ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

『ヒバリのこころ』スピッツ(1990年3月)【リマスター記事】

f:id:ystmokzk:20210920083206j:plain

 ついに『花鳥風月+』がリリースされ、スピッツのインディーズ時代のミニアルバムである今作収録の6曲全てが収録されて、以前よりもずっと公式で聴きやすくなりました。めでたいです。

open.spotify.com

 それでなのか、弊ブログのずっと前に書いた今作の記事も一時期アクセスが増えてました。しかし、正確には前のブログで書いた記事を今のブログを始める際にインポートで持ってきた記事なので、レイアウト等が壊れて見づらくなっていました。かなり前(2013年)に書いた記事でもあることだしなので今回、記事をリマスターして再掲することにしました。色々と前の記事から記述が変わっているところもあるかと思いますがそこはご容赦ください。

 なお、コンピレーションアルバム『花鳥風月』本体の部分については以下の記事でレビュー済みです。

ystmokzk.hatenablog.jp

 

続きを読む

中期スピッツについて(18のテーマで)

f:id:ystmokzk:20210904164118j:plain

 このブログではスピッツのアルバムを全部レビューしようと試みてる訳ですが、そのうちの”中期スピッツ”とでもいうべき時期の作品についてようやく書き終わったので、初期スピッツの時と同じように、この”中期スピッツ”なる概念について纏めておきたいと思いますので、それがこの記事です。

 初期スピッツのまとめはこちら。

ystmokzk.hatenablog.jp

 纏め方の方法として、初期の時と同じように、筆者が勝手に決めた18個のテーマに沿って3曲ずつこの時期のスピッツの曲を改めて取り上げて、テーマに沿ってもう一度考えてみよう、ということになります。初期よりも該当する時期の作品数も多く、またその魅力も多面的になって来たためか、初期よりテーマ数が格段に多くなってごちゃついてるのはご愛嬌。

 ちなみに、弊ブログではアルバムでは4th『Crispy!』〜8th『フェイクファー』までの時期、もっと正確にいえばシングル『裸のままで』(1993年7月)〜シングル『流れ星』(1999年4月)までの時期を”中期スピッツ”と定義させていただきます。この定義だと2000年から現代までが後期スピッツって、後期長すぎでしょ…問題が生じますが、それもまたご容赦いただきたいところ。あと、この定義だと1999年1月にリリースされた『99ep』の3曲もよく考えたら中期に含まないといけなくなるけども…。

 

 中期スピッツの弊ブログ各作品レビューは以下のとおりです。

ystmokzk.hatenablog.jp

ystmokzk.hatenablog.jp

ystmokzk.hatenablog.jp

ystmokzk.hatenablog.jp

ystmokzk.hatenablog.jp

ystmokzk.hatenablog.jp

 それでは始めます。各テーマの順番は適当です。歌詞のキーワードで紐づけることが多いので、歌詞解説がどうしても多いのでご了承願います。あと今回はテーマが沢山あるのもあって、同じ楽曲が何回か登場することがあります。あと各テーマのサムネ的な画像はスピッツのPVから引っ張ってきたキャプチャ画像です。

 

続きを読む

『花鳥風月』スピッツ(リリース:1999年3月)

 

open.spotify.com

スピッツの「花鳥風月」をApple Musicで

 

 スピッツ全アルバムレビュー、今回は彼らの初のシングルB面曲集『花鳥風月』です。当時邦楽業界で溢れつつあったベスト盤ブームに対するアンチテーゼとして、かつ幾つかの名曲を含む彼らの充実したアルバム未収録のシングルカップリング曲を纏めてもう一度世に示す方法として、このコンピレーションアルバムがリリースされました。前作『フェイクファー』を製作した後の疲弊した状況においてレコード会社との契約をこなすひとつの方策でもあったでしょう*1

 弊ブログの『フェイクファー』の記事は以下のとおりです。

ystmokzk.hatenablog.jp

 しかしながら、彼らは『花鳥風月』リリース時に「ベスト盤を出すのはバンドを解散する時」などとインタビューで言っていたのに、『君が思い出になる前に』から『楓』までのシングル曲を収めたベスト盤『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』の同じ年の年末のリリースが決定されてしまいます。アメリカで新しいレコーディング環境を模索していたメンバーは寝耳に水で相当荒れたりしたらしいですが、どうにか持ち直して、2000年にリリースされる会心作『ハヤブサ』に至る、という流れになります。

 なお、『花鳥風月』については、2021年9月15日に、元の『花鳥風月』にインディーズ時代のミニアルバム『ヒバリのこころ』を完全収録した形の『花鳥風月+』として再リリースされる予定となっています。

 

 ということで『花鳥風月』、これは中期スピッツの幾つかの忘れ形見と初期スピッツの同じようなもの、そしてインディーズ時代の幾つかの楽曲で構成されています。「クオリティは高いけど、「このアルバムが一番好き!」とか言われるとちょっと複雑になる」とは草野マサムネの弁。それでは、今回は前書きもそこそこに、すぐにそれぞれの楽曲を見ていきます。

 

*1:正確には、『花鳥風月』リリース前の1999年1月に3曲入り『99ep』をリリースしています。この3曲は『花鳥風月』の次のB面集である『色色衣』(2004年リリース)に収録されたのでそっちを書く際に取り上げます。

続きを読む

『フェイクファー』スピッツ(リリース:1998年3月)

open.spotify.com

スピッツの「フェイクファー」をApple Musicで

 

 スピッツ全アルバムレビュー、今回は『フェイクファー』です。フルアルバムとしては通算8枚目になります。前作『インディゴ地平線』のレビューはこちら。

ystmokzk.hatenablog.jp

 綺麗なワンピースの女性モデルが陽光の中に揺らぐジャケットは実にスピッツな感じがして、草野マサムネ氏も「ジャケットは自信作」と話しているアルバムですが、本人達的には一番苦しい時期の作品だったみたいです。

 ということで、様々な葛藤と試行錯誤を超えて生み出された、様々な趣向を凝らした楽曲の数々を見ていきましょう。

 

続きを読む

『インディゴ地平線』スピッツ(リリース:1996年10月)

インディゴ地平線

インディゴ地平線

Amazon

open.spotify.com

スピッツの「インディゴ地平線」をApple Musicで

 

 スピッツの全アルバムレビュー、今回は『インディゴ地平線』です。一番好きなアルバムなので、どうやって書くか相当悩ましく感じていましたが、以下、頑張って書いています。どうぞよろしくお願いします。

 

 今作についてよく言われるのが、「大ヒットの影響を受けての変化・迷走の時期」「初期への回帰」「音が悪い」みたいなところ。それぞれについて部分的に理解できるものもありますし、他ならぬ本人たちがそのように発言している箇所も、特に音については結構あるのですが、色々と個人的に納得できないところ。なので今回は、今作をどう魅力的に感じているのか、結果的に多少独特な視点から提示できるかもしれません。以下の文章が果たして読んだ人に伝わる内容になっているか分かりませんが、ひとまずそんな感じで、少し今までのスピッツ各アルバム評と違う形式で、書いていきます。

 

続きを読む

楽曲をミュート/カットで終わらせる手法(40曲)

f:id:ystmokzk:20210815122846j:plain

 この記事は題名に悩んだのですが、要は先日記事にした「フェードアウトで終わる楽曲」の真逆のパターンの手法の曲を示したい記事になります。

ystmokzk.hatenablog.jp

ystmokzk.hatenablog.jp

 楽曲というものはひどく大雑把に言って、以下の3つの方法で終わります。

 

①フェードアウトして終わる場合

②完奏して楽器や声の余韻が残って次第に音がゼロになる場合

③唐突に演奏や声が途切れて、余韻もなく終わる場合

 

今回は③について考えていく記事、ということになります。例を示すために40曲集めて、そして最後に例によってプレイリストを提示します。

 なお、記事の趣旨が「余韻なく終わらせること」についての記事なので、この記事自体も極力冗長にならないよう、無駄な余韻が出ないよう努めてまいります。余韻を消すため、脚注も一切つけません。

 

続きを読む

細野晴臣に関するざっくりまとめ

f:id:ystmokzk:20210809160616j:plain

 今回は、細野晴臣さんの音楽について記事を書きます。

 言わずと知れた日本が誇る大音楽家細野晴臣。最近はナタリーで連載されてる「細野ゼミ」を興味深く読んでます。

natalie.mu

若手を迎えた実にゆる〜い時にゆるすぎるのでは?とさえ思うほどのトークで、ともすれば”細野史観”ともなりかねないはずの話題をゆるーくかわしていくのが実に細野的に感じられて、個人的には大瀧詠一が晩年にラジオでひとりアメリカンポップス史を延々とディープにやっていた話と、何か凄く対照的なように感じられて、良い悪いとかとは全然別の地点で、印象深く感じます。

 それで、そんなゆるいインタビューの狭間に見えてくる細野晴臣という人物のイメージのことも踏まえた上で、彼の50年を超えるその音楽キャリアについて、一回このブログなりに整理をしておこうと思って筆を取った次第です。思ったことを極力書き残しておこうと思うので、中には批判的な内容もあるかもしれませんが、ひとまず書きます。

 あと、例によってプレイリストを、今回は「細野晴臣オールタイム」的なものとして、各アルバム1曲の縛りで20曲ほど集めたので、そちらも以下の記述の軸にしていきます。記事の最後に当該プレイリストも載せます。

 なお、 ”ざっくり”という表題で、実際そうしようと試みたのですが、いざ書き終わると2万5千字程度になっていました。ご容赦ください。

 

続きを読む

『ハチミツ』スピッツ(リリース:1995年9月)

ハチミツ

ハチミツ

  • アーティスト:スピッツ
  • 発売日: 2002/10/16
  • メディア: CD
 

open.spotify.com

Hachimitsu

Hachimitsu

music.apple.com

 随分と間が空いてしまったスピッツ全アルバムレビューを久々に書きます。何せ前回『青い車』が2020年5月、アルバム『空の飛び方』は2019年10月…相当放置し過ぎてました。

ystmokzk.hatenablog.jp

 今回取り上げるのは、スピッツ最大のヒットを記録し、彼らを「J-POPを代表するバンドのひとつ」にまで押し上げたアルバム『ハチミツ』です。流石に緊張します。

 本人たちすら予想していなかった『ロビンソン』の大ヒットにより当時のミスチルやB'z等と並ぶくらいの立ち位置に急に”成り上がった”直後にリリースされたアルバムで、そしてやはり『ロビンソン』の収録アルバムとして「日本の歌謡界の名盤のひとつ」としても扱われ続けるであろう作品*1

 しかしながら、そんな急激に変化した状況を感じさせないほど、この作品単体を見たり聴いたりした感じは「軽い」というのが、今作の面白いところです。何ならここで、今までで一番「可愛らしさ」を押し出した、カジヒデキとかの横に置いても違和感の無い”ギターポップアルバムとして割り切った作品に仕上がっていることは非常に重要だと思います。「ヒットの重圧を気にせず自然体の作品」とよく言われるけど、個人的には決してそうではない、かなり狙い済ましてる作品だと思ってもいます。

 なおかつ、そんなスピッツ史上最も可愛らしい作品にどうやって「今までの邪悪なスピッツ要素」を入れ込むかというところも、見どころになってくるのかと。「爽やかギターポップでありながら、内面はエロとグロに塗れた妄想が漏れ出してる」という作品とも言えるかも。それで通算で170万枚程度売り上げたという、冗談みたいな作品…!

 

 では、河原でワンピでアコギ、なんていういかにもなソフトで可愛らしいジャケットに見送られつつ、各楽曲を順番に見ていきましょう。

 

*1:逆に歌謡曲界隈で取り扱われる可能性があるスピッツの作品はこれくらいだろう。

続きを読む

フェードアウトする楽曲【後編25曲(1990s〜)】

f:id:ystmokzk:20210731185956p:plain



 後編です。1990年代〜現在まで行きます。今回の50曲のリストを作る際に「これを入れるために作った」という幾つかの曲はどっちかというと今回の記事に多めに入っています。

ystmokzk.hatenablog.jp

 今回の記事で最初に作った50曲分のプレイリストの全曲に触れ終わりますので、記事の最後にそのプレイリストを参考資料として添付しときます。よろしくお願いします。

 

続きを読む

フェードアウトする楽曲【前編25曲(〜1980s)】

f:id:ystmokzk:20210723113056j:plain

これはフェードアウトの記事だけど、絵におけるパースの概念もどこか近しいものがある印象。

 

ja.wikipedia.org

フェード (fade) は、衰える、萎むといった意味の英語である。

 

フェードは舞台音響および録音の用語でもある。次第に音が小さくなっていくのをフェードアウト、次第に大きくなってくるのをフェードインという。

 

 フェードイン・フェードアウトというのは、録音物だからこその加工技術です。録音した音を機械的に段々大きくしたり小さくしたりする、というのは、実際の演奏で再現するのはかなり困難で、かつ不自然なものになります。ライブ演奏だったら、録音ではフェードアウトになっているものでも、普通はどうにか落とし所を付けて演奏を完奏させるものです。演奏陣が一丸となって音量を小さくしていくのは困難な上、観ててそんなに面白いものでもないので。

 なので、フェードイン・フェードアウトは、録音物だからこそその趣を楽しめる技巧だと言えます。今回はそんな仕組みになっている楽曲を集めてみたら、なんか50曲ほど集まってしまったので、丁度ディケイドで半分に切れたので、この前半記事では1980年代までの25曲を見て行って、フェードアウトによってこういう効果が生まれてるのかもなあ、といったところを考えていきます。

 

 前後編な記事なので、プレイリストは後編記事の最後に添付します。

 

続きを読む