もう相当前の記事になってしまったこれは、なかなか後編を書けないままで来ていたけれど、アクセス解析なんかを見ると結構読まれていて、拙いのに恥ずかしい気もしますけども、いい加減後編を書こうかなと、正確には、後編も途中まで書いてたけど、きちんと書き終わって投稿しようと、今回思い立ったわけです。
後編は、実際にリズムギターを弾く、そんな必要が出てきたときに、実際にどんな機材をどう使えばどんな具合に音を出すことができるかとか、いわゆる実践編です。全然実践できてない筆者*1がこんなこと書くのも如何なものか。
リズムギターの動作おさらい
前回から間が空きすぎてしまったので、改めてリズムギターが時に歌を歌いながらも、どんな動作をする必要があるのか、ということについてもう一度確認しておきます。基本はバンドに2人ギターがいて、片方が歌いながらギターを弾くことになる、という想定の上での「リードギターがやること以外。歌いながら弾くこともあるような範疇」というところです。3ピースバンドもギターがボーカルなら大体一緒かもですが。
コードカッティングをする
CとかGとかAmとかそういうコードを弾きながら歌います。コード弾きとも。フォークギターの弾き語りをそのままエレキギターに持ち替えただけの場合もあれば、リズムを工夫してリフみたいに響かせる方法もあるでしょうし、時には普通のコードだけじゃ面白味がないということで、変則チューニングだったりカポタスト+開放弦で不思議な押さえ方のコードを鳴らしたり、コードの変化感をベース等に任せて自分はワンコードを延々と弾いて曲に浮遊感を持たせたり、ここだけでも様々な工夫の余地はありますが、それでもなんらかのコードフォームを握り、大抵はオルタネイトピッキングでジャカジャカと弾く。
案外、他にリード楽器がいるときのギターボーカルというのはこれだけで十分な場合が非常に多いかと思います。それゆえにこの、シンプルだけども常に鳴り続ける、しかも面的に鳴り続ける音がどんな音かというのは、意外と重要なんではないかと思うわけです。
リフを弾く
コード弾きと何が違うかと言われると、時に境界が難しいところ。Nirvanaの『Smells Like Teen Spirit』がパワーコード弾いてるだけだけどコード弾きというよりはリフだよなあ…って思うような。同じミニマルなプレイを執拗に繰り返すような感じだとリフっぽくなるのか。ファンク的なカッティングプレイはこっちに属するのか。
ギターリフといえば普通リードギターの花形プレイだと思いますが、しかしリズムギターが楽曲の基調となるリフを担当しリードギターがエフェクトを添える、みたいな構成も全然あり得るわけで、シンプルなリフなら歌いながらでも練習すればできたりするものです。浅井健一クラスは流石に無理にしても。
こっちも、ギターの音色によって聞こえ方は大きく変わってくるはず。むしろエフェクトをどう響すかもリフの聴かせ方の一部かも。
アルペジオを弾く
アルペジオをバンド編成で歌いながら弾くときは、コードカッティングのジャカジャカをリードが弾かないのであれば、その分音がスカスカになるので、そこを楽曲の構成的にどう利用するかがカギだと思います。ただ、歌いながらアルペジオを弾くのは、ちゃんと歌詞を頭で追い口から発出しながらしかも手元の押弦や運指を間違えないようにするのは、結構な高等技術だと思います。きっちりとやるのであれば練習あるのみ。
ギターの音色は、アルペジオ時はあまり歪ませないことが、アルペジオを綺麗に響かせるための基本。なので、どうクリアさを確保するか、一音一音をどう楽曲内で響かせるかが重要。ピッキングの強弱もかなり重要になってくる領域。ただ、グズグズに歪んだままのアルペジオも時には格好良かったりするのですが。
音の壁を作る
70年代ハードロックではリードギターリストのリフ等によって、80年代ニューウェーブではキーボードやシンセ等によって生み出されていたこれがリズムギターの仕事になったのは、90年代オルタナティブロックによるところが大きいのかなと思います。ディストーション、またはファズによって低域にシュワーっとした音の壁を作り、その上でボーカルがシャウト等をするスタイルのキャッチーさは今日の「ロック」的音楽の醍醐味のひとつか*2。
更には、シューゲイザー的に幻想的なサウンドの壁を作りあげることもあり得る。この場合ギタープレイはシンプル(ワンコード弾きっぱなしとか)な方が効果的なことが多いので、普段はピンボーカルな人が音の厚みを加えるためにそういう曲のみギターを担ぐ場面もあるのかなと。
こういうプレイをする場合、曲によってはアンプ直でも全然効果的な場合もあるけど、でもまさにエフェクターの出番、という場合が多いのではないかと思います。
機材編その1:アンプ
こんなに並べる必要はないし、そもそもギターをぶつけてはいけません。
そもそものエレキギターの音を出すのにアンプは欠かせません。そしてアンプ自体にギターの音を色々変えるツマミがついています。大抵のアンプはそれ自体で歪ませたり、リバーブかけれたりします。
ただちょっと歪ませてコード弾くかアルペジオ弾くだけなら、リズムギターにはギターとそこそこのアンプだけあれば十分です。エフェクターはチューナーくらいあれば便利なのかもだけど、それ以外を実は必要としていなかった、ということは十分あり得る。あとは曲によってリズムギターの音の切り替えが必要になるかどうかですが、場合によってはアンプ付属のフットペダルで解決することなんかもあります。
リズムギターにとって、どんなアンプが使えるでしょうか。そもそも本当にそのアンプ使えますか・使わせてもらえますか…?という話だけども。
◯Marshall JCM2000
Marshall JCM 2000 DSL 100 Demo- Clean - Crunch - Metal - Lead - YouTube
スタジオ定番アンプの歪む方。ひとまず割とどこのスタジオにもあるこれをそこそこちゃんとセッティングできるようになれば、変なことをしないギターボーカルであればアンプ直でも十分対応できる気はします。ただリードギターの方がマーシャルは似合う気がする感じもあります。大きいし。あと自分はマーシャルのセッティング苦手…。
◯Matchless DC-30
Matchless DC 30, di Alex Massari - YouTube
コンボアンプの最高峰のひとつでしょう。透明感と歪み具合がとてもいい具合にロック的で、クリーン〜クランチはこのアンプがあれば何もいらない。
問題は、こんなのどこのスタジオにも普通は置いてないし、自分用で買って使うとなると運ぶのに手間だし、なにより高いこと。数十万かけて購入してこの重いのを運用するのを考えると、自分はまだ数万のエフェクターで近い音出せりゃ十分かなあとも思います。
フェンダーアンプやVOXのAC-30なんかも、こっちの系統の音かと。カラッと煌びやかに鳴って、ピッキング次第で澄んで、かつ歪む、みたいなのはロックギターの永遠のロマン。
逆に、クリーンサウンドに特化していてアンプの歪みを利用しにくい、以下のようなアンプを歪ませて使いたい場合は、それ用のエフェクターが必要になってきます。
◯Roland JC120
スタジオ定番アンプのうちの歪まない方。すべてを諦めてエフェクターを使いましょう。マーシャルがリードギターに取られるなら尚更。アンプ直のクリーントーンだけで曲を作って演奏しきるとか、このアンプのDistortionつまみで極上の歪みを作れるとかいう人はそれは玄人です。
逆に言えば、このアンプを前にしてエフェクターの方を見つめることで見えてくる世界というのがとても広い訳で。迷宮かもしれませんが。
あとリバーブとコーラスは普通に素晴らしい音なので、このアンプでそっちのエフェクターを使うのであれば、何らかの理由めいたことは考えていいのかも。
機材編その2:ギター
ぶっちゃげ、好きなギターを弾けばいいのでは、とさえ思います。ジャカジャカ鳴らすだけであれば、リードに比べて音の存在感は薄いので、加えてエフェクターで色々としてしまうのであれば、ここはそんなに拘るとこでもないかもと思ったり。
とはいえ、こういうギター、というかこういうピックアップ*3ならこういうプレイがしやすい・しにくい、というのは確かにあるなと思うので、その辺だけ。個人的には何も考えずにテレキャスかジャズマスでも使ってりゃいいんじゃないの?とか思ってますが。
◯シングルコイルのギター(というかフェンダー)
チャキチャキした音や、ジャキジャキした音が鳴りやすいのはシングルコイルのギター、特にフェンダーのギターでしょう。
ことギターボーカルというジャンルでは、統計取った訳じゃないけど、相当の割合がフェンダーのギターを担いでいるのでは。それは、バンドサウンドの音の中で、高音のジャラジャラした音をリズミカルに響かせることがリズムギターの重要な役割だからかなと思ったり。
筆者はあまりいろんなギターを弾いたことがないので、むしろ「フェンダーのギターならハムバッカーでもジャキジャキ鳴るんじゃないの?」くらいに思ってるかも。
そして、フェンダー以外のシングルコイルのギター、たとえばES-335とかの音が意外とジャキジャキにさせづらいのとか、なんでそうなるのか全然分かってないです。
◯ハムバッカーのギター(というかレスポール?)
ハムバッカーのギターはジャキジャキさせづらい。きっと構造上そうなんだろうと思うので、リズムギターはジャキジャキいわせるのが仕事、くらいに思ってる筆者としては距離を置いてしまうところ。「クリーミーなトーン」というのも、リズムギター的には用いる場面が限られてくる感じ*4。レスポール重いし。
しかしながら、歪んでブッ潰れた音についてはハムバッカーの方が得意かと。特に、フェンダー系だと角が立つようなところがまろやかに収まるのはハムバッカー系の重要なところ。結果としてリッチで重厚でインダストリアルな歪みになるのはこっち、なのか…?自分がそういう音を求めてないからひたすらよく分からないけど。
機材編その3:エフェクター
ここからが本番。どんなプレイに、どんな効果を出すのに、それを場合によって歌いながら出すのに、どんなエフェクターが必要なのか。ひたすら王道ペダルを連発するので、そっちの人にはあまり面白くないかもしれません…。
想定しましょう。「あなたはあなたがギターボーカルのバンドをすることとなり、スタジオのマーシャルはリードギターが使うことになり、あなたはJC-120で音を出すことになった」。あなたはどんな曲を作り、どんな効果を狙って、どんな音を出すべきか。異論反論たくさんあるだろうと思いますが、見ていきます。
◯オーバードライブ
いきなり本番だ。ジャッキジャキにするのか?モッコモコにするのか?その楽曲はどっちを欲しているんだ、といきなり問いかけられる。いわゆる「メイン歪み」ってやつだ。ジャキジャキな音ならJC-120アン直でも作れる?向井秀徳がやってた?知らん。
・BOSS BD-2
This is ロキノン!かどうかはともかく、フォーキーな音〜ジャリジャリな歪み〜ジャキジャキなサウンドまでを出すのに手っ取り早いエフェクターがブルースドライバーであることに間違いはない。定番中の定番中の定番。何の面白みも無いとか言われても困る。あとはこれをどう使ってコードとかそういうのを歌の後ろで響かせるか。「もっといい音がいい」とか言うんだったらOCDでも買っといてください。正直この辺を考え込むよりも楽曲の構成とか他のアレンジとかを考えた方がいいと思ったりするんですよね。
・Electro-Harmonix Soul Food
「ジャキジャキとかガキっぽいことがしたい訳じゃねえ」っていう場合はあると思うけども、そんな時はこっちがいいのかもしれない。よりファットな中域がベターっとした歪みを生み出したりする。しかし、このエフェクターのネタ元であるケンタウロスをメイン歪みに使おうとは思わないのに、このコピー品くらい値段が下がったらなんかアリに感じるの何なんだ。試聴動画のアンディはリズムギター向けのフレーズも弾いてくれてて助かる。
それにしても、モコモコ系の音でもリズムギターにチューブスクリーマーを使うという発想にはなんか至れない。筆者はまだチューブスクリーマーを理解できるレベルに達していないなあ。
◯ディストーション、ファズ、ともかくなんかブースト
リズムギターが歪みを切り替える理由の第1位は間違いなく「ここからサビだ」ということでしょう。この90年代オルタナ以降の様式美自体の是非はともかく、この行為がロックミュージックの大事な要素の一つであり、時に抗いがたい魅力があることには変わりない。
それに必要なアイテム、必要であるべきアイテムこそがディストーション、またはファズ。要はもっと歪ませて大きい音にしたいだけなんだから、その辺の区別なんかどうでもいい。時にはただ音量を上げたいだけだったりで、もう1個オーバードライブ繋ぐとかブースターとかが正解だったりもするけれども。。
・Electro-Harmonix Big Muff
もはや「歪み」という概念の象徴ですらあるような、Big Muffという伝説的存在。意外と汎用性が低いのでご利用は計画的に行うのが望ましいけども、ともかくドシャメシャに歪ませたいセクションにこの音が嵌まり込むと最高に気持ちがいい。
エレハモ自身による様々なリイシューや、それ以上に遥かに豊富なコピーモデル等も含めて色々選べる幅があるのも楽しい(その楽しさを「沼」という)。オルタナ・グランジ的にはよりディストーションっぽいロシアンかファズ寄りなUSAか、というところ。シューゲイザーをしたい場合はこれだけではそれっぽい轟音が完成しないことに注意。
ディストーションやファズも色々あると思いますけど、あとはRatとかRiotとかその辺が普通に使いやすいのかな。BossのDS-1xが色々汎用性高そうで気になったり。
◯コーラス
コーラスをかけるかかけないかでまた全然コードカッティングの音が変わります。「コーラスをかけた音」を歌の後ろに響かせたいのであればコーラスは必須エフェクトであり、ただ演奏する楽曲全てで掛けるわけではない場合は、ほぼエフェクターが必要になるので重要。ニューウェーブ気味なギターロックや、またはファンクでそういう音色を使いたいときなどには注意。
・Electro-Harmonix Small Clone
コーラスエフェクターの王道にして結構エグいやつ。っていうかエレハモばっかだなこの記事。Nirvanaにおける使用によって伝説化したエフェクターでもある。音の位相をずらすから云々はともかく、ともかくこういう音になる。
・Arion SCH-1等
こっちは元々激安ペダルとして売っていたのに、凛として時雨の人の使用によりプレミアがつくまでになったやつ。Samll Cloneよりもソフトなコーラスか。
コーラス、リードギターが繊細なアルペジオを弾くとかだと、音の澄み方とかが重要になってくると思うけど、リズムギターがジャカジャカ鳴らすのに被せる分には、あまり機材間の音の違いを細かく気にしなくてもいいかも。ともかく「コーラスがかかってる感」が伝わることが大事。
◯フェイザー、トレモロ等その他コーラス以外のモジュレーション系
フェイザーの使用例(Cream Soda/スーパーカー 1分半以降くらい)
フェイザーやトレモロは飛び道具的。特にリズムギターでとなると、そういう音のセクションを楽曲の中に組む、ということになるので、ソングライティングとも相談する話になってきます。
・Electro-Harmonix Small Stone(試聴動画)
またエレハモ…。筆者はこういう音をリズムギターにかけっぱなしで1曲というのは考えたことないです。
・One Control Tiger Lily Tremolo(試聴動画)
トレモロの王道ってやっぱBOSSなのかな。筆者は小さくて軽いのでこれを使ってます。トレモロの効果はゆらゆら帝国以降どんどん再評価が進んでる感じがする。音の切れ方のリズムとかを細かく切れるようにする高級機なんかもあるけど、リズムギターで使うものかどうかはよく分からない。
◯ディレイ
スラップディレイ*5。これがリズムギターがディレイを使う理由の7,8割なのではと勝手に思ったりしてます。あとは飛び道具的な使用。逆再生とか。飛び道具はどっちかといえばリードギターの仕事な気もするし、スラップディレイでカッティングをするとか、あとはダブっぽい要素を入れるとかでなければ、リズムギターは無理にディレイを使う理由は無い気がしたり。そして、スラップディレイを聞かせるだけならやはり、ディレイはなんでもいい気がしてきます。
・BanananaEffects AURORA
「リズムギターが使うディレイはスラップディレイだけ」という筆者の思い込みをぶち壊して欲しいタイプのエフェクター。歌を歌いながらこの変態機動を制御して曲に効果をアレさせるのは相当大変そうだけども。というかこのエフェクターまともにスラップディレイとかで使えるんだろうか…。
◯リバーブ
リバーブを積極的に使い込むということはそういうサウンドを選ぶということ。サイケにもポストロックにもドリームポップにも繋がる要素であり、ここ10年で新たなこけおとし飛び道具として持て囃されたシマーリバーブ*6もあり、そしてファズだけで完成しないシューゲイザーサウンドを埋めるためのキーでもあります。特にリズムギターでリバースリバーブを使うということは完全にそういうことでしょう。というかここまで来ると最早リズムとってねえ…。
リバーブはそもそもアンプに付いていたり、ライブハウスの卓で掛けれたりするため、これをエフェクターとして自在にかつ有効に操作したいとなると、そこにはバンドの戦略性さえ見えて来るものになります。リバーブを有効かつ奇抜に使って、気鋭のインディーバンドになろう!
・Electro-Harmonix Oceans 11
割と最近エレハモが出した超欲張りコンパクトリバーブ。最近のエレハモは本当に欲張りすぎる。リバーブで欲しい飛び道具的要素を多数備えている(リバースリバーブもあり)ところが、需要がよく分かってて恐ろしいというかずるいというか。スラップディレイとかもこれがあればできるし、コーラスやフェイザーやトレモロにもなるし、シマーも当然あるし、何故か12弦ギターっぽい音も出せるし。これを使いこなして来ると、逆にスイッチが一つしかなくて、他の設定に切り替えができないことに不満を抱くのかも。
◯ワウ
「おれはファンクをしねーからワウとか関係ねえ」「あのノリノリにチャカポコ言わせるのがダセえし気に入らねえ」という観点や、「そもそもあのチャカポコ感はリードギターの仕事では」という偏見からリズムギターにおけるワウはそんな存在感無い気がしますが、ミツメの使い方なんかを見てると、こういうちょっととぼけた具合にバッキングをポワポワさせるのに使えたり、またはなだらかに可変させることでちょっとサイケデリックな音響に使えたり、フィードバックっぽい音を出したり、意外と色々使えそう。そのための楽曲構成や準備がしっかりと必要そうだけど…。
・Hotone Soul Press
小さいので。これはボリュームペダルとしても使えるけど、リズムギターだと使うかどうか。あとワウも実はスイッチがあって、スイッチを切らないとナチュラルそうな状態でも音が変わってしまうことは最近知りました*7。。
◯ピッチシフター
段々普通のリズムギターから離れてきてる…。ピッチシフターを使ったサウンドといえばDeerhunterですね。一体Eventide社はこれでどれくらい儲かったんだ…?
・Eventide Pitch Factor
有無を言わせぬデカい箱。未知な音を出したいのなら当然の出費&容量だろうと言わんばかりの万能さを感じさせる。ここまで来ると、むしろプレイヤーがエフェクターに試されているんじゃなかろうかとさえ思ってしまう。
・Electro-Harmonix POG2
ピッチシフターならエレハモも負けてない。この…上下2オクターブに音を追加できる謎のデカい箱。無難に12弦ギターっぽい感じや、シマーエフェクトっぽい感じにも使えるけれど、轟音にこれを噛ませた時の「轟音の奥の痒いところに手が届く感じ」はなんとも不思議な感じ。その気になればオルガンみたいにも使えるし。まずは曲の中での使い方を考えないといけないですけどね。
◯その他
「あのさあ…」って言われそうなエフェクターを幾つか。リズムギターにてどうやって使うかは皆さん適宜考えてください。
・MASF Raptio
音の「持続」と「グリッジ」の両方の機能を持つペダル。音の持続の方は薄く持続音をSE的に残して使うプレイが考えられるけど、ただこれは足で踏みっ放しにしないと音が切れるので、それならばElectro-HarmonixのFreezeを使うかもしくはディレイでHoldさせた方がいいです。
グリッジというのは「音を切り刻んでガ、ガ、ガ、ガ、ガってやるやつ」という感じ。トレモロでも似たことはできるけど、局地的に発動させるならこういうペダルの方が便利かと。リズムギターが歌いながらこれを踏むか、というと…。
・Electro-Harmonix Mel9
ギターでキーボード系の音を出す、というエレハモのシリーズの中でも最高傑作。オルガンとかエレピとかと違って、メロトロンという楽器が普通使われないことにより「ギターでわざわざメロトロンの音を出すこと」という疑問点が全く解消されていること、およびその大雑把でかつ幻想的なパッド感が大変素晴らしい。キルドライも勿論良い、むしろ楽曲のワンセクションの道具として活かすならそれ一択かとは思うけど、でもこれはギターの原音残した状態で、ジャキジャキ弾いてる後ろにこの不思議サウンドを重ねたいというロマンもある。音の追随性にクセがあるので難しいけど、使いこなしたい…!
・Grendel Drone Commander
これをスピーカー等に繋いでフットスイッチを押せばドローン的な音が鳴る、という優れもの。ギターを繋ぐ余地など無いし、最早エフェクターじゃなくてシンセだけどな。ディレイのHoldとかFreezeとかシマーリバーブとかピッチシフターとかでバックにパッド的なサウンドを設けたいんなら、もういっそ足元でシンセを操ってしまえばいいんじゃないか。普通のシンセと違って足でオンオフできるから、必要に応じて入れたり切ったりできるぜ。足でシンセのキーボードを踏めばいい?キーボードになんてことをするんだ!
mid-fi electronicsのOrgan Droneというもっとエフェクターっぽい形をしたただのドローンシンセもあるけれども、それ以上にこっちの方がガッツリとシンセなので、ノブを色々回して操作するのが楽しいです。ギタリストのする作業なのか疑問だけども。
◎エフェクターまとめ
全体的に、どういう曲にするか考えることがまず大事ですね。コーラスとかディレイとかリバーブとか、使わないときは全然使わないと思います。歪みは出す音そのものだから大事っちゃあ大事だけど、それも普通の人からしたら「言われてみたら歌の後ろに何か鳴ってるかも」程度のものと思うと、色々考えるのが辛くなってくるというか。
しかし、こうやって色々考えながら、セクションごとの音の雰囲気とかも考えながら作曲したりアレンジしたりするのは楽しいです。手間がかかる遊びかもですが、手間をかけ始めると沼か地獄に落ちるのかも。
最後に、色んなエフェクトがあるけれども色々買うお金が無い、もしくは色々持ち運ぶのが大変だという方向けに、マルチストンプを2個紹介して終わります。
・ZOOM MS-50G
普通のエフェクターと同じ程度のサイズのこれ1個で最大6種類のエフェクトを接続して使用できる、というもの。これ1個で最大6個分!?という。マルチエフェクターの性能をコンパクトエフェクターサイズに集約させ、1万以下で売り出すという暴挙。当然アンプシュミが入っているのでMatichlessとかも一応再現できる*8。
そして、ネット経由でこれにダウンロードできる追加エフェクトが色々凄い。リバースリバーブもあるし、もっと吹っ飛んだ、それこそEventideのリバーブに入ってるマニアックなやつとかもダウンロードしてある程度再現できる。たまげたなあ。
最大6個使えるとはいえ、容量の重いエフェクトを使うと使える数がもっと減ること、それとオンオフの切り替えがその何個かのエフェクトのうち1個しか基本的にできないこと*9、といった欠点を補って余りある汎用性に、逆にロマンの喪失を感じたり。あとブースト用のファズなりディストーションなりは別にあったほうが良さげです。
・Line6 HX Stomp
昨日知った物体。このサイズでスイッチ3つでこの機能性…もう何が何だか…。コンパクトエフェクターのロマンなどと言ってられる時代はもう終わってしまったのではという不安…。
終わりに
この後編をなかなか書かなかった(書けなかった)理由が書いてみて分かりました。書いててキリがなさすぎる、ということと、こんなの書いてる時間でギター弾けよ、っていうことと。
ともかく今は、エフェクターで変な音を出して曲のアレンジを考えたりしたい。いつもは上記のMS-50Gだけでデモとか作ったりしてるけど、やはり色々買ったおもちゃは実際に使わなくては。面白い使い方を見つけなくては。1個も自分で弾いてみたデモとかないじゃないか…。
ともかく、ギターボーカルという概念は、弾き語りをそのままバンドに持ってくるだけのようでいて、しかし他にも色んな可能性があるパートだということを、この記事でわずかばかりでも示せたなら嬉しいところ。歌詞を覚えて*10、下手じゃないように歌って、同時に右手と左手で演奏もして、場合によってはタイミング良くあしも使わないといけなくて、なんだか色々と忙しい感じがしますけど、でもそれらが上手く纏まった瞬間のいい感じは、他の何にも代え難いんじゃないかと思いを寄せています。
それでは皆さん、やっぱりロックンロールやね〜。
*1:自分のやってるバンドは休止中(解散中?)でした。
*2:これを格好いいと思うかダサいと思うかって、音楽趣味の根本的な好き嫌いに直結する問題だと思う。こういう
*3:ギターの弦の振動を拾ってアンプに送り込んで音にする装置。そりゃ音にとって重要でない訳ない。
*4:そういうトーンこそがリズムギターの真骨頂、という音楽もきっとあるんだろうなとは思うんだけれども。
*5:相当短いディレイタイムを設定し、弾いた瞬間に1回だけ音が返って来るようにすることで、コーラスやリバーブとはまた違った、メカニカルな響きを出すことができる。ロカビリーなんかでは必須のサウンドか。
*6:リバーブにオクターブ上の音を重ねて、キラキラしたシンセが追随していくような効果を出す。ただリズムギターがこれを使っても、キルドライでなければライブでは効果が意外と分かりにくいみたい。
*7:スイッチレスなやつもあるらしいけど筐体デカすぎ
*8:音はそこそこでしか無いとは思うけど、でも全然使えないこともない。
*9:これもラインセレクタである程度解決できるとか。すげえ。
*10:時には譜面台見ながらでも構わないですけども。