ブンゲイブ・ケイオンガクブ

本を読まない文芸部員と楽器を練習しない軽音楽部員のような感じのブログ。適当な創作・レビュー等々。

2022年年間ベスト(20枚)+2022年このブログ備忘録

 今年も書きます。2日間フルに使ってDeerhunterの記事を書いた直後のスッカラカンな状態があったり、今年例年にも増して新譜を聴けてなかったり、さまざまな時間の都合があったり、以下の敬愛するブログでも「本当に他者に伝えたいなら、30枚も50枚も書くものでもないかもしれない」的な感じのこと書いてあるし、まあ、そんな理由で今年は例年の30枚から減って20枚です。今年、上半期ベストとか書かなかったし。

 ちなみに2022年ベスト漫画女子キャラはサムネのやつです。12月入ってからの本当にクソみたいな辛すぎる追い上げが良かったですね。藤本タツキってほんとこういう絶妙に嫌で面倒くさい感じ書いてくる。女子男子を超越していいならやっぱフォスフォフィライトですけど。本当になんと言ったらいいのか分からなくなる気の遠くなる展開。休載の多さも相俟って、どう落とし所つけるんだろうあの話は。まあ、今一番落とし所の気になる漫画はダンジョン飯だけど。

 

 

2022年の弊ブログ年間ベスト

 この記事の本編部分。タイトルのところにSongwhipへのリンクを貼ります。

 書く時間が異常に少ないけど、単独記事を書いたものも多数あるし、他人の記事なんかも引っ張ってきたりなんかして、爆速で書いていきます。20枚だけだし。

 

 

20.

『Just Kids .ep』ART-SCHOOL(7月)

 別にこれは20番目に良かったからここって訳じゃないんです。これが4曲入りEPなのでこの辺かなと思っただけで、ミニアルバムサイズならもっと上、フルアルバムなら多分上位に入れてたと思います。それくらい曲のクオリティも演奏も申し分なく、久々に木下理樹システムの楽曲を聴くと、この人やっぱBradford Coxとかと同じでこの人が曲を書いて歌わないと意味がないけどそうすることで本当に唯一無二のものを生み出せる人なんだなって再認識しました。

 とはいえライブにいけなかったことは非常に失態でございまして、それに対する罰かのように東京でも大阪でもセットリストが大変素晴らしく、羨ましくて、いけなかった自分がひどく惨めに思えてええ砂を噛むような思い*1をするようなそんな切ない日々を送っておりますですからどうかここはお恵みということでライブの光景のですねいわゆるDVDというか何か撮ってないんですか撮っているんじゃあありませんかそういうものをですねこう流通ベースに乗せることによってこちらとしてもお金をそちらにお渡しができる形となりましてそれによって巡り巡って日本の経済がインフレがひいては世界の平和が云々カンヌン。

 全曲レビューを書いてるので良かったらご覧ください。

 

ystmokzk.hatenablog.jp

 

 

 

19.

『Artifacts』Beirut(1月)

 これもコンピレーションだからこの辺でいいかと思って載っけた。Beirutの2000年代のアルバム未収録シングル等や未発表曲を集めたコンピということで、今所属してるはずの4ADではなく古巣のPompei recordsからリリースされたようで、危うく4AD記事に載せるところだった。

 それにしても、この人の作風や曲の書き方や歌い方の安定感は凄い。冒頭『Elephant Gun』は2007年のシングル曲ということだけど、このシングルの次に2019年のアルバム『Gallipoli』が来ても別に違和感は無いだろうな。これはむしろ安定しすぎてる感じもあって、チェンバーポップものであり得ることだけど、楽器自体の音質はその性質上変え難いだろうから、作風自体を変えようとしないと同じ作風がずっと続いていくことになる。Sufjan Stevensとかは作品ごとに楽団方式だったりエレクトロだったり弾き語りだったりと様々作風を変えていくことで変化をこなしているけど、Beirutの場合、変化をこなすことをしないようにして、常に自分の旅情に従って楽団を駆動させる、道を選んだのかな、と思われる。

 勿論、4AD出戻り時のアルバム『No, No, No』はトランペット等を封印してミニマルなピアノ中心に変化した意欲作だったと思うけど、そこから従来的な『Gallipoli』に戻ったことに、何ともな哀愁を感じたりもしたものだった。

 何にせよそういう哀愁を、昔の楽曲をリマスター等して並べたこのコンピには感じずに済むから助かる。様々な国を放浪して得たのであろうアイディアをひたすら放ち続ける(時折エレクトロなトラックにも挑戦する)彼らのひたむきな姿が胸を打つ。

 全然どうでもいいけど、バンド名の元ネタであるレバノンベイルート市で2020年に爆発事故が起きた時、彼らはどう思ったんだろう。

 

 

18.

『ANTIDAWN EP』Burial(1月)

 電子音楽は得意じゃないけど、聴けるやつもある。かつてダブステップを生み出して一時代を築いたBurialが、なんかえらい廃墟めいた音楽を作って、しかもどれもえらい長くて、5曲でも43分あるのにEPとか言っててウケるので聴いてみたら良かった。

 イギリス的な音ってあると思ってて、電子音楽界隈においても、どこかツルッとした質感があるものと思ってた。彼が作り上げたダブステップの名作も、そんな都会の洗練された音の上澄みだと思ってた。それからずっと経って、ここにはなんか、まるで同じイギリスでももっと北の方とか、それか北欧とかのポストロックのような、冷涼に荒れ果てた光景が広がっているようで、リズムも全然ろくにないこの音楽からは、不思議なゴスさと、それをファッションにしないもっと敬虔さみたいな何かを何となく感じる気がする。サンプリングの声の響かせ方とかにダブの感じが残ってるのかもだけど、極端にエコー掛ければダブなのか?とも思うし、アンビエントにしては具体的な荒涼とした光景が浮かびすぎる気もするし、不思議な音楽だと思ったけど、このヒリヒリするような光景の中の、時折光が差し込んでくるみたいな感覚に、何だか聴いてるこっちも謎に敬虔な人になった気がしてくる。完全に物語が進行する映画とかと違って、あくまでイメージの発生元自体は聞き手にもある程度委ねられている音楽だからこそ、こんなことをウダウダと考えられるのかもしれない。

 

 

17.

『Les Misé blue』syrup16g(11月)

 上のBurialもそうだったけど、今ここで頑張って何か思ったことを言おうと絞り出さなくても、既にいつも参考にさせてもらってるファラさんのnoteに大体全部書いてある。

 

note.com

 

Twitterでそれをリツイートしたのちに記事の感想をツイートしたら思わぬ量のいいねが付いて、本当はちゃんと細かく歌詞とか読んでいって楽曲の面白さとかみた方がいいけれども、とはいえsyrup16gの音楽的面白さというのに新規軸を求めたり見つけるのはなかなかに困難だ。そんなところで五十嵐隆に無理してもらうことを、多分あまり誰も望んでいないと思う。

 今作は本当に丁寧に作られてると思う。尺も1時間を超えているし、曲の並び方もなかなかいい気がしてる。絶対もっと聴き込んでいればもっと上の方の順位に入れてたと思うけれども、それはもう来年以降の楽しみにしよう。今はとりあえず、ふらっと聞こえてきた曲の歌詞のいちいちに「おいおいまた変な言い回しを考えついたなこの人」とクスッと笑えてればそれでいい。どこかそういうささやかさをこそ望んでいるようにも感じられる、懐の深い偉大なるマンネリズムと、失礼ながら呼ばせてもらおう。

 

 

16.

『The Adventures of Yallery Brown』Wun Two(9月)

 おっちゃん知っとるんよ、こういうの“ローファイ・ヒップホップ”ゆうんやろ。弊ブログのローファイ記事を加筆する際にようやく調べたけんね。ヒップホップのリズムを用いながらもラップはせず、メロウな感じのループを作り上げるやつやろ、クールにエモいやねえ。

 

ystmokzk.hatenablog.jp

 

 という訳で弊ブログの割と昔に大ヒットした記事にローファイヒップホップについて追記し、その際にこのドイツ在住のWun Twoという音楽家のことを知ったのだけれど、過去作品を聴いて、なるほどねーローファイ・ヒップホップってこういう感じかぁー、と思った後に、あれっ今年も作品出してんじゃん、聴いてみよ、と思って聴いたこれが妙に引っかかった。過去作品はなるほど確かに、ヒップホップの泥臭い臭みを消し去ってクールな部分だけを残したような、透明感があってリラックスできそうな作品だけども、しかし今年のこれは、果たしてリラックスに向かえる音か…?っていう。むしろ透明度は下がって、不穏な方向にかなり濁ってないか、と。むしろそのサウンドスケープは、上で挙げたBurialの作品なんかと似たような不穏さがあるんじゃないのか、っていう気がした。

 そして、時勢が時勢だから書きづらくて、ローファイ記事加筆部分の脚注にちょっと書くに留めた「Sovietwave」や「Russian Doomer Music」のことを思い浮かべた。別にそれらとこの作品が似てるって訳ではなくむしろ似てない気もするけども、でもこの音楽の濁った冷たさはむしろ、かの国の大地に、閉塞感があってそしてひたすら寒い、ウクライナも含むかつてのソビエト連邦の感じがするような気がしてきて、この魅力的にくすんだトラック群が面白い見え方をするようになった。本人がそんなことを意図したかどうかというのは、ローファイ・ヒップホップは特にそういうの無視できるジャンルだろうからアレだけど、でもちょっとはなんかそういう不穏の感覚もあったりするんかなあと思ってもいる。

 

 

15.

『Stumpwork』Dry Cleaning(10月)

 正直1stを聴いた時は全く理解できなくてスルーしてたけど、4ADの記事で今年担当のアルバムとしてまあ挙げとくかということになり聴いて、やっぱりよく分からなかったから何度か聴いて、そして記事の形式がそうなってるから1曲選んで歌詞を翻訳してみたら、いつの間にかなかなか好きになってた。今なら「文化というものが混沌から生まれると仮定すれば、Dry Cleaningはその混沌になり得るかもしれない」くらいのキザなフレーズは割と本心から言えるぜ。

 

ystmokzk.hatenablog.jp

 

 こちらにてしっかり書かせていただきましたので、詳しくはそちらを参照ください。PVも作られてた『No Decent Shoes for Rain』の全文訳も載っています。確かに翻訳してみて初めて、この訳の分からない歌詞の面白さを理解した。このボーカルの人、とりすましてナレーション気味に歌うけど、もしかして柴田聡子とかと同類の感性の人間なんじゃなかろうか…。

 

 

14.

『It's the mooooonriders』ムーンライダーズ(4月)

 今年の初めにムーンライダーズ全アルバムレビューを書き、日比谷野外音楽堂でのライブを観に行って*2、そのレビューも書いた自分として、まあ、この再結成版はキャリアでも随一の傑作とは流石に言わないよ。そんな、半ばリハビリ気味に作成されたアルバムで簡単に飛び越せるほど、彼らがその歴史の中で残してきた何枚かの名盤は甘くねえ。

 ただ、それだけの話であって、世間一般から見れば余裕で名盤だと思った。冒頭3曲のなかなかな訳の分からなさ、そして終盤に置かれた、これも和製Beirutな『Smile』がとてもいいですね。というか、スタジオ限定だけど一人でBeirutできてしまうメンバーが在籍するロックバンドっていうのがそもそも何なんだ、チートだチート、ウチじゃそんなの認めてねえからな。

 まあ、単独記事を書いているので、詳しくはそちらでご覧ください。

 

ystmokzk.hatenablog.jp

 

 あとは、サブスクがガッツリ解禁されると最高なんだけどなあ。レコード会社移籍しまくり病のせいでなかなか難しいのは分かるけども。

 

 

13.

『Dawn FM』The Weeknd(1月)

 おそらく今年最初に届けられた“名作”はこれだと思うけど、1月7日に“緊急で”リリースしたっていうのがなんか、本作にはとても似合う気がした。架空のラジオ局の音楽をイメージしたっぽいこの音楽が、突如新年早々に流れてくるという、この作品にとってこれ以上ないほどマッチしたリリース方式だと思った。

 内容はもう実に1980年代R&Bポップを2010年代の音響のフィルターに通したいいところ取りみたいな作品で、楽曲のメッセージがどうこうよりも、ひたすらシティミュージックな洗練の中に積極的に埋没して、一定のフォルムとサウンドにてひたすら快い楽曲が流れていっては消えていく、その感覚がとてもクールで、そしてそこに一切のニヒリズムの引っかかりさえ覚えさせないという点において、この作品は実に“完全犯罪”的なんじゃないかと思った。The Weekndという作家性を半ば捨て去って、ひたすらにキメッキメにMichelでJacksonなトラックをクールにやり通していく、その潔さがひたすら突き抜けていくこの作品においては、黒人の歴史がどうとか伝統の継承がどうとかその中で天才たちは…みたいな普通ならそれなりに真面目に考えるべきことを一切横に置いて、ただノリノリで体を揺らしていればいい。きっとそれが一番楽しくこの方法を聴く方法だと思う。

 もしかしたら細かい点で独特の画期的な技法なんかがあるのかもしれない。しかし、そんなものを全然おくびにも出さずに、軽快にリズムはしばかれて歌はクリアーに抜けていく。「こんななら1980年代の作品を聴けばいい」などと言う人もいるかもしれないが、いやでも1980年代の作品に、まさに時代の最中の人たちの作品に、ここまで完全犯罪を成し遂げたレコードは原理的に存在し得ないだろう。本作は、遠い未来の地点において徹底的に過去の音楽に拘泥し最善を尽くすことによって、過去のその地点では存在し得ない純度の“過去の作品”を捏造することができるということを、勇気を持って全力で示した作品だと言うことも可能だろう。まあ、どういう気だったのかちゃんと調べてないから分からんのだけど。

 

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12.

『Lucifer on the Sofa』Spoon(2月)

 Spoonって何でこんな、クオリティは間違いなく高いし色々と凝りに凝りまくってるのに、ランキングの上位の方には行く気ありませんよ、みたいなラインのアルバムを作るのが上手いんだろう。そのくせ何年か後に「やっぱアレはもっと上の方が良かったかもなあ」とか思わせる。『Hot Thoughts』の年間ベストでの順位に筆者は後悔しているところ。今作のこの順位もきっといつか後悔するんだろう。「せめて10位以内にしておけば良かった…」なんて。微妙な違いでしかないが。

 シンセを使いまくってた過去2作からの反動として、ギターアクションが前面に出た作風になっていることは先行曲『The Hardest Cut』『Wild』などから理解されていた。勿論バランスを考えて適度にピアノが先導する楽曲なんかも置かれているが、しかし本作の主役はやはりギターだろう。そして、つい昨日まで記事を書いてたDeerhunterのギターが病んだ子供がそのまま傍聴していったかのようなサウンドだとすれば(何だそれは…)、Spoonのそれはマジにスーツを着てキメキメでにダンディなポーズを取って、そしてそれがそのまま強く似合ってしまうような、ダンディみに溢れたギタープレイだ。空間を埋め尽くすのではなく、細かく鋭く最小限に抉り取り続けるかのようなギタープレイの数々は実にダンディ。それはボーカルの響き方もそうで、まるで気の利いたサービスのようにシャープに響き、大事なところでしっかりとギター共々炸裂する。その辺の格好良すぎる感じが、逆に順位を上げたくなる要因なのかも(?)筆者はもっと音楽に何か夢めいたものを抱いているのかも(???)

 それでも、やっぱ『On the Radio』みたいな曲はひたすら楽しくて最高だな。もう音楽こう言うのだけでいいんじゃないか、みたいな楽しさがある。8ビートの栄光。

 本作はこれだけでなく、伝説的ダブ製作者・Adrian Sherwoodと共作したダブバージョンの『Lucifer on the Moon』というのも存在しており、その存在は恥ずかしながら今日他の誰かの年間ベストで見つけて、もしかしたら上で自分がなんか言ってる「夢」ってこれならカバーされるんじゃね?っていうファンタジックさがある。畜生こんなん知らんかったぜ。年明けてから聴くぜ。

 

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11.

『ぼちぼち銀河』柴田聡子(5月)

 これも十分に聴き込めていない。そういうものでも年末ベストに入れてしまうものだ。そもそも今日初めて聴いたやつとかもっとずっと上位に出てくるからな。そんなんでいいのか、そんなんでいいよ。別に金貰ってやってる訳でないし、無責任について多少の責任を取るくらいで結構だ。所詮個人ブログ、気取ってても仕方がないんだ、気取ってれば多くの人が読んでくれるなら苦労はしないのだ。

 話があまりに柴田聡子に関係なさすぎて、反省してます。この人はまた相当に多芸な人で、特に弾き語りスタイルから今のバンドスタイルに転向して以降はもう何でもあり何でも来い、といった風格があるけども、スコーンと抜けたポップさで相変わらずの変なことを歌っていた前作『がんばれ!メロディー』と比べると、今作はもう少しカッチリとした16のリズムで言葉数多めな絶妙にどうでも良さげなようで時々かなりドキッとするリリックとやたらと奥行きある音響の『雑感』がリードトラックということもあり、もう少しハチャメチャを抑え目にした上で、どっしりと泥臭い1970年代的リズム感とR&Bの感じを宇宙的な音響に合わせた作品、というバランスに寄せてある。これは今年の岡田拓郎ワークスの充実っぷりに対応した変化なのか。

 思えば、自由自在なリリックが彼る彼女にとって2022年の世界状況というのはコロナ直撃の2020年以上にあり得ないくらい息苦しく不自由に感じられそうな時代だと思えるけども、そんな中でもじっくりとした軸足ながら、自在に言葉をクルクル回して歌い上げる彼女の姿は、実にシュールな優雅さを保ち続けている。そして不意に『夕日』みたいな必殺のR&Bナンバーで、歌詞からはあり得ないほどの感動が訪れる。すっげえ歌詞だ…。散々分けわかんない話しして、しれっと出してくるこんなフレーズが、曲が良すぎて妙にグッと引き込まれてしまう。こんなフレーズなのに、めっちゃロマンチックなんだ、ひねくれてしまった奴特効の。

 

夕日のこと話したいけど

話すことがないの不思議と

 

 改めて聴いてて、やっぱいい作品だなって思ってしまったので、急遽ランクを大幅に上げました。あれっもしかして今日本で最も自由に言葉を選んで載せているR&Bを作ってるのこの人じゃね…?宇多田ヒカルがいまひとつ上手く理解できない*3自分みたいなのをだまくらかして導いてほしい。それにしても今年の岡田拓郎って本当にトレモロ大好きな人なんだなあ。

 

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10.

『Together』Duster(4月)

 1996年から4年間活動して解散したカリフォルニアの伝説的スロウコアバンドであるところの彼らが復活して新作を出したのが2019年。そこからしばらく経ち、突然何の事前の報せも無しにリリースされたらしいのが本作。正直キャリア全部を通じて聞き込んでいるほどのファンではないため他人の言葉を借りれば、「彼らにしてはノイジーすぎた前作よりもノイジーさを抑えた結果、初期の頃に似た質感を得つつも、しかし音のボトムはひたすら重く深く鈍い、それが元来の彼ら特有のダルなスロウコアの成分を少し異質で、下手すればゴスさえ感じる具合のものにしている」とのこと。もう他人の言葉で完全に語ってしまってるやん。

 今のは以下のTwitterで付き合いのある他人のブログの文章からの借用。

 

kusodekaihug2.hatenablog.com

 

 確かに、この無愛想な演奏の冷たさ・重さはいい。それでいて特に盛り上がるでもなく、淡々と歌い、演奏し、通り過ぎていく。そしてしっかりと雰囲気を作り残していく。バンドっていうのはそれだけさえできれば他は何にも要らんのかもしれない。何でも今年はCodeineの未発表曲集が出たり、June of 44が来日決定していたり、どうもスロウコア界隈が俄に盛り上がっていたらしい。「スロウコアが盛り上がる」って矛盾した表現な感じもするけども、でもスロウコアでしか得られないエモ成分も間違いなくあると思う。その辺を来年はもっとしっかり聴いていきたいな。

 

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9.

『物語のように』坂本慎太郎(6月)

 坂本慎太郎がこんな穏やかにポップなソロ作を出すことは意外だったけど、彼の能力をポップな方面に、ある種の彼がかつて恥ずかしがってそうなベタさを恐れずに活かして曲を書いて音を重ねれば、こういう程よく落ち着きと大人びたキュートさが際立つ作品になるだろうことは分かってたことだった気もする。メディアの年間ベストで見かけることがこれまでの作品より少ない気がするのは、それまでの批評精神が一部を残して抜けてしまった感じがあるからだろうか。個人的にはそっちの方が大いに助かるかもなあと、このアルバムをゆったり聴けて満足してるけども。

 かつての批評的な緊張感は1曲目『それは違法でした』に集約されている感じがする。これだけチープな打ち込みのリズム、謎のエフェクトに単音のブラスシンセで形作られる不思議なトラックに、どこかシニカルな歌詞と歌が乗り、不思議な宙吊り感に襲われる。でも、それだけで、2曲目から早速小気味良いドラムロールに誘われて、彼の歌の剽軽な部分だけを取り出して、少し体温の低いブラスロックに乗せてしまう『まだ平気?』の軽やかさで、そこから実にグッドテイストなトレモロギターと、まるで荒井由実のようなメロディに導かれた安楽のポップスであるタイトル曲が始まるに至って、「あっ1曲目は例外的なやつだったのか」と気づく。あとは彼がゆらゆら帝国の頃から蓄えてきたオールディーズ〜ロックンロールの、彼がどこかのインタビューで話していた「1964年から前の音楽しか聴かない」の、まさにそんなのを地で行くような、しかも丁寧に作って、毒はそんなには入れていない*4、ひたすら程よいスウィートさで楽曲を転がしていく。別に今までの作品にポップソングが無かったとは全然思わないけども、しっかりポップに徹するとこういう感じになるんだ、あの特徴的な声はなんか、不器用な優しさのように聴こえないこともないな、などと面白い発見をした気持ちになる。

 

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8.

『DOKI DOKI』サニーデイ・サービス(11月)

 単独記事でレビューを書いてまーす。結構徹底的に書いたと思うので特にいうことは無い気もしましたが、最初は「前作はバンド再開の緊張感が漲ってたけど、今回はえらくヘラヘラしてるなあ」とか思ったけど、歌詞を読んだり、時折のベタを恐れずに突進していく姿勢を見て、なるほど今回はそういうバンドの楽しげに突進する感じを前に置いたのかなあ、と思った。

 たとえばインディーなライブハウス、名前の知らないなんかのバンドが、そこそこ若いのか、月並みに元気一杯にキラキラとしたロックンロールを演奏する。そういうのを観るとなんか斜に構えて見るようになってしまった*5、何かつまらない形で冷めてしまってるかも知れない自分をライブハウスの端に発見する訳だけど、この失礼ながらまあロートルなはずのバンドは、そういうキラキラと争おうとしているのだ。なんて無茶!!!まあ、そういうのと争うには歌がうますぎるし幾つか曲が良すぎる気がしないでもないけど、でもそれさえもかなぐり捨てて、ちょっとダサいかも知れないくらいのナンバーをギラギラと演奏してみせるのだ。もしかして、おれが観たかったソカバンっていまのサニーデイ・サービスなのか…?実際にライブを観てみないことには、判断は保留だろうか…つまり、観ないとな。

 インタビューで「最初は『ノー・ペンギン』をタイトルにしたアルバムを作る気だった」と公開された時には何というか、言葉を失ったけども。。

 

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そういえば、今日新しいPVが公開されたらしい。PVになるの『こわれそう』の方だったかー。バンドマン的な感じ全開の映像だったなあ。PVのための演技とはいえ、いい大人3人して大雨の中はしゃぎ回るのは、まさに今のモードはこんなんです!っていうのを明確に示してるな。

 

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7.

『Blue Rev』Alvvays(10月)

※記事をアップする直前に一応読み返してみたら、この項だけ書いてある内容に対して「うん?そこまでそうか…?」と思い直したりしたことを先に申し上げます。まあ時間がないから書き直さないけども。

 

 正直、この今回のリストで一番聴いてて恐怖を感じたのはこの作品だったかもしれない。何処かの前評判で「お約束を徹底的に回避するスタイル」と聞いて、はあ、と思った。正直このバンドのことは、良くも悪くも人畜無害なティーンエイジギターロックバンドだと思ってた。興味の範囲にはそこまで入らない感じだった。

 えらい評判がいいので2、3曲聴いてみて、あれっ確かに何か様子がおかしい、と思った。ちょっと調べて「Shawn Everett」という文字列を見て、その時はどっかで聞いたことある名前だな、はて…?とか思ったけど、しばらくして「あっBig Thiefの新譜で見た名前やん!」って気づいた。

 そしてもう一度ちゃんと聴き始めて気づいた。これは編集によって徹底にフランケンシュタイン化させられたギターポップなのか、と。流れて来る楽曲のどれもが、普通にロックバンドが演奏しては出てこない形の曲展開をしていた。突如背景に消えていく演奏とドラム、スッと演奏が消えてボーカルだけになったりシンセポップになったりする展開、強引にアウトロを挿入して曲を終わらせ曲を短くする技法等々。音の配置もまた妙に立体的で、心地よい人工的な分離を感じさせる。ライブでどう再現するんだ…?再現なんてできるのか…?

 たとえばDeerhunterが徹底的なサイボーグ化を受けても、なるほど今回はそういう路線かいいね!となって終わりだろう。Vampire Weekendとかは既にそういうのに手を染めている形跡がある。Dry Cleaning?どんどんこういうことをすればいいと思う。衝撃だったのは、そして少々悍ましく思ったのは、素直で健全なギターポップの系譜を感じさせるAlvvaysがそのサイボーグ化の“素体“だったことだ。人畜無害で素直で育ちが良いことで知られていた街の人が、ある日突然全身に機械を身体から生やして、それでも普段どおり暮らしている光景を見たと思って欲しい。怖くないか?これはそういうことだと思った。

 ここで聴ける楽曲はそういう“フランケンシュタイン化”によって拡張されたギターポップで、もう徹底的に気が利いていて、なるほど、どこで意表をつくような変化を付ければいいかを徹底的に理解している。その上で、基本的な“純朴なギターポップ”の軸は維持している。でもそれは非常に異常なことだと思うのだ。芋っぽさと裏表の保守性をもって伝統的な純朴性を守っていく、発展するにしてもギターロック的なUSインディの方向性かシューゲイザーか…というのが筆者が持つギターポップに対する甚だしい偏見であるけれども、これをもし真とするならば、本作でAlvvaysが行ったことは禁忌に当たる。

 それで少し悲しく思ったのは、そうでもしないと、サイボーグにでもならないとギターポップの伝統は死に絶えてしまうんじゃないか、ということ。1980年代に密かにその全盛期を謳歌したファンたちは高齢になり、そういう人たちと一緒に*6、それでももしかしてギターポップという文化はいつか死に絶えてしまうのではないか、という、自分で書いててどうかと思う悲観をどこかで持っていた。この物語(妄想)で考えを進めていくと、Alvvaysはギターポップの延命のためにその身を文字どおり捧げた殉教者だ。

 いや正直、曲のメロディや歌詞や歌それだけならやっぱり、そこまでしっかりと興味が湧く感じはしないのが正直なところだ。でも、普段の街の何気ない光景には全然興味を覚えなくても、そこにミサイルが落ちて粉々に破壊されてしまったりすると、否応無しし居た堪れない目を向けてしまうだろう。そう思うとこのボーカルや歌のメロディなんかが、何だか妙に尊いものみたいにも感じられてくる。自分がこのテンパった文章で伝えたいのは、そういうえげつなさのこと、その悲しさなんだ。

 今更フォローにもなっていないフォローをすると、Shawn Everettが行った外科手術は本当に的確で、本作は伝統的なギターポップが実に理想的にかつ予想もつかない形でねじ曲げられ、省略され、短縮され、分解され再構築されていくその様自体が非常に聴きどころになっている。それらの方法論は本当に、何かを救ってしまうかもしれない*7。全然Alvvaysに興味が無かった自分が思わず振り向いて、こんな位置にアルバムをランクインさせるくらいなんです。信じて欲しい。タイトルは『Blue Rev』。Revって巻き戻しのことでしょ。「青春に巻き戻し」、その手段がフランケンシュタイン化なのか。機械仕掛けの草木が揺れる牧歌的なギターポップか、そんなの可能なのか。筆者は本作に、信じられない冒涜と「そんなことが可能なのか…」と溜息つくような可能性とを感じている。本当に、このバンドにこんなに目を向けることになるなんて思ってもいなかった。

 

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6.

『Gemini Rights』Steve Lacy(7月)

 宅録記事で取り上げたSteve Lacyがいつの間にか今年アルバムを出してたと非常に遅ればせながら知って、ジャケットを見て「えっなにこれは…」とは思いながら再生して、願ってた限りのちょこちょこR&Bから自由に逸脱してみせるコンパクトなR&Bアルバムで、やったぜ!っていう気持ちになった。というかちょっと調べて分かったけど、この人全米No.1ヒット出したのか…一気にスターダムな。

 1stではiPhone1つで録音を完結させちゃうという新時代っぷりが注目されたけれども、本作はスタジオでしっかり録音されたものらしく、前作のおもちゃ感はまあ減ってはいる。でも、それでもそんなに長くない尺で曲をサクサク進めて、10曲で35分というサイズ感には彼の何か変わらない主義を感じさせる。

 1曲目『Static』からしてリズムレスで、ピアノとそして鈴みたいなギターが聞こえてきて、やっぱりこの人はギターだよな、と、ただのクリーンにかなり近いギターの音をこういう風に使うことができるもんなのか、とその自在な発想に感心してしまう。まるでギターで編み物をしているかのようだ。『Helmet』のギターをバックのレイヤー役にしてベースとともに程よいリラックス感で進行していくのも爽やかだけど、ちょっと笑ってしまったのは『Mercury』で、一体これはどこのラテンの国の音楽だ、というラテンな情熱の入ったマイナー調を、妙なパーカッションの少しズレた反復に乗せて、繊細なギターと、やけにくぐもったセクションとを交互に使い分けながら進行していく。これはもうR&Bじゃないだろ、と思いつつも、別にR&Bに拘ってないし、コーラスの不思議な感じも楽しいし、これは実にいい曲だなあって思った。しかしこれもシングル切ったのか。

 No.1ヒットした『Bad Habit』も、シンセを軸にしつつも、どこか落ち着いたムードの中を優雅にボーカルをブレイクの仕方共々ややメジャーフィールド寄りに書いて、間奏でアカペラになり、エコーが消えて、アコギの繊細なカッティングが入ってくるのがとても涼しい。この人は本当にR&Bのフィールドにギターを積極的に持ち込んでいくので、なるほどギターはR&Bではそういう風に登場させられるのか、といったことを色々知れて面白い。別に前からあったことなんかもしれんが。どんどんR&B界をギターだらけにしてほしい。

 

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5.

『Florist』Florist(7月)

 これは正真正銘、今日の朝存在を知って聴いて、あっ…ってなってすぐに10位以内のどこに入れようか考え始めた作品だ。確かTURNの年間ベストで見た。さすがTURN、日本のメディア系では一番信頼してる。

 筆者は上記Alvvaysの項のように、純心純朴な恋の行方をロマンチックに描き出さんばかりのギターポップは割と嫌いなくせに、さらに通り過ぎて、日々の暮らしを畑弄りと散歩と植物観察で過ごしてるんじゃなかろうかというくらいまでささやかな暮らしをただ黙々と送っているみたいなフォークミュージックには非常に弱いのだ。ドキドキワクワクみたいなのから遠く離れた、でも何か目的や謎の邪悪に潰されるでもなくしみじみと日々を堪能し、日々にお返しをするような理想像の世界を勝手に抱いてるんだろうな。自分はそういう暮らしの世界に入っていったら絶対すぐに根を上げそうな癖にね*8

 そういう実際の暮らしのことはともかく、音楽的な趣味のことを言えばその点、Adrianne Lenkerの2020年のソロ作品とかもなかなか良かった訳だけど、はっきり言ってこれはそれ以上だ。だってバンド名も作品名も「花屋」だぜ…。「お花屋さん」みたいなキラキラ感は、まあジャケット見てくれれば、どうか分かるでしょ。まあ活動拠点はニューヨークで、田舎どころか大都会なんだけども

 このセルフタイトルのアルバムは4枚目らしくて、今まで全然知らなかったけど、女性SSWを中心とした3人組バンドということで、Big Thiefに近いところがあるっちゃあるけど、あちらよりももっと繊細に素朴に曲を紡ぎメロディを呟きアコギを奏で演奏を重ね、そしてあちこちで虫の音や、光の反射を思わせるエフェクト等を多用し、絶妙に“しみじみと素朴なフォークミュージック”をほんの少し逸脱してみせる。このほんのちょっとのファンタジーが、筆者にはとてもよく効く。短いインストとまとまった尺のある歌もの楽曲とが交互に現れる仕組みになっていて、それもまた日常のファンタジーとノスタルジーとメロウとを上手に描き出していく。こんなさりげなくふんわりして美しい田舎の光景、音楽の中にしか存在しないんじゃないか…?インスト部の微妙に心細くなるような不安になるようなサウンドも地味に歌もの曲のささやかさの演出に効いてくる。ドラムが入ってきた時の、何だか妙に頼もしく温かく感じられる様は、こういうフォーク・カントリー作品を聴くときの本当に嬉しくなる要素だ。録音時のバックで薄く鳴ってしまう空気のノイズみたいなのさえ、こういう音楽の中ではどこか暖かく感じれてしまう。

 これが4枚目ということはあと3枚アルバムがあるということで、まだ3枚も楽しめそうなものがある。嬉しい発見で、これも来年の楽しみに加え入れよう。

 

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4.

『言葉のない夜に』優河(3月)

 以下のトレモロの記事でアルバムについても書きましたが、実にいいアルバムで、日本勢では突如2位が年末に現れなければこれが1番上になる予定でした。今年の岡田拓郎ワークスの中でも、ポップさとアーティスティックさの具合がとても丁度いいと思いました。岡田拓郎ささん自身の作品『Betsy No Jikan』は、正直よく分かりませんでした…自分の教養のなさがとりあえず残念。

 

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 正直歌声としては、そんなに普段聴かないタイプの声質だった。“普段聞かないタイプの声質”って何。でもやっぱり、壮大なスケール感のある楽曲をしっかり書いて歌って、そこにバックバンドの最高なバックアップが付いて、それでコンビニで『灯火』が流れるくらいになるって(もちろんタイアップのおかげだけども)凄いことで、コンビニで流れる曲にこんな悠久の時の流れを感じさせるようなトレモロギターのふくよかな音が聴こえてくるなんて思わなくて何だか可笑しい。アルバム中でも終盤の大盛り上がり箇所として置かれているけど、演奏をよく聴くと、華やかなメロディのサビはしかしバックの演奏は案外派手じゃないのが上品でかつかえって大地が広がるようなスケール感を感じさせて素晴らしい。

 どこかの記事で、岡田拓郎関係の人脈は今や日本の音楽会で重要なセッションミュージシャンとなっていると聴く。ということは、これからは日本の大衆ポップスは段々とこういう滋養みのあるものが増えていくんだろうか。はてさて。

 

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3.

『Cruel Country』Wilco(5月)

 Wilcoのこの、まるでBig Thiefの2枚組に先輩として対抗するかのように飛び出してきた2枚組のカントリーロックアルバムは、Wilcoほどの演奏技能とサウンドレイヤー作成能力の高いメンバーが集まったバンドだと、「普通にカントリーをやってみよう」というアルバムでもここまでサウンドが拡張されるのか、と思いました。これのために制作してたアーティスティックなアルバムが一時中断になったとも放棄されたとも聞いたけど、でもこの2枚組も結構さりげなくアーティスティックだと思うんですけど…。

 以下の、しばらく前に書いたWilco全アルバム記事にこの作品も追記していますので、詳しくはそちらをご覧ください。流石の曲のクオリティのこともあって、別にこれが1位でも悪くはない気もした。まあでもね、今年はね…。

 

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2.

『3』麓健一(12月)

 これだけサブスクにありません。2位であることは別にそのこととは全く関係ありませんが。

 いや本当に、11月までは1位とWilcoのワンツーかなあ結局、と、割と年の前半のうちに確定した順番が変わらないことを、少し退屈に思いつつもまあ自分の趣味も踏まえると仕方がないよなあ、というふうに思ってた。麓健一という懐かしい名前が、なんかTwitterを始めて、色々と呟き始めた。何だどうしたんだそういう感じの人だったのか。いややっぱりどこか色々とぎこちないぞ何なんだ…。とか思ってた日々を経て、突如唐突に発表されたニューアルバムの報を見て、しばし意識が宇宙に結合したのち、我に返ってもう一度その呟きを見る。

 

 

収録曲のことを思いすぐに脳内で、1位か2位の席を用意することに緊急会議の末決定した。そして購入し、福岡で購入できる店がないことに気づき自分の人生を呪ったけどもアマゾンでまだ買えたので落ち着いて購入し、その日のうちに2度聴き、2011年以来ライブのみで知られていた、自分の1回だけ京都の弾き語りライブで聴いて「えっ名曲…なんでリリースされない…?」と思い続けた楽曲がきちんとCDに収められ、しかもいい感じのトラックといして再構成されていることにビビり、何より『幽霊船』の現世と彼岸の境が曖昧になるような不確かなコード感に、非常にこう、持っていかれた。今朝の健闘の結果、まあ今年は1位は流石にね…ということで、Wilcoさんには悪いけれども、2位にしました。

 筆者、このアルバムについてはこんな感想文ではなく、もっとちゃんとしたアプローチで仔細を眺めて、観察して、歌詞カードを指紋がつくことも恐れずに読んで、読み込んで、コピペなど出来ないからそこに書いてる文字の一部引用のために一文字ずつ指でキーを叩いて打って、それなりに見栄えのする単独の記事にしないといけないと思っています。計算外だったのは、Deerhunter関係の記事に思いのほか手間取ってしまって、今年中に本作をじっくり聴いて書く時間を取れなかったこと。これは今年やり残したことのうちでも最上位で、おいそんなことよりもっと大問題がお前にも色々とあるだろうがよ、という声もあるかもしれないが、いやこれ以上の大問題などありはしないんです。きっと年明けの記事第1号になるよう、しっかり頑張っていきたい次第です。

 一言だけ。Deerhunterの記事で重ねて書いたように、東京インディー勢の幾つかのバンド、シャムキャッツや昆虫キッズあたりは非常にDeerhunterに熱中し、機材を、というかエフェクターを買い揃えた形跡がありますが*9、筆者が思うに、一番Bradford Coxに性質が近かったのは、この麓健一という奄美出身の、不器用そうで朴訥そうな、しかし底知れぬ深みをどこかに有しているSSWだっただったと思うのです。続きは来年の記事で!アルバム発売、本当ににおめでとうございます!!!

 

(2022年1月11日追記)

 これがその”続き”の記事です。なんか彼のこれまでのディスコグラフィー短評等も含んだ内容になりました。

 

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1.

『Dragon New Warm Mountain I Believe in You』Big Thief(2月)

 アルバムの内容に関係がないことから書き始めれば、このアルバムが出たのは2月の、でもまだ11日のことだったんです。すぐにサブスクで聴いて、流石に2枚だとダレるなあとか、案外カントリー色が強いんだなあとか、もっとShawn Everettプロデュース曲が多いといいのにとか、思いつく限りの無遠慮なグチを考えてたのに、段々本当にどうでも良くなって、むしろ2枚目の地味な感じ、『2000 Lines』とかのしみじみする感じが、説明は全くできないが尊いもののように思えて、そういう地味な中に、2022年断トツベストトラックの『Simulation Swarm』が現れるからこそいいような気がして。でも、そう思える頃にはもう多分、ウクライナとロシアの戦争は始まっていて、このアルバムの中で繰り広げられる、歌詞は案外に思い詰めているけども、音楽としてはのどかで、お互いを信じているからこそ作り上げられるファンタジックな音楽やら、Shawn Everettに半フランケンシュタイン化させられてエキサイティングな楽曲やら、一転余りにカントリーテイストがコテコテに強すぎる一部の楽曲の愛らしさやらの世界が、とても平和で、在りし日の理想的な世界のように思えて、とても変な話ですが「この作品が2022年2月24日よりも前に出てくれて良かった」とさえ思ったりしたことがありました。今思えば、ロシアがちょっと想像も及ばないほどの残虐行為をはたらいていようと、ここにある音楽の尊さが少しも失われることなどあるはずがないのに。

 以上はおそらく、アルバムを聴いていく上で全く参考にならない情報で、蛇足というよりむしろゴミとでも言うべき文章です。でもこの、もう、1位になるべくしてなったとしか言いようのないアルバムの、しかしそれにしても、運命さえこのアルバムに味方するのか…?みたいな、筆者の、おそらくバンド当人たちでさえ困惑してしまいそうな的外れな狂信を少し書いておきたかったのです。もう、音楽的・歌詞的な書けることは、自分にかける限りのおよそひととおりを、以下の記事に注ぎ込んだつもりではあります。

 

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そして、そんな作品を作り上げたバンドがどういうライブをするのか、そんな半ば不埒な動機で見に行ったライブで、今年最大の感情を得ることが出来たことも、記事にさせていただきました。Adrianne Lenker、この人一人で歌もギターも思いの外すげえことになってる…と思いつつも、それを支えるメンバーたちの存在が無ければ爆散してしまいそうな、そんな壮絶さと隣り合わせの、しかし間違い無くピースフルな空間がそこにありました。

 

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はっきり言いましょう。今年はBig Thiefの年でした。この記事の下の方で様々なクソみたいなことがあった旨書きますが、はっきり言ってそんなもの、彼女たちの存在と活躍だけで全然お釣りが来るんです。音楽は救うことがある。このバンドのこの年の活動をリアルタイムで観れて、ライブまで観れて、それだけでまあ、色々あったけど、今年はそこそこ幸せだったかもねって、それくらいには思い込ませてくれたのです。感謝しかない。信仰?何とでも言えよ。ロックバンドは案外まだまだ全然生きていける、そんなことだけでも、今年はとても嬉しかったんだから。

 …マジで、もっとちゃんと音楽的な話が見たかったら上記の単独記事を読んでください。いや読まなくても、別に聴けば全部わかるかもなんだけども。別に全然難しい音楽じゃない、時々ヒステリックな場面もあるかもだけど、基本はひたすら優しい、大きい音楽だ。多くの人に楽しんでもらって、そしてまたバンドに日本に来てもらいたいな。是非また観たい。

 

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プレイリスト

 いつものように各アルバムから1曲ずつ選んでいます。麓健一だけサブスクにないので、残り19枚から1曲ずつ、計19曲あります。

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2022年のブンゲイブ・ケイオンガクブ

 ここからただの余談というか本当に備忘録というか、ただのグチというか。こうでもしてまとめておかないとその年に自分が何をしてたかも分からなくなってきそうな感じな今日この頃です。そもそも来年は無事に年の瀬を迎えられるのかな…みんな死にそうな感じの世界とかになってたりしないだろうか…。

 この記事含めて、2022年は29個の記事しか書けなかった。2019年が57、2020年が35、2021年が52となっていたのを思うと、いささか寂しいばかり。ビュー数も昨年が年間で20万行ったのに対して今年はどう足掻いても17万と数千程度で、これが世間一般のなか相対的に見て高いのか低いのかはよく分からないけど、個人的に結構数字が落ちたのは単純に残念。まあ書いた記事の数がずっと少ないんだから数字も落ちるものなのか。

 月に2個くらいしか書けなくなった。時間は十分にあると思うのに、身体がなんかしんどい。加えて、2月末からのウクライナでの戦争に、当初は非常に恐怖を感じて、もうすっかり音楽どころじゃないって、なんか少しばかり個人的恐慌状態に陥ってた。そして、9月にウクライナ側が逆転し始めてからは、今度はまるで野球を応援するみたいな感じでこの戦争を見ている自分も見つけてしまって、その情報を仕入れることに没入してしまうことも含めて自己嫌悪を感じる。

 来年はこのブログどうなっちゃうんだろうか。幸いまだ書こうと思ってることも、書かないといけないなと思ってるけど放置しちゃってるいくつものこともあるけれど。気力をどうやって持って来ればいいのか。モチベーションをどうすればいいのか。どうやってその辺を模索すればいいかもよく分からないや。

 とりあえず、たくさん読まれて嬉しかったことを思い出して、せめて今年自分がやったらしいことを自分で労おう。

 

 

たくさん読まれてて嬉しかった記事

 嬉しかったことをちゃんと嬉しいって言っておくの、大事なことな気がする。

 

1. ムーンライダーズの全アルバム(2022.1.2現在:22枚)

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 1月の早々からやたら長い記事を書いてた。今年は記事の1個1個がともかくどんどん長くなる傾向にあったな。あまりいいことばかりじゃない気がするな。情報を網羅したくなるのはさもしい性かもしれない。

 それでも、この実に長寿なバンドの、2011年以来の新譜が出る前にそれまでのキャリアを概観できるようなものを書いたことは、新譜を聴く上での楽しみにもなったし、それに超後追いの自分と、昔からずっと聴き続けてる人の作品に対する感想の違いとか感覚の違いとかが、別に悪い感じでもなくなかなか興味深い具合にTwitter等で見れたのは面白い体験でした。

 感想、バンバン流れ込んできて、正直今年はそういう意味ではこの記事が一番手応えがあったな。一番読まれたのもこれじゃないか。なので、この記事や次の記事が結構たくさん読まれた段階で、今年も去年並みかそれ以上にたくさん読まれるんじゃないかなあとか思ったんだけどなあ。

 それにしても、この記事の成功があったから「アーティストの前アルバム見ていく系の記事」に味を占めた感じがちょっと今年はあるかもな。年末になって2つもそういうの書くなんて行儀が良くないのでは。

 

 

2. "宅録"の時代的変遷、及び“宅録”アルバム30枚

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 年の初めの月から1ヶ月に2個しか記事書けなかったけど、でも2個とも個人的には大いにヒットした記事になったから、マジでこの辺は全然調子が良かったんだなあ。

 これも自分で調べたり書いたりしててかなり楽しかったし、勉強にもなった。目次のアルバムリストを眺めるだけで、なんだか楽しくなるような、そんな記事が書きたかった気がするので、今それをして楽しい感じがしたのはきっと書きたいものがそれなりにちゃんと書けて成功した、ということなんだろうな。

 

 

 2022年的なことを思うと、ここで調べたことで知ったSteve Lacyが同じ年のうちにいつの間にかアルバムを出してくれてたのは嬉しかったなあ。そしてまさかまさかの麓健一の新譜まで!ぐったりするような時代でも生活でも、それでもどうにか過ごしていればこういう嬉しいことは転がり込んでくるものなんだなっていうことなんだろうな。来年もこういうのはどんどん転がり込んできてほしい。

 …そしてこの記事は、おそらく自分自身の宅録にハッパをかけるためにも書いてた気がするけど、ハッパはかかりましたか……?来年こそは…。

 

 

3. 『HELL-SEE』syrup16g(2003年3月リリース)

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 2月もずいぶん経ってからのようやく1個目の記事だったけど、これも相当読まれたので、2022年当初は3連続で大ヒットを出せた感じで、とても調子は良さそうに見える。まあ前の記事からこれだけ時間が空いてて、何かしらの不調がずっとあって*10苦し紛れにこの記事を書いてた気もするけども。

 詳細なアルバム単独記事を書くというのは少し怖い気もする行為で、というのが絶対自分なんかよりもずっとその作品が大好きな、その作品に入れ込んでいる人って絶対いて、そういう人を差し置いて自分が小手先の記事を書くことが果たして倫理的にいいんだろうか、という思いは常にある。だけどまあ、だからまあ、せめて読んでる人が興味深く思えるような情報を少しでも多く詰め込んでおこうとして、それで記事がひたすら長くなるんだろうなあ。

 昨日書いたDeerhunterの記事でも思ったけど、歌詞の扱いっていうのは難しい。あまりにそれだけにフォーカスしてしまうと、意味にだけ寄り過ぎてしまって、よりフィジカルとマインドに響いてくるところの音楽の効能が欠けてしまい片手落ち感がある。しかし言葉を一切無視するというのもまた、このメロディ・このサウンドでこういうことを歌っている、という一体性で感動する音楽っていうのは間違いなくあるし、むしろそういうものが一番尊いのでは…とさえ思うこともあるから、出来れば他の国の言葉でも歌詞は知っておきたいし、それが純粋に音楽を聴くことの妨げになる・歪めてる、という意見もあるかもしれないけど、でも言葉ってその作り手のエモーショナルな要素の最たるものだし、その生まれ出た音楽にどういう言葉を載せるのか、というのは作り手にとって大変で、しかし上手くいくと実に実感を得られる作業だろうから、やっぱり歌詞がある音楽は歌詞も音楽もちゃんと見たいって思う。

 それで、音楽の詳細に加えて歌詞の分析もしようとするから、記事はどんどん長くなる。でもこれは、上記の考え方に則れば、もう仕方のないことじゃないか。

 肝心のsyrup16gの作品の話をここまで一切書いてないことにここまで書いて気づく。いいアルバムですよね、最高ですよね。言いたいことはもう全部」記事の中に書いたし多分。あと、続編として同じ年のうちのシングル2枚についても書いたけど、今見直すとそっちの投稿日が2月23日で、あの戦争の始まる前日だった。もう少しその記事を書くのが遅れてたら、『パープルムカデ』というモロに戦争について歌っている曲を含むこっちの記事は書き終わらなかったかもしれないな。

 

 

4. 『another sky』GRAPEVINE(2002年11月リリース)(及び2022年の再現ライブについて)

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 ビュー数の多さ・Twitterでのいいね数の多さという意味では、2月の記事から一気に8月のこの記事に飛ぶ。この間も記事を書いてないわけでは決してなかったけど、何故か大ヒットみたいなのは全然なかった。数字的には大スランプだった。別に2枚組アルバムの記事とかトレモロの記事とかモータウンビートの記事とか、もっと読まれそうに思ったもんなんだけども。上記のBig Thiefの今年のアルバムの記事も相当の大作・力作だったつもりだったのに、自分で投稿した際は反応は思ったよりずっと少なくて、もしかして自分はもう人に読んでもらえる文章を書く能力が消失してしまったのでは、と不安に思った。

 このGRAPEVINEの記事は、大好きなアルバムであることもあるし、たまたま見知らぬ人の厚意によって観ることのできたライブがとても良かったこともあって、書いててテンション上がってたし、それがよく読まれたことも嬉しかった。

 ただ、syrup16gに続き、また2000年代前半か…自分はこの時代に魂をひかれすぎてるんじゃないか、この時期の賛美だけで終わってしまう老害に既に成り果てつつあるんじゃないか、という不安もちょっとあって、その後もずっとビュー数的には低調な時期が続いて、そういう様々な不安がぼちぼち払拭されるには、11月の4ADの記事を待たないといけなかった。今年、ブログ書いててずっと不安だったな。

 

 

5. 4ADというレーベル、そしてアルバム30枚(前編)

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 大阪で観れたBig Thiefのライブが物凄く良くて、そのライブ記事を書いてたら盛り上がってきてこの4ADの記事を書いた、という理由がこの記事には書いてあるけど、それは正確じゃない部分があって、正確には「絶対バズると思ってたBig Thiefのライブ感想の記事が全然バズらなくて、他の人のワンツイートの感想とかの方がよっぽど伸びてて、もう相当にノックダウンされて、縋るような、半ばヤケクソなような気持ちで4ADのカタログに縋り付いて書いた」というのが正直なところ。Big Thiefのライブ記事の思いのほか伸びなかった具合は、Big Thiefのアルバム記事が思ったほど伸びなかったのと甲乙つけ難い、今年のトップノックアウト事項だった。死にたくなった。

 しかしなのか、なのでなのか、そういう死の感じを覚えさせるレーベルの雰囲気がある4ADのカタログ、特に創始者Ivo Watts-Russellがそういう雰囲気をコーディネートしていて濃厚にそんな雰囲気があった前半の方の記事は、書いてて不思議な共感を覚えていた。どうしてこのレーベルから抱く品を出す人たちは押し並べて薄幸そうなのか。…まあPixiesとか例外はいるし、あまりにもそういう漢字から外れすぎてる感じがしたLushは選ばなかった訳だけども。

 確かに、前編の面子に比べると、後編、特にSimon Hallidayが社長になって以降の4ADはもっとポジティブで、すごく悪い言い方をすれば相対的にパリピ的かもしれない(そうか…?)。まあでもBlonde Redheadとかいたし、DeerhunterとかBig Thiefとかいるし、The Nationalは確かに4AD的な退廃感は薄いけど、逆にそういうのに逃げれないくらいのシリアスさ・息苦しさが逆にここまでくるとかっけえし。近年の4Adも最高だと思うし、2000年代も余裕で素晴らしいし、つまりは4ADって最高!Matadorとかよりも好きなんじゃないかな。

 

 

6. Deerhunterのディスコグラフィーの大体(※2022年末現在)

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 大正義Deerhunter!これでもくらえ!なかなかのヒット!ワシの手柄じゃあ!ガハハハハハハハ!大統領になるんじゃああああ!みたいな気持ちになりました。

 もう、なんでこんな年末ギリギリになってDeerhunterについて一生懸命書いてたのか最早分からんけど、ウケたから、まあ最高!って感じ。一番辛かったのはその翌日のうちに完結編である『Halcyon Digest』の記事を必死に書き上げたことだけど。こっちはもっと読まれんかい。こんなにアルバムのテーマも、音の出し方も、歌詞も詳細に観ていこうとする記事、それ自体が成功してるかはともかくとして、多分なかなか無いぞ。

 

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読まれなかった・書いてて辛かった記事

 なんでこんな情けない方もリストアップするのか。労いたいんだ、労わせてくれ。毎回毎回もうどうにもならないくらい苦しくなりながら書いてるんだ。セルフで労わせてくれ。

 

1. 夏の楽曲集シリーズ

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 今年の「必死こいて書いたくせに全然読まれなかったシリーズ」はダントツでこの一連の記事。多分もっと曲数を絞って1度にパッと出せてたら違ったんだろうに、色々と調べててリストの曲数が膨大になってきたから年代ごとに分けよう、という発想になって、それがもう終わりの合図だった。全然読まれてなくて意気消沈するけど、でもシリーズ化したから次のやつを書かないといけない。書くために本当に色々と調べてブラウザに大量にタブが並んで、どうにか収集つけて書いたらまた全然読まれなくて意気消沈してでも次を書かないといけなくて…という流れを3回も繰り返して、メンタルも自信も見事にスクラップになった。“夏”ってテーマだからもうちょっと安定してウケると思ったのに…。

 なのでそのストレスの頂点にあった1980年代記事の頃には、もう夏が終わりかけてたこともあって、大好きなThe Roostersの大量殺戮兵器ソング『C.M.C.』に最高にハマり込んで、時勢にも合わせてウキウキでウクライナのロシアに占領されてきっと破壊されたであろうビーチを探して、ベルジャーンシクの画像を見つけて最高にハッピーになったりして、つくづく最悪だなって自己嫌悪した。

 ウクライナ、ひいては世界へ、辛いことが沢山ありすぎるけど、早くあんなクソみたいな連中追い出してください。ロシアの人たちへ、本当に何か語りかけること自体難しく感じるけど、マジでどうにかしてください。戦争なんて嫌だ、侵略なんて最低だ。早くこんなこと終わって欲しいのに、一体どうなってしまうんだ来年は…。

 

 

2. 野田努『ブラック・マシン・ミュージック』レジュメ

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 上の夏シリーズに比べればまだそこそこ読まれた気がしないでもないが、書いてた時の辛さ的にはこちらも中々。本の内容にインスパイアされて書いたのはいいものの、正直、肝心のそこに書いてある音楽がよく分からなかった。上手いことフィーリングがそこに入っていけなかった。自分、なんか致命的なところでテクノ合ってないかもしれないな…。でもCarl CraigMoodymannを知ることができたのはとっても良かった。シカゴのハウスのシーンのクソみたいな感じと地獄の蓋が開いてしまったような空恐ろしさが共存する世界観について書いてる時が一番楽しかった。

 というか、レジュメと題しているのに5万2,000字もあるの、もう全然レジュメできてないでしょ…よく考えてみるとなんなんだこれは…。

 そして、夏シリーズを書き始めた8月中頃からこの記事を書いてた10月くらいまでずっとビュー数もTwitterのいいねの数も死んでて、とてもとても辛い時期だったことを思い出した。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 終わりに

 2022年はいろんな嫌なことがありました。戦争はもちろん、陰謀論、宗教、インターネット上の色々*11、職場のこと、健康のこと*12、コロナにかかって苦しんだこと、何もできない子供大人な自分のことetc…。

 まあ、そういう色々があるからといって、生きていかなくてもいいわけでもないし、仕事でも暮らしでもやっていかないといけないことはあるし、色々とあるけども、たまに今年のBig Thiefみたいにもうなんか全部大逆転みたいな嬉しいことだってあるわけだし、まあ、くよくよしてはいけない、などd'Etat』のは何となく言いたくはないけども、くよくよしてもいいけれども、それでも何か探して出会って感動していたいな、というのは思い続けたいと思います。

 きっと前向きな感じに終わってるよな、よし。それでは良いお年を。

*1:この前晩御飯で調理した長ネギに泥がかなり残ってたみたいで、そのまま料理してしまった結果本当に砂を噛む野菜炒めができてしまって激苦笑。

*2:『Flags』がとにかく最高だった。期せずしてBeirutも見れたなあ、みたいな。

*3:極上に上質なんだろうなあってのはぼんやり分かるけど、音が綺麗すぎてあんまり引っかからない…。1曲目のタイトル曲は良かったなあ。

*4:歌詞を見ると全くないこともない。でも人生の破滅とかディストピアとか、そういう感じではないかなと思う。ダークな要素があっても、もっと現実的な加齢の話とか何とか。

*5:きっとそういう寂しい奴が「このアルバムだと『家を出ることの難しさ』が一番いいね」なんて言ってしまうんだ。くたばってしまえ!!!

*6:たまに若い女の子が歌うギターポップバンドなんかに注目が集まったりすることがぽつぽつとあったりしながらも。

*7:逆に、この“外科手術”があればたとえばThe Pains Being Pure at Heartは解散しなくて済んだのか、とかの「もしも」を考えてしまったりもするけども。

*8:田舎が邪悪じゃないなんて甘いぜって、ネット上でも散々言われているし自分の貧しい人生でも幾つかの反証を聞いたことあるし。

*9:何なら昆虫キッズの高橋翔はBradford Coxの『Parallax』の時のルックスすら真似してましたね。とてもよく理解できる今なら。

*10:もしかしたら職場のトラブルだったかな。これは3月まで酷い目にあったし、今も別の形で尾を引いてる。

*11:一番堪えたのは、評論家として尊敬していたとある人物が過去にプロデュースしたバンドの件でバンドの人物から告発され炎上したこと。事実関係の正確なところは分からないし当事者にしか分からない部分が大いにあるだろうけど、何よりも、氏が評論家的なレトリックと分析を駆使して反論してくる人の細かい部分をネチネチと批判していくのを観ていると、批評・分析の能力ってこういう風にも使われうるのか…と、まるで日常便利に使ってる道具が戦場ではこういうエグい使われ方するのか…みたいな、うんざりした気持ちになってしまった。挙げ句の果てに相手を非難するのに「空洞です」とか言い出して、酷すぎて見てられなくなって、目に入るのも嫌になって、さっきフォロー外した。文句なくインターネット上で観たやり取りの中でワーストに胸糞悪い出来事で、しかも現在進行形でそういうのをやって収まる気配がない。こんなことになるなんて信じられない。失望というか、喪失というか。

*12:そんなにガンガン酒飲んでた訳でもないのにガンマGTPの数値が悪すぎて、家では酒を飲めなくなってしまった…。