ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

サブスクにない音楽(2021.2.28現在)

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線はソフトを使って引きました。色の変え方が分からんかった…。

 

 最近は大概サブスクでばかり音楽を聴いていて、このブログの記事ももはやサブスクのプレイリスト前提みたいな記事ばっかりになってきていて、これでいいのだろうか…などとよく思ったりしているところです。

 それはそれとして、そうやってテーマに基づくプレイリストをサブスクで作ろうとするときにまあ困るのが、サブスクが解禁されていないアーティストやら作品やら。今回は、思いつく限りで全部または一部の作品がサブスクに上がっていないアーティストを自分の興味が湧く限りで15組(+殿堂入り1枚)程度挙げてみます。中には何で解禁されないのかよく分からないもの、本人等の意思により堅く解禁されないもの、むしろ本人は解禁を望んでいるのに問題ごとによって成し遂げられずにいるものなど状況は様々。

 音楽産業全てサブスク(とレコード盤)だけあればいい、みたいな環境が本当に良いのかどうかは結構悩ましいところだけども、ひとまず書いていきます。A→Z順です。

 

 完全にインディーな活動の方々においてはまあ難しいよな…と思うところもあるので、どちらかといえばメジャーレーベルに関係するアーティストを挙げてます。

 

(2021.3.1追記)どうやら一部のアーティストのサブスク事情について誤った記述をしていたようなので、この赤い字で追記修正させていただきます。申し訳ありません。

 

(2021.3.3追記)大瀧詠一のサブスク解禁が3月21日から始まることが公表されました!!!!!!!!!

natalie.mu

 このブログ書いてこんなに早くこうなるとは…でもとても嬉しいです!!!

 

(2021.4.4追記)3/31にMy Bloody Valentineもサブスク再解禁されてました!

 

1. ART-SCHOOLの一部作品

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 なんでよりによってバンド1番の代表作であろうこの作品がずっとサブスクに無いのかずっと謎な状態。当時所属したレーベルの権利関係という事であれば、同じ東芝EMIから出た『Love / Hate』やライブ盤はサブスクにあるのが余計謎。まあでもそういう「同じレーベルからのリリースのはずなのにサブスクにあるものとないものがある」っていうのは時折サブスクあるある的なもののように感じる。

 彼らの場合、他に東芝EMI時代のシングルと、あと本当に何故かミニアルバム『Anesthesia』も無い。また、廃盤等でレア化したシングルカップリング等をたくさん救済したコンピ『Cemetery Gates』もサブスクに無い。この辺は木下理樹氏本人もどうにかしたいとずっと話しているので、彼が現在の休業状態から復帰したらどうにかなるだろうなと信じたいところ。むしろコンピから漏れたレア曲救済のためにも、EMI時代のシングル全て含む形でのサブスク解禁してほしいなって思う。

 

2. Blankey Jet City関係(というかベンジー関係)

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 去年のどっかでブランキー再結成か…?みたいなニュースが出たりもしてたのでそのときに解禁されるかもしれない。日本のロック史で重要系のバンドでも一番丸々無くてアレなのは彼らかなあと思う。3人が3人とも強いパワーバランスなので誰かの独断で一気にやるみたいなのがしづらくて手がつけられていないのかな。

 ベンジー関係は他にもSHERBETSで細かくて不思議な作品の抜けがあったりもする。こっちは全部自前のSexy Stone Recordsからのリリースだから、これは単に作業が中途半端な状態で放置されてるのかな、と思う。何気に『カミソリソング』〜『Black Jenny』といったアルバム『VIETNAM 1964』リリース前に連発された強力シングル群(全て廃盤でレア化)がサブスクに上がってるのはとても素晴らしいと思うけども。浅井健一名義もアルバム単位で抜けがあったりする。頑張れ事務所。

 

3. bloodthirsty butchers諸作(特にKING RECORDS期)

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 個人的にはブランキーよりもむしろブッチャーズの代表作が軒並みサブスクに無いことの方により強いもどかしさを感じる。ブッチャーズの場合、中途半端に何枚かサブスクにあるのがまた、問題のシンプルじゃなさそうな雰囲気を感じさせる。

 特に際立っているのが、90年代にしても晩年にしても、KING RECORDS時代のアルバムが一切無いこと。日本のオルタナティブロックきっての名盤とされる『kocorono』が無いのは言うに及ばず、更にそれをさえ超えるテンションでほぼ3人のみの演奏が生々しく響く『未完成』や、4人体制になって以降の活動が結実した『NO ALBUM 無題』『youth(青春)』が、そのどれもが無いのは痛い。ついでに時期の割にかなりクリアな録音でキャッチーな『△』*1も欲しいところ。吉村秀樹氏がすでに他界してるのが問題を難しくしてるのかもしれないけども。

 

4. CAN諸作(特にダモ鈴木所属の全盛期)

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 なぜか1stと2ndだけがある状態が続いている。2017年にシングル集がリリースされ、サブスクにも上げられたため、ここから遂にサブスク解禁か、と普通はなりそうだけどどうもそうはならなかったらしい。シングル集リリースと同じ年にメンバーが亡くなってたりで、色々と困難になったのかもしれない。(→間違い)

 どうやら、日本においてサブスクでCANのアルバムがわずかしか出てこないのは「日本との契約の問題で、日本語版のSpotifyなりApple Musicなりでそうなっている状態」というのが正確なようです。ゲームで言うところの「おま国」問題みたいなのものなのか。

 ”クラウトロック”というワードから想起される単調さは、実はCANにはあんまりそぐわないんじゃないかと思うことがよくある。彼らは確かに超然的でミニマルな展開をする楽曲もあるけど、結構ざっくりと変なこと・ユーモラスなことをしてる曲も数多い。そういうことを理解するのに上記のシングル集はとても良いサンプルだった。案外、一番近い有名どころのバンドは本当にゆらゆら帝国あたりかもしれない。

 

5. dip諸作(特に東芝EMI期)

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 日本のギターロック史を作るならやはり外せないdipもまた、ディスコグラフィーの一部をサブスク上でずっと欠いたままになっている。現状はUKプロジェクトからのリリース分のみある状態で、それらもいい作品だけどもでも、とりわけメジャーにいたからかポップさの強い東芝EMIでの活動時期の作品が一部しかないのは惜しい。逆になんで『WEEKENDER』はあるんだどういうこと…?

 彼らについては、レーベルを超えたことによる難儀さも、ヤマジカズヒデ氏たちの管理が中途半端になってる線もどっちもあるので判断が難しいところ。『time acid no cry air』『funmachine』あたりは是非もっと沢山の人に聴かれるべきと思うのでどうにかならないものかなあ。

 

6. THE HIGH-LOWSはじめヒロトマーシー諸作

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 彼らのサブスク解禁は難しそう。ザ・クロマニョンズ作品のデザインとかを見るに、明らかに本人たちの意思でサブスク解禁を固辞している節がある。なんというかそれは、甲本ヒロトという人の考え方を思うと、残念ではあるけどでも尊重したくもなる感じもある。

 特にTHE HIGH-LOWSの後期作品は、彼らの一般的なイメージからかなりかけ離れた巧みで複雑なアレンジが散見され、なんというかMOONRIDERSとかCarnationとかそっち寄りなポップソング集になってる。キーボードの存在はとても大きい。サブスクで楽に聴けないのは惜しいけど、でもCDを買ったりレンタルしたりして是非聴いてほしい。

 

7. Jim O'Rourke

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 この人も「そういう主義」でサブスクに作品が全然無いんだろうな、と思われる。この人の場合、むしろBandcampこそを自身のリリースの本拠地にしている節があり、特に圧巻なのは『Steamroom』というシリーズで膨大な量のアーカイヴだったり実験作品だったりをリリースしており、最新作は今確認したら今年の1月27日の『53』だった。彼の、多くの人の協力を得た歌もの作品はともかく、自身のライフワーク的な音源は自由にリリースしたい、という精神がきっとこうさせるんだろう。そしてやっぱ本当に日本に住んでるのか…。

 それにしても世の中にはすごい人がいて、この膨大なSteamroomシリーズを全部聴いて分類・レビューしていた2018年のブログ記事がある。これは本当にすごい。

listening-log.hatenablog.com

 あと、彼が関わったからなのか知らないけど、Judee Sillの幻の3rdアルバムがずっとサブスクに無いのも結構困ってる。ので攻めてこれだけでもジムさんどうにかしてくれませんか…?

 

8. King Crimson

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 まあ、無理だな、という感じ。ロックの長くなってきた歴史の中でも有数の頑固なお方であろうロバート・フリップ先生の匙次第だろうけれど、彼が自作をサブスクに放出するという”妥協”をするイメージが今だにわかない。意外と気さくな方だっていうエピソードも結構聞くけれど、それとこれとはきっと違うことなんだろうな。

 プログレの難しそうなのは、むしろサブスクに出さないほうが音楽の価値が上がりそうな雰囲気があること。「サブスクなんていう安易で低俗な聴き方していいの?」みたいな考え方に、ロックの中でも特にプログレはとても相性がいい感じがする。別にロバート・フリップ先生がそんなことで自分の音楽の価値を高めようなんてセコいことを考えているわけでは無いと思うけど、まあ、難しいのかなあ。もっと気軽に、グランジのアルバムを聴く感覚で『Red』とかを聴きたいなあとはよく思う。

(→全体的に間違い)

 どうやら、日本においてサブスクでKing Crimsonのアルバムがわずかしか出てこないのは「日本との契約の問題で、日本語版のSpotifyなりApple Musicなりでそうなっている状態」というのが正確なようです。ゲームで言うところの「おま国」問題みたいなのものなのか。彼らについては日本のサブスクにおいても一度大きく解禁になった時期もあるとのことで、それがなぜ今の状況まで後退したのか、というのも、サブスクというリスニングスタイルが抱える問題点の一部が垣間見える思いがします。

 

9. MOONRIDERS諸作

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 MOONRIDERSはその長大なキャリアの中で更に、何度も何度もレーベルを渡り歩き、「音楽界の江夏豊」とさえ呼ばれたりしていたほどで、権利関係がとてもややこしそうなバンド。彼らのややこしいのは、なぜかSpotifyApple Musicでカタログが大きく異なっており、おそらくApple Musicの方が充実しているみたい。彼らの先進性の絶頂期とされる1980年代の作品を網羅してるのはApple Musicの方。

 彼らの場合、どっちのサブスクでも90年代中期〜2001年くらいまでの、2004年に自主レーベルでのリリースを始めるまでの間の、本当に何回レーベル変わってんだっていう時代の作品がごっそりカタログから抜け落ちている。90年代のムーンライダーズは正直彼ら自身かなり悩んで活動してた節があって作品的にも難しい感じがあるけど、その困難さの最奥が2001年の911によってブーストされた『Dire Moron TRIBUNE』は、彼らの蓄積された技術力と困難さあってこその豊かな混沌が広がっていてとても素敵。もしかしたら1980年代より後の作品ではこれが一番すごいのかもしれないと時々思う。

 

10. My Bloody Valentine(→2021.3.31に再解禁されました!)

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 何を思ったか一度あげてたサブスクを全部引っ込めてしまった方々。珍しいパターンかもしれない。しかし何故…?完璧主義者のケヴィン・シールズの悪い癖がサブスクに対して発動してしまったのか。自動で楽曲の音量を調節してしまうサブスクの仕組みを心底嫌ったりしてそう。

 しかしながら、サブスクに彼らの作品が全く無いというのはシューゲイザーというジャンルにもしかしたら大きな影を落としているかもしれない。他のジャンルで言うなら『Nevermind』が無いとかそういうレベルの話だもんな。ずっと作っていると本人が言う作品も一向に出ないし、どうしたものか。何年か前に観た轟音ガレージロックみたいになってたライブは最高だったんだけどなあ。

ystmokzk.hatenablog.jp

(2021.4.4追記)3/31にMy Bloody Valentineもサブスク再解禁されてました。『Isn't Anything』『Loveless』『mbv』『ep's 1988-1991 and rare tracks』の4枚でそれ以外の初期EP等はまあ。レーベルもドミノに移籍したり新作がどうのこうのという”いつもの”声明も発してますけど新作はどうでしょうね…でもサブスク再解禁は嬉しい。

 

11. 大瀧詠一(→2021.3.3にサブスク解禁が発表されました!!!)

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 お仲間だった山下達郎氏が拘りを持ってサブスク解禁しないのは理解できる。してほしいけどもでも自分はそこまで山下達郎の音楽に深くハマってはいない。でも、もし大瀧詠一作品も一緒にサブスク止めされているのであれば、それは勘弁してほしい。まあ存命であれば達郎氏以上に複雑な拘りからサブスク拒否しそうなお方だけども。

 『A LONG VACATION』や『EACH TIME』の●●周年エディションが度々リリースされるのはもはやオリンピックが数年おきに実施されるのと同じ程度の定期的な文化事業なのかなと思うこともある。だけど、サブスクによって古いポップスも沢山気軽に、かつ横断的に聴ける環境が整った現在の状況はまさに、そういったものを潤沢に下敷きにした日本のポップスの代表作品たる彼の諸作の登場をずっと待ち続けているところかと思ったりする。

 

12. 小沢健二諸作(作品を出し渋らないで…)

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 彼はむしろサブスク側と積極的に対応する面もあり、一昨年のアルバムリリース時はApple Musicと企画を組んだりしていた。彼の場合、しかし自分のディスコグラフィを限定しすぎているのがとても問題で、「今自分が世に出すべきと思っている作品はここまでです。『ある光』もあるんだから文句ないでしょ?」みたいな状態になっている。いつの間にか1stの改題作『Dogs』がサブスクから消えてた…?

 彼が消したいのかもしれない『犬は吠えるがキャラバンは進む』も『球体の奏でる音楽』も、あと彼が『刹那』に入れなかった各種シングルも、どれも日本語ポップスの奥行きを様々に広げる充実した作品だと思う。何故彼がそういった作品を、今の自分のパブリックイメージのコントロールのためなのか知らないが、そういった作品をわざわざサブスクから排除するのかが、いまひとつ理解できない。つくづく勿体無いと思う。

 あと、Corneliusの方も似たような感じ(『FANTASMA』以降のみ)みたいになってたのが、しばらく前に『The First Question Award』がサブスク解禁されて流れが少し変わりつつあるのも、対比として痛いところ。

 

13. Pizzicato Five諸作(先ずはオリジナルアルバムを…)

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 ようやく彼らの新しいベスト盤のような『THE BAND OF 20TH CENTURY』が2019年末にリリースされサブスクでも公開されて、こちらはようやく、もしかしたら近いうちにディスコグラフィごとサブスク化されるかもしれない、という期待が持てるようになってきた。まあ去年の小西さん自身による歌のライブ音源が素晴らしかったのもあるけども。そういえばPIZZICATO ONEも何故か『わたくしの20世紀』だけサブスクに無い。

 彼らの場合、サブスクにどの範囲まで公開するかがむしろ大変な問題かもしれない。作品はリミックスまで含めるとかなり膨大にあり、全部をいっぺんにサブスクでリリースしようとするととても大変そう。場合によっては”渋谷系的な”権利関係の問題も少し不安ではある。ひとまずは、オリジナルアルバムからとかそういう段階を踏んだ形でいいので、ぜひサブスク化してください。Pizzicato Fiveの音楽ってもしかしたら一番サブスクに合うようないい意味の軽薄(と虚しさ)さに満ちた音楽じゃないですか。ぼくはサブスクで軽薄にPizzicato Fiveを聴き漁って踊ってたいですよ。

 

14. Red House Painters & Sun Kil Moon諸作

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 Red House Paintersの方は本当になんで『Songs for a Blue Guitar』だけピンポイントにサブスクに無いのかが全然理解できない。元々所属していた4ADとバンド(というかおそらくMark Kozelek)が揉めて、別のレーベルに移籍してからリリースしたのがまあ祟ってるんだろうけども、でもそれをずっと放置してるのは、Mark側からの自身の過去のキャリアに対する冷淡な視線が思われる。

 同様の性質の視線をやはりサブスクに無いSun Kil Moonの2枚のアルバム『April』『Among The Leaves』にも感じてしまう。どれも彼の歌心が良く出た楽曲を沢山含んでいて素敵なのに。『Benji』より後の彼が『Benji』より前の彼の作品にどれほどの興味をまだ抱いているのかは不安になるところ。今の彼からしたら苦笑いしたくなるほど甘ったるい感傷に満ちた作品に見えるのかもしれない。でもそれがぼくとかも好きなんだ。

 

15. The Roosters(まさに権利関係の不毛さ…)

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 今回挙げた15組でどれかひとつだけサブスク解禁してやるぜって言われたら、まあPizzicato Fiveあたりと相当迷うけど、でもやっぱThe Roostersを選ぶ。これはまさに最近、大江慎也氏本人の以下の発言もあったりで、本当に本当にもどかしい問題。

shinyaoe.com2021年1月21日の記事に関係する記載があり、要は、元々から彼らの所属していた会社(マネジメント会社か何かか)がずっと彼らに対し印税を払っておらず、そもそも問い合わせても全然対応しないから、サブスク配信も対応ができない、ということ。この問題の根の深いのは、彼らメンバーも、更には上記の会社とは別の立場になるレコード会社の方も、まるで打つ手がない、と話しているらしいところ。レコード会社でも如何しようも無い、ということがあるのか…と驚いた。あの貴重なアウトテイクごと大量に放出したボックスセットは出せても、印税を受け取ることは出来ないし、サブスク解禁も本人たちの思うように出来ない…。

 The Roostersは現役時代の頃からずっと、マネジメントに散々苦しめられてきたバンドだった。初期については気付いたら自分たちの意思に関係なくアルバムが出ていた状態だったとさえ言われており、当時ルースターズや他の”めんたいロック”なバンドたちのプロデュースを手広くやっていた柏木省三氏の悪辣なエピソードは挙げ始めるとキリがない。柏木氏に人生を壊されて脱退〜ソロ活動〜長い休養をする羽目になった大江氏が、ようやく2000年代からまともに活動できるようになってたと思ったのにこの状況、というのが、とても悲しい。

 ぼくは憐憫の感情だけでThe Roostersのサブスク解禁を願っているわけではない。いつかきちんと書きたいけれども、The Roostersこそ、いわゆる”はっぴいえんど史観”なる日本の音楽史を貫くメインストリーム的な概念に対するオルタナティブたり得る音楽的潮流を描けるその源流だと思う。つまり、”The Roosters史観”を立てられると信じている。彼らのパンクを経由したロックンロールと、そしてそれが次第に同時代のポストパンクをその屁滅的なムードごと吸収して変質していく音楽性が、はっぴいえんど史観に結びつけなんて出来ないような90年代以降の荒々しいバンドたちにどれほど接続できるか。BLANKEY JET CITYthee michelle gun elephantもbloodthrsty butchersもthe pillowsdipも(書いてて思ったけど今回のリストにいるメンツが多いな…)、はっぴいえんどではなくThe Roostersにこそ接続できる*2。そう思うと、本当に不思議な立ち位置にいるバンドだ。

 何故なのか。思うに、大江慎也氏の、荒っぽそうでありながらも、権威的*3な湿っぽさ・厭らしさを全く纏わずに、ひたすら打算もなく自棄っぱち気味に打ち放つ感じというか、しかもそういうのをアングラ的にドロッとした感じも無く、ただそのまま繰り出す感じは、ひとつの”クールさの理想形”なんだと思う。

 そしてそれが神経質さと合わさり、ひとつのギリギリの頂点として、そして日本のオルタナティブロックの萌芽として結実しそうになっていたものこそ、上記の画像にある『ニュールンベルクにささやいて』の時期のレコーディング群だ。本当にこれはどこかで改めてきちんと書くけれど、この時期の楽曲は本当に『風街ろまん』と同じようなポジションに収まることのできた楽曲だと思う。

 本当に、彼らのこの問題が解決することを願う。裁判とかも言ってるので、費用のカンパでもしたものだろうか。。

 

 

殿堂入り 『ヘッド博士の世界塔』

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 このアルバムだけは、権利関係の問題が解決するとは永遠に思えない…。実際はサンプリングではなくて自分たちでそっくりそのまま元ネタどおりに演奏し直してるらしいけど、元ネタと同じに聞こえるならそんなの関係ないことだものな…。来世ではサブスクで聴けるようになっているでしょうか。彼ら二人の関わる全作品で、1番これが好きかもだけれども。

 考え方によっては、やっぱりCDやmp3データは完全には手放せないな、ってなる究極の1枚かもしれない。

 

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 以上です。サブスク、始める前だって音楽を聴いてたわけで、無くてもどうにかなるはずではあるのに、そうは思えないから、ちょっと怖くなったりもします。でも、解禁されないかなあ。

 

(以下、2021.3.1追記分の感想)

 事実誤認については申し訳ありませんでした(Twitterでご指摘いただきありがとうございました)。Youtubeなどでもありますが、いわゆる「おま国」問題までサブスクに絡んでくるというのは、なんというかグローバル時代ならではの厭らしさがあるなあと思いました。

 そもそも、SpotifyにせよApple Musicにせよその他AmazonなりLINEなり様々なサブスクサービスにせよ、巨大なプラットフォームを有する企業の一存で、特定の音楽作品を「無かったこと」にできてしまう、という状況は、ある意味では恐怖な感じもします。思い起こされるのは数年前の電気グルーヴの作品が薬物問題で一気にサブスクから消えたことだとか、もしくはTHE NOVEMBERSの作品がレーベルの問題により一時期サブスクから消えたりなど、サブスクというスタイル自体が、恒久的に安定した音楽携帯ではない、というのがこれらのエピソードから伺えます。そういう部分を不安視する人が、やはりフィジカルの価値というのを重要視し続けることは全然理解できることです。

 今回のこの記事はかなり伸びがよく、多くの人に見ていただいた結果、様々な感想も寄せられているところです。サブスクに作品を出さないアーティストはその界隈で「存在しないのも同じ」ことだから理由がなんであれ愚かだ、とする意見や、まあでも難しい場合はあるよねそういうときのフィジカルの価値、だとか、サブスクが果たしてアーティストへの還元が十分か、ということ、そもそも「サブスク解禁」という語自体が面白く、サブスクはあらかじめプラットフォーム側が”フィルタリング”する構造になっている、ということの指摘や、そして色々問題はあってもプレイリストで自由に並べて世間に公開できるというのは強いよね、等々、良い点も悪い点も、様々なものが改めて確認された思いがしました。

 ぼくも、正直ダラダラとサブスクばかりを使って音楽を聴いていたた最近ではありますが、様々な点で、必ずしもサブスクを絶対視すべきじゃないかもしれない、という屈託を胸に有しているところはあります。これは真剣に考え始めると本当に終わりの見えない問題で、様々な議論が百花繚乱するところかと思われます。

 大事なのは、それぞれの音楽の媒体をどのように使って、それぞれのリスナーがどれだけ充実した音楽体験ができるか、といったところでもあると思います。そこにサブスクこそが真の道だとか、フィジカルこそが唯一の真実とか、そういったものは各個人の捉え方次第となってしまって、少なくともここにある程度自信を持って書けるような結論は「そんな結論存在するのかなあ…?」くらいのことだけです。ともかく、どんな手段でもいいから、音楽を楽しみたい人がそれぞれの様々な方法で音楽を楽しめること、すごく中庸的で全然月並みなところですが、結局はそれが一番大事なのかもしれないなと、ひとまずこの文章を終わらせるために思いました。

 まあそれでも、使えるものは使いましょう。みなさん、サブスクを楽しんでいきましょう。

*1:ちなみにぼくは『6月と列車』がとても好きです。こんな素晴らしく辛気臭いギターロックなかなか無い。。

*2:もっと言うとThe Roostersのトリビュートに参加しようとして何故か断られたというエピソードを持つ小西康陽氏さえも接続できる。そうなると彼ははっぴいえんど史観との掛け持ちみたいになるけど

*3:この経緯的な感じのものには「男らしさ」とかも含まれる。アルバム『DIS』における大江氏の歌詞とそれ以外の歌詞とを比較するとなんとなく彼の独特のさらっとした感じが判る