ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

小文字時代のthee michelle gun elephant【25曲】

 チバユウスケが死んでしまって、悲しいとか何とかよりも「あっ、死んでしまったんだな」みたいなぼんやりした感覚だけあって、何とはなしにとりあえず彼の代表バンドであろうthee michelle gun elephantを聴き返してたら、前期と後期で好きな曲を集めたプレイリストができたので、それを元に、この亡くなったボーカリスト兼ソングライターがどのように異質であったか、そしてバンドがどれだけ素晴らしいものだったかをぼんやりと見ていく記事です。

 タイトルにあるとおり、今回は小文字時代、つまり“thee michelle gun elephant”表記だった時代の分を見てきます。大体メジャーデビューの1996年から1997年までの、よく見たらたった2年の時期に、彼らはアルバムを3枚と多数のシングルをリリースしています。カップリングに多数のトラックがあり後に編集盤『RUMBLE』に纏められるほどに曲を連発して、清々しいくらいに勢いで突っ走っていた、そんな時期です。

 なお、正確には小文字時代はシングルの『アウト・ブルーズ』までで、その後のシングル『スモーキン・ビリー』からが大文字表記の“THEE MICHELLE GUN ELEPHANT”になるようですが、普通シングル『G.W.D』から後期かなあって感じだと思うので、その基準でいきます。なのでシングル『VIBE ON!』は1998年1月のリリースですが、今回の範囲として含めます。

 

 

 

 バンドがどういうものか初めから知りたい人はwikipediaとかを読んだ方がいいと思います。次第に“日本を代表するロックンロールバンド”“日本のロックを背負うバンド”などと称されるようになり、その気負いみたいなものが音楽的にも見えてくるようになっていきますが、今回はそうなる前の、どんどん天然にナチュラルに勢いよくぶっ飛ばしていく時期です。筆者も、前期も後期もどちらもそれぞれの良さがあり好きなことがたくさんあることを前提にした上で、どっちかといえば初期の方が好きです。

 

 

小文字時代のバンドの特徴

 結構別バンドじみた違いを感じるこのバンドの前期と後期。前期はどんな感じなのか説明するとどうしても「後期でこう変わってしまった分初期はこうだった」という話になってしまうけども。要はニュートラルで天然で天真爛漫だったってことなんか。

メジャー調の楽曲が多い

 というか後期になってからマイナー調が増えすぎるというか。『ロデオ・タンデム・ビート・スペクター』以降とかメジャー調の楽曲皆無だし。

 そういう対比がありつつも、ブルースノート全開な濁ったコードも多用しつつ、時にはギターポップか?と思わせるようなブライトなコード感も余裕で出てくるのが前期の特徴。その天真爛漫なコード感には、そこに混じってくる茶目っ気含みのパンクさもあって、ひたすらに突き抜けた“自由”を感じさせます。

 

より自由度の高い、勢い任せに各々ブッ飛ばす演奏

 これも逆に後期が抑制かけまくりで狂気感を演出してるのと対比になるところ。特にベースは、隙あらば演奏の隙間に自分のフレーズを積極的に叩き込もうとする前期と、そもそも曲の骨組みとして同じフレーズを太く重く反復する後期とで、在り方そのものからして全然異なっています。

 ブルーズ進行をベースにした楽曲が多いのも前期の特徴で、しかしそこから様々な楽曲を引き出して来れるのは彼らの強み。というか、1990年代にもなってキャッチーさが求められるシングルの世界でブルーズ進行のシングル曲を複数*1切れるのも凄い。それでいてしっかりキャッチーさもあります。

 また、それこそギターポップ的な牧歌的な雰囲気の曲だったり、爽やかギターロックだったり、場合によってはシューゲイザーじみた楽曲さえ存在してしまいます。特に1997年の幅の広さは面白く、演奏自体はガレージロックの範疇をそこまではみ出しすぎていないのに他ジャンルを思わせるのは彼らの強み。

 

アホで天然で愛嬌に満ちたチバユウスケ

 このバンドは確かにバンド全体の演奏能力・表現力・爆発力が大きな魅力ではあるけども、でもやはり全ての歌詞を手がけてかつ歌うチバユウスケの存在感というのはバンドの中で決して小さくないものがあります。

 このバンド前期の彼には、端的に言えば「大学生の延長みたいなモラトリアムっぽさ」があって、その天然の思いつきと瞬発力だけで何とかしてしまってる感じが、音楽的な開放感にも結びついているんだろうと思います。ボーカルについても、後期のがなりっぱなしの切迫感に満ちたものではなく、ラフな酔っ払いみたいな声質を爽やかに響かせる場面が多く、そこがまたいい具合の頼りなさに満ちた開放感を生んでいる感じがあります。

 そして何といっても歌詞の自由度。日本語の文法からさえ自由な歌詞の奇想天外さ・シュールさ、そしてその中に時折含まれるロマンチックさとの絶妙な取り合わせは、本当にオンリーワンな魅力で、この点単体で彼は高く評価されるべき人物だと思います。

 

 

アルバム短評

 本編の前置きなので、本当にそんなに長く書きません。

 

 

1st 『Cult Grass Stars』(1996年3月リリース)

 メジャーデビュー作にして、実はこのバンドで一番音楽性が広いかもしれない、チバユウスケというソングライターやバンドの“その後使わなかった”ポテンシャルも含めてごった煮な印象のアルバム。なにせキーボードとか入ってるしギターもワウとかトレモロとかエフェクターを使ってて、曲によってはアコギさえ聴こえてくる。小粋なジャズテイストもあり、90年代的な朗らかなロックバラッドさえあり、ともかく、ガレージロックを軸に何でもやってみよう、という気概を感じさせる70分、というか最終曲はこれまた90年代テイストな無音トラックの後のおまけが付いてるので、実質60分くらいか。そのどことなく90年代的な全能感には、そういえばこのバンドはサニーデイ・サービスと交友があるんだったな、ということを思わせる部分がある。その分焦点がボヤけてるきらいがあり、ここからガレージロックを自分たちの本分だと抜き出して鍛えて深めていき、いつの間にか前人未到の境地に達したのがこのバンドだ。

 興味深いのは、歌詞がやけっぱちなのはある意味このバンドの常だけど、本作のみやたらと自虐的なところが見られるところ。実にあっけらかんとした調子で怯えやらコンプレックスやら自殺やらを歌う様は独特のものがある。そしてどことなくファンタジックでメルヘンな世界観、これも前期共通ながら、本作が一番色濃い。メルヘンで軽くメンヘラなこの時期のチバユウスケのファンタジーさが、後期になるにつれてゴツゴツして無頼でどうしようもなく行き詰まりのようなファンタジーに転換していく様は、このバンドを純粋な音楽以外の部分で通して聴いていく上で、非常に興味深いファクターだ。

 

蛍光灯の中 はしゃぎまわる

ひとつ ひとつぶの 電子が俺を笑う

 

さっきまでそこで見てたよ さっきまでそこで見てた

 

こぼれ落ちる程のアドレナリン まき散らして

今夜も眠れずに ガタリガタリ震えてる

 

  眠らなきゃ / thee michelle gun elephantより一部引用

 

 

2nd『High Time』(1996年11月リリース)

 前作アルバムから僅か8ヶ月のうちに、シングル2枚を挟んでフルアルバムをリリースしたという事実に、当時バンドがどれだけ留まりようのないほどの創作能力をドバドバと放っていたかが窺える。ハイテンションでいい具合にヤケクソでゲラゲラと楽しそうなパッションを放ちまくるガレージロック連発の、このバンドの魅力が明確迅速にかつ程よくファニーに伝わってくる傑作アルバム。アルバム構成としてこの辺に大きい曲持ってきて盛り上げて…みたいな目論見をほぼ放棄して、なんか出来た曲をいい感じに並べただけ、みたいな曲の並びは、逆にいいロックンロールにはそんな小手先めいたストーリー性なんて要らんのかも、と思わせる。スカッとして楽しい、ハッピーな爽快感をこのバンドに求めるなら間違いなくこれが1番いい。勿論このバンドの魅力はそれだけには決して留まっていないけども。

 歌詞は独特のウィットと天然の効いたナンセンスなものが増え、前作のような露骨に自虐的な成分はかなり減っている。けども、様々なシュールな光景の中に見えるちょっとしたナイーヴさや、やたらと「逃げる」というワードが目立つのは面白いところ。爽快なロックンロールしてるのに案外歌ってることはヘタレ、そして不思議な日本語の繋ぎ方でそれをやってのける、その愛嬌の具合こそがこの前期のこのバンドにおけるチバユウスケの案外あざといスタイルだ。後期になって切り捨てたのもまさにそういう部分だ。

 

抱え込んでいた庭で 回る回る犬2匹

枯れたハイビスカスのような ぼんやりが踏まれてる

brand new stone brand new stone brand new stone 

 

(中略)

 

うんざりを焼いたら ビニールの溶ける

匂い吸い込んで 細かくなれる

ああ カラカラと ああ 音たてる

 

 brand new stone / thee michellegun elephantより一部引用

 

 

3rd『Chicken Zombies』(1997年11月リリース)

 1997年はシングルを3枚も出して、そのカップリングにも名曲やライブの定番になる曲が幾つもあるという、前年にも増して“曲が書けまくる”モードだったであろうバンドの満を辞しての3枚目のフルアルバムは、チープなところはよりチープに、シンプルなところはとことんシンプルに、ポップなところはよりポップに、そして“次の手”を伺う渋く乾いた楽曲なども織り交ぜた、ガレージロックの玩具箱のようなアルバム。おそらく意図的に前作よりも音の分離が悪くなりグチャッとした音になっているのが可笑しいし、ジャケットもCDはThe Blue Cheerの、LPはThe Whoのパロディという無敵感・やりたい放題さ。あと全体的に尺が短く、コンパクトでシンプルにすることに拘ってる感じがある。アルバムの尺も彼らのフルレングスでは一番短い。次作からグッとドスの効いた、不可逆的な世界観に入っていくのを思うと、本作はバンドが伸び伸びと作品を作れた最後の時間のようにも思えて、そう思うとふいに名曲『サニー・サイド・リバー』がまたほろ苦く感じれるかも。

 歌詞の面ではとりわけナンセンスさが極まりつつも、感覚的には案外フラットで、そして時々びっくりするくらいロマンチックだったりする。自虐的な感覚はほぼ抜けて、ひたすらにシュールでアホっぽくもある表現が言葉を埋め尽くし、その所々にハッとするようなロマンチックさが眠っているという意味では、この時期のチバユウスケの歌詞は甲本ヒロトとかに近い感じなのかも。一部のアホさはギターウルフの域にさえ掛かってる気もする。

 

こんな風に喜んで ブロンズ・マスター!

横滑りの泥 ブロンズ・マスター!

空近い! 空が近い!

 

アタマから嫌なくいちぎれかた ブロンズ・マスター!

 

 ブロンズ・マスター / thee michelle gun elephantより一部引用

 

昔からよく分からんけど、ブロンズ・マスターって何…?ザリガニか何か…?

 

 

コンピレーション『RUMBLE』(1999年8月リリース)

 1999年とバンド名が大文字になって以降のリリースなのになぜここに名を連ねるかというと、これが『High Time』〜『Chicken Zombies』期のシングルの楽曲を集めたコンピレーションだからで、この時期のカップリング曲においても創造力が漲る、むしろなんでアルバムに収録しなかったのか疑問にさえ思えるほどのクオリティを発揮した楽曲を複数含んでいるため。具体的には『CISCO』『ランドリー』『カーテン』『深く潜れ』あたり。どれも1997年リリースで、ともかく自分たちのガレージロックの縛りの中でさえ色んな可能性が見えてきて、楽曲がどんどん出来て堪らなかった時期なんだろう。ここに『あんたのどれいのままでいい』も含んでくれたらサブスクで困らなかったのに…。

 一応『キャンディ・ハウス』から順に時系列で並んでいる。シングル『リリィ』からは『君に会いに行こう』のみ収録されてタイトル曲が収録されないところが変則的だけども、特に『カルチャー』『ゲット・アップ・ルーシー』の2枚のシングルから全曲収録されているのが重要。どうせこの後曲単位で触れるのでここでは色々言わないが、どちらのシングルも4曲入りでアルバムにはタイトル曲以外収録されないという、実に贅沢で実にかつての時代の“シングルならではの楽しみ”を体現した存在*2。というか11曲中8曲が1997年の楽曲だから、実質『Chicken Zombies 2』みたいな作品。確かに、ガレージロックからは少し外れた立ち位置の楽曲が複数あったりして、その分人によってはこっちの方が『Chicken Zombies』よりも好きなんて全然あるだろうな。

 あと、地味にシングルのタイトル曲は3曲ともアルバムで再録されているので、再録前のシングルバージョンが聴けるのも重要。どれもアルバムよりもどことなくもっさりしている。逆にアルバムバージョンはよりシュッとした演奏。

 

 

本編:小文字時代のプレイリスト【25曲】

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 ということで、ここからようやくこの記事の本編として、上記のように作ったプレイリスト25曲についてそれぞれの曲を見ていきます。まあ上記のプレイリストはサブスクの都合で1曲足りてないが。

 実質アルバム4枚+αの、合計およそ48曲の中から25曲選んでるので、厳選はできてないのかも。

 

 

1. 世界の終わり(『Cult Grass Stars』収録)

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 おそらく最も知られてる楽曲はなんだかんだでこれだろう。デビュー曲なのにこのタイトル、演奏の勢いの良さとその割にバンド史上でも最もメロディアスな部類のメロディに最高にロマンチックな破滅の感覚を抱えた、ここまで最強なメジャーデビュー曲もそうそう無いだろと思わされる大名曲。かなり後に出版された詩集で「元々はバンド用の曲ではなかった」と本人が話すのもまたファンタスティック。

 イントロのギターがコードを掻きむしるところと、もう一本のギターも途中から入ってくるそれだけで非常に格好いいのはこのバンドの強行突破な感じが出ていて王道*3。キーのコードで始まる開けた感覚が始まりの予感を感じさせつつ、その気になれば延々と循環してそうなコードフレーズには世界の終わりに臨むときの果てしなさみたいなのも感じさせる。そのようなギターの勢いの下で、ベースは猛烈に動き倒し続けていて、より有り余る自由さを感じさせる。

 この曲はやはりメロディにとりわけ気合が入っていて、Ⅳから始まるコードで程よく緊張感のあるAメロをくぐり抜けた後にパッとキーに着地し、その後Radioheadの『Creep』よろしくⅠ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅳmという劇的なサブドミナントマイナー展開を盛り込んだサビメロディは余裕でポップスでも成立するけども、それをあえてがなり倒して歌うところがまさに、このバンドの名刺代わりとなっていく。

 最後イントロと同じコードストロークに戻り、一度演奏が止むかのように思わせながら再開していく様はこの歌の世界観の補強として完璧だし、その意味でもフェードアウトではなく完奏するアルバム版こそが完成形と思える。ベスト盤などでもこっちで収録しているのは納得。

 そのような劇的さの上で、歌詞の見事さにはいつ読んでも本当に息を呑む。世紀末を控えた時期のリリースだということを差し引いたとしても、この終わりゆく世界をぼんやりと妙に優雅に過ごす様は、このバンドでも最大級にロマンチックな歌詞だと思う。歌い出しからして素晴らしい。

 

悪いのは全部 君だと思ってた

くるっているのは あんたなんだって

つぶやかれても ぼんやりと空を

眺め回しては 聞こえてないふり

 

世界の終わりは そこで待ってると

思い出したよに 君は笑い出す

赤みのかかった 月が昇るとき

それで最後だと 僕は聞かされる

 

終末系の小説の一場面を抜き出したかのような、まるで無駄のない言葉選びとそれらをメロディに当てる的確さは、もしかすると本当にこれがチバユウスケの最高傑作かもしれない。別にだからとて他の曲の歌詞が必要ないという話では全然無いけども、この曲の“君”のぼにゃりと狂気がかった仕草に宿るロマンチックさは格別のものがある。

 

世界の終わりが そこで見てるよと

紅茶飲み干して 君は静かに待つ

パンを焼きながら 待ち焦がれている

やってくる時を 待ち焦がれている

 

 正直このバンドの本領的な部分とはかなり異なる部類の曲な感じもあり、良すぎることもあってアルバムで浮いてさえいるかもしれない。どのアルバムに入れたって浮く気もしないでもないけども。このバンドのラストライブの最終曲を務めるほどに印象的な大名曲であり、作者本人が亡くなっても、これは歌い継がれていくだろうな、という感じがある。歌い手本人がいつかはアコギ片手に、もしくはピアノを伴奏にして穏やかにこれを歌う日がいつか来るのかなとか呑気に考えてたこともあったけども。

 

 

2. sweet MONACO(『High Time』収録)

 1stの頃のスタイリッシュさを程よく残しつつ、ガシャガシャとしたカッティングと可愛らしいハミングからのシャウトのようなキメでメリハリをつける、この時期の快調さが滑らかに疾走する楽曲

 ドラムのフィルを合図に雑に弾き倒されるギターが、歌が始まると途端に実にリズミカルにこのバンドの演奏面で最大の武器であるカッティングを入れていき、その上でチバが胡乱な内容の歌詞を楽しそうに喚き散らす、これだけでもうこの時期のバンドは最高なんだなあと思わされる。地味なところではAメロのドラムの、ハイハットを一瞬オープンで入れるそのタイミングがビートをよりシャープなものにしていて面白い。

 歌詞の光景はシュールなものばかりだけども、テーマは「モナコに逃げよう」というもの*4。地中海沿いのリゾートやカジノで知られる観光地に逃げたい背景は、最後のセクションで少しだけその背景が覗いてくる。

 

大体南の方角から 言われて考えてはみたけど

寒気のする夏ばかり 覚えているのはたぶんそれくらい

 

テーブルの上で ミルク倒して オレンジかじる あの娘がいるよ

chu chu lu chu chu chu chu yeah! chu chu lu chu chu chu chu

甘いモナコへ逃げよう

 

この、多分なんか苦しい思いをしてるんだろうけど雑に言葉足らずすぎるせいであんまり何も分からない塩梅、この絶妙にテキトーな表現力、これぞまさにチバユウスケ

 

 

3. ゲット・アップ・ルーシー(『Chicken Zombies』収録)

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 この曲も代表曲のひとつか。後期に通じるマイナー調でゴリゴリした音で反復するベースを軸に進行するスタイルながら、前期的な軽さでもってジャリジャリと荒っぽく大袈裟に為される演奏と、仄かに怖いメルヘンみたいな雰囲気の歌詞をヤケクソめいてシャウトして歌うのが不思議な世界観を構成する、案外前期にも後期にも他に似たような楽曲が存在しない名曲。確かに音はどう聴いてもガレージロックではあるんだけど、妙にファンタジックでフワフワした感覚があるのが面白い。

 この曲、ベースの感じはかなり後期に近いのに、聴こえてくるテイストはかなり後期と違うので何が違うんだろうと思案して、ギターのエッジの効いたパンキッシュなコードストロークもまた軸になっているからなのかなとは思った。というか音のバランスの問題なのか。なぜだかここでは、後期に特有の切迫感は薄い。チバの歌がドスが効いてなくてむしろ明後日の方に素っ頓狂にシャウトしてる感じになってるからなのか。このマイナー調、このベースがあった上でこれだけ“軽い”のはなんだか凄い、と後期のバンドの重さを知ってる身からすると逆に不思議になってしまう。曲展開のAメロとサビって感じのしないサラッと変化をつける構成がいい具合に野暮ったくてこうなるのか。だからなのか、歌のメロディも神経質にならず、妙にポップに届いてくる。怪しげなフレーズから入っていく間奏も胡散臭さがいい具合に効いてて、それがやがてやはりどこかパンキッシュなガチャガチャしたギタープレイに切り替わっていくのが楽しい。

 歌詞についても、どこか破滅の感じがするという意味では後期と似てる気もするのに、やっぱり後期とは違うファニーなファンタジックさを感じる。舞台が後期によくある荒野の感じのする場所でなく、不思議の森の中みたいな具合だからだろうか。まるでどこかの外国の童話か何かみたいな世界観だ。

 

ねぇ ルーシー 二人 幸せ見つけたね

終わりだね 終わりだね

ゲット・アップ・ルーシー ゲット・アップ・ルーシー

 

ねぇ ルーシー かなり 深い海に来てる

沈み込む 沈み込む

ゲット・アップ・ルーシー ゲット・アップ・ルーシー

 

あこがれの森の中歩いてるけど 目は閉じたまま

 

「幸せを見つけた」→「終わり」という、論理を飛躍させてしまったようでもあり、いやそこは分かるだろ、というギリギリのラインを攻めているようでもありな、そんな挑発的なようでもあり、そういうことを何も考えてなさそうでもある塩梅が絶妙、これぞチバユウスケの文脈。そもそもからしてこの森の世界はやっぱ夢の中なのか。眠り姫の歌なのかこれは。…このように、いかようにも考えられる、考えさせてくる、つまり、上手い歌詞なんだろう。

 

 

4. CISCO〜想い出のサンフランシスコ(She's gone)(『RUMBLE』収録)

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 これPVあったんだ…シングルのカップリングなのに何なんだこの曲。この時期のバンドの意味不明なテンションをサーフインスト的なドライブ感を持ったガレージロックとして端的にかつハイテンションにやり切った、これも代表曲。シングル『カルチャー』のカップリング曲。

 何でこんなにハイテンションなのか、なんで「CISCO!」って叫ぶのか、謎でアホなエネルギーに満ち溢れているけども、これは彼らにとっての『テキーラ』なんだってことは分かる。妙なことに、こんな曲なのに明らかにギターがダビングしてあって、普段使いもしないスライドギターめいたものをなぜか隠し味的にかつ非常に勢い任せに雑に挿入してくる。とどめとばかりに終盤で入ってくる頭打ちのリズムのヤケクソ極まった状態。これは盛り上がるに決まってる。

 ライブではさまざまな名シーンがこの曲で生まれた。観客の過密により幾度も演奏を中止することとなった1998年のフジロックで1曲目に演奏していきなり危険な状態になったり、後期に入った1999年ライジングサンで「石狩は日本のサンフランシスコだぜ!」という謎すぎるMCの後に演奏されたり等々。

 

 

5. 恋をしようよ(『High Time』収録)

 メジャー調のミドルテンポで、特にフィルを連発するドラムを中心に非常にドタバタとした演奏の中チバが楽しそうにがなったり、そのがなりのままあざとい歌詞を歌ったりする。相当にやりたい放題な感じの出てる曲

 他の曲ではどちらかと言えば堅実にリズムを叩き程よくフィルを入れるクハラが、この曲ばかりはひたすら好きアラバフィルを叩き込む存在になっていて面白い。クラッシュシンバルを使いまくるし様々なフィルインパターンで畳みかけ続けるし、ともかく落ち着くことなくバタバタし続ける様はThe Whoじみている。この曲においてはむしろ普段はもっと自由に前に出るギターやベースの方が積極的に「骨組み」になりに行っている。ギターはところどころ強引にフレーズを入れ込んでその瞬間バッキングがスカスカになるのも全然気にしない。終盤のギターなんてほぼその場の思いつきで弾いてないかってくらい。

 そしてチバの可愛らしさに満ちたパンクな歌詞のボーカル。

 

フルカラーのレコード たたき割ったその日から yeah!

君と俺とで落ちるんだ 猫のスタイルで すがりつくんだ

 

猫のスタイルで すがりつけ 猫のスタイルですがりつけ

 

こんな歌詞に加えてニャーニャーニャーとハミングさえ入ってくる。あざとい。

 

 

6. I was walkin' & sleepin'(『Cult Grass Stars』収録)

 どことなくThe Roostersリスペクト感が大いに感じられる、シャッフルのテンポで軽快にリフの反復の中を進行していくポップなメロディと、その裏で不安に満ち溢れた歌詞の取り合わせが実に彼らの1stアルバム的な楽曲。軽快そうな楽曲の割に尺が5分越えと意外と長い。

 イントロから聞こえてくるAメロの間よく反復し続ける軽快なギターリフ、こういうのThe Roostersの曲になんかなかったっけ…?と思わせるようなフレージング*5をしていて、そこにまさに初期The Roostersを思わせる軽いタッチのシャッフルテンポと“おいら”口調のボーカルが乗っていく。アベのギターが全然カッティングしないタイプの楽曲で、まさにな雰囲気を作り出すために徹している。間奏のフレーズも細い音で流れるように洒脱に弾いてみせて、そして途中から出てくるオルガンと合わせて、このバンドの他のアルバムでは滅多に味わえないタイプのえらく堂々とポップな盛り上がり方をする。終盤のソロでヤケクソのようにカッティングを重ねてくるところは笑えるし、終わり方のオルガンの余韻の効いた様はmるでサニーデイ・サービスのよう。チバの叫ぶメロディもヤケっぱち具合が楽しげで、歌ってる内容とのギャップがまた激しい。

 歌詞は表現こそ平易で可愛らしいが、これ自閉症か何かの歌では…?そういう意味では、精神の問題の面でもThe Roosters(z)をリスペクトというか、共感してるような意思があったのかもしれない。

 

話しかけないでくれ 電話しないでくれ

笑いかけないでくれ 今言ったことは忘れておくれ

声をかけてくれ たまには電話をくれ

笑顔を見せておくれ ほっておいてくれ

 

普通だよって言ってくれよ 毎日だって言ってくれよ

 

わずか数行後に真逆の要求をする様は、感情がコントロールできてない様を表してるんじゃないか。可愛く甘えかかってるようでいて、もう少し切実な状況を何気に歌ってるんじゃないかと思ってる。1stのチバの歌詞の状況はなかなか難儀だ。

 

  

7. マングース(『Chicken Zombies』収録)

 基本的にひたすらギターのカッティングが聴こえ続けるけども、間奏ではそこにさらにファズギターと思われるフレーズも追加される、ベースもバリバリと動き続ける、歌詞もまるで意味不明な、実にシャープかつシュールな、典型的にこの時期な佳曲。まるでバンドのポテンシャルをなんかそのまま胡乱に叩きつけただけ、みたいな、そしてそれで全然OKな具合がとても強い。

 一部で“ショットガン・カッティング”などとも呼ばれるアベのギターは特に『シャンデリア』について言及されることが多いけども、この曲もなかなかに終止カッティングし続けていて、しかもそのカッティングのオンオフの仕方がより大味でざっくりしている様に、この曲の「なんでこんな訳の分からん歌詞なのにかっけえんだ…」という完全犯罪めいたものをやり遂げるしてやったりを感じる。珍しくギターソロのダビングさえするんだもの。そのギターソロがまた珍しくファズを使っていい具合にB級ガレージロック色が強いプレイで、なんかマニアック。その下でベースもまた、ひたすらゴリゴリうねうねと活き活きと動き続けている。というかよく聴くとこの曲のベース凄いな。もうひとつの歌みたいだ。歌メロもたったこれだけ、というシンプルさを変なチャントの挿入*6で上手いことフック付けて、あとは楽しく演奏できりゃOKと言わんばかりの、いい具合に雑な裁定をしてる。実際それでとってもヘンテコで格好良くて楽しいもんな。

 

マングースの夢を見終えたのは ちぎれかけていた昼下がり

DO DO DA DA DO DA DA! DO DO DA DA DO DA DA!

She wants to forget 影すら残らない

 

こんなシュールな歌詞でも少しだけ不穏、もしくは寂しさのようなものを差し込んでしまうのが前期ミッシェル時代のチバユウスケという人なのか。いやこれ言うほど寂しさあるのか、微妙なとこだ…。

 

 

8. シャンデリヤ(『High Time』収録)

 アベのカッティングの話題になると必ずと言っていいほど引き合いに出される、ひたすら彼の細かく鋭い高速ギターカッティングが楽曲を牽引し続け、それに引かれて他のメンバーもヒャッハーってな具合にテンションを炸裂させる、つまり実に自由自在に前期ミッシェルしてる楽曲。常にミュートで弦を弾く時の音と短いギターの音が交互に聴こえてきて、その中で細かくギターフレーズが変化していく様は、まさにこのギタリストの最も典型的なやりたい放題のスタイルだ。

 始まりこそドラムだけども、すぐに例のカッティングは入ってくる。この曲におけるカッティングの最大の特徴、それは、本当に細かく音を変えてチャカチャカとした音でフレーズを組み立てていくそのスタイルだろう。歌の裏でも平気でフレーズを動かし続けるその様は「曲中ずっとギターソロを弾いてるみたいなもの」とも形容され、確かにそんなところがある。こういう曲の例に漏れずベース文字祭にグイグイとフレーズを差し込んでいき、何気に混沌とした演奏の中、よくこれに歌を乗せれるな…と逆にボーカルの凄さが浮かんでくることさえあるかもと思う。

 よく分からんことを喚き続けてるな、と思わせるボーカルだけど、よく読むとこれもまた何らかのオブセッションにやられてる言葉たちだと分かる。

 

ひしゃげたアルミニウム缶 これはあなたに似てるわね

爪を噛むまねをしながら ターン繰り返す

 

それでも明日はシャンデリヤが降る

それでも明日はシャンデリヤが降る

それでも明日はシャンデリヤが降る

それでも明日はシャンデリヤが降る

 

The Smithsの『I Konw it's Over』という曲に「僕の上に泥が降ってくる」と歌う箇所があるけど、もしかしてその“泥”と同じような意味合いを“シャンデリヤ”に託してるのかもしれない。何とアホでしかし深刻なオブセッション…。他人から言われる形でのパンチの効いた自虐も軽く入り、やはり前期ミッシェルのチバユウスケな世界観。

 

 

9. blue nylon shirts(『High Time』収録)

 バンドのドタドタバタバタしたエネルギー出しまくりなアルバム『High Time』だけども後半には「こういう曲も俺らにはあるぞ」という感じのものが幾つか散見される。この曲はこのバンドが爽やかギターロックをやったらこんな感じpart1といった風情の、実に涼しげに疾走していく楽曲the pillowsとかが演奏しても違和感無いだろう。高速カッティングしか弾かないのではなく、こういうのも抜け目なく演奏するのが前期のこのバンドの強み。

 イントロの段階からどこかギターポップめいたフレージングのギターが聴こえてくる。複数弦を弾いてるのでカッティングの応用ではあるけども、この曲は特に開放弦を利用したと思われる透明感のあるギターレイヤーがたなびく様を聴ける。程よい歪みでかき鳴らされるこのようなコードストロークは実に涼しげで開放的な効果を生む。楽曲としては1個のコードを結構引き伸ばし爽やかな快走の感じを出しつつ、そこからの変化で淡く楽曲とメロディのダイナミズムを表現する。ギターもベースも、動くべきところ以外の単調さが、そんなに激しくない動きのセクションでも相対的にワイルドな変化のように感じさせる。チバの歌も好青年な感じがしてる。やけっぱち気味な歌詞とメロディで変化をつけるミドルエイトの箇所のみ、少し酔っ払ったみたいな調子になるのが少し可笑しい。

 それにしてもアルバム『High Time』、結構「落ちる」こともあるなあ。

 

あたたかな日々を転げ落ちる あたたかな日々を転げ落ちる

青いナイロンのシャツ

 

 CDバージョンはボーカルに薄くリバーブの効いた[from bathroom]で、LPの方がリバーブ薄めの[from balcony]と、2バージョン存在している。後者はベスト盤『TMGE 106』でも聴くことができる。

 

 

10. カルチャー(『Chicken Zombies』収録)

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 露骨にブルーズ進行な楽曲でもシングルを切れてしまう開き直りと思い切りがこのバンドの強み。リフ一発をさらにブルーズ進行に繋げて、それだけで無理やり1曲作ってしまったような、演奏も全部ハイテンションだけで乗り切ってしまったような、なのにどこかシングル曲らしいキャッチーさも備えた不思議な楽曲。思い切りの良さって大切。

 ほぼ全編ギターリフで構成されていると言ってもいい構成で、イントロから聴こえてくる捻れたようなリフが楽曲の基本軸として全体を貫いていく。これを強引にそのまっま五度上に上げてブルーズ形式にしたり、そのブルーズ形式の最後のセクションでブレイクを挟んで元に戻ったりと、曲の構造は至って単純。同じブルーズ形式シングル曲『キャンディ・ハウス』*7以上にシンプルを極めてる。チバのボーカルも基本歪んだボイスを絞り出しているけども、後期の絶叫じみたものと比べるとずっとどこか冗談じみたヤケクソさで迫ってくる。いい意味で壮絶さの薄い、スカッとした絶叫。これは前期のこのバンドの強い武器で、歌ってる言葉の内容込みで、ただそれだけでとてもキャッチーでさえある。

 

花束かかえ むえにきてよ ハニー

ひっくりかえるような 甘い言葉吐いて

高くまいあがらせては むせかえるよ カルチャー

 

この、意味が通るか通らないかのギリギリのところで言葉を超えて「でもなんか感覚で分かるだろ?」的な、かつちょっぴりロマンチックなフレーズを並べ立てて絶叫する、その様そのものが大いにファニーで、そしてやっぱりキャッチーだ。普通のバンドならシングルにしないだろう曲だけど、このバンドなら大いにシングルになりうる、その稀有でぶっ飛んだバランス感覚。

 

 

11. スロー(『High Time』収録)

 実に簡素なアレンジで90年代UKロックに当てられた者特有の朗らかなポップさを見せるミドルテンポの楽曲。中々にポップな作曲に対して他のバンドならもっとギターを重ねたりキーボードが入ったりコーラスが入ったりするだろうけども、彼らは潔く、または開き直り的に、間奏のギターソロを除けば実質1本のギターと1本のボーカルのみで上物のアレンジを作り上げてしまう。

 イントロからして、2コードのコードストロークのついでにちょっとsus4を入れて変化をつけただけのかなり無骨な組み方をしている。これにリズム隊が入っただけの演奏でイントロ良し、としてしまえるところにこのバンドならではの潔さが見える。

 ギターは伴奏としてもAメロの裏ではギターはずっとコードを弾くだけで暴れない。そこには少しばかりローファイな感覚さえあるようにも感じる。その、ともすれば雑なバッキングに対して歌のメロディは相当にポップで、不思議にファンタジックな歌詞もあって、それこそサニーデイ・サービスあたりが演奏してもギリ有り得そうな楽曲になっている。特にサビのポップさは印象的で、かつこの時ばかりはバックのギターも細かいカッティングを交えて演奏するので不思議なメリハリが付いている。こういう演奏のメリハリの付け方もあるかあ。

 少しのタメからキーコードに戻って堂々と入っていく間奏ではギターソロがダビングされ、これがまた王道なカラッとしたギターフレーズで、後半にはトレードマークのカッティングも入ってきて実に心地いい。そして、そのソロが終わって休符が入った次には急に1音くらい上に転調する。転調はこのバンドで登場するのは珍しいけども、そこから登場するメロディはAメロのそれと異なっており、短いながらもミドルエイトの役割を果たしつつサビに直接連なっていく。

 歌詞の不思議な世界観と、その中でもうっすらと屈託を抱えている様は実にこのバンドの前期らしい。

 

それほど途方に暮れてはないのに

ぐるりと囲む 若く白い声

自分の誕生日 忘れるくらいに

すこし猫背のままでいるだけ

 

スロー あの花咲く頃に スロー 石を投げつけたい

スロー あの花咲く頃に スロー 石を投げつけたい

 

いびつな想いだけ 溶けないでいる

 

 元々はシングル『リリィ』のアナログ限定カップリング曲だったけども、そのままアルバムにも収録された。

 

 

12. リリィ(『High Time』収録)

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 彼らのシングル曲でもとりわけハキハキと演奏を切り替えメロディを切り替えてひたすらブライトなポップさに邁進する楽曲。すぐにサビになる構成といいともかくポップでバキバキに駆動するロックンロールということで、どことなく初期のThe Whoみたいなイメージを抱いてる*8。ベスト盤とかで彼らの作品を初めて聴くような人の取っ掛かりになりうるくらいのポップさ。

 威勢のいいフィルインから早々にサビ、しかも頭打ちのリズムで早々にボルテージがマックスな具合で、とにかく元気がいい。メロディの昇降もはっきりしつつ、その上でボーカルのかっ飛ばすような荒々しさも込みでやんちゃに暴れ回っているので、これはパンク属性なポップさと言えそうな領域のもの。そこからの早速の間奏もキーのコード始まりの快いくらいに勢い任せで突っ走るもので、この曲の抜けの良さを感じさせる。特にバウンドするように駆けていくドラムの動き方が楽しい。

 一方、サビと対比になるAメロがまた、分かりやすくどこか分かりやすく冴えない感じのコードで展開していくのも、この曲のキビキビした構成の一部となっている。ぶっきらぼうなボーカルの様もここのシミったれコードが1サイクルの終わりにはヤケクソ気味にテンションを上げる流れに沿っていく。Aメロ後半にはボーカルにコーラスまで付随し、ヤケクソそうなノリの割に案外丁寧。基本は、この分かりやすいしみったれ感からブライトなサビに突っ込んでいくのを繰り返す構成で、非常に濃淡が分かりやすいのがこの曲の間口の広さにも繋がっている。

 間奏のギターのトレブルがキッラキラした感じはギターウルフ『ジェットジェネレーション』と近いものを感じる。あっちにくらべればこっちの音のクリアなことクリアなこと。また、最後のサビに追加メロディが盛られるなど、やはり徹底的にポップに仕立てようとした痕跡が窺える。

 歌詞については、もうチバ的な日本語感覚全開のファンタジーで、文章としての破綻を気にせずノリでぶっ飛ばす感じが実に。そもそも歌い出しのサビから意味分からん。

 

こめかみ指で こじ開けてから 意識トバして 帰るよリリィ

 

それでいて、パスタの山をかき分けたり泳いだりしつつ、そのくせ最後の追加メロディではなんか可愛らしいのはもう全然わけわかんない。

 

晴れたらソファで 何を見ようかリリィ

雨ならシャボンに くるまれたいねリリィ

 

 後期の重くしんどい楽曲と並べてライブで演奏すると特に浮きそうな楽曲のひとつだと思うけども、でも別に気にせず演奏されてたな。

 

 

13. ブラック・タンバリン(『Cult Grass Stars』収録)

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 珍しく単音のリフで始まりつつもいつの間にかカッティングに切り替わっていく、サクサクと進行していくインディーズ時代からの持ち曲にして、インディー時代のしみったれ感もどことなく宿した曲。最初期のダサかっこいい感覚がストレートに出てる。

 イントロ、バタバタしたフィルからの単音のギターリフの少し間抜けな感じがなんともなB級ロックの感じを醸し出しつつ、すぐにコードのカッティングに移行するのはこのバンドだなあって感じがある。キビキビしたそこそこ速いテンポの8ビートの上で、チバの歌もそこまでがなったりせずやけっぱち感を出すそれはどことなく若いバカ騒ぎのよう。「オイラ」口調でいい具合に巻き舌も入れて、調子のいい感じだ。セブンスを効かせたブルーズ展開からの、取って付けたようなちょっとポップになるサビへの流れの塩梅が、この曲ならではのヘナッとした感じを醸し出す。終盤のタイトルをみんなで連呼し始める感じは、そんなヘナヘナな世界の狂騒感みたいなのが出ていて、どこか彼らがメジャーデビューより前に長年過ごしてきた、そこそこの客入りのライブハウスの光景を垣間見るような感覚がある。

 歌詞においてもどことなく、陽の目を浴びれないインディーズバンドの悲哀みたいなものが垣間見える作りになっていて、彼らの曲にしてはファンタジックじゃ無い世知辛さみたいなものが覗く。1991年結成でカウントしても結構下積み長いもんね…。

 

3年待っても兆しは見られない

3年経っても 動きはおこらない

カナリアの歌声に合わせて リズムを振れば

焼け落ちた夢のカケラがメシの種

今日も泣いている クロイ タンバリン

 

 この曲も、後期終盤の楽曲の重苦しさと並べると良くも悪くも実にペラペラな感じがするけども、最後のライブでも演奏されているあたり、やっぱ大事な曲なんだろうなって感じがする。

 

 

14. ブギー(『Chicken Zombies』収録)

 彼らの楽曲で初めて“荒野の感じ”を表現しようという試みがはっきりと現れた、長い尺を明確なメロディの抜けもなく、どこか淡々と通り過ぎていくような感覚を8分以上という長い尺と少しヒリつくような倦怠感とで表現した初期の意欲作。後期の乾いたテイストと連続するものを感じさせつつ、しかしここでは極端なブレイクや絶叫などは見られず、もっとぼんやりと奔放に、その荒野の世界を眺めて回ってるような感じがする。案外これも、後期とは隔絶しつつも前期の他のどの曲とも雰囲気の違う、独特な立ち位置の楽曲だと思う。

 イントロからして乾いた歪み方をしたギターの、メジャーでもマイナーでもない、なんとも宙ぶらりんな感覚のコードストロークで幕を開ける。ここで示されたコード感が8分以上繰り返されていく。他の展開などは1箇所だけを除いて一切含まず、延々とこれだけで8分以上。退屈に感じる人もいるだろう。でもこの、果てのないかのような不毛さにこそ宿る情感は確かに有り、少なくともここでの彼らはそれ自体を聴かせようと演奏を展開していく。やたらと鳴らされるシンバルは演奏のメリハリをぼかし、延々と響き渡る歪んだコードストローク共々、砂埃のような感覚を表現しようとしてるのかもしれない。収録アルバム特有の狙っての音の分離の悪さもあって、どこか「あらかじめ劣化したフィルムで観る映画」みたいな情緒を狙っているのか。ボーカルも基本荒くれてはいるけども、メロディ自体に出口めいたものもあるわけでもなく、雰囲気に合わせてザラザラしてみたり、吐き捨てるように呟いてみたりと、表現力で微妙なニュアンスをつけていく。

 とはいえ、この楽曲は明確にテンションが高まる箇所が1箇所あることはある。2分40秒くらいのところで入るギターソロはフィードバックノイズを伴って入ってきて、どことなくオルタナティブロック的な、Neil Young的な引き倒しの様のようにも感じられる。アベのギターでこういうのは少し珍しいタイプかも。その後の歌のメロディもまた声を張り上げ、それまでのコード進行と同じながら何かのピークポイントを無理やり作り出す。そして、この曲で唯一、それまでと違うコード進行が現れる箇所は、そのコード自体を響かせて、渋いこの楽曲の折り返し地点を作り出す。ほっとけばずっと演奏し続けそうなこの曲がここで短いながら一度ブレイクし、そして元の繰り返しにすぐ戻っていく。この、僅か1回、しかもそこから先の尺の方が長い地点でのピークの設定に、この曲に対するバンドの美学が垣間見える。

 やはりNeil Young的なギターソロの後、5分14秒くらいの段階で、歌のメロディはこれまでになく落ち着いたリフレインに行きついて、その後ファルセットでの哀愁に変化する。6分20秒過ぎにはそれさえなくなり、あとは延々とバンド演奏での微妙な変化が繰り返される。ここぞとばかりに前に出てフレーズを叩きつけるベースや、拍を無視するかのようにがむしゃらにカッティングを叩きつけるギター、演奏の熱に自然に促されて激しいロールを叩き込むドラムと、ここでのアンサンブルはかなり面白いが、最終的にはドラムだけが残り、実に無頼な感じの終わり方を迎える。

 歌詞では、なんと具体的な風景の描写は殆どなく、主語のない動詞やら形容詞やらだけで荒涼とした感覚を表現しようとしている。こんなアクロバティックなことしようとするのは前期ミッシェルのチバユウスケくらいのもんだろうと思わされる、圧巻の内容。

 

ずれたままで行った 前より遠かった

はやくもない おそくもない

髪は伸びすぎた 切らなくちゃ 切らなくちゃ

目の前をチラチラ

 

フラフラ咲いて カラカラ鳴いた 繰り返すんだろう

フラフラ咲いて カラカラ鳴いた 誰のせいなんだろう

 

それでまた続いてくだろう それでまた繰り返すだろう

これは誰のせいなんだろう それはわかってるんだろう

 

 

15. バードメン(『Chicken Zombies』収録)

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 これも代表曲。今思えば曲自体もPVもノリがかなりギターウルフ寄り。基本的に同じコードパターンの繰り返しながら、Bメロの変化や間奏、そしてアホな外連味に満ちた歌詞とメロディ構成でスカッと抜けた印象を抱かせ続けるエンターテイメントな名曲。大体何だよ“バードメン”ってアホすぎるだろ…前期の意味不明に楽しいテイストを極限までシュールかつ爽快に突き詰めた楽曲かも。

 ドラムの衝撃に続いて始まるスリーコードの、引っ掻き倒すようなギターの軽快な重厚さの時点でこの曲はもう勝負が決まったようなもの。この、ポップさとロックンロール的なケレン味を兼ね備えた、シンプルにして必殺のギターフレーズがブライトに響くだけで、この曲がどういうノリか一発で知らしめる。やがてそこに乗ってくるタイトルコールも混じったサビボーカルも、まあもう意味とか放棄した、音の快楽そのものといった感覚だろう。これこそこの曲の空気感、どこまでも雑なようでしかしジャストな、自由に開け切った空気感だ。

 同じコード進行のまま、引っ掻くようなフレーズをやめてコードストロークに徹するギターの裏でAメロが始まる。サビと同じコード進行のはずながら、ここで実にキビキビとしたメロディを引き出してくるのはチバのメロディセンスか。Bメロに移行し、やはりスリーコードは共通ながら、1個目のコードだけ少し変わって、それだけからしっかりBメロの雰囲気とメロディを引っ張り出す。地味に凄いソングライティングだと思う。そしてサビに着地し、引っ掻くようなギターフレーズに回帰していく。この曲は延々とそれだけを繰り返していく。ブレイクもミドルエイトも不純物だと言わんばかりに延々と繰り返していくから、この曲はのっぺりしてバカバカしい具合の楽しさがずっと続いていく。各セクションでの変化づけはほぼアベの高速カッティング頼りで、しかしそれで全然変化が付くんだから、このバンドは強い。

 歌詞は殆どナンセンスなように見える。けどもその中でもチバの独特のロマンチックなセンスが垣間見える。

 

さっきまでがアタマの中ではねた

転がりは見えないままでがなる

踊るロマンの血みどろで 軽くなるだけあとはトぶだけ

 

B級映画的なバカバカしい世界観を自由に羽ばたく前期ミッシェルのチバの歌詞の、そのもしかしたら集大成かもしれない部分。

 

 

16. キャンディ・ハウス(『High Time』収録)

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 本当にベタにブルーズ進行なロックンロールをキャッチーな形に仕立ててシングル曲にしてしまった、このバンドじゃなきゃしないような無茶だけども、でも確かにシングル曲になるだけの愛嬌も持った不思議な曲。逆に言えば、このくらいの愛嬌さえ備えれば、割と愚直にロックンロールの形式を保持したままの楽曲でもシングル曲に持っていけるという証明でもあるかもしれない*9

 イントロからしていわゆるジミヘンコード*10が鳴り響き、響き自体は不穏な感じもしつつも、アンサンブルが始まると、ドタドタしたドラムとコミカルに動き回るベースに中和されて、ブルースハープが入ってくる頃にはギターもリフに切り替えて、全体としてどことなくファニーな雰囲気が立ち上ってくる。これは曲タイトルや歌詞なんかも影響あるんだろうな。

 イントロからのギターリフがそのまま伴奏になりつつ、ブルーズ進行そのままの展開に付いたメロディもそこまで強引なものではなく、進行に沿ったものと言える。ただ、チバのどこか悪戯っぽいボーカルはやはりいい具合のチャラい軽さがあって、何歌ってんだコイツ…って感じの歌詞ともども、この曲を“本格的な渋いロックンロール”から少しズラす効果を発揮している。それこそがこの曲のポップさなんだろう。そして進行の最後の部分のブレイクで「Go Back Candy house」と歌うキメは、そこを他のメンバーと一緒にコールする*11こともあって、シンプルにキャッチーだ。

 この曲を決定的に「本格的だけど引っ掛かりにくいロックンロール」と異なるものにしているのはミドルエイトの存在だろう。ひと回ししてさらに盛り上がるもうひと回しのギターソロの後に現れるのは、とりわけ疾走感を覚えさせる流れるようなメロディが入ってくる。ここからまた元のブルーズ進行に着陸するからこそのダイナミズムは、ロックンロールマニアである彼らだからこそのロックンロールをポップに昇華するいじり倒し方だと思った。

 歌詞はもう、全体的に意味が分からない。そんな中にもちょっとしたスタイリッシュな表現が混じるのは2ndまでのチバらしい光景。

 

どれくらいのスプレー 空にしたのか

陽だまりのベランダ にじむオレンジ

泣き声のする向こう 植木を投げる*12

こんな時は なんて言えばいいのだろう

苦し紛れに言われたい「Go Back Candy house」

 

 

17. ハイ!チャイナ!(『Chicken Zombies』収録)

 シンプルさを極めた『Chicken Zombies』期っぽさに満ちたグッダグダの荒ぶり方をしたヤケクソさに満ちたズンドコシャッフルが楽しい、愛すべきバカさに満ちた楽曲。シャウトの仕方は後期に繋がりうるものだけど、そのシャウトの使い方がバカすぎてなかなかこの曲と後期の雰囲気が直接に結びつくことはない。

 冒頭から唸り声のようなギターと3連フィルの連打で荒々しく、その後はThe Kinks的なパワーコードのリフ的なものを凄く癖の強いシャッフルでズンズンと押し通す、そのゴリ押し感がこの曲の全てと言ってもいい。気持ちのいいところにアクセント的に入ってくる大味なカッティングもまた楽しい。チバのボーカルも始めっから吹っ切れてて、まるで後期の如く全編がなっているものの、歌詞のしょうもなさ共々のヤケクソさが、歌と演奏としては中々にハードな質感とのギャップで実にシュールな事態になっている。そして展開はやっぱりブルーズ進行。この人たち本当にブルーズ進行で様々な楽曲作ってくるな。シンプルな構成なので、3分弱の尺でも間奏をたっぷり演奏でき、ブルースハープもたっぷり吹き倒される。2分を過ぎて以降はずっと演奏なのが、本当にシンプルに徹した『Chicken Zombies』の曲って感じで良い。

 歌詞はもうバカさの極み。こんなバカバカしいのを必死で叫び演奏する、というアホさがこの時期の彼らにはあった。『G.D.W.』以降では絶滅してしまったような光景。

 

 

18. カーテン(『RUMBLE』収録)

 まさかの“tmgeシューゲイザー”とでもいうべき、浮遊感のある轟音の中をロマンチックに揺蕩う、このバンドでも異色ながらその哀愁の様が絶妙な名曲。シングル『カルチャー』のカップリング。なんなら『カルチャー』よりもこっちの方が堂々たる名曲感があるけども、流石にこのバンドのシングル曲にこれは違うか。でも、“ただ純粋なロックンロールフリーク”には留まらないバンドのポテンシャルが、前期でもとりわけ雄大に展開されている。

 演奏的にはVelvet Underground『I'm Waiting for the Man』方式とでも言えばいいのか、ずっと8分でドラムを鳴らし続けることで、演奏全体が迫り上がっていくような効果を出すけども、それとベースやトレブルの効いたギターのやはり8分のリズムで鳴らされる音とで、普段とは全然違う雰囲気がはじめから感じられる。一言で言えばそれは“浮遊感”。やがてコード進行が移り変わっても、その感覚は維持される。この感覚に曲タイトルを通じて「カーテン」という出口を与えるセンスの時点でまず素晴らしい。

 チバの歌もまた、優しいというか、ぼんやり夢見心地のようなクリーンさと伸び方をして、その不思議なワードセンスもあって、なんだか別世界への誘いのような趣がある。ブリッジ部分でメロディが変わった後に、ここでリズムが8ビートに切り替わり、チバの掛け声とともに、シンバルが鳴りまくる轟音の感覚がもたらされる。よく聴くと後ろの方でフィードバックノイズも鳴っていて、この曲が普段のカッティング切れ味で進行するロックンロールとは全然別世界なんだと思わされる。演奏方法は90年代式に荒々しいけども、ここで彼らがやってることは要はThe Jesus and Mary Chainなんだもの。

 そして実にオルタナ風味なギターフレーズが降りてくるところで、この曲の陶酔的な快楽性が露わになる。幾筋ものノイズが背後で蠢き、伸び伸びとギターフレーズが伸びていく。これはもう、ロックンロール方面からアプローチしたシューゲイザーと呼んでも過言ではないだろう。そのまま再度Aメロに戻り、8ビートのままロマンチックでアンコントローラブルな騒音を吐き出し続ける様に、もしかしてシューゲイザーもまたロックンロールなんだろうか、と思わせる。最後、Aメロで歌が完結してブレイクしてからの、演奏が噴き上がってくるような感覚は、ノイズロックとしてのこのバンドの可能性をまざまざと見せつける。最後のコードの切なさと、残ったノイズの行き場を失ってうねり消えていく様が最後まで味わい深い。

 歌詞も、前期ミッシェルのチバのファンタジックさで描かれる、ぼんやりとロマンチックであり微妙にダークな奥行きも感じさせる、その世界観を「カーテンが揺れること」その一点に集約させる、見事な筆致。

 

とにかくここで座ってるのは 夢を見たいと思わないから

アタマかきむしる クセついたのは

カーテンくいつくす 赤アリのせいだ

 

まだらに咲いた ハチミツ色の 染みを眺めてる

あごはついたまま

ゆらゆらゆらゆらり ゆらゆらゆらゆらり声あげながら

 

ここまで見てきて思うけど、チバユウスケという人は色んなものを咲かせてしまうな。これは彼の作詞の特質の、割と分かりやすい異才の部分だろうか。

 

 

19. ランドリー(『RUMBLE』収録)

 1990年代UKギターロック的なブライトさが快く載った、ポップでおおらかな空気感とメロディを持った、爽やかなドライブ感のある名曲。これも『カルチャー』のカップリング曲で、このシングル4曲*13ともそれぞれのベクトルを持った名曲で、彼らの自由奔放な勢いが最もよく詰まったシングルだろう。

 叩きつけられたリズムから飛び出すギターはともかく、その後のブレイクからのギターリフのカラッとした様はやはりこのバンドにおいては特殊な事態で、朗らかなコード感のミドルテンポの中をこのフレーズは気持ちよくポップに通り抜けていく。その後もポップな歌メロの後ろで、かなり歪んだ音とはいえ、実に珍しくアルペジオを演奏している。急に湧き出るエヴァーグリーンな感覚、それは彼らの他の楽曲ではあまり想像つかないような、太陽の下広がる草原みたいな朗らかさだ。そしてそれは、1990年代のUKギターロックなどから影響を受けた者たちが共通して持つ、ある種の理想郷のような世界観だ。テンポよくBメロ→サビと展開してみせつつも、彼らもその雰囲気を妙な展開で壊したりすることなく、最後まで全うし続ける。こういう曲調になると、チバの声は案外吉井和哉に似てるとこもあるなあと思ったりした。

 そんな曲調なだけに、間奏の、タメを効かせつつ楽曲の朗らかさに抵抗するようにセブンスでブルーズな濁りを加え倒すギターソロは興味深い。結果として、この曲のエヴァーグリーンな雰囲気に対してのオルタナティブロック的な要素になっているように感じれる。単純に、このギターソロは相当ひねくれてると思う。だからこそ元のギターリフに戻った時の朗らかさもまた効いてくるんだろう。

 歌詞も、ぼんやりとしながらも光景が見えてくる、いい風通ししてる。

 

ひからびたままの それはそれで

まるで空にでもなったようだ

 

バルブひねって白で追い払え バルブひねって白で追い払え

色が落ちても それもでかまわない

色が落ちても それもでかまわない

 

 

20. スーサイド・モーニング(『Cult Grass Stars』収録)

 実に明るいテンションで軽やかに疾走しつつはしゃぎつつ、でもタイトルのとおり歌ってる内容はそういうこと、というミスマッチさが悪趣味にロマンチックな、1stらしさに満ちた楽曲。そういえば90年代って『完全自殺マニュアル』が大ヒットしたような、“自殺”というテーマをカジュアルに扱ってたこともあった時代だった。リアルタイムの空気は知らないけども、この曲もそういう土壌のもとにあるものなのか。

 冒頭からして、彼らをはじめ無数のガレージロックバンドが敬愛するDr. Feelgoodの『She Does it Right』を思わせるワイルドなリフが活き活きと鳴ってるのが聴こえてきて、タイトルとのギャップが存分に感じれる。キビキビした8ビートも始まり、歌が入るとさらにワイルドなブリッジミュートのゴリ押しが入り、少しばかりパワーポップ的な領域に入ってさえいるようなキュートさが、歌ってる内容とのギャップ込みで響いてくる。そのままサビ的なフレーズでいい具合にメロディが伸びていき、元のリフに回帰していく。

 しかしこの曲はそれだけの展開では我慢しきれず、2回目以降の繰り返しでは真のサビとでもいうべきより突破力のあるメロディに繋がっていく。繰り返しの最後で左ブドミナントマイナーのコードを入れて不穏さを残すのも忘れない。意外なのは、この曲でのチバのボーカルは全然がなってないこと。ナチュラルに歌うからこそ、この歌詞がヤケクソさを含んでない感じがして、闇っぽくなるのか。しかし2回目のこのメロディからの間奏は本当に腕白さ極まってるな。ポジティブなのかネガティブなのか全然わからない。むしろそうやって分けれるもんではなく渾然一体なんだよって感じなのか。

 歌詞は、ロマンチックな“スーサイド”を夢想する、まるでART-SCHOOLみたいな感じ。むしろ順番的にはART=SCHOOLがこの曲っぽいこと歌ってんのか。

 

どうせなら 晴れた日の朝がいいね

どうせなら 冬の寒い日がいいね

どうせなら 消えて無くなりたいね

どうせなら 何も残らなきゃいいね

 

手探りのままで待ってるのに気づいたから

モーニング スーサイド

 

 可愛らしくもおっかない夢想をしてたこの男は、その後まあ自殺はせずに、今年11月に食道がんで55歳の生涯を終えた訳だけども。

 

 

21. いじけるなベイベー(『Cult Grass Stars』収録)

 逆ギレみたいなテンションで、よく読むとこれもかなり後ろ向きな内容の歌を爽快にシャウトしロックンロールさせてしまう、変なテンションで疾走していく楽曲。前曲からこの曲の流れは1stアルバムそのとおりの曲順で、この並びは半ば笑わせにきてるだろって気さえする。なんならこの2曲の並びがアルバム中で最も演奏のテンション高いものな。

 辛抱たまらんって雰囲気で走り出すフィルの後にはもうタイトルコールのサビ、というまるで出オチのような始まり方で笑わせてくる。疾走感のあるテンポで小気味良いギターカッティングをバックに勢いよく歌われるけども、例によってヤケクソ感に溢れていて、誰かをマジで励ましてるようにはまるで聴こえないところがらしい。そこからいちいちブレイクしてAメロに展開し、Bメロではよりヤケクソな声の歪み方でなんとも情けない内容を歌い、そしてサビに回帰する。この間中ずっとギターはカッティングを続けてるのでひたすら勢いが維持され続け、そしてブレイクで一旦解除されて…を繰り返す。

 間奏の後、Bメロから歌が再開しサビか、と思わせて演奏がブレイクしジャズテイストに切り替わってのAメロ、という展開は、勢い一辺倒かと思わせたこの曲の意外な切り替え方。『Chicken Zombies』の頃ならシンプルに押し通すだろうけども、この細やかな変化の付け方が1stの味。演奏が再開してからのバックのギターのフリーダムさが面白い。最後のサビでも、ブレイクでこの曲でもとりわけヤケクソさのピークなボーカルで「何も期待するなベイベー」と歌うこの男、面白すぎる。

 歌詞の、タイトルに反して「いじけてるのはお前やろがい!」という感じの情けなさはホント演奏とミスマッチで面白い。初期チバユウスケはどうしてこうも可愛らしく困惑しっぱなしなのか。

 

わからないふりダンスを ダンスを踊れ

見たこともないダンスを ダンスを踊れ

Hi! Lucy! ダンスを ダンスを踊れ

耳元でダンスを ダンスを踊れ

 

悲しいやら 悔しいやら 情けないやら

 

 

22. VIBE ON!(シングル『VIBE ON!』収録)

 パンクでがむしゃらな勢いのみでゴリゴリとマイナー調のロックをかっ飛ばして見せる、後期の雰囲気に踏み込む本当に直前って雰囲気の楽曲。シャウトしっぱなしのチバのボーカルも、低音を効かせたギターのリフも、後期ミッシェルの世界観と直接陸続きで、楽曲自体がバカなテンションなことで辛うじて次のシングル『G.W.D』以降とのギャップが生じてる感じ。伊達にリリースが1998年ではない。

 イントロからしてリフの音程が低く、低いところで何かガボガボ鳴ってる、というのはここまでのこのバンドの楽曲ではなかったスタイルだろう。録音もグチャッとしていて、ともかく何か獰猛な感じの、ボトムの低い疾走感だ、ということが伝わればそれでいい、くらいの潔さを感じさせる。基本的にはこのリフのパートと、ほとんど頭打ちのリズムに合わせて歌も演奏もヤケクソに叩きつけるだけみたいな短いメロディ部との繰り返し、あとギターソロパートのみで構成される。『Chicken Zombies』の頃よりさらにシンプルさを極めたような、落ち着いたパートなんてまるでない、2分半弱をひたすらやけっぱちで突っ込んでいくような楽曲だ。

 要素要素を見ると、怪しいギターフレーズやずっと叫びっぱなしのチバなど、後期のスタイルと共通する箇所は少なくない。だけどしかし、後期の曲はこれにもっと張り詰めた強迫観念やら狂気のようなものやらが入ってくるけども、この曲は代わりに突き詰め切ったバカさが乗っかってる感じ。終盤の頭打ち展開なんてマジで勢いしかなくて、この曲のヤケクソさにとどめを刺す。

 歌詞ももう勢いで書いてるな、って感じ。ただ、“月”をテーマに書いてるのはカップリング曲と共通してるところで、意外と気を使ってる部分も垣間見える。

 

日が落ちたら 月夜でワープ! 腰から砕けろ VIBE ON!

火がついたら 月まで溶ける 腰から砕けろ VIBE ON!

 

 結局、この曲のテンションからバカさを引いて、代わりに残酷さやら重さやらを加えて後期ミッシェルが始まっていく。重大な変化だけど、よく考えたらまだメジャーデビューしてから3年目のことなんだよなあと。同じことを繰り返したくもなかったんだろうしなあ。そう思うとこの曲の突き詰め切ったバカさが切なく思える。

 

 

23. あんたのどれいのままでいい(シングル『VIBE ON!』収録)

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 上記シングルにカップリングとして収録された、実はメジャーデビュー前から存在していた楽曲にして、The Roosters『SITTING ON THE FENCE』を彷彿とさせるような開けたドライブ感とロマンチックなメロディ、そしてそれ以上にロマンチックさに満ち溢れた歌詞を有した隠れた名曲。今回の25曲の中で、これだけ収録シングルもボックスセットもサブスク解禁されていないのでサブスク上で聴けない。

 フィードバックノイズ入りからの勢いよくコードをかき鳴らす、いつも以上に歪んだギターはシンプルに勢いに満ちている。どこか弾むようなドラムとよく動き回るベースなどを思うに、やはりこれは『SITTING ON THE FENCE』リスペクトだろう。ブルーズ進行の縛りなんかも無しにガチャガチャと勢い任せに打ち鳴らす、その様はポップなフィーリングに溢れている。そこからの頭打ちのリズムでのAメロの、チバの朗らかなボーカルの具合は、『リリィ』などにも迫るだろうくらいにポップだ。ブリッジのパートを駆け上り、ブレイクの箇所でこのタイトルを決めるところは、事によっては妙な意味に響きそうなこのタイトルが、もうただただ訳の分からないロマンチックなラブソングなんだなあということを分からせる。

 後半、唐突にAメロの繰り返しが1音転調し、その強引さにまるで悪びれず平然と進行する様がこの曲の意味不明なフックになり、そのままの勢いで楽曲は終わっていく。この無軌道な勢いを仮にも1998年のリリースでするのは不思議だったけど、後にデビュー前からある曲だということを知って納得した。それにしても、もっとまともにアルバムに収録とかできるタイミングはなかったのかな、と、この前期でも有数のロマンチックなポップさを有する楽曲を前にして不思議に思う。

 歌詞においても、なんだろう、どことなく『SITTING ON THE FENCE』を感じるのは思い込みだろうか。

 

だらだら続く下り坂歩きつつ あきらめを探してる

あなたが今ここに来るまでに いくつ あきらめを拾ったろう

 

大したことじゃなくても 余計なことはしないでおくれ

あんたのどれいのままでいい

 

見上げればそこ 大きな月夜の中 あの娘くるの待ってる

 

「余計なことすんな」と言っときながら「あんたのどれいのままでいい」と言うのはなんか辻褄が合わないような気がしないでもないけど、その理不尽さこそがこの曲の愛らしくいじらしいところであることは言うまでもない。それにしても、珍しくはっきりと現実的な景色の見える歌詞だ。この辺が、なかなかリリースするタイミングがなかった理由だったりするのかな。

 

 

24. サニー・サイド・リバー(『Chicken Zombies』収録)

 前期ミッシェルが密かに持ってた“爽やかさ”のテイストをここぞとばかりにこの1曲に封じ込めたような、そんな切なくなるような疾走感と熱情と不思議にロマンチックな歌詞を有した名曲。こんな曲があるからこそ、平気で『カーテン』や『ランドリー』をカップリングに回したんじゃないかなあと思ってる。後期も『ダニー・ゴー』という必殺の爽やかソングがあるけども、この曲はまた異なった趣があると思う。

 イントロのギターの時点で何かぼんやりと爽やかなものが浮かんでくる。疾走するバンド演奏が始まればなおのこと、その流れていくような爽やかさの感覚が強調される。Aメロに入ると、このバンド前期らしいトレブルの効いたカッティングの所々の乱暴な挿入と頭打ちのリズムの上で、ボーカルがジリジリとしたメロディを情熱的に叫ぶように歌う。そして元の爽やかさに戻っていく。ギターをガチャガチャしないことによる清涼感と、それを打ち破るカッティングの対比構造が、この曲をまず強力にドライブさせる。

 Bメロのラフに囁くような歌い方と印象的なバックのリフ、それで最初はイントロに戻るけども、2回目以降はこのバンドの爽やかさのひとつの頂点のような、情熱的でかつどこか涼しげなサビに連なっていく。後述する、最高に素敵な歌詞を半シャウトくらいの調子で歌うチバの様はとてもヒロイックなものがある。一度だけテンポを落として変化をつけるも、すぐにまた加速して、結局この曲の爽やかな疾走感は終わりまで殆ど途切れることがない。演奏もその範囲でしっかりと役割をこなし、終盤のギターのフリーキーなソロさえ、むしろこの曲の疾走感をより鮮やかに彩るフレーバーになっている感じさえある。やりたい放題って感じの楽曲がありつつも、こういうしっかりと楽曲に向かっていく曲もあるのがこのアルバムの本当に好きなところ。

 歌詞のロマンチックさは、もしかしたらこのバンドでも一番じゃないか。印象的なのは、ファンタジーではなくて、シュールでもなく、ネガティブでもなくて、どこか現実的な世界観の中で繰り広げられる一瞬のしみじみとした印象を切り取ったかのようなセンスがこの曲の歌詞にはあること。

 

川の辺りで しゃがみこんでいる

目をむく晴れに 似合わないでいる

降りしきる太陽 咲くからには枯れる

 

かき乱すだけで 濁るのを見てる

泡吹く記憶が はじけとんでゆく

乾ききらない風 聞こえるのは緑

 

川のむこうで けむりがゆれる しわを寄せては 気温が上がる

大したものはないだろと言う それでもいいと あの娘は笑う

 

絶妙に普通の日本語の使い方からズレた表現も交えつつ、チバユウスケこういう真っ当に鮮烈に爽やかなのも書ける。もしかしたらこういうロマンチックさが育っていくとROSSOの『シャロン』とかになるのかもしれない。基本乾いてるか凍てついてるところのある後期ミッシェルではまず出てこないであろうスタイル。貴重な1曲だ。

 

 

25. 深く潜れ(『RUMBLE』収録)

 これもメジャーデビュー前から存在する楽曲にして、昭和歌謡のマイナー調で情熱的なテイストを色濃く出しつつ、途中でテンポチェンジしてからは暴れるロックンロールに変貌してみせる名曲。スタイルとしては後期の『裸の太陽』『武蔵野エレジー』なんかと共通する雰囲気が無くもないが、前期なのでもっと気楽にシンプルにぶっ飛ばしていくのがこの曲の爽快感。

 重いドラムの入りの後すぐに、前半部の楽曲を強く牽引していく、太い音で延々とメロディを反復させるベースが現れる。楽曲前半は三連符のマイナー調で、沸々とした情熱がギターが入ってからも歌が入ってからも、炸裂しないままにどんどん溜まっていく感じがする。一通り歌が終わった後のギターソロは、どうもこの曲が本当にギター1本しか録音されてなくてスカスカなこともあり、前期でも独特の哀愁を醸し出してる。謎のノイズやシャウトも入り、音質もなぜかクソ悪いので、いったいどこで発掘したレコードの曲だろう…というB級な雰囲気を醸し出している。

 この曲の本番は一旦演奏全体がブレイクした後にスネア2発から始まる、8ビートに切り替わって以降の、ケレン味に満ちたロックンロールっぷりだろう。勢い任せのようでいて、チバのボーカルが決してブチ切れ切らずに妙に平熱で歌うのが、バックのじわじわと熱量上がる演奏と対比になり格好いい。そしてやりたい放題なギターソロの、グチャグチャしているようで実に爽快な手際。最後の歌メロに入る頃にはどう考えても演奏再開当初よりも加速してる。そのくせ最後のアウトロではギターが微妙にアルペジオも織り交ぜて、そしてそれが音質の悪さで全然響かない様がまたいい具合にB級ロックンロールの旨味に昇華される。細かい変化をつけつつどんどん加速して、そして堂々と終わる様は、このようにプレイリスト作るときに最後の曲に持ってくるのに打って付けかなあと思うけどもいかがか。

 歌詞は、タイトルで「深く潜れ」と命令形なくせに、実際は潜るのは自分っていう、しかも相手に聞いてくる感じが可愛らしく、しかし、相手を変な表現ながら気遣う、そんな頼もしい一面をも見せる。

 

深く潜っててもいい?深く潜ったままでいい?

深く潜っててもいい?深く潜ったままでいい?

時々 顔のぞかせて 君が息をしてるのを

確かめにゆくから 確かめにゆくから

 

この微かなヒロイックさが、バンドの成長を感じさせる…などと思うけどもでもこの曲デビュー前からあるんだよな、っていう。チバユウスケは本当に不思議な人だ。

 

 

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あとがき

 以上25曲、総演奏時間1時間41分のプレイリストをもとに見ていきました。

 20曲にしようと思ったけど、収まらなかったんで5曲増やしました。やっぱ前期ミッシェルの頃のチバユウスケの歌詞は訳分からんなあ可愛らしいなあ素晴らしいなあ、ということを改めて思いました。もしも『VIBE ON!』以降もそこまでと同系統の作風でバンドを続けてたら、なんてことを時々考えてしまいますが、でもそれはそれで行き詰まりそうだし、しかしデビューから2年でそんな行き詰まりそうなくらいまで突っ走れてた、というのも凄いこと。

 よく考えるとこのバンドは活動期間が7年間で、フルアルバムは7枚。うち3枚を最初の2年間だけで出して、そしてシングルのカップリングだけでもう1枚アルバムが作れるというのは、やはり尋常じゃない創作能力で、湯水のように楽曲が生まれ出てたんだろうか、と思ってしまいます。で、それを絞ってコンセプトを決めてより重く狂おしくやっていくのが後期なんだろうなと。後期のプレイリストも作って聴いてると、やっぱ後期も後期でとても良くて、でも思うのは、やっぱまるで別のバンドみたいなんだなあということ。特に『Chicken Zombies』みたいなアホで自由なアルバムと、『ロデオ・タンデム・ビート・スペクター』みたいな重苦しく張り詰めたアルバムを作ってるバンドが同じというのは不思議なことだなと。そういう意味で、小文字と大文字の変化はいいタイミングだったなと思いました*14

 後期も頑張って書きたいと思います。それではまた。

 

 

(2023年12月30日追記)

後編書きました。なんか前編よりも長くなりました。。

ystmokzk.hatenablog.jp

*1:『キャンディ・ハウス』と『カルチャー』が該当。

*2:これらより後のシングルはカップリングは1曲だけばっかりになってしまうので、そういう意味でもこの時期は特別な感じ。

*3:数年後にNumber Girlも同じようなイントロの『透明少女』で非常にシンプルかつ格好いいイントロを作るので、やっぱこういうイントロの流れはひとつの鉄板的なところなのか。

*4:サビ的なキメの箇所の歌詞は、かなり長い間「甘いもの食いに出よう」だと思ってた。なんじゃそりゃ、ってかなり長い間思ってた…。

*5:強いていうなら『恋をしようよ』のリフに少し似てる…?

*6:ここだけボーカルにもファズを掛ける何気に小技の効いた箇所。

*7:こっちはキャッチーなミドルエイトが付く。

*8:本人たちも意識してたのか、ライブではこの曲の始まりに『The Kids Are Alright』のフレーズを歌ったりしてた。

*9:単にこういう曲でシングルを切ることのできた、CDバブルの中の「幸せな時代」だった、というだけの話かもしれないが。

*10:E7(9)と表記されるもの。

*11:アルバムバージョンではさらに女性?子供?の声もここに入ってくる。

*12:ここの部分は実際に、猫の気を引こうとしてチバユウスケがベランダから植木を投げ込んだエピソードに基づいて書かれているらしい。何をしてるんだ…。

*13:『カルチャー』『カーテン』『ランドリー』『CISCO』だもんな。全部全力って感じ。

*14:先輩のThe Roostersがかなり意味不明なタイミングでThe Rooster“z”に改名することを思うと尚更。