ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

『UNDER MY SKIN』ART-SCHOOL(2003年9月リリース)【リマスター記事】

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 ART-SCHOOLの全作品レビューのとりあえず『LOVE/HATE』まで書き直しを目指すレビュー記事の、これで10個目になります。

 「白鳥の歌」と題したいかにも最後の作品っぽいものを出したにも関わらず、一応は終わらずにシングルを、それもとても強力なシングルをリリースしてくる当時のバンドは、内情ボロボロのはずなのに案外無茶苦茶にタフです。一連の2003年の作品群の終着点となるアルバムに向けた3曲入り先行シングル、といったところ。

 なお、このシングルもやはり廃盤状態ですが、表題曲はこの時期でも随一の代表曲なのでアルバムは勿論のこと後のベスト盤にも収録され、またカップリングの2曲もさらに後のB面集コンピに両方とも収録されたため、「このCDを入手しないと聴けない曲」は現状存在しません。

 前作となる「白鳥の歌」と題した作品についてのレビューは以下のとおり。

ystmokzk.hatenablog.jp

 

前書き

 一連の記事でずっと情報源にしているMARQUEE誌の木下理樹全曲解説インタビューを読む限り、このシングルの楽曲はもう完全に『LOVE/HATE』用のセッションの中から出来た楽曲のようで、正真正銘、アルバムからの先行リリースと言えそうです。

 それにしても、7曲の新曲をリリースした前作からわずか2ヶ月で次のシングルとして3曲の新曲をこうやってリリースし、その2ヶ月弱の後には9曲の新曲を含むフルアルバムをリリースする*1、というリリースペースは、まあ同時期のsyrup16gがより強烈なペースで作品をリリースし続けていたことの影に隠れてしまいがちではあるけども、それでも十分にものすごいリリースペースだと思います。少なくとも、これから一度実質解散することが決まったバンドメンバーが生み出す楽曲量ではないんじゃないかと。

 そして、このシングルの表題曲はそれこそバンドの長いキャリアの中でも屈指の代表曲として多くのファンに愛され、またライブで「演奏しないことが無いのでは」レベルで演奏されている、という、そんな強力な楽曲が出てくるというのもまた、解散直前のバンドらしからぬ話*2。また、カップリング2曲も大変良曲で、しかもどちらも、第二期ART-SCHOOLの作風の方により親和性のあるアレンジをした先駆的な楽曲となっていて*3、聴きどころは多いです。バンドの壊滅的状況と裏腹に、この頃の木下理樹の作曲能力と木下・日向を中心としたアレンジセンスが絶頂を迎えていたことが伺えます。

 ジャケット・ブックレット裏・CD盤面のイラストはギタリストの大山純によるもの。アルバム『LOVE/HATE』にはイラストが使われていないので、ART-SCHOOL内で彼のイラストが使用されるのはこれが最後。ただでさえ抽象的な感じのイラストがさらにエフェクト加工によってぼかされていて、これはどこか「感覚の不全」を訴える楽曲の歌詞に沿っている気もします。もしくは、精神的にとりわけ追い詰められていたという当時のギタリストの姿に。

 ちなみに、リリース当時のシングルにはワンマンツアーの情報と、この後に来るアルバムの告知が記された紙が入っていますが、この段階ではアルバムタイトルが「未定」となっていたりします。12月末のCOUNTDOWN JAPANでのライブでの日向・大山の脱退をもって終了する第一期ART-SCHOOLですが、その終了までの道のりはとても過密なスケジュールだったようです。

 

 

本編

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1. UNDER MY SKIN(3:44)

www.youtube.com

 これまでの彼らの重要な武器であった要素、オンとオフの激しさ、オフの際の可憐なアルペジオ、魂を投げ打つようなシャウト、太いベースライン等々のそれらを最もシンプルにまとめ上げることで強いキャッチーさを得た、バンドの代表曲となった疾走曲。シンプルに徹した曲構造の中に、この時期のバンドならではの無機質で制御不能気味な攻撃性や虚無的な繊細さがコンパクトに収められており、この時期の詩情のダイジェストとも言えそうな歌詞共々、聴き飽きていようが耳に入れば決して無視できない存在感を放つところは、やっぱり名曲なんだと思う。

 いかにもオルタナティブロックなギターのフィードバックノイズが棚引いた後に現れては曲の間ずっと演奏され続ける、獰猛でダークで太く荒いベースラインの存在こそ、この曲の要と言える存在だ。実質ベースイントロで始まるこの楽曲は、同じベースイントロで始まるバンド最初の音源の1曲目だった『FIONA APPLE GIRL』からの進化を如実に物語る。The Cureの代表曲のひとつであろう『Love Song』のリフめいたベースラインを大胆に借用*4しながらも、よりダーティーに弾き倒し、そしてその印象を増幅する後半部を練り出したこのフレーズは、不穏でありながらとびきりキャッチーな、奇跡的な完成度をしていると思う*5

 このベースを旗印に、ギターが歪み倒して噴き上がったり、ニューウェーブ的な透明感のアルペジオを弾いたり、といった形ではっきりと切り替わる様も、繊細げなメロディを繰り返していくAメロからThe Police『So Lonely』的なリフレインの仕方を見せるサビへはっきり切り替わる様も、どこか一定の単調さの中で機械的に切り替わりを繰り返しながら直進していく。ギターのオンオフの潔すぎる感じは『FADE TO BLACK』のそれからサビの爆発を抜いてサラッと流していくかのような様相をしている。コード進行自体はずっと変わらず、延々とⅣ→Ⅲ→Ⅵ→Ⅴの循環を繰り返し続けていく*6。最後のサビの縦ノリに辿り着くまでのその単調に通り過ぎていく様に、ある種の自然な感覚が損なわれている雰囲気を感じたり、自然な景色の中に滲む荒涼感・無情感みたいなのを感じたりすると、この曲の単調に流れていく様がやたらと心地よく感じられてくる。間奏等で聴けるリードギタートレモロ奏法はオルタナ王道的な熱さがあるはずなのに、どうしてこんなに薄らとした殺伐さばかり感じられるんだろう。

 この曲に、彼らのメジャーデビュー曲『DIVA』のようなドラマチックさなど求めようもない。だけど、逆にその"ドラマチックでなさ”こそが、この曲の大いなる魅力なんだということ。

 単調さの中にも、“その単調さを壊さない”程度に、木下理樹的なフックが色々と備えてある。同じメロディの繰り返しの中にアクセント的に出てくるファルセットや、サビで繰り返す英語の音の数に全然合ってないのに無理矢理押し通してしまうその思い切りの良すぎる愚かさなど、こういった微かな要素が、ともすれば本当に単調になってしまいかねないこの曲をポップに異化させている*7。サビでスネアを2度打つドラムもこの曲の雰囲気からすると意外な可愛らしさがあったりする。

 終盤の、このバンドにありがちな楽曲の終わりの頭打ちリズム化のセクションにおいて、延々とそれまで単調さの中に潜ませていた激情をようやくシャウトする様の、本当に僅かなセクションだけそれを響かせる具合は絶妙な匙加減だと思う。それまで諦めたように囁いていたフレーズが最後の最後だけ叫ばれることによって、そこに乗る感覚の困難な切実さが、神経に強く訴えかける。

 そして、そんな「全ては過ぎ去っていきます」な情緒を形作るワードたち。ノスタルジックさがひんやりと溢れ出す最初のセンテンスもいいけど、2つ目のセンテンスの歌詞の自嘲と虚無がぼんやり交わる様は“LOVE/HATE期”の世界観のダイジェストのよう。

 

いつから穴があいたっけ 何も感じなくなって

手を伸ばす、その度に指先は何も触れなくて

誰かを裏切る度に これ以上はもうなんて

閉じたまま見た空 何か少し澄んでいた

 

特に「閉じたまま見た空」の言葉が足りていなくて意味が確定しない具合の、確定しないからこその想像の余地がとても大きい。空が澄んでるからって何も救われる訳じゃ無いもんな。でも、なんか澄んでるんだよな、っていう感じ。そして、こういう関係性を否定し、孤立と感覚の途絶を自嘲する歌詞だからこそ、その文脈と連続せず唐突に飛び出す「繋いで」という言葉に、論理にならない類の感情が弾けそうなほどに乗るんだと思う。

 前書きにも書いたとおり、この曲がリリースされて以降のそれなりの曲数を演奏するライブではほぼ皆勤賞と言って良いほどにひたすら演奏され続けてきた楽曲。次第に様々な演奏の要素が簡略化されて、ひたすら弾丸みたいなフォルムで突っ走る楽曲にライブでは変貌し、スタジオ音源の良さとは趣が結構変わってくる。でもそれもそれで何か謎のストイックさが醸し出されてきたりして、悪く無い気もしてる。

 それにしてもこの曲タイトルはどこからの引用だろう。少なくとも、同じ名前をしたAvril Lavigneのアルバムは2004年なので、そこからの引用ではない。

 

 

2. JUNKY'S LAST KISS(3:51)

 このシングルで最もグランジ要素を孕んだ曲でありながら、同時にニューウェーブ的な歪なファンクネスも付加された、この時期でも最も変則的で奇怪な存在感を示す、何気にとても混沌とした楽曲。このバンドのファンク要素は第二期ART-SCHOOLになって以降本格的に培われていくけど、ここでのその発露はこのバンドにおいてかなり特殊な奇怪さで、そういう意味では、この曲でしか味わえない貴重な情緒が大いに存在している。

 いきなり、衝撃的でもなく静謐でもなく、機械がただ稼働するかのように始まる演奏の、しかし妙に滑らかな躍動具合が不思議になる。意外とシンプルなベースラインと、パワーコードを二つ組み合わせただけのようなギターリフで、本来のファンクミュージック的な熱っぽさも、ニューウェーブ系の痙攣的な感覚もそんなにしないけれど、どことなく不思議なファンク感が表出し、木下のファルセット多用のボーカルがそれに拍車をかける。ドラムも裏打ちのハットの刺々しさを活かした四つ打ちスタイルで、淡々と躍動していく。この辺の掛け合いの“塊としてのバンド”的な熱の抜け落ちきったアンサンブルが非常に格好良く、また彼らの他の曲でも見れない要素で、何にしても関係性が死にきっていた関係性のバンドが、こういう掛け合いができるというのが不思議でならない。

 そんな死んだ滑らかさからグランジ展開する極端さがまたこの曲の特殊なところで、そのグランジ展開もパワーコードのゴツゴツ感ではなくもっとノイジー音の壁感が演出されたギターサウンドになっていて、「Yeah」の絶叫コーラスもまたそんな不思議な滑らかさを醸し出す。2回目のサビ以降のオクターブ上げでAメロを絶唱する部分も含めて、ここではトレモロ奏法のギターが特に連続的な雰囲気を作っていて、当時精神的に相当追い詰められていた大山純のギタープレイの、特殊な気迫の乗り方が感じられる気もする。ここでの轟音は、グランジ的なそれよりもむしろシューゲイザー的な要素の方が大きいかもしれない。

 Aメロオクターブ上げで歌う木下理樹はシャウトの箇所を途中からファルセットに切り替え、そして曲はそのファルセットから不思議なギターノイズの音階で終わる。ずっと叫ぶのが単調だと感じられたらかファルセットにしたのかもしれないけど、ここでのファルセット使用もなかなか不思議な判断で、この楽曲内での取り合わせの混沌とした具合、そしてそこから生まれる歪な魅力の出どころのひとつになっている。あえて穿った目線で書くなら、この時期の木下理樹は“困ったらファルセットに逃げる癖”のようなものがあったのかもしれない。そして重要なのは、この時期の木下理樹は本当に様々な展開をファルセットで絶妙に切り抜けていくことだ。それはもしかしたら、シャウトよりも重要なことなのかもしれない。

 歌詞においては、『UNDER MY SKIN』と同じく、内面世界でひたすら虚無をぼんやり燻らせる『SWAN SONG』の世界から少し飛び出して、夢想的とはいえ、具体的な逃亡の妄想と過去作品からのカットアップが見られる。

 

冷たい程乾いたら*8二人で明日逃げよう

何処へも行けないけれど、この青い夜の終わりに

地下室 ×××××*9 二人は生まれ変われる

痛みは変わらないけど、この青い夜の終わりに

 

あと「何も無い事」と連呼する部分は、当時の虚無さを表現する語彙のひとつだったんだと思われるけど、後にもっととんでもなくポップな形で『あと10秒で』の歌詞に結実する。そんなこと当時の木下理樹には知る由もないだろうけど。

 楽曲タイトルはSmashing Pumpkinsの『Siamese Dream』の時期のシングルカップリング曲『Apathy's Last Kiss』から。スマパンの楽曲でもかなりマニアック気味な楽曲*10からの引用なのも不思議なら、同じくこの曲のタイトルをもじった『アパシーズ・ラスト・ナイト』という曲をすぐ後のアルバムで発表するのも不思議*11。様々な不思議要素が静かにごった煮状態になった、おそらく木下も日向も想定外なくらいに要素が混沌とした楽曲となったこの曲は、しかし、死に体のはずのバンドの中に様々なアイディアが大いに渦巻いていたことのひとつの証左でもある。単純に他に替えの効かないカッコ良さがあるし、この曲も大好きな曲だ。B面集に収録されたのは嬉しかった。

 

 

3. LUCY(3:46)

 なんで曲タイトルがルーシーなのかは、多分メロディに上手く乗ったから、そのまま歌詞にしてタイトルにしたんだろうなと思われる。『DIVA』『SWAN SONG(DISK2)』と続いてきた宅録的・打ち込みリズムの楽曲の第3弾で、やけに落ち着いた、牧歌的な音風景にこの時期的な自己否定の歌詞が乗る、ソフトタッチな楽曲。この曲もまた、その音の感じは第二期ART-SCHOOL的でありつつ、だからこそアルバム『LOVE/HATE』の内容の中に置き場見当たらないのも理解できる感じの、しかしだからこそな独特の美しさのある曲。

 いきなり打ち込みの野暮ったいドラムの音と光の棚引くようなSE*12は、その後始まるソフトなアコギとピアノが彩るメジャー調のコード感の中では、『SWAN SONG』各曲で鳴ってた似たような音と比べても、純粋に陽の光めいた質感を覚える。そしてその、アコギとピアノで奏でられる、どこか北欧か何かみたいなファンタジーなポストロック感というか、そういう穏やかさは、通常のロックバンドの範疇に収まらないこのバンドの音楽性の一端を見せてくれる。リアルタイムで聴いてた人は「こんなこともするのか」と多少意外に思ったんじゃないかと思う。特にギターの瑞々しさは、前2曲の殺風景な音世界が嘘のように程よく潤んでいる。

 たおやかなサウンドに溶け込む木下のメロディも奇妙なところがなく、素直で綺麗なラインを紡いでいる。やや這いつくばるような印象のAメロから程よくメロディを駆け上がり、「It's going nowhere」のつぶやき*13に収束していく流れはとてもスムーズで、落ち着いていつつも虚しいフレーズになっているところに不思議なねじれがあってちょっと可笑しい。特に三回目のサビ箇所からのこのフレーズは高いメロディで歌い上げられ、そしてここで混ざるファルセットはとても切実で美しい。バンドヒステリー的な目線で見れば、バンド状況が破綻しきった中での木下の救いを求める感覚が優しく美しいメロディとして表出した例としては、この曲と『しとやかな獣』が双璧かなって思う。

 こんなに穏やかで綺麗な曲で、それを思わせるフレーズも歌詞にあるのに、結局歌の主題が『SWAN SONG』でよく聴かれた「生まれない方が良かった、違う人間に生まれたかった」なのが、いい具合にこの曲の美しさを台無しにしている。

 

LUCY 教会へ流れるこの水は

LUCY 澄んでて 全てを洗い流すよ

そうさ 違う人間に生まれたかったんだ

きっとましだった

It's going nowhere going nowhere

 

このテーマはアルバム『LOVE/HATE』でも繰り返し取り上げられるため、詰まるところこの時期の木下理樹にとって最も重要なテーマだったんだと分かる。『SWAN SONG』と『LOVE/HATE』両方に横たわるテーマであるところのものともこの曲は繋がっていた訳である。取り上げ方は一番妄想じみていると思うと、こんな重苦しいテーマでもそれでもここまでライトに聴かせてくれるこの曲のメロディの優しさは格別だと思える。

 どうやら木下の密かなお気に入りのようで、後に弾き語り等で結構多く取り上げられるようになったりする。アルバム収録のより純粋にアコースティックな『SONNET』を差し置いてこの曲がそういう扱いを受けてるのはちょっと面白いけど、この曲のマイルドさは意外と木下曲でも独特のものがある。この時期は契約の関係からなのか、無理矢理にでも楽曲を絞り出してた感じもなくもないけど、その中でふと、前曲やこの曲のような異質なものもポロッと出てきたのかなと思う。その佇まいの意外さに、他でもない作った本人が後で驚かされていたのかもしれない。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

終わりに

 以上3曲で11分22秒のシングルでした。

 アルバム直前の先行シングルということで、表題曲以外の2曲はまさに「アルバムから漏れたデッドストックの放出」の側面が感じられる楽曲だったと言えます。でもそれはそんなにネガティブな意味を持たず、おそらく、元々2枚組にする予定もあったとさえ言われるアルバムが1枚に決定した中で、アルバムの純度を上げる中でちょっと外れてしまっただけの2曲であり、むしろ外れたからこそ、アルバムのある程度統一された荒涼感とはまた違った雰囲気をそのままナチュラルに出すことに成功していると言えます。両方とも、むしろ第二期以降の活動に親和性があるというのも面白いところ。

 そして、来るアルバムの先行リリースとして、『UNDER MY SKIN』の、すっきりしすぎているような、でもそのすっきりしすぎていること自体に意味があるようなその存在感はとても理想的だと思いました。本当に、解散直前のバンドが出す曲じゃない力強さがあり、でも解散直前だからこその空気感もしっかり含まれていて、実に趣深い平坦さだとつくづく思います。

 

“LOVE/HATE期”のシングル・レアトラックまとめ

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 この記事の締めとして、シングル3枚・ミニアルバム1枚・アルバム1枚*14に渡る、重複無しでカウントして全24曲に渡る“LOVE/HATE期”の楽曲の、どういうリリース時系列で、何がどれに再録されたかをまとめておきます。この時期はこのバンドが最もリリースを連発していた時期で*15、バンドの内実とは裏腹に、側から見たら絶好調にしか見えなかっただろうな、と思われます。

 以下の情報はあくまでこの記事を投稿した日時における情報です。「ベスト盤」は『Ghosts & Angels』、B面集は『Cemetery Gates』、ライブ盤は『BOYS DON'T CRY』のことを指します。

 

『EVIL』リリース2003/4/11

1. EVIL(アルバム収録・ライブ盤収録)

2. WISH(後の再録なし)

3. モザイク(アルバム収録・ライブ盤収録)

4. ジェニファー'88(アルバム収録・ライブ盤収録)

 

SWAN SONG』リリース2003/7/30

(DISK1)

1. LILY(アルバムにPV収録・B面集収録)

2. DRY(後の再録なし)

3. OUT OF THE BLUE(後の再録なし)

4. LOVERS(B面集収録)

5. SKIRT(アルバム収録・B面集収録)

6. SWAN SONG(アルバムにPV収録・ベスト盤収録)

 

(DISK2)

1. SWAN SONG

2. LILY

3. MEMENTO MORI(B面集収録)

 

『UNDER MY SKIN』リリース2003/9/29

1. UNDER MY SKIN(アルバム・ベスト盤・ライブ盤収録)

2. JUNKY'S LAST KISS(B面集収録)

3. LUCY(B面集収録)

 

『LOVE/HATE』リリース2003/11/12

1. 水の中のナイフ(ベスト盤収録)

2. EVIL(既発曲)

3. モザイク(既発曲)

4. Butterfly Kiss(ライブ盤収録)

5. イノセント

6. アパシーズ・ラスト・ナイト

7. LOVE/HATE(ライブ盤収録)

8. ジェニファー'88(既発曲)

9. BELLS

10. SKIRT(既発曲)

11. UNDER MY SKIN(既発曲)

12. プールサイド(ライブ盤付属DVDに収録あり)

13. しとやかな獣(後のライブDVDに収録あり)

14. SONNET

15. SEAGULL(初回盤のみ・再録なし)

 

 入手困難でかつ人気の高かった楽曲のうち結構な数をB面集が拾ってくれたおかげで、現在入手がやや困難な楽曲は上記の赤字の4曲になります。はっきり言って4曲ともいい曲なので聴く価値大いにあります。この時期の楽曲が好きな人は是非どうにかして入手しましょう。

 また、上記により、この時期の楽曲でアルバム『LOVE/HATE』収録から外れた楽曲は全てで9曲あることも数えたら分かります。木下本人はB面集のライナーノーツで「シングルをはみ出したミニアルバムとさえ言える曲数を作り(笑)」と書いていますが、アルバムと被らない範囲でさえ9曲あるというのは凄いことだと思います。2003年の彼らは本当に凄かったんだなと思うと、『LOVE/HATE』が元々2枚組構想もあった、というリリース当時の木下の発言も、あながち嘘じゃないのかもと思えます。

 そして『LOVE/HATE』本編の楽曲を除いたシングル・ミニアルバム・『SEAGULL』を想い想いに並べて、自分だけの『裏LOVE/HATE』を作って楽しむのもまた結構面白いので、音源を集め切った人は是非やってみてください。今日の気分はこんな感じ。

 

1. UNDER MY SKIN

2. DRY

3. EVIL

4. WISH

5. モザイク

6. MEMENTO MORI

7. SEAGULL

8. LILY

9. OUT OF THE BLUE

10. ジェニファー'88

11. JUNKY'S LAST KISS

12. LUCY

13. LOVERS

14. SKIRT

15. SWAN SONG

 

 ちなみに、同じ時期にやはりリリースペースがぶっ壊れてたsyrup16gですが、こちらも何の偶然か、2003年にはART-SCHOOLと同じく24曲の新曲を世に出しています。参考までに。

 

『HELL SEE』(15曲)2003/3/19

『パープルムカデ』(4曲:2曲)2003/9/17

『My Song』(5曲:2曲)2003/12/17

 

 なんだか、2003年って凄い年な気がしてきます。

 

 以上です。

 このシリーズ、次はいよいよ、自分のオールタイムベストで5本の指に入れてしまう作品の登場になります。よりベストを尽くしたいと思います。

 

追記:次の作品、アルバム『LOVE/HATE』の記事です。思い入れたっぷり3万字を超える記事です。

ystmokzk.hatenablog.jp

*1:アルバム14曲中5曲が既発曲。初回盤だともう1曲新曲がプラス。

*2:ユニコーンにおける『すばらしい日々』などをはじめ、例がないわけじゃ当然ないけども。

*3:逆に、そういう先駆性がアルバムのカラーから少し逸脱したため、このシングルカップリングで放出されている感じはする。

*4:原曲のベースラインループの後半部分を引き出して自身の曲のループの前半にしてしまう、そのさりげなく気の利いた逆転っぷりが地味に面白い。

*5:このフレーズを木下が出したのか日向が思い付いたのかその両方なのかは気になる。

*6:このコード進行、『SKIRT』とか『MEMENTO MORI』とかも全く同じ進行で延々と循環しているので、「この時期の曲がどれも同じ曲に聞こえる」という意見はある意味正しいし、または同じコード循環で全然情景も情感も異なる曲を同時期に3曲も作るなんて、としみじみ驚く自分みたいなファンもいる。

*7:なので、この辺の良さが声の調子の不調等で死んでしまっている一時期のこの曲のライブ演奏は、スタジオ版の良さとだいぶん性質が変わってしまっている。

*8:日本のオルタナティブバンドdipのメジャーデビュー曲『冷たいくらいに乾いたら』を思わせる。

*9:ここだけピー音で消される。入る言葉は「ヘロインと愛」。“ヘロイン”はこの時期のバンドの歌詞に何度か出てくる(ex.『ジェニファー'88』『プールサイド』)けど、ここの部分は歌詞の流れで誘ってるように聞こえてとりわけ問題があるとレコード会社から見なされてこのような処理になったとのこと。そりゃ「地下室でクスリキメて生まれ変わろうぜ」なんて駄目すぎる。。ここのピー音もまた、この曲の混沌っぷりに一役買ってると思う。

*10:この時期までのシングルカップリング等をかき集めたコンピアルバム『Pisces Iscariot』に何故か収録されなかったくらいの存在感。むしろなんで収録から漏れてるんだ…。

*11:もしかして、似たようなタイトルの曲が2曲出来て、『アパシーズ〜』の方をアルバムに入れることが決まった結果自動的にこっちがシングルカップリングに追いやられたのかも。

*12:SWAN SONG』では多用してたこういう仕組みも、このシングルではこの曲くらいだ。

*13:実際の歌では“It's”は歌われていないが。

*14:2枚の『SWAN SONG』をそれぞれミニアルバム・シングルとカウントした場合の数字。

*15:その次がアルバム『Flora』の時期か。