ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

『luminous』ART-SCHOOL(2023年6月リリース)

songwhip.com

 

 ART-SCHOOL全作全曲レビュー、2023年現在ではこれが最後にして最新の作品になります。6月にリリースされたこの作品は昨年の4曲入りシングル『Just Kids e.p.』に続く作品で、フルアルバムとしては2019年の『In Colors』から3年ぶり、通算10枚目の作品となります。

 全10曲で合計約32分という歴代最短のサイズで、収録楽曲のスタイルのこともあって再生開始から聴き終わるまでの疾走感はあの“勢いだけで作った”かのようだった1stアルバム『Requiem For Innocence』さえ凌ぐのでは…という、よく考えたらなんだか凄いなこれは…という作品です。見ていきましょう。

 

 前作『Just Kids e.p.』の弊ブログレビューはこちら。

ystmokzk.hatenablog.jp

 

 前々作『In Colors』の弊ブログレビューはこちら。結構前に書いたものなので今と書き方の形式や文体が結構違うのはご愛嬌。。

ystmokzk.hatenablog.jp

 

 前々々作『Hello darkness, my dear friend』のレビューはこちら。順番はおかしいけど、この記事の直前に書いたのはこれです。

ystmokzk.hatenablog.jp

 

 

アルバム概要

 今回は思いの外前作『Just Kids .ep』から間を置かずリリースされ、なのでバンドの状況も「長い活動休止からの復活」という一点で共通しているので、バンドの歴史的な部分は省き、いきなり作品解説から入ります。なんか公式のアーティスト写真も前作と同じもののままだし。

 

 

全面的にバンドに託した民主的作品

 インタビューを読む感じ、今回はそうらしいです。詳しくは以下のインタビュー記事に譲りますが*1

ototoy.jp

 

 実際、ART-SCHOOLというバンドは木下理樹という人間がいてはじめて成立する、彼が自分の作った曲を自分で歌いバンドが演奏することによってはじめて成立するので、ある意味彼の意向が様々なものに優先されざるを得ないスタイルのバンドではあります。誰かが作った楽曲をみんなで作り込んでいく、という工程がどのバンドにも必要かというとそうではなく、作者のヴィジョンに向かってバンドなり何なりが働いていく、というスタイルのこともよくあることで、このバンドは典型的にそっちだと思われます。アルバムによっては、作曲者が宅録でアレンジをかなり作り込んで持ってきた『Hello darkness, my dear friend』みたいな作品もあったわけで。

 しかし今回は、今回も各曲のデモは木下がクボケンジの協力を得ながら制作しつつも、そこからバンドで合わせていくうちにどんどん楽曲のスタイルが変わっていった、と上記インタビューで述べています。木下自身が「メンバーがやりたくないことはやりたくない」としきりに話していて、さらに「自分の作った曲がどんどん変化していくのを受け入れられるようになったし、曲が成長していくのが見えるのが楽しい」とまで話すほどには、本作で彼は楽曲のグリップを手放し、バンドの流れに任せたんだなと。それが、後述の疾走曲の増加にも繋がったようです。

 また、本作は全10曲のアルバムですが、うち2曲がリードギター戸高賢史による作詞作曲そしてボーカルの曲となっています。えらい登場位置が近い気もしますが、これもまた木下からオーダーがあってのことということで、彼がバンドの他メンバーの要素を求めた結果ということになるでしょう。戸高ボーカル曲がこのバンドの作品に収録されるのは『14SOULS』以来、実に14年ぶりという。2曲を担当した戸高本人としては、「他の木下曲の並びで足りないように思えた要素を補ってみた」とのこと。しかも他の曲でもコーラスは木下ではなく彼が担当しているらしく、また冒頭曲も2人の共作となっていることから、彼の本作での貢献は結構なもののように思われます。

 あと、曲のアレンジの方向性決めで中尾憲太郎が一番硬派な意見を言うところはすげえ面白い感じがしました。キャラの一貫性…。

 

 

ポップな疾走曲の多さ

 本作は全体の尺が10曲32分とかなり短いですが、その楽曲それぞれもまたやたら短く、一番長くて4分7秒で、3分台も3曲、残りの6曲は全て2分台と、全体的にかなりコンパクトな楽曲ばかりの構成となっています。

 そしてそれらの曲で多く見られるのが、テンポが速いために短く収まっているケースです。インタビューによると全体的に本作は、先述のように様々なアレンジの判断をバンド全体の流れに任せた結果、どんどん演奏のテンポが速くなっていった、という経緯でこのようになっているようです。バンドで楽曲を合わせていく中で、このバンドと言えば疾走感のある曲、というイメージが、ライブの延長線上*2で生まれていたんでしょうか。ここまで疾走曲づくめなアルバムは1stフル『Requiem For Inocence』以来だろうと思います。

 ただ、思い詰めて張りつめたテンションで疾走する1stと比べると結構雰囲気が違うのも事実で、もっとずっと開放的というか、曲調が全体的に明るいというか*3。少なくとも、ここでの疾走感は作者自身のどうしようもない切迫感からというよりも、もっとバンドから自然に出てきたもののようで、その立ち位置はずっと朗らかに感じられます。彼らがインタビューで、本作は(1stではなく)4枚目『Flora』で開かれたものを作ろうとしていた時*4のことを思い出しながら作っていたというような話をしているのも興味深いところ。あっちは疾走曲そんなにないんだけども。

 あと、曲の短さについては、最後のサビの歌が終わって後奏なしにそのまま曲も終わり、というパターンが結構多くて、これは好きな人も勿体ないって思う人もいるだろうなと思います。まあ、曲をザックリ終わらせるのもコンセプトのアルバムなんだと思って聴いてもいい部分かも。

 それと、歌メロディの構成の、それ自体の尺の短さも。スッと始まって終わってすぐサビに到達するAメロ、それでいて不足を感じさせないメロディ構成は、それこそ1stの頃の『レモン』などをはじめかつてから木下理樹の密かに強烈なスキルだと思っていましたが、本作は戸高曲も含めて、この美点がフル動員されているように感じます。尺が短いのにはちゃんと訳がある。短い時間でしっかり腹落ちする構成をどう作るかということにおいて、本作はひとつの重要なサンプルたり得るでしょう。

 

 

歌のクオリティの高さ

 それにしても本作の木下理樹の歌、クオリティが非常に高いです。そもそもの声のコンディション自体が2010年以降で間違いなく一番良く、また前作で7ヶ月かけて歌録りをしたのが功を奏したのか、歌い方自体も木下理樹ならではの不思議な歌い回しや独特のグッドフィールを随所に持ち、彼の最早ヘタウマとかそういう次元を超えて、この人でしか聴けない歌い方に満ちたこの稀有なボーカリストの魅力をとても純粋に味わえる作りになっています。本人もメンバーもこのボーカリストの、ウィークポイントさえチャームポイントになるような際どさが奇跡的な部分をかなり細かいレベルで拾い出そうとしている節があります。

 割と冗談抜きで、木下理樹という稀有なボーカリストの分析をこれから始めてみようという、とはいえそれなりに奇特な人がいれば、実は本作から入るのが近道なのかも。

 

 

本編:全曲レビュー

 なぜ英語タイトルが並ぶ曲目の中で2曲目だけカタカナなのか…。

 それにしても、各曲名あとに演奏時間書いてても改めて思うけど、本当に本作は1曲1曲が短い。その上で10曲しかないんだからそりゃ全体も短い。アルバムで一番長い曲が4分ちょっとってやっぱどんだけだ。潔い。潔さ自体が目的化してしまってるタイプの潔さだ。訳分からんことに情熱注ぎすぎてて最高だ。

 

 

1. Moonrise Kingdom(2:57)

ART-SCHOOL - Moonrise Kingdom (Official Audio) - YouTube

 

 本作的な疾走感を象徴し、メジャーとマイナーを程よく行き来するコード進行と、シューゲイザーから爽快感のみを摘出したかのような歪んだギターのうねりで彩った、爽快にこのバンドの方程式によるロックを叩き込む冒頭曲。まるで1stアルバム冒頭の『BOY MEETS GIRL』のように、このバンドの新たな名刺代わりの1曲になりそうな感じさえある。

 この曲を象徴するのはやはり、アルバム冒頭として無音から立ち上ってきては、アンサンブルが始まって以降も嵐のように鳴り続ける、シューゲイザー的に引き伸ばされたノイジーなギタートーンだろう。元々全く予定されていなかったこのギターがレコーディング中に導入されたことで、この曲の何かが決定したと言ってもいいかもしれない。コントロール不能の暴発的なノイズのようでありながら、しかし明らかにアーミング等によってしっかりと制御されたそれは、特に歌の入る直前に実にシューゲイザー的な凶暴な揺らぎを見せたりして、かなりシンプルな構成をしたこの曲の雰囲気・演出を決定づけている。

 制作の順序から行けば逆だけども、このシューゲイズギターを背景の役割に留めてしまうほどの、這うようなボトムの低さで疾走する楽曲とリズム隊の太さがある。一発目のクラッシュシンバルの衝撃から、楽曲と演奏の決断的に突き進む様が中心に置かれ続け、特に低く太いベースのルート弾きを中心に引き摺るように駆け抜けるその様子は1st『Requiem For Innocence』の頃の楽曲群を思わせる。楽曲自体、基本パートはこれはほぼⅠ→Ⅲの繰り返しだけというシンプルさで、しかしその分ⅢMのコードにおけるシリアスに不安定な空気感は程よい緊張感を有している。サビではもう少し細かくコードが動いて安定感を出し、ボーカルメロディの起伏も感情の昂りよりもむしろ安心感を抱かせるものになっている。

 この曲構造だけだと少し起伏が足りないとの自己認識からか、2回目のAメロとサビの間には新しいコード展開とメロディが挿入され、ここがこの楽曲の歌におけるエモ成分の主軸を成していることに、木下理樹の結構テクニカルな曲構成の手腕が現れている。ミドルエイトではなくここで感情を高まらせることで、2回のサビで終わる構成でもまるで違和感を感じさせず、ここで存分にこのボーカルの勇敢なエモ成分が出ることで、2回目のサビが終わってあっさり曲自体が終了してもこの曲でやるべきことをやりきった満足感が出て、この曲を3分弱に納めることにも貢献している。

 歌詞的にも、サビはエーテルだの神の愛だの不思議な単語が並ぶところがあるが、2回目サビ前の追加メロディの箇所を挟むことである程度昇華されている。というかメロディ的にもエモいこのパートが歌詞でもとりわけエモい。

 

心臓を突き刺した こんなビート

水晶の様に澄んでいた いつも僕ら

夜光塗料を塗って 駆け出すんだ

行き先なんてずっと 解らないさ

 

この曲で最も高い音程を叫ぶように歌う際のフレーズがこの4行目だということ、非常にART-SCHOOLとしてキマっているなとつくづく思う。なんでこんな勇敢に堂々と高らかに「行き先なんてずっと 解らないさ」なんて歌えるんだろう。情けなさそうなのに格好いい。

 幸運にもライブでこの曲を聴くことができたけども、ライブの際は最近のギター3人編成により、シューゲギターの重厚な音の壁が再現、どころか、スタジオ音源以上に粗暴に荒れ狂う、殆ど暴動のような出音をしていて、1stの頃のThe Jesus and Mary Chainの精神性へのリスペクトとかも含んだ、彼らのロックに対する執念のようなものを感じさせた。新たな代表曲とするに相応しい、暴動のような出音の中にどこか安心感のあるメロディのある名曲だったんだと改めて理解した。

 

 

2. ブラックホール・ベイビー(2:52)

ART-SCHOOL - ブラックホール・ベイビー (Official Audio) - YouTube

 

 ガリガリと粗暴な感じに疾走するマイナー調の感覚がまるで後期THEE MICHELLE GUN ELEPHANTみたいな雰囲気のある、もはやロックンロール的な躍動感さえ備えた曲。ミドルエイトの箇所以外は歌詞も含めてチバユウスケが歌っても違和感ないんじゃないかこれは。タイトルがこれだけカタカナなのもそれっぽい。狙ったのか…?

 冒頭から中尾憲太郎による太い太いベースのルート弾きによる殺伐とした印象で始まる。これはインタビューによると、木下・戸高の両名からNUMBER GIRL鉄風、鋭くなって』みたいなベースを要望されてのプレイとのことで、実に身も蓋も無い。そして無愛想でゴツゴツしたマイナー調のパワーコードの横で、まるで「アルペジオとかいう軟弱なプレイなんて人生で一度もしたことねえ」って顔でガンガンとフレーズを弾き倒すリードギターのはしゃぎようは実にロックンロールしてる。心なしか木下のボーカルも本作の中でもとりわけぶっきらぼうにささくれ立った感覚があるかも。

 この曲のヤケクソロックンロール感はサビの頭打ちビートでタイトルを連呼する箇所にとりわけよく出てくる。ここコード進行はART-SCHOOLらしすぎるものだけども、しかし本当にTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTしまくってると思う。歌詞も「ブラックホール ミスユー ベイビー」だもんな。もう完全にチバユウスケの世界観だと思う。もっと歌もの然としたART-SCHOOLのマイナー調にありがちな湿度のようなものは全然感じられず、実にカラッとしている。思えばそのような湿度を感じさせる場面が少ないのも、本作のあっさり加減の重要な要素かも。

  ただ、流石に何もかもチバユウスケ風味はどうなのかとも思ったのか、2回目のサビからすかさず入ってくるミドルエイトについてはART-SCHOOL的な切なげな要素が急に挿入される。それまでこの曲にまるで存在してなかったであろうキーボードも現れて楽曲は急に幻想的な色彩に移り変わり、あまりに木下理樹なメロディと歌詞を切なげに歌い上げて間奏に繋ぐ。しかしそのギターをロックに弾き倒す間奏もすぐ終わり、そして最後のサビをやはりヤケクソテンションでやり切ってそしてあっさり楽曲自体が終わる。このざっくり投げ出す本作的な感じがこの曲にはよく似合う。

 歌詞までチバユウスケ感が滲んでいる気もする。というか元から木下理樹チバユウスケ(特にミッシェル後期以降)との間に歌詞のイメージで被る、どこか映画的な光景の要素があったんだなあということだろうか。

 

チャイナタウンで射撃隊が羽ばたく鳥を撃った時

僕は失くした 君の匂い 笑い声やあのセーター

恋人達が吐いた青い煙草の煙の中で

「壊れそうだった」なんて最後に君は僕にそう云った

 

 

3. Bug(3:40)

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 本作のリードトラックにして、本作においてはレアなミドルテンポにてどっしりとシューゲイザー経由のオルタナティブロックを、とりわけエモーショナルなミドルエイト含め展開していく楽曲。疾走曲2連続で始まったアルバムのギアチェンジの役割を果たしつつ*5も、ミドルテンポだからこそ出せるエネルギーや感情の吐き出し方があるところ、本作においてはこの曲でしっかりとオルタナフリークな様を交え、実に木下理樹なスタイルで繰り出してくれる。

 遠くから接近してくるノイズから、何の前置きもなしに一斉にアンサンブルが展開される。その心地よくバリバリとノイジーに歪んだギターの織り成す粘っこくも開けたメジャー調の感覚は、それこそSmashing Pumpkinsなどのオルタナ感を彷彿とさせる。普通の8ビートじゃ物足りないとばかりにスネアを多く入れてくるドラムもまた、エネルギーが溢れ出して抑えられない感を覚えさせる。実に伸び伸びとオルタナティブロックしている光景。木下のボーカルも歌が始まって少し落ち着いた演奏の中で、歌詞の内容の割に実に伸び伸びとメロディが伸びていく。

 そして、実に木下理樹なⅢ→Ⅳ→Ⅴと上昇しⅥ→Ⅴ→Ⅳと下降するコードに乗せたサビメロディが重厚な伴奏の中に浮かび上がる。上昇するコードが前曲サビと似通った進行なのに全然そこに乗るメロディの性質が違うのは、流石このコード進行でずっと飯を食ってきただけのことある。

 そして、この曲の最もエモいポイントもまたミドルエイトの箇所となる。それまで切れ目なく続いてきた歪んだギターの伴奏が、ここだけは確信を持ってオンオフされそれに応じてリズムも強弱のエッジを強め、そのキメを縫うように飛翔するメロディの必死で勇敢な様こそが、木下理樹だからこそ出せる“男の子”な魅力だなあと思える。ここのキメがシャープなそれではなく、鈍重さに気合の入ったオルタナ具合なのもどこか感動的に思える。

 本作のインタビュー時に木下理樹は「活動休止中に自分が体験した地獄のような日々を美しい歌に昇華しようと思った」的なことをしばしば話していて、その割には全体的に重くない本作の中にあって、この曲の歌詞には割と、その辺りの様子が入り込んでいる感じがある。具体的に出すわけでなく、かなり抽象的に落とし込んであるので、インタビューで言われないと気付かないくらい“物語化”してある。

 

いつか俺は壊れた 何もかもが怖くって

そして穴に落ちたんだ 誰の声もしなかった

闇の中でうごめいた 夜はきっと明けるって

羽根を失くした虫が もがき続ける様に

 

光はいつも側にあった 二人はまるでバグみたいに

光に誘われたまま これからまだ飛べるから

 

 この曲もライブで観ることができて、想像以上の轟音で粘っこくもカラッとした演奏を聴かせてくるのは、不思議にどこまでも風通しがいい感じがして、そのまるで破綻したような轟音の具合がとても爽やかに感じられたのが不思議だった。

 

 

4. Adore You(4:07)

ART-SCHOOL - Adore You (Official Audio) - YouTube

 

 『君は天使だった』『Water』に続くマイナー調主体のシャッフルで、本作で最も従来的なしっとりしたトーンのコード感とメロディを持ち、ガッツリとロック的にささくれ立ったギターも鳴らしつつも、シャッフルテンポにより生じてくるキュートさも目ざとく抑えた感じのある曲。そして本作で唯一Bメロめいたものが存在している。なのでなのか、本作ではこの曲が一番尺が長い。一番尺が長くて4分ちょっとって。

 ジリジリと切迫したトーンのギターが弾けるようにアンサンブルが始まって、割と厳しい響きのトーンの割にリズムがシャッフルなところにちょっとばかりシュールなミスマッチがあって、この曲はおそらく本作で一番シリアスなトーンを有しているのに、可愛らしくハネたリズムとそしてBメロの存在で妙にファンシーになっているのも、もしかしたらまた本作全体の軽快さに間接的に寄与しているんだろう。他のアルバムならもっと重い曲になってたのかもなこれは。少なくともこれまでのシャッフル曲よりも案外シリアスなのかもしれない。

 そういえば本作はThe Cureめいたコーラストーンのギターの出番が少ない。それもまた本作のカラッとした質感を高めている気がするけども、その点でこの曲は実にそれらしいコーラスの効いたアルペジオが歌のバックで奏でられ、またメインフレーズ等の歪んだギターもおそらくコーラスを噛ませてある音色だろう。そしてマイナーコード始まりのマイナー調で、憂いを帯びたナイーヴなメロディと、人によってはこの曲にこそ最も“ART-SCHOOLらしさ“的なものを覚えるかもしれない。シャッフル調の割に雰囲気は本当にそれなりに緊迫してはいる。

 だけども、そんなAメロからサビへ繋ぐBメロが「ランランランランラララ…」というハミングめいたフレーズで通されてしまうので、やはりファンシーさが混入してしまう。この歌の裏のギターはなかなかに鋭く歪んだトーンとフレーズをしているものの、シャッフルのテンポでランラン歌われたら何だって可愛くなってしまうもんだろう。また、このBメロ的パートの分だけ本作でこの曲が1番長くなっているんだろう。それでも4分7秒で、特に長いなんてこと全然ないが。サビではタイトルコールも含めながらポップに突き抜けていく。ここでもキーボードがファンタジックな音色を付け加えていて、やはりこの曲はシリアスさ完徹ではなくもっとファンシーなものも含んでデザインされているんだと思う。

 歌詞は、おそらくこれも前曲に続いて「木下理樹の休止中の窮状」の内容が滲んだものだと思われる。そして、苦しい様子よりもむしろその中で救いを求めてたことによりフォーカスしているのも前曲と共通する部分で、本作の全体的に“ポジティブ”な、というか“ずっとネガティブで一貫することがない”スタンスが出てる。

 

君が描いた 天使達が羽ばたいて 僕は吐いた 何もかもを失って

闇の中で 僕はずっと探してた 青く澄んだ星が降った夜に

 

 

5. 2AM(3:53)

ART-SCHOOL - 2AM (Official Audio) - YouTube

 

 2曲連続でシャッフル曲というART-SCHOOL始まって以来の異常事態。こちらは『In Colors』の途中からの展開以来のメジャー調のシャッフルテンポにて、The Smithsのポップな曲を思わせるような軽やかさ、と思ったら途中からそのさらに元ネタであろうモータウン、というかJackson 5っぽくさえなってしまう、ひたすらにあっけらかんとしたキュートな明るさで駆け抜けていく曲。基本明るめのトーンで貫かれている感のある本作においても、この曲の軽快すぎる明るさは群を抜いている。もしかしてこのバンドでも最も明るくポップしてる曲なんじゃないかこれ。タイトルは「午前2時」だけど「午後2時」の間違いじゃないかってくらい明るい。

 冒頭のアルペジオの朗らかな感じからして、この曲がこのバンドのジャングリーな楽曲の一群に属するものだというのははっきりしてるけども、しかしアンサンブルが始まって以降の、The Smiths『This Charming Man』をもっとずっと明るくしたみたいなシャッフルリズムとギターカッティングのブライトさに、そういえばこのバンドではここまで見かけたことのなかった、何気に新境地なものが見えてくる。ART-SCHOOLがこんなに明るくていいのか?全然いいでしょう。

 そのような晴れやかなイントロが終わり少し静かになった演奏の中でも、メロディがやはり晴れやかな雰囲気をそのまま引き継いでいく。歌ってる内容自体はいささか後ろ向きながら、歌自体は本作特有の声のコンディションの大変な良さもあり、非常にブライトだ。歌の裏で流れるアルペジオもコーラス的な濁りもなく、実に素直に、陽光の反射めいた煌めきを発していて、45歳にもなろう男性の声が、実に可愛らしく響く。やっぱこれが深夜2時の曲って無理があるんじゃ…。歌の裏で密かに1980年代っぽい雰囲気で入ってくるシンセもまたこのバンドにおいて独特の感じ。

 こんな明るいAメロからのサビをひたすら同じ単語の執拗な連呼でグズグズにしてしまうところなんて、もはや何かの照れ隠しのようで、でも同じ単語の連呼でも無理矢理にメロディを付けてポップに高揚していくのはメロディメーカーとしての性なのか。その後の間奏で実に晴れやかなラインを描くリードギターにいい具合に接続する歌メロディとなっている。

 そして2回目のサビ直後に出てくる「Come on, baby」のファルセットでの掛け声がこの曲の普段のバンドのポテンシャルをゆうに超えたポップさにとどめを刺す。これは確かにJackson 5とかのそれ。まだそんなタマがあったのか…と地味に驚くとともに、本作の明るいポップさの象徴のような場面だ。このコーラスはラストサビ後の間奏では先述の晴れやかなリードギターと並走していくので、いよいよこの曲の賑やかさが極まっていく。

 そんな明るい曲調の割に歌詞は過去の思い出に縋る感じの内容なのもちょっと可笑しい。いや、『フローズン ガール』以降のメジャー調の曲にはよくある組み合わせではあるけども。

 

午前2時の雑踏で すれ違った君の匂い

笑い声や白い八重歯 想いを…

繋いで

 

 

6. Teardrops(2:36)

ART-SCHOOL - Teardrops (Official Audio) - YouTube

 

 本作に2曲ある戸高作詞作曲・ボーカル曲のうちのひとつで、マイナー調の疾走感を旋回するようなギターとベースのリフを軸に、もう少し“邦楽ロック的“なケレン味に寄せた形でコンパクトに纏め上げた楽曲。作者的にはある程度ART-SCHOOLっぽさを意識して寄せてはいるらしいけども、無理してまで寄せずに自身のセンスを結構ストレートに出していると思われて、木下の疾走曲とはやはり色々勝手が違うなあと思わされるところが興味深い。

 イントロのつむじ風が巻き上がるようなギターの旋回からして、どことなく普段のこのバンドの典型とは違うアプローチだと思わせられる。作者が違うついでに、せっかくだから作風にも幅を持たせてるのかもしれない。リズム隊が消えてヒロイックなギターリフのみ残る手法もまた、木下曲では滅多に聴けない形式の邦楽ロック的な臭みが感じられる。Ⅳのコード中心の、引きずるようなリズムを伴った疾走感の感じも、その歌メロも、ART-SCHOOLリスペクトの後進バンドが絶妙にART-SCHOOLそのままにならない具合をまるで再現しているかのように感じられる。だけど正真正銘ART-SCHOOLの曲なんだけどコレは。誤解されそうな書き方をすれば、公式が自前で自身のジェネリックをやっているかのような面白さがそこにはある。演奏陣もベースをはじめ、その絶妙な”ART-SCHOOL本道からのズレ”を楽しんでいる節がある*6

 サビにおいて一気に頭打ちのリズムになるのは『ブラックホール・ベイビー』と同様にどこかいい意味のバカっぽい潔さを感じさせるものがある。このリズムでサビを演奏することの安易な盛り上がり具合を十二分に分かった上であえて選択してる節というのか、本作はそれくらいバッサリやるのが相応しいんだ、というところで本作のカラーをより印象付けているかも。

 それにしても、テンポチェンジを効果的に活用した2回目のAメロからそのままロマンチックさの流れとしての短いブレイクを挟んでの最後のサビに到達した、その段階でまだわずか1分半ちょっとという展開の時短っぷりは何気に驚くべきものがある。この時短展開こそこの曲における戸高の木下理樹作曲技法リスペクトの最たるものではないかと個人的には考える。残り1分ほどを最後のサビを十分に繰り返し、そしてイントロと同じアウトロをリフレインさせることに費やし、それでも2分36秒という余裕の3分切りの尺に収めてみせる。実に澱みなく無駄のない曲展開は本歌取りも辞さない勢いだ。

 歌詞の、戸高解釈のART-SCHOOL感もまた、バンド内ART-SCHOOLジェネリックとしての味わい濃厚で面白い。別にそっちは詳しくないけど、ストレイテナーみとかも混じってるんじゃないかこれは。「アーティファクトになって」とか意味わからんな。意味わからんのを格好良く感じさせようとするのもまた邦楽ロックの努力の積み重ねたるものか。

 

あの子の世界と混ざって 全て鮮やかになった

忘れてたはずの自分を 思い出していた

アネモネが空を照らした ぼくらは手を取り合って

秘密の場所でこの街を 見下ろしている

 

 

7. I remember everything(2:43)

ART-SCHOOL - I remember everything (Official Audio) - YouTube

 

 このバンドが『WISH』『羽根』『イディオット』などで行ってきた、「サビ以外を激しく演奏しサビで一気に静かになる」タイプの楽曲を今の演奏陣で改めて取り組んだ構図の楽曲。そういえば久しくこのタイプの曲やってないんだなあ、とディスコグラフィを眺めて改めて思った。本人たちもそう思ったのかもしれない。

 このタイプの曲は普通の8ビートにならないことでも共通していて、この曲もまた、つんのめるようなリズムが勢いと浮遊感とを同時に生み出す仕組み。煌めきの残響が効いたギターのワンストロークの後に吹き出してくるこのリズム隊の強靭さ。思いの外ギターがバックノイズ的な地味なミックスをされている感じがあり、歌のないセクションでは特にこの前のめりなドラムとその中をルート弾きで進む大変に太いベースの質感が占めている。その演奏の勢いのまま、歌が始まると、歌の後にコーラスが付いてくる展開が意外と新鮮だったりもして、こういう曲調だからこそのスリリングさをより煽り立てる。

 そこからの静かにブレイクしたサビへの移行は実に“このタイプの楽曲”然としたスムーズさで進行する。2003年〜2005年くらいまで連発していた印象のあるadd9のアルペジオもこれ見よがしに現れて、歌詞の本作のモードとは一線を画した妙な切実さも相まって、いよいよこれは本当に本気に焼き直しなんだなあと思わされる。

 歌詞の方も、本作でもとりわけ以前の曲で聴いたことありそうなフレーズが並んでいる感じがある。1曲くらいこういうのがあるのはかえってバランスがいいのかもしれない。

 

君の様に輝いていられるなら良かった

君の様になりたくて 戸惑ってばかりだった

身体中に染み付いた あんな暗い残像に

囚われたりしないで 囚われたりしないで

 

これでさらに身も蓋もないセックス描写が入ってればもう一気に2005年の世界観だったろうな。流石にそこまではしない。

 

 

8. Heart of Gold(2:23)

ART-SCHOOL - Heart of Gold (Official Audio) - YouTube

 

 もうひとつの戸高曲は、パワーポップギターポップのいいとこ取りをやはり的確にコンパクトに纏め上げ、ピースフルな雰囲気の中に作者的なリリシズムの感じが隠し味的に浮かぶ可愛らしい楽曲。それにしても木下曲を1曲だけ挟んですぐにまた戸高曲が出てくる。シャッフル曲2連発といい、なんか曲順がいい具合に大雑把なのも本作の特徴か。それにしてもこの曲もまた尺の圧縮具合が凄まじい。このテンポ・内容で2分半切るのか…。

 イントロはじめは固く歪んだギターのコードカッティングだけど、すぐにもっと柔らかなギターポップの側面が花開いてくる。楽曲のメジャー調によく合ったadd9のキラキラとしたアルペジオにはよく聴くとアコギも混ざり、この曲がそういえば本作で木下曲としては存在していない“朗らかで牧歌的なギターポップ枠”の曲だと気付かされる*7。スネアも2回と1回のピースフルなパターン、戸高の歌うメロディも程よくくすぐったい塩梅でサビの高揚を待つ。

 サビでは半音で上がるルート音も交えたエモーショナルなコード感を用いながらも、あまり派手すぎず、しかしメロディの繰り返しなしにスルッと抜けていくサビを披露してみせる具合が器用。サビの後半でリズムチェンジも仕込みやすい構成。

 それにしても、2回サビを繰り返し終わった段階で1分20秒ちょっと、そこからそんなに長くないとはいえ本作では稀有な存在のギターソロを挿入して、1分36秒頃にはブレイクも兼ねた最終サビに入っていくという曲展開のもの凄い速さには驚く。Aメロがかなり短い構成になっているのが効いてると思うけども、いくら最後歌が終わってすぐ曲終了とはいえ、サビ3回+間奏をやりきって2分半切りはすごい。

 歌詞の方は少しぼんやりとした儚さについての話。やたらと短い2回目のAメロがなかなか気が利いてて好き。

 

夢の中へ 消えていった 冬の朝の 窓の向こう

うるさすぎる 静寂の中へ 取り残された

 

 

9. End of the world(3:32)

ART-SCHOOL - End of the world (Official Audio) - YouTube

 

 本作で唯一、割とスローなテンポ、というか6/8拍子で、木下印の心細くも優しいメロウさを丁寧に表現した、ドリーミーな浮遊感を有した楽曲。流石にこの曲は木下のデモからバンド演奏に変換される際に疾走曲にはならなかった模様。6/8拍子だもんね。基本疾走してばかりの作品の中で、ラスト前にそれなりの重しの役割を果たしている。

 冒頭から聴こえてくる鐘の音のようなギターサウンドについては、流石エフェクターへの拘りについてひとりの大家となった感のある戸高賢史、ギタートーン自体をまろやかに光り輝くトーンにしつつ、その余韻にもシマーリバーブ的なエフェクトを効かせて、清らかな奥行きを作り出す。アルバムで唯一のソフトな曲なので、この曲では彼のそっち方面のギタープレイが色々と駆使されている。シンセも幻想的で曖昧な音色が薄く密かに入っていて、本作でもとりわけ豊かな静寂が広がっている楽曲だろう。木下の歌も歌詞もどこか夢見心地。

 サビで少しばかりロック的なジリジリとしたコード感とギターによって少しだけエモさが高まるけども、それも楽曲の中心とはならない。強いていうならば、二度目のサビの後にはより劇的なコードの動きの中で最初の歌メロディがより高らかに歌われ、シンセも少しばかり劇的な感じに広がっていく。だけどそれも、そんなに長く派手に続くわけでもなく、歌の最後のラインが終わったところでそのまま自然に減衰していき、最後には意外にもノイジーなギターの残響が残る。その儚さに、本作ではあまり感じられなかった類のこのバンドのもっとメロウな方向性の魅力が滲み出している。

 歌詞のドリーミーさは、むしろ映画館が出てくる場面で高まってくる。映画館というシチュエーション自体がもしかして何かノスタルジックなものを感じさせるのか。

 

古い映画館で 流れる無声映画

声も出さないで 君が泣いていた

 

古い映画館で 恋人を待つ少年

人を愛せると 赤く頬を染めた

 

 

10. In The Lost & Found(2:47)

ART-SCHOOL - In The Lost & Found (Official Audio) - YouTube

 

 本作の最終曲もやはり疾走するテンポで、マイナー調のロックをかなりざっくりとして大味なギタープレイとメロディ展開とでサッと駆け抜けていってしまう、これまでになくあっさりとアルバムが終わってしまって「えっ?」ってなるくらいの曲。まさか後奏もなしにアルバムを締めるとは。このざっくり感こそが本作が本作たる所以かもしれない。

 いきなり頭打ちのリズムにLUNA SEAみたいなマイナー調のアルペジオで幕を開け、かと思えばすぐにアルペジオが裏に引っ込み、ハードに歪んだギターカッティングと疾走するリズムに切り替わる。この間僅か12秒。この曲は大体この2つのパートで構成され、それぞれAメロ、サビと発展していくので、それを先に提示したような感じなのか。

 Aメロはお得意の短いメロディの繰り返し、からの、早々にサビへの助走めいた、流石にこの短さでBメロとは呼ばないだろう、くらいのブリッジを経て、早々にサビへ。イエー!声のコーラスをまた復活させて、引きずる様なリズムの中をヒロイックに歌い上げる様は、マイナー調のコード進行だけども湿り気方面なエモさを感じさせず、実にカラッとしているところがある。そしてシンコペーションの連続でグイグイと食っていくリズム感がその疾走する勢いの属性を規定する。

 地味に2回目のAメロ裏でノイズ的なギターを披露したり、ミドルエイトのセクションで残響の効いたギターを鳴らしていたりなど、シンプルな曲の中でもギターはこの曲をシンプルなロックンロールになりすぎないよう、ART-SCHOOLの側に一生懸命寄せようと様々な小技を利かせている。

 しかしそれらも、インパクトという意味では、最後のサビの終わりをファルセットで駆け抜けてそのままアルバムを締めてしまうボーカルの役割を食うほどではない。最後の呆気ない終わり方は、余韻の後の無音でリスナーに「えっ今ので終わり…?」と少しシュールな後味を残しつつも、このバンドにおける木下理樹の役割の大切さを、最後のファルセット一発で示してみせる。

 歌詞は、やはりサビの、不安をそのまま美しさに転換してしまうかのようなフレーズが印象的だ。それはかつて彼がギリギリの中でかろうじて歌い上げてたようなものと陸続きの、現実全然そうはいかないけども、しかしそうであって欲しいと願うような、願えるような、そんな開き直りの祈りだ。

 

壊してしまいそうで 震えてばかりだった

何も無い二人なら どの傷も透明さ

 

 

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終わりに(ART-SCHOOL関係レビューひとまずの終了も含めて)

 以上全10曲、31分35秒のアルバムでした。

 実にあっさり。『シャーロット』とかに典型的な「ここがアルバムの最深部」みたいな楽曲も特になく、時々テンポは変わるものの、スムーズに走り抜けていくような作品だと感じます。そこに食い足らなさを感じる人もいるだろうなと思いますが、しかしここまでスムーズに駆け抜けていってしまう作品もなかったなというのも事実で、これはこれで作品としてのキャラが立っているのではないかとも思われたり。案外、最初に聴く1枚として、いまだサブスクにない1stの代わりに推すことが全然できるんじゃないかとも思ったり。歌もクセは強いけども実に丁寧だし。

 前作『Just Kids ep』がどこかリハビリ的に木下理樹の楽曲の特徴を4種類抽出してきた感じだったのに対して、本作はもっと少ない幅で出してきた感じさえしますが、しかしそのことが間違いなくスムーズさに直結していて、戸高曲というイレギュラーな存在が2曲もあるのにそのスムーズさが途切れずむしろ加速さえしてるように感じられるのも面白く、またどこか心温まる思いもし得るように思われます。活動再開からの流れでたどり着いた地点として、不思議に爽やかな感じ。

 

 そして、一応本作レビューをもって、ART-SCHOOL作品はもう概ね全部、全曲レビューできたというところになります。思い返すこともままならないくらい前から、このバンドの作品や楽曲についてとやかく書き続けてきた者としては、あまり「これで終わり」という実感もなく、また新作が出れば書くだろうし、この前見た暴動じみたライブの感想だって時間が取れれば書きたいし、『スカーレット』以降の作品レビューがかなり前に書いたものが最後になってるので書き直した気持ちもいくらかはあるし、別にこのレビューで終わりなんてことは全然考えてないかなと思います。

 それにしても、もはや思い出せないくらい前からこうやってレビューを書きたい!と思わせ続けられるような作品を作り続け、今日に至っても活動し続けているこの、木下理樹という人物とART-SCHOOLというバンドは本当になんて奇跡的で、換えが全く効かなくて、そして最高なんだろうな、と思います。感謝しかありません。今後も、無理をしない程度に、しかし傑作を企み続けて、そして破滅的であることがむしろ癒しであり救いであるかのようにさえ思えるライブ活動を続けていってください。まだまだずっとずっと観ていたいと、そう思わせる新作&ライブでした。

 

 それではまた。

*1:ところでこのインタビュー中にある「放心状態みたいな感じで作るアルバムもあったし」というのはどれのことだろう…。

*2:ライブでは初期の疾走曲を頻繁に演奏する。

*3:マイナー調の楽曲2曲がどちらも暗さよりもバカっぽさまで感じられる荒々しさを重視しているように聞こえるのも大きいと思う。

*4:その割に妙に陰気な曲もあったりして単純じゃないところがあのアルバムの面白いところでもあるけども。

*5:同じく冒頭から2曲連続疾走曲だった『Requiem For Innocence』においても3曲目にはミドルテンポ“偽装”をした『DIVA』が置かれていた。まああちらは『DIVA』もやっぱり疾走して、続く『車輪の下』まで疾走曲が続くけども。こちらは別にテンポチェンジはしない。

*6:特にベースはインタビューでえらい文量をこの曲の、他と異なりルート弾きを色々と外れたプレイに関して割いている。まあシンプルなルート弾きならではの良さも同時に語っているけども。

*7:木下曲としては代わりにより溌溂とした『2AM』があるけども。