際キャッチーだからシングルにした、という経緯では説明しようがないくらい、色々と気合の入った風に感じなくもない楽曲。しかしながら、ライブでの登場回数はそこそこだったりするのが不思議。まあ、メジャー調の疾走曲は『ロリータ キルズ ミー』と『車輪の下』で枠埋まってる感じあるもんな…。曲タイトルは1981年のフランス映画『Diva』から。なので「歌姫」という意味のこの単語の意味するところを歌詞から読み取ろうとしても無駄だと思う。
2. メルトダウン(4:10)
メジャー調で鮮烈に炸裂した前曲から打って変わって、閉塞感と、その中での絶望的な感覚とを叫び倒す、ミドルテンポで重い、今作で最もグランジ要素が強く出た楽曲。一気に暗く重くなるのは、このシングルで初めて彼らに触れた人にバンドの振れ幅を効果的に伝える役割を果たす。なお、『DIVA』と共に後のアルバムにも収録される。
冒頭の砂嵐チックなSEも、その後のコード感やギターアルペジオのフレーズも、荒涼感を漂わせている。SEは『ステート オブ グレース』に似てるが、その後の重苦しいコード感以降の展開はまるで異なる。アルペジオの内容は『ガラスの墓標』に似た感じなのだが、聴いた印象はそれより幾分息苦しさが増している。淡々としたリズム隊も重いが、更にそこに拍子足らずで進行するソングライティングが合わさりいよいよ切迫した雰囲気。歌も息絶え絶え気味ではあるが淡々と進行していく。このAメロのメロディはThe Wannadies『Shorty』からの引用が指摘されているが、全然違う調性に載せて歌われる。なおかつ小節が終わりきる少し前に切り上げて次の小節に向かうことで、より息苦しい行進の感じが出ている。この閉塞感のありようは、似た調子のはずの『ガラスの墓標』が開放感に満ちてるように感じられてしまうくらいのもの。
その強固な閉塞感は、いくらか唐突気味にサビの絶叫とグランジ的なギターリフで痛々しく打ち破られる。この曲はこの痛ましい様こそが聴きどころなんだろう。特に、奇妙なうねり方で反復し続けるリードギターの存在感が木下のシャウトとともに目立つ。意外にも、ハイハットやライドシンバルの代わりにタンバリンが連打されていて、重苦しいこのサビにおいて不思議な存在感を放っている。
とりわけ、2回目のサビ以降の、バーストしたサビの勢いのまま「yeah」のフレーズを繰り返しながら展開が伸びていく箇所にこの曲の演奏のピークが用意される。Aメロと同じくサイクルの尺を少し短縮した展開で焦燥感を煽りながら、気怠げだった歌唱がどこかで一気に身を投げ出すように破滅的なシャウトに切り替わるところが、この曲のグランジ精神の最も発露するところだろうか。独特のみっともない程に掠れ倒したシャウトの具合を堪能できる。特に最後のサビは全ての「yeah」がこのシャウトなため、ひたすら傷ましさを放ちまくった後に唐突に止む演奏のギャップで、なんとも言えない余韻が残る。アルバムであればこの後同じく重苦しい雰囲気の『サッドマシーン』に繋がっていくが、シングルだとこの直後ポップに開けた次曲が流れてきて、サッとモードが切り替わる感じで、この曲順の感じも捨てがたい。
歌詞は、これは『シャーロット.e.p』からの流れが分かりやすい、「破滅のファンタジー」にどっぷりと浸かった世界観をしている。
君は笑って 死んで 僕は光を射った
ノースマリンの海へ 誰一人居ない子宮へ*6
此処は寒くて きっと 凍え死ぬだけ きっと
ロレッタが見た夢は 次は愛される そんな夢
いつの間に一人立ってた?閉ざしたままで 誰にも触れず
いつの間に偽り 此処へいた?
君には青を 冷たい花*7をあげるよ
典型的な「美しくて尊い”君”を喪失して孤独に苛まれる”僕”」という木下理樹の世界観が明快に、少し気持ち悪さも込みで提示される。前曲で「破滅の予感」だったのが、こちらでは「破滅の光景」にスライドしている。あくまでファンタジー、という感じではあるけど、それにしては痛ましすぎるのはサビ後のシャウトなどにも現れている。
3. レモン(1:55)
ここから2曲が後のアルバム『Requiem For Innnocence』に収録されず、長らくこのシングルでしか聴けないとされていた曲。そのうち特に人気があったこの曲は、後のファン投票B面集企画では収録間違いなしだろう、と思ってたけど実際ちゃんと収録された。
僅か2分足らずの尺で、別に疾走曲でもないのに2回のAメロと3回のサビを収め、なおかつ真夏の水と太陽のようなポップさを自身の「破滅のファンタジー」に絡めて鮮やかに歌った”隠れた名曲”。メジャー調の罪のない感じのポップさにも長けている木下理樹のソングライティングが端的に現れた、本当に無駄のない1曲。
サウンド的には、UKギターポップ的に煌めいて弾けたアルペジオと、『foolish』で見せたのと同じアームで揺らした歪んだギターとの対比が印象的。どことなく最初期Primal ScreamとかThe Stone Rosesとかそういうギターポップバンドな雰囲気で、歌詞からは想像もつかない瑞々しさは、メジャー調のコード感もあって、この時期の楽曲でも格別の爽やかさが感じられる。この曲を『プール』というタイトルにしても良かったんじゃないか、と思うくらい。
この曲が優れているのは、短い尺の中でメロディの緩急や昇降がきっちりとなされていること。Aメロの短さが全体の尺の短さに大きく貢献していて、イントロがある曲だというのに、曲が始まって30秒足らずでサビに突入してみせる。バタバタと連打されるスネアのフィルインに導かれて始まるサビは、スネアを2回打つリズムの取り方がピースフルで、この曲の朗らかな明るさを象徴する。メロディの昇降はシンプルながら甘酸っぱい感じがして、またどこか自棄っぱちのようなシャウト気味な歌い方にかえってインディーなポップさが宿っているように思う。そのインディー感は、その後ブレイクで展開するサビの末尾のフレーズの低音メロディのボソボソした歌い方にも出ている。そこからファルセットで抜けるのも独特の鮮やかさがある。
彼らの楽曲にお約束の2回目サビ後のブレイクを省略して、その後最後のサビまでをドラムのタム連打とファルセットで繋ぐ辺りは、曲のフレッシュさも勢いも連続させたまま最後に繋ぐことに成功していて、尺が短くなることにも貢献していて、実に巧妙な曲構成に思える。そこから最後のサビの最後の絶唱の裏でサッと演奏が止んで、歌い終わりのブレスが余韻として残るところは、同時に曲の尺を短くすることにも繋がっていて、曲構成と印象とを同時に満たす、本当に巧妙な手法だと思った。
そんな爽やかな楽曲なのに、歌詞はやっぱり「”君”が死んでしまう」形式の木下理樹なファンタジーになっているのが、なんというかこの時期徹底してるな、と思えてしまう。こんな爽やかな曲でも”君”を死なせないといけない、そんな当時の強迫観念をさえ感じさせる。むしろこの曲くらいポップに「君は死んだ」と歌った方が、The Smiths的な捩れの感覚は大きくなるのかもしれない。
彼女は云った 私を深く沈めて 彼女は云った 水の中へ
"You're My Sunshine" そう云って 君は死んだ 頬染めて
僕はずっと 見とれてた 彼女は死んだ とても澄んだ朝に
後にART-SCHOOLメンバーとなる戸高賢史の、第一期の曲群の中でのフェイバリットがこの曲らしい。そんな感じに、多くのファンから密かに愛され続けた楽曲。それはもしかしたら、第二期以降にとりわけ花開く*8、木下理樹のメジャー調の伸び伸びとしたポップさの原点を、この曲に求めることができる気がするからかもしれない。B面集でこの曲に寄せたコメントを見るに、曲タイトルはUSインディーバンドThe Lemonheadsへの憧れからと思われる。それでこんなにUKな仕上がりになるのか…とは思ったけど。もっと言えば、スピッツフォロワーの側面もあるこのバンドの特徴が、歌詞ではなく音として、最も初めに出たのはこの曲なのかもしれない。
同じく夏っぽさのあるメジャー調で、アームで揺らすギターの入った第二期ART-SCHOOLの楽曲『FLOWERS』は、どことなくこの曲のリメイクじみた風情がある。この曲の大ファンな戸高賢史のこの方向へのプッシュがあったのか。
4. TEENAGE LAST(3:08)
シングルの最後には、第一期の楽曲でもとりわけプライベートな感覚のある、宅録じみた密室感の中で静かに各楽器の慎ましやかな音響を愉しむ具合の楽曲であるこの曲が収録された。タイトルが木下ソロのミニアルバムのタイトルと同じなので、その頃すでにあった曲のバンドによるリメイクなのかな、とも思う。
ここまで3曲の音の詰まり具合から一転、音数の少ない中を淡々と進行していく暗い歌、といった雰囲気は本格的に内向的だ。木下本人はEelsやThe Folk Implosionからの影響をこの曲に関して語っていて、それはおそらく、バンドサウンドの「メンバーの楽器が全部鳴ってるのが基本」みたいな地点から離れた、アーティスト個人がハンドメイドで最小限の楽器を配置する素っ気無い感じのトラック、というものに対する愛着の表れなのかなと思う。こういった、バンドサウンドに捕らわれない宅録めいた小品は今後もシングルのカップリング等でちょいちょい出てくる。
演奏の中心となるのはギター、ではなくて、ベース。特に第一期の頃の木下理樹はベースラインで曲を作っている節があるけども、この曲はそのベース(とささやかなドラムのリム)だけが伴奏となっている箇所が多く、その分音響的にはスッカスカになり、この曲独特の侘しさが醸し出される。ベースも他の曲で鳴ってるようなギャリギャリした音ではなく、トレブルを殺した、少しダビーな質感のそれになっている。所々で和音も織り交ぜて弾かれるそれは、日向秀和というベースプレーヤーの、表現の幅が狭く限定されたART-SCHOOLにおける貴重なアナザーサイドの表現の場になっている。
そして、サビで出てくるピアノのシンプルなアルペジオが、他の楽器が少ないことから、決定的な存在感を果たす。こんな静かな曲なのにやたら張り裂けるように歌う木下理樹のヒステリックさを、この穏やかな音質のピアノがソフトに受け止める。特に終盤の同じ和音をシンプルに連弾するところのたどたどしい感じはかえって魅力的。
メロディ自体は演奏の柔かさほど柔和ではなく、むしろ緊張感・切迫感を感じさせる。特にサビのジリジリ紅潮するメロディがファルセットで解決する辺りは典型的に木下的なメロディセンスが判りやすい。ちなみにAメロのメロディは後に『Bells』*9に使い回される。『ミーン ストリート』もそうだが、初期のバンドのこういうバンドカラーから外れた曲は何故かメロディを再利用されがちで、初出時は不完全燃焼だったんだろうか、と思ってしまう。
歌詞も、前2曲のような「破滅のファンタジー」を大々的に歌うような感じではなく、その元となる人間の、どこか個人的な情緒を呟くような趣がしてる。
灯りが綺麗 僕には似合わないな
灯りが綺麗 毎日照らさないで
注射器. 愛. レモンティー. 破滅について
美しい人よ 君には真実を云うよ
触れていたって 誓ったとして 生まれた瞬間も 死ぬ瞬間も
一人 一人で
特に「一人」と連呼する箇所に、どことなく、ファンタジーに昇華しきれなかった、当時のメンバー間のディスコミュニケーションの中での孤独な感じが出ているのかな、と思えもする。その感覚はこの年の次の年、2003年の作品群でいよいよ本格的に中核となるテーマになってくる。
『レモン』がB面集に収録された今、廃盤なこともあり入手が微妙に困難なこのシングルを買わないと聴けない楽曲はこの曲のみ。東芝EMI時代の廃盤音源は配信販売もされてなかったりで入手が難しい部分があるけど、個人的には、彼らのこのシングルよりも先にまずは『SWAN SONG(disk1)』を買うべきだろう、とは言っておきます。
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後書き
以上4曲、合計時間12分17秒でした。
1ヶ月後に出るアルバムの前哨戦な性質の作品なので、このシングル用の録音ではなく、アルバム録音のストックの中から取り出した4曲、というところがミソなのかなあと思わされます。アルバムのハイライトは出し過ぎないようにしながらも、バンドの名刺代わりの作品には仕立てたい、というバランスの取り方として、考えれば考えるほど「この4曲が模範解答かなあ」と思うような並びになっているなと思います。確かに『DIVA』が表題曲な前提で、ここに『サッドマシーン』や『アイリス』を入れたらバランス悪くなりそうだもんな。アルバムの山場をしっかり出し惜しみしつつ、でも最善を尽くした曲の並び。最善を尽くしすぎて『レモン』という隠れた名曲が紛れ込んでしまいますけども。
何気に、メジャー調の曲とダークな曲が交互に現れる曲順になっているのも、バランスが考慮された結果なのかもしれません。シングルでこれだけバランスを取っておきながら、アルバムでは冒頭4曲連続で疾走曲、なんてのをやるのが、ART-SCHOOLというバンドではあるけれども。
以上です。次はいよいよ、下北沢系ギターロック文化遺産の1枚とも言えそうな、象徴的な1stフルアルバムになります。
追記:アルバム書けました。
*1:その後向井秀徳がZAZEN BOYSで日向秀和を獲得するのは妙に縁のある話。
*2:Number Girl 等を見出した当時の東芝EMIの名ディレクター加茂啓太郎の力もあったかもしれない。
*3:そもそも2021年において”シングル”という物理的フォーマットがどこまで有効なものなんだ…?配信シングルとかは1曲単位でリリースするのが普通だもんな。隠れた名曲、とかが出てくる余地が無いから配信シングルは寂しい。カップリング曲文化は、作る側は作らないといけない曲が増えて大変かもだけど、でも古いリスナーの立場としては、拭い難い魅力を感じてしまう。
*4:U2の楽曲『Hold me, Thrill me, Kiss me, Kill me』のオマージュだとされる。映画『バットマン・フォーエヴァー』の挿入歌のひとつとしてリリースされた。
*5:前作から急にこういう漢字の使い方が目立つようになった気がする。
*6:Ben Wattのソロアルバムのタイトルだった世界観を母体回帰的なものに接続してしまう、さらりとその引用の仕方は危うくないか…?と思えるようなことが為されている。孤独な漢字の意味合いが大きく変わってくるもんな。
*7:多分the Brilliant greenの1998年の同名曲は別に関係ない。というか何か共通のモチーフがあるのか。
*8:この曲と同じようにB面集に収録された『それは愛じゃない』などなど。
*9:アルバム『LOVE / HATE』に収録。