細々とツイート内容を増やしてるこのbotの、翻訳したやつで気に入ってるものを取り上げるやつの4つ目の記事です。前回が割と1年前だったのでそれ以来となり、その時点で210曲程度の登録だったのが2022年末までに241曲になっています。あまり増えていない…。
前の記事でも「1年でそんなに登録曲増えてない…」と嘆いていて、人間変わらないなってちょっと笑いました。
1. Rae Street / Courtney Barnett(2021年)
「時は金なり」って言うし でもお金は友達じゃないし
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月10日
どこ行っても人の目線はあるし それを変える気もない
そんなに気にしないよね
ただ今日この日に夜が訪れるのを待ってる
靴磨きなんてしない この擦り切れた靴で 日常に戻るの
『Rae Street』Courtney Barnett
「こうありたいな〜」って感じのナチュラルさ。もちろん、常にこんな感じに過ごせるものでも無いものだろうけども。あと、靴磨きってしたことないな…。
2. I'll Never Marry / Daniel Johnston(1983年)
結婚なんてしない 結婚なんてしないんだ
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月13日
誰も死んだお前にキスしないんだ お前は死んでるし
誰もお前と寝てくれないんだ お前の肉が腐っていくし
『I'll Never Marry』Daniel Johnston
そりゃ死んでる奴と結婚とかできんわなハハハ。
短い曲だと1ツイート内に収まるから助かる。
3. The Aeroplane Flies High / Smashing Pumpkins(1996年)
きみにあげれたのは欲望だけ きみが奪ったのも欲望だけ
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月11日
黒い羽根で超高空へ 空で会おう
きみの笑顔で断絶される 100万マイルを断絶する
ぼくに誓ったね きみの解放を祈る
その笑顔で断絶される
『The Aeroplane Flies High』Smashing Pumpkins
曲名が長いと1ツイートに収めるのがなかなか難しくなるけどこの曲はどうにか収まるように超訳できたと思う。まあタイトル自体も括弧書き部分を端折ってる訳だけども。重い鉄っぽい音の感じとこのゴスな関係性の歌詞の相性がいい。
4. Polly / Moses Sumney(2020年)
ここで生きていたくない
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月12日
まるで生きていたくないね 時々
数多の恋人達に口溶けるわたあめになりたい
甘ったるくて滑らかな色彩美
溶けてしまいたい どうにもならないって知ってる
雨水や唾液へ進化する
きみはぼくをほどいてしまう あらあら
『Polly』Moses Sumney
「黒人はマッチョかセクシーな歌を歌う」みたいな思い込みがまだ抜けてないから、こういう内向的な独白を彼のようなアーティストが歌うと、同じようなのを白人やらが歌った時にスッと受け取るのと違う、不思議で歪なワンクッションが入ってしまう。これがなくならないといけないものだとは分かるけども。
そういうのを極力除いたつもりで見てみれば、現状へのうんざり具合と抽象的で無責任で甘美な逃げ方への夢想の相剋具合がもうオルタナティブロックとかのそういうのとなんも変わらんものなっていう。静謐でフォーキーな曲でこういう歌詞って、やっぱこういうのいいなっていう。
5. Spit on a Stranger / Pavement(1999年)
どう感じ 理解されても 真実でも 何が待ってても
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月11日
望みが何であれ 僅かでも 真実でも 正しかろうも
貴方の言葉を読解していよう 冷酷な他人の様に
そして解った 要は ぼくは他人に唾を吐く人間で
貴方が冷酷な他人だったんだ
『Spit on a Stranger』Pavement
一回以下の記事で歌詞全部を翻訳してるけど、それを無理矢理140字に詰め直してそれなりにいい纏まりで成立できたのが嬉しかったので選びました。すっげえ留保と、その上での悲観的な客観性と、その上でだからこそ築ける関係性みたいなの。普通に憧れちゃうこういうのには。
6. Tripoli / Pinback(1999年)
そこにいるよってきみに言ったのをぼくは忘れたか?
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月3日
誰もぼくを信じなかったろうし 誰も確かめようとしない
きみは知ってる 何が起きるか
彼が敗けて また帰ってくる
悲しい ぼくは死に向かってく
願うのは それが想像よりずっとずっと後になればって
『Tripoli』Pinback
なんか上記の『Terror Twilight』の記事で1999年USインディーのコーナーを書いてたらにわかに1999年のUSインディーファンになってしまって、特によく聴いてたやつのうちの1つであるこのバンドのセルフタイトルのアルバムの冒頭曲。すっげえ心細くなるような音ですっげえ心細くなるようなこと歌ってて最高だなっていう。最初のアルバムの1曲目からいきなり“死”ってワードが出てくるとか最高にネクラで良い。しかしなんで曲名がこれなんだ?
7. Sidewalk / Built To Spill(1999年)
さあもうやめちゃいな そんなのもう沢山
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月9日
それできみは何か変わったかな
テレビは付き纏ってくる レーダーは誤読されちまう
それできみは何か変わりもしなかったのかな
歩ける場所を待ってられるのかい
きみは待ってもらえるのかい
『Sidewalk』Built To Spill
1999年のUSインディーににわかに熱中した結果その2。最高にブライトでキュートなギターロックで素晴らしいな。歌詞の微妙にねじくれたようなポップにシニカルなような具合も曲に対して良い塩梅だと思う。
8. Summer Turns to High / R. E. M.(2001年)
ワインとツバキモモを摂った後に
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月9日
蛍たちがやがて 甘美な諦めとともに
夜空をシロップみたいに飛んでる
あったかもしれない可能性に患うことなんてない
ぼくは夢中になってる
夏は高まってく
夏は高まって高まって 大いなる夏
『Summer Turns to High』R. E. M.
若さ弾ける夏!って感じとはまた違う、そして、感傷と淡い後悔と…的な“大人の”夏とも違う、なんか控えめなポジティブさで“大人の夏”してる感じがいい。「あったかもしれない可能性に患うことなんてない」って言えるの強いなっていう。まあ彼らもそうありたいと願ってるからこうやって歌詞にもするのかもだけども。後悔とか何とかを振り解けるのはやっぱ何かへの夢中・熱中なんだよな。
9. Self Control / Frank Ocean(2016年)
時折きみは寂しくって 響きに涙する 涙を溜めて踊る夜も
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2022年12月24日
来たよ ぼくをUFOみたいに見るから
あり得ないって きみが自制するようにしたから
そしてぼくの自制は失われた
ぼくの居場所を取っててよ
きみたちの間で寝るから何もないさ
『Self Control』Frank Ocean
いくらそれが「金持ち家庭に生まれたボンボンで天才によるヤクまみれのもの」であっても、彼という非常に影響力があったであろう存在が積極的に自身の惨めさと妄想めいた甘美さとを取り違えまくるどうしようもない世界観の歌を連発したのは、間違いなくR&B界隈のSSW化にムチャクチャ貢献したろうなって思う。そしてそういうスタイルの歌に対して、アンビエントR&Bというものがここまでドンピシャな相性だというのは、本当に発明だったんだなと、2016年当時に全然理解していなかったことが、時代が進んできてやっとぼんくらな自分にも理解できてきた。
それにしても恋人が他の人の元へ行って「自制は失われた」なくせに「きみたちの間で寝るから」とか言えるの、惨めにしても大変こんがらがっていて、実にユニークな惨めさだなって思った。「何もないさ」って絶対ウソだろ。
10. Allison / Pixies(1990年)
彼方の惑星からこのバーにやって来た
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月2日
所謂「君と僕」今どこにいんだ
万歳 全員のブルーズ
アリソン
ずっと笑顔でいるんだ
彼は恐れずに放擲した
今夜 彼がこう言うのを聞きに行こう
「まあな…」
アリソン
惑星が太陽にぶつかって
アリソンの顔を見た
『Allison』Pixies
Pixiesの歌詞の幾つかは「こいつマジでバカやんけ〜!」って感じな妄想が繰り広げられていて最高。この曲とか尺も短いしおかげで1ツイートに歌詞全部収まったしなんか微妙に破滅的な光景とロマンチックさが交差してる気もするし、なんか、オルタナティブロックって別にこういうのでいいんだよ、って言われてるような気持ちにもなる。いや、こんな歌詞案外なかなか書けないが。
11. (Sittin' on)the Dock of the Bay / Otis Redding(1968年)
何も変わらないな 全部まだ同じまま
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月3日
言われたこともできず おれも変わらず生きるんだな
骨休め 孤独は付纏う
2千マイル彷徨い 結局元通り
波止場に座って 潮の満ち引きを眺め
時を持て余す
『(Sittin' on)the Dock of the Bay』Otis Redding
Otis Reddingは基本なんとなく暑苦しい感じがして苦手だけど、不幸な死の直前に出されたこの名曲は趣をガラッと変えて、海辺に虚しく佇む、穏やかで涼しげな光景の中に甘い悲しさが滲む、あっまさにこういう具合のやつをR&Bに求めてるかもしれん…って感じになる具合の良さを感じてる。それにしても、死去によるブーストはあっただろうけどそれにしても、こんな後ろ向きで虚無感に満ちた歌詞の歌が大ヒットするんだからなんか面白い。
12. Cosmonauts / Fiona Apple(2020年)
貴方が抗うと私は消える
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月3日
貴方の眼を通した私だけ好き
帰ってきて貴方は 深暗い空の日没を偲ぶ
見せて 貴方と私 許せ良き神
どう生き残ると思う?
右左右 重み全て軽くして
だって宇宙飛行士のつがいになる
始まりより強い重圧など抜きで
『Cosmonauts』Fiona Apple
あのアルバムの中でもとりわけ“絶叫”しまくる、女性シンガーでここまでドスの効いた絶叫する人もそんなにいないんじゃないか、と思うような曲だけども、歌詞の方を読むと、そりゃ愛は重たいんだろうけども、しかし意外と可愛らしい表現にも見えるなって思った。「宇宙飛行士のつがいになる」ってなんか可愛らしいじゃないですか。さまざまな束縛から逃れた純粋な愛の地点、みたいな感じで。しかしながらこの曲はやっぱ、絶叫だけども。
13. Lightworks / Atlas Sound(2011年)
その日は吹き飛んで とても速く過ぎて
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月9日
そんな日が来るなんて思いもしなかった
ああ 貴方の光が過ぎてくのを見るだろう
ああ ああ 見るよ 君の光が…
どこを見ても 光がある
どこを見ても光 痛みは無い
どこ見ても光 道標になるだろう
『Lightworks』Atlas Sound
4AD特集の記事を書いてる中でも翻訳は色々とやってて、一応そういうところからbotに引っ張ってきたやつはなるべく選ばないようにしてるけども、この曲は記事では書いてなかったので。アルバムの最後にあってこんな妙に前向きというか、“光”について歌うような歌詞を書いて、やっぱ『Parallax』はBradford Coxの物語の“一旦の”終着点みたいなとこある作品なんだなと。しかしながら『Monomania』でまた気がおかしくなりそうなくらいに拗れまくるし、『Fading Frontire』で今度こそ何かしらケリをつけた感じになっているけども。
『Living My Life』の歌詞も大変良くてそっちも載せたかったけど、まあ普通にすでに書いてる記事の中で訳載せたし。
14. Stairs / Yellow Magic Orchestra(1981年)
壁際の陰で 階段は延々と続く
— 素敵な歌詞bot (@bot_suteki_kasi) 2023年1月15日
鋼鉄やら 石やら 紙かもよ
上向きなのか下向きなのか 階段は永遠続く
混乱した群衆 向かってるの出てってるの?
動いてるの?まだ?階段は延々続く
上る人 降りる人 上昇の人 下降の人
『Stairs』Yellow Magic Orchestra
今朝、高橋幸宏の死去の報を見て、「ついに…」という気持ちと「まさか…」という気持ちとが両方湧いてきた。本当に本当に失礼なことを言えば、YMOで彼が最初に死ぬとはなかなか思えなかった。
3人の中でとりわけ柔和なスタンスで、フットワーク軽めでコラボも多かった人で、そういうことがなんか、彼を「案外死なないでいてくれ続ける人」だとか思わせてたんだろうか。なんだか悲しいとかよりも、死んだっていう事実がいまいちしっくりこなくて、変な心持ちになっている。
でも、死んだのは死んだに間違いないんから、ここに追悼させていただきます。彼の曲で一番好きなやつを、ちょうど英語詩だったので翻訳した。安らかに…。
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以上、今回は14曲になりました。
なんだか全体的に歌詞のチョイスが暗いのは前からだけども、今回はやむを得ない事情からまた少し別の意味合いで暗くなったかもしれません。
でも、ライブは観れなくなるけど、新しい曲とか声とか聴けなくなるけど、でも音楽だったらちゃんと録音物というものは残るんだよな、と。それはとても救われる話だと勝手に思っています。
また1年後くらいにbotの歌詞が溜まったら同じように書くと思います。
それではまた。